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日本経済の業病・デフレ第1回    物価が安くて嬉しいという人は、自分の給料が安くて嬉しいということと一緒だ

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復興の著しい遅れや、TPP問題、増税、そして国民全体を覆うやきれない不況感はあるひとつの問題に根ざしています。 

それがデフレです。このブログは政治経済はあまり扱わない方針だったのですが、これほどまでにすべての問題がそこに行き着くと目をそらすわけにはいかなくなりました。 

日本は今、史上かつてない、そして世界広しといえど最悪最凶のデフレ経済のまっ只中にいます。 

下のグラフをご覧ください。わが国が陥ったデフレが世界でず抜けて酷いものなのかお分かりになるでしょう。 わが国はぶっ千切りでデフレの底を這っています。

Photo                               (OECDデータによる・広宮孝信氏の作成による・下図も同じ)

デフレのもっとも簡単で本質的な定義は、「持続的な物価の下落」のことです。「物価」とは消費者物価のことを指しています。 

上図をご覧になれば一目で分かると思いますが、わが国は2000年頃からこの10年、悪質なデフレ病に取りつかれています。 

トルコやアイスランドなどの国を除くと、たしかに世界は2008年10月のリーマンショック以降デフレ傾向にありますが、その中でひときわ酷い「経済の低体温症」に見舞われているのはわが国です。 

人間いでいえば凍死寸前です。これは私たちが生活の中で実感できることです。賃金は上がらず、むしろ下降しています。 

私たちのような農業者も、今まで売れていた有機農産物のような付加価値高額商品の売れ行きは、放射能禍がある前からさっぱりでした。売れるのは直販所の一把80円のナッパばかり(涙)。 

このような中で唯一売り上げを伸ばしているのは、衣料ではファーストリテイリング(ユニクロ)、家具ではニトリ、外食ではゼンショー(スキ屋・はま寿司)です。お世話になっている方も多いのではないでしょうか。 

これら低価格を売り物にする企業は、円高による仕入れ安もあって軒並み空前の収益を上げています。

デフレとは需要が冷え込むために供給が過多になり、経済全体の血の巡りが悪くなる現象です。これはこのようなメカニズムで発生します。 

モノが安くなる⇒
     企業の売り上げが下がる⇒
         国民全体の所得が下がる⇒
              消費者が安いものに走る⇒
                    更に物価が下がる⇒
                       更に企業の売り上げが落ちる⇒
                         更に所得が減り、 失業者が増大する⇒                                                              初めに戻って延々と続く
・・・

このような状況が進めば進むほど経済は悪循環に入っていきます。いわゆるデフレ・スパイラルです。スパイラル、つまりらせん状に渦潮に巻き込まれるようにして冷たい海の中に国全体が引き込まれていっていますPhoto_2

この消費者物価指数と民間給与総額の相関関係を見たのが上図です。 

1980年代から90年代中盤まで順調に上昇し続けていた民間給与は、90年代末期を境に停滞に転じます。

そして2005年からは緩やかではありますが低落の傾向にあります。09年11月に遅まきですが、政府がブフレ宣言を発しました。 

民間給与と完全に並行して消費者物価も停滞を続けます。

この物価と所得と間には完全な相関関係にありますから、「モノが安くなって嬉しい」と喜んでいる消費者は、「ウチの亭主の給料が安くて嬉しい」と言っていることと一緒です。「100円牛丼バンザイ!」と叫ぶ人は、「給料安いのバンザイ!」と言っているのと同じです。

デフレは需要が少ないということですから、別の言い方をすればモノが余っていることになります。モノの供給は足りていて、買い手が少ないということです。 

作っても売れない、どんどんと安くしなければ売れないということは、企業間競争が激化することでもあります。私たち農業界では産地間競争の激化です。

このような安売り合戦になると、ほんとうに品質が良くて、故に価格もそれに見合ったものは作るのが困難になります。よく言えば生産の合理化、悪く言えば品質の低下が起きます。

もうひとつが生産そのものを外国に出すことです。たとえばベトナムは労働者の年間賃金(月給ではありません)が1万5千円程度ですから、そこで作って日本に輸入しても充分に安く供給できます。

これがSPA(製造小売り)です。ユニクロやニトリの得意技ですが、今やどの企業もやるようになりました。つまり国内生産がどんどん空っぽになっていっているのです。

国内産業がみんな外国に出てしまえば国内の失業者は増え、給料も下がります。すると物価もそれに連動して下がり、経済成長率は下降を続けます。

このデフレ・スパイラルはよりスピンを早めテ、「デフレ恐慌」の海底に日本を引きずり込もうとします。わが国はその淵にいます。アナリストによっては既に突入したという人もいます。

今までの世界恐慌はデフレかインフレのいずれかによって生じました。では今回、日本経済が落ちてしまったドツボはどちらなのでしょうか。

■写真 霞ヶ浦です。モノクロもたまにはいいものです。光と影がくっきり出ます。

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コメント

仰る通り私の年末調整の紙を見ますと、平成13年(2001年)をピークに14年がくんと下がりその後微増していますが、まだ13年レベルまで回復していません。
微増でも上がっているだけマシだ・・・と言わないでください。
不景気不景気と言われ久しい・・・と思っていたら、もう10年以上デフレだったのですね。
物価は下落しているとはいえ、給料は下がり年金や医療の行く末を考えたら、思い切った買い物もできないし、安いものをチョロチョロと買うしかありません。内需拡大による景気回復なんて望み薄です。
給料の上昇を予定して組んだ住宅ローンなんてどうなるやら・・・・泣く泣く手放す人も多いのではないでしょか?
世の中にお金持ちは沢山いると思いますから、そのような人たちに沢山お金を使って、世の中に回して欲しいですね。
国も公共事業なんてドーンと組んで景気を良くしてほしいですが、先立つものは無いし、震災対応でさえ復興増税しなければならないありさまですから、国に頼っても難しいですね。
復興増税と消費税増税加えて老後を考えると、お金を使う事に益々躊躇してしまいます。
なんか先の見えない真っ暗なトンネルを走っているような気がします。
誰かこのトンネルの抜け方教えてください!!
仮に消費税を30%くらいにして、老後はお金を持っていなくても心配無いから、持っているお金をどんどん使ってください・・・なんて言っても、国も信用できないし、余計に消費が落ち込みますよね・・・何とかしてください!

投稿: 北海道 | 2012年1月12日 (木) 16時04分

同じ不況なら、ハイパーインフレの方が、お金持ってる分、気分的に良いのかな?生活が苦しいのは、デフレもインフレも同じでしょうか?

いつも疑問に思うのですが、国が破たんする破たんすると良く聞きます。国家の財政が破たんするとは、いったいどのようなことなのでしょうか?

国家の紙幣、貨幣は国家(正確には中央銀行)が管理しているのですよね?素人考えで、的外れもいいとこかもしれませんが、足らないなら、作っちゃえば良いんじゃないのでしょうか?
お金バンバン作れば、お金足りるんじゃ?ま、貨幣価値はなくなるんで、行きつく先は、ハイパーインフレですが。
ただ、日本の円が対外通貨に対して、相対的に信用度合が強いために、今の行き過ぎた円高が続いているのは事実だと思います。なら、日本の円を弱くすれば、一気に円安に進み、輸出産業なんかは、息を吹き返す可能性もあるのでは?外国に生産拠点を移すこともなく、国内生産したほうが良くなるのでは?
インフレにしたくない何かが存在してるのでしょう。
今、お金持ちの方々は、お金の価値が相対的に高いけど、インフレになったら、価値無くなるから嫌?と、
考えたりしています。

毎年、毎年、減り続ける源泉徴収票を見ながら、いつも思います。

投稿: 一宮崎人 | 2012年1月12日 (木) 17時07分

福祉業界は、景気が良くなっても給料は上がらないから、物の値段が安いデフレの方が良い。

投稿: 陸奥雷 | 2012年12月27日 (木) 17時20分

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