震災恐慌がやってくる!
なぜ、私がこの畑違いの経済テーマに取り組んでいるのかをお話します。
誤解されているかも知れませんが、私は経済一般のうんちくを語りたくて書いているのではありません。
私たちは去年日本史に刻まれるような大災害をふたつ同時に経験しました。結果、2万余にも登る人が死に、3千の遺体は冷たい海に眠ったままです。
生き残った人々も、今に至るもその爪あとで苦しんでいます。傷跡は無数にあり、無数の悲劇が進行中です。
震災復興の遅れはなぜでしょうか?もうあと2か月で1年だというのに何が進みましたか?
今また大規模地震が来るという予測すらある中、太平洋側の備えは大丈夫ですか?何ひとつ対策は進んではいません。
被曝した人たちの長期医療支援はどうなったのでしょうか?避難地域の住民を一回ホールボディカウンターで計ったきりではありませんか。
まして、福島県東部、茨城県全県、宮城県、千葉県東の一部、東京都東部、群馬県、栃木県の一部といった広大な地域住民の健康は見捨てられたままです。主婦の流行はガイガーカウンターと、測定ショップです。
福島第1原発の放射能事故の補償はどうなっていますか?避難地域と風評被害補償だけで、先に一歩も進みません。
東電は、「放射能は無主の所有物だ」という論理を裁判で持ち出しました。環境省の汚染物質指定から放射能がはずされたことを楯にして、「放射能を無主である」と言い切っています。
国が除染をしない以上、これら避難地域を除く広大な地域の除染をについて、国は関知しないということを宣言したに等しいのです。そして東電も「降下した放射性物質は東電の責任ではない。無主だ」と主張します。
では私たちはどに行けばいいのですか?教えて下さい。私たち被曝地の住民、農民はだれを頼ったらいいのですか?
未だ膨大なコメが余剰しており、その原因は放射能に対する恐怖です。今年の作付けすらできないと悩む農家が溢れています。
JAも答えを出せません。政府が沈黙しているからです。農家はひとりが悩み苦しんでいます。在庫が膨大にあって新たな米作りはできませんから。
もう稲苗を作る時期だというのにひとりひとりが追い詰められていっています。ある者は鬱病になって薬が切れず、ある者は死を選びました。こんな春が続くのなら、もっと農民の中から犠牲者はでるでしょう。
教えて下さい。私たちにどうしろと言うのですか?農業をやめろとでも?あるいはいっそう死ねとでも?
そして都市消費者からは1年たつも未だ唾を吐きかけられています。ほんとうの責任者である国は素知らぬ顔です。
もう一回聞きます。教えて下さい。私たちはいつまでこんな不当な農民差別に苦しまねばならないのですか?
私は政府に倫理は求めません。道義心すら要求しません。そのようなものは民主党政権に初めから期待してはいない。
私は政権を批判することには飽きました。やるべきことにさっさと金を出せ、と言っているだけです。今を置いたら遅きに失することに対して国が責任をもって金を出せ、と言っているだけです。
震災恐慌がやってきています。政府はこの時期に、こともあろうにこの時期に金融緩和をためらい、増税をしようとしています。そして加うるにTPPです。
これらの明白に誤った政策をとれば震災でデフレがいっそう加速し、長年にわたることが目に見えています。
私たち被災地・被曝地は国に見捨てられたと覚悟しましょう。国はなにもしません。彼らの言う台詞はいつも一緒です。「財源がない」。
今、百年に一度の災害だから、「財源をひねり出そう」ではなく、「災害で言い訳ができたから増税しよう」と言っているのです。
かくして復興予算は初期の一括投入がないままに、牛の涎のようなダラダラとした既製予算の刈り込みだけで終わろうとしています。
財源はなく、展望もないまま、すべての復興努力はガソリンを入れられないブルドーザーのようになっています。
その上に、被災地にまでかかってくる復興目的ではない消費税増税のみが、「復興に使うのなら仕方がない」という国民の錯覚による合意をとりつけて進められていっています。
一般会計に入れられる増税で捻出した金で、豪華マンションのような国家公務員住宅でも作るのですか。
経済はどんどん縮小し、被災県から既に4万とも5万ともいう人々が去りました。失業率は上がる一方です。若い人たちで自分の生まれた県で働けなくなる時代が始まったのです。
復興するには財源がいるのは分かりきった道理です。ならば作ればいいではないですか。この非常事態にとりうる方法は限られています。
田村秀男氏(産経新聞編集委員・論説委員)はこのように提案します。
❶財源を復興増税という形の増税によってまかなう。
❷政府が復興国債を発行して民間から資金を集める。
❸復興国債を政府が発行して、それをそのまま日銀にお金を刷らせて、直接買い取らせ、それを財源としてまかなうという方法。いわゆる国債中央銀行買い取り。
実際の復興支援対策は、これらを単独で行うか、もしくは組み合わせて行うという方法が考えられます。
私もこの方法しかないと思います。特に❸の国債の日銀買い取りをしなければ、国が滅びます。
田村氏とは別な論理からですが類似の考えは政界でも浮上してきています。(欄外参照)
今デフレにとらわれている限り、必ず震災恐慌はきます。それは急激にではなく、だらだらと続く長い下り坂を国力を絞り尽くす時まで続くのでしょう。
中央銀行の国債買い取りはどの国もとっている非常の手段です。そしていまこそがその「非常の時の時」なのです。
古代ギリシア人はやるやると言って何もしない臆病者にこう言ったそうです。
「ここがロドスだ!飛べ!」
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■超党派議連、日銀に復興国債の全額買入求める
(ロイター)
超党派による「増税によらない復興財源を求める会」は16日、国会内で会合を開き、東日本大震災の復興に向けた財源について、増税ではなく、日銀よる復興国債の全額買い切りオペで調達することを求める声明文を決議した。
同声明文には民主党や自民党などを中心とした国会議員211人が署名。今後、各党政調会への申し入れや、政局動向を見極めた上で、新政権を含めた政府への提言などを計画している。
政府部内では、震災復興のための資金調達手段として新たに復興国債を発行するとともに、日本国債の信認を維持するため、その償還財源を一定期間後の増税で確保することが検討されている。
こうした動きに対し、声明文では「大増税になる可能性があり、デフレが続いている日本経済へのダメージは計り知れない」と指摘。デフレ脱却、経済の安定成長まで増税すべきでないとし、「国債や埋蔵金などに復興財源を見出すべき」と主張している。
その「第一歩」として「政府と日銀の間で政策協定(アコード)を締結し、必要な財源調達として、政府が発行する震災国債を日銀が原則全額買い切りオペする」ことを求めている。日銀の全額買い切りオペによる貨幣供給増で、「デフレ脱却、円高是正、名目成長率の上昇が期待でき、財政再建に資する」とも主張している。
日銀では、こうした国債買い入れオペの増額議論などに対して、財政支援とみなされれば、日本の財政に対する信認が低下し、国債の円滑な発行に支障が生じかねないなどの観点から慎重姿勢を崩していない。
会合には、民主党デフレ脱却議連の松原仁会長や自民党の安倍晋三元首相、中川秀直元幹事長、みんなの党の渡辺喜美代表らが出席。
安倍元首相は「増税は明らかに経済成長にマイナスだ。デフレから脱却し、しっかり成長することこそが、復興、財政再建の道と信じている」とし、渡辺代表は「復興、社会保障、財政再建の増税3段跳びが菅政権の戦略。法人税を中心に減税しなければ日本の空洞化が進む」と懸念を示した。
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コメント
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民主政権のマニフェスト詐欺でより苦しくなった国家予算の中、旧軍やベトナムでの米軍のようないわゆる「戦力の逐次追加投入」という最悪な使い方になってます。
そして、10ヶ月経った今でも遅々として復興は進んでいません。
何故なのでしょう?
こんな時だからこそ、国策での大規模な支援が必要なはずなんですがねぇ。
投稿: 山形 | 2012年1月16日 (月) 07時55分
今何をしなければならないのか、その為の方策は何か?を考えれば自ずと答えは出てくると思います。
当然「お金(財源)」が必要ですから、やりくりを考えるのが財務省の役割です。
復興や原発被害者云々より、税と福祉の一体改革を優先する事が理解できません。
将来を考えたら、税も福祉も公務員給与も議員定数や議員歳費も考えなければなりませんし、必要なものなら国民も負担に理解すると思います。
復興とデフレ脱却、円高是正が今一番求められている事だと思っています。
投稿: 北海道 | 2012年1月16日 (月) 11時45分
国に見捨てられたとは、言ってはいけないと思います。
民主党政府に見捨てられた、あるいは民主党政府は意図的に何もしないのかも。
自民党政府ならもっといろいろやったでしょう。
そのとき国民、テレビ、あるいは濱田さんは不平不満をぶつけなかったと言う自信は有りますか?
我々は政権交代と叫ぶテレビに騙されて、とんでもない政府を選んでしまったようです。
投稿: 八目山人 | 2012年1月16日 (月) 13時41分