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農業関税 守るべきものは守り、変えるべきは変えねばならない

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今回のBSE基準緩和の問題は、
TPPなどの米国の圧力に対してわが政府が自国民を守る意思が脆弱であるかを教えました。 

日本農業は守らねばなりませんが、それは今までの農政の中で温存されてきた矛盾まで無批判に守ることではありません。 

「TPPは農業関税問題である」と矮小化してはなりませんが、同時に関税問題でもあります。 

農業関税は、本来は自国農業保護のためにあるはずですが、長年の間に変質してそれを権力と勘違いしている官僚たちの道具に成り下がっています。 

コメの高関税は有名ですが、あの高関税が果たして農家のためだけのものだったのかははなはだ怪しいと、私は考えています。 

あれは減反と一対になったコメの国家カルテルを維持するためにあるもので、あのままで今後生き抜けるはずがありません。 

農水省は関税によって、数百億円単位の関税収入を得て補助金財源としての権力基盤として使っています。 

減反政策は、「米の生産-流通-管理-消費のすべてにわたり政府が管理する」という時代錯誤の社会主義計画経済ばりの政策です。 

これは戦中-戦後の配給米制度の名残ですが、このような戦時統制経済を21世紀まで続けるとは、さすが農水省も思わなかったのではないでしょうか。 

ここに農水省は、米の検査、減反の確認、保管などで別の官庁まで作っています。それが食糧庁-食糧事務所です。今では食料管理法の改正にともなって衣替えして農政事務所と称していますがなかみは同じものです。 

ここに1万人余の農水省職員がいます。仕事は減反の監視と米の等級検査のみです。つきあってみればわかりますが、いまでもお役人体質そのままの強権体質が抜けません。 

このような社会主義義も真っ青な計画経済の裏側で、年間80万トンものMA米が輸入され、その保管だけに500億円もの税金を投じて寝かせています。いや、多くのMA米は結局は家畜の飼料にするか、安物のセンベイの原料にするしかないようですが。 

今は国内米が原則自由市場となりましたので、民間の卸業者が保管しています。すると1万人余の農政事務所の職員はやる仕事がなくなり、今やMA米の管理と、重箱の隅をつつくような減反監視だけが主業務となっているようです。 

この食糧事務所は海外にまで出先機関を持ち、そこは例によって農水省の天下りの温床と化しています。 

つまりは、農水省の財源確保と余剰人員のプール、天下りの温床という役割をコメ関税は持っているのです。この関税-減反制度がなければ、農水省2万人余の職員はその半分以下でも充分に機能するはずです。 

コメ関税-減反制度はTPPで最初の標的にされるでしょう。いかなる改変を迫られるか私には分かりませんが、今のような形で温存できるとはとうてい思えません。 

また、バターの関税は「農畜振興財団」(ALIC)という、農水省の外郭団体、はっきり言えば天下り団体が仕切っています。この振興財団の主業務は、輸入バターの独占貿易です。

輸入バターは、特殊な関税システムを持っています。単純関税ではなく、二段階なのです。ここに財団が権力をふるう余地があります。

●600トン以下の輸入量・・・・一次関税・35%
●その枠を超えた輸入量・・・二次関税・29.8円/㎏+179円

バター輸入業者は、二次関税を払った上で、伝票だけ振興財団に回し、マークアップ(輸入差益金)の806円/㎏を上乗せされた金額で買い戻すということをします。

仮に500円/㎏の国際市場価格でバターを輸入するとなると
❶二次関税・・・・・・・・・・・・・・・・・29.8%149円+179円
❷マークアップ(輸入差益)・・・・806円
❶+❷=1634円

これに流通・小売りマージンが上乗せされる、輸入原価の3倍になります。一部消費者の「輸入食品が店で手に入らない」というのは、ことこのことに関してはあながち間違いではありません。

振興財団はいわばトンネル会社のようなもので、伝票操作だけで年間約11億円の収益を得ています。振興財団が一定枠を取って、上部団体の農水省に上納する仕組みになっています。

振興財団の法外な収入は有名で、理事長年収2000万円、一般職員の年収は930万円という東電顔負けの収入を得ています。

そしてこの関税収益は建前としては「農業の保護振興に当てられる」はずですが、それは7割程度にすぎません。

本来全額が畜産農家の振興に当てられるべきにもかかわらず、みずからはペーパーワークのみで甘い汁を吸いながら権力をほしいままにしている、と言われても仕方がないでしょう。

北海道様がご指摘のように、BSE対策で内部留保の財源が枯渇したようですが、それならば振興目的の官製団体としてまさに本望というべきでしょう。高額報酬を削ってでも財源を捻出するべきで、BSE対策基準の緩和に走るなど本末転倒というべきです。

このような存在を伏魔殿といいます。伏魔殿を維持するために、欧米にはありえない国家貿易を行っているのです。この腐敗した構造は麦でもみられます。

日本農業は長年内部にガスを蓄え込んできました。それは事実です。保護するべきは保護するのは当然ですが、しかし前世紀の遺物のような国家貿易や国家カルテルは廃止されるべきです。

■写真 なにか冬の日本海といった風景で、「津軽海峡冬景色」のひとつも歌いたくなりますが、茨城の北浦湖畔です。

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コメント

BSE対策で内部留保の財源が枯渇したようですが、それならば振興そして気として本望というべきでしょう>>>>管理人様のおっしゃるとおり、内部留保を目的どおりBSE関連疾病の防止に役立てられたのだから、それでよいと思います。(お金より国民の健康が大事でしょうから。。)

諮問の件について、なぜ、牛肉の輸入月齢制限を撤廃するのか?と、厚生労働省医薬食品局食品安全部
監視安全課 今西 様(内線2455)にお尋ねしたところ、牛の月齢については、飼料に牛由来肉骨粉を、世界的にOIEが規制したことで、牛のBSE発見頭数は、年間3万頭レベルから現在ほとんど発見されないところまで来ている。
月齢制限より飼料制限によるBSE感染牛の減少がほとんどと思われる。

内部留保の枯渇問題は、監視安全課の範囲でないので、コメントできない。

近年、確かに、米国輸入牛肉の輸入条件違反事例は、見つかっているが、いずれの当該肉からもBSEの感染事実は確認できていない。よって、牛由来肉骨粉の飼料制限だけで、充分なのか?牛の月齢による制限など、他の規制が必要かどうかは、内閣府の食品安全委員会の判断による。

内閣府食品安全委員会が、パブリックコメントも含め、厚生労働省に答申してきたことを真摯に受け、省の方針に反映されると思う。とのことでした。

まあ、食品安全委員会が諮問OKの答申をすれば、月齢については、段階的に廃止したいということだそうです。

投稿: りぼん。 | 2012年1月10日 (火) 15時45分

BSE問題はちょっと難しいし、よくわからないんですが、それほどアメリカ産牛肉を望む声はマーケットや消費者から多いんですかね?大手食品チェーンは吉野家辺りは喜びそうですが業界全体で、アメリカ産牛肉を歓迎する感じは無さそうですし。

マーケットが渇望するほどアメリカ産牛肉って安いんですかね?そうでないなら得するのは結局アメリカと役人だけになりそうですけど。

安全かどうかで議論したら永久に終わりそうにないですが、反対を押しきってまでやるほど価値があるんでしょうか?


投稿: マグロ | 2012年1月10日 (火) 19時33分

連続ですいませんが

なんというか、ですね、漁師としてはこれ以上安い肉でも魚でも国外から入ってきたら国産品の価格が維持できなくなるので勘弁して欲しいという気がします。ただでさえ、デフレで供給過剰なのでこれ以上の輸入は止めましょうという話です。

投稿: マグロ | 2012年1月10日 (火) 19時41分

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