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2012年2月

福島原発事故民間事故調の調査報告書 福島原発事故は人災だった

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待ちに待った福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)の調査報告書が出されました。 

既に去年暮れに出されている政府事故調の中間報告書は、事故原因の核心部分である政府中枢の危機管理対応にふれないで、技術的な失敗のみ列挙するという政治的圧力すら感じるような内容でした。 

このまま政府事故調がこのトーン、つまり政権与党に配慮して臭いものに蓋の最終報告書を作りあげたのなら、この巨大原意発事故の真相は公式には永遠に葬られてしまいます。 

それに歯止めをかけるようにして、民間から自由な立場で客観的に分析する事故報告書が出されたことは大いに歓迎できることです。 

これで腰が引けた政府事故調も、これらの民間事故調の指摘を無視して最終報告書を作ることはできなくなりました。 

3月12日以降の国家的非常事態において、官邸が「パニックと極度の情報不足」(報告書)に陥り、「テンパッた状態」(同)になったことが描かれています。

今回の福島事故直後の官邸の初動対応は、危機の連続であった。制度的な想定を外れた展開の中で、専門知識・経験を欠いた少数の政治家が中心となり、次々と展開する危機に場当たり的な対応を続けた。決して洗練されていたとはいえない、むしろ、稚拙で泥縄的な危機管理であった。」(報告書)

この極度の混乱状況の中で、菅首相は理性が吹っ飛んだ半狂乱状態になっていたことも報告書に記されています。 

首相は、一切の助言に対して「言い出したら聞かない」(報告書)状態となり、過剰な政治介入とスタンドプレーのみに奔走しました。 

たとえば、12日ベント準備に全力を尽くしていた事故現場に突如「陣頭指揮」に行くと言い出し、官邸内部でも枝野官房長官など多くのスタッフが反対をしたにもかかわらず、首相は聞く耳をもたず強行しました。 

当時東電は、ドライベントが大量の放射性物質を吐き出すことを承知しており、、10㎞圏内の避難完了後に実施する方針を固めていました。 

これを首相は「なにをグズグズしているんだ」と激怒し、「陣頭指揮」(首相の国会答弁時の表現)に向かったのです。 

一分一秒でも惜しい事故現場の修羅場に首相自らが乗り込むという前代未聞のパーフォーマンスを聞いた吉田所長はこう言ったそうです。 

私が総理の対応をしてどうするんですか。」(報告書)。 

事故現場にヘリで乗り付けた首相は、武藤副社長をどなりつけ、わめき散らし、吉田所長の「決死隊を作ってでもやります」というひとことを聞いてやっとお引き取り願えたそうです。 

このことについて、報告書はこう述べています。
官邸の決定や経産相の命令、首相の要請がベントの早期実現に役立ったと認められる点はなかった。」(同)
 

また、冷却機能喪失、炉心融解に直接結びついた電源喪失に対して、官邸は東電の頭越しに40数台の電源車を送りましたが、GE製の特殊なコネクターのために使用ができないという信じられない大ポカを引き起しました。 

これを報告書はこう述べています。
「官邸では福山副長官がその手配を中心的に担当し、どの道路が閉鎖されているかが分からないので、各方面から40数台の電源車を手配した。しかし、これらの電源車は事故対策にほとんど貢献しなかった。」

この報告書には書かれていないようですが、菅首相の思いついたヘリからの冷却水投下は、パイロットたちを危険におとしめただけでなんの効果も上がりませんでした。

これをテレビでみていた米国大使館内の「トモダチ作戦」本部は、「これが先進国のやることなのか」と唖然としたそうです。(ソース ケビン・メア「決断できない日本」)

また官僚組織は菅首相の強圧的、恫喝的とも言える指揮に恐怖し、まともな判断力を失って、ひたすら保身と責任転嫁のみに走ったことも分かりました。 

たとえば、官僚はSPEEDIによる放射性物質の拡散状況を知りながら、それを官邸に形式的にFAXしたのみで、その情報の重要性は官邸の誰もが知らないという驚くべき状況だったようです。

私はこれを組織的隠匿だと考えていましたが、事態はもっと幼稚だったようです。 

専門家として指揮を担うべき原子力安全委員会の斑目(まだらめ)春樹委員長もまた、菅首相に振り回されるような状態に陥りました。

「(菅首相の)強く自身の意見を主張する傾向が班目春樹原子力安全委員長や閣僚らの反論を躊躇させた。」

12日午後3時36分1号機建屋が水素爆発をしましたが、それに対しても斑目委員長は、「あー」と答えたきり頭を抱えて判断不能に陥る状態だったようです。

その後のドライベントの避難地域の設定に対しても、既定の3キロでは足りず、はるかに大きな避難地域を設定せねばならないにもかかわらず、それを失念しました。

斑目委員長は官邸にいたほぼ唯一の原子力専門家だったにかかわらず、事態の深刻さと首相による強ストレスのために判断停止状態でした。 

菅首相は、12日5時55分に海水注入作業を進めていた事故現場に対して、突如「塩水だぞ。影響を考えたのか」と叫び、作業の中止を命じました。 

この明らかに誤った首相の介入に対して、斑目委員長は専門家でありながらそれを制止できず、対策会議参加者全員で首相を落ち着かせるリハーサルまで行うというマンガのようなことを官邸はしていたのです。

それにしても、暴走する原子炉を前にして、本部長(首相)を落ち着かせるリハーサルにうつつを抜かすとはのんきな危機管理もあったものです。

斑目委員長は報告書の中でこう言っています。
「私としてはもっといろいろなことを伝えたかった。」、「菅首相の前で大きな声で元気よく言える人は、相当な心臓の持ち主」。

議事録を作らなかったのは、「首相に録音の許可をもらうことが怖くて言い出せなかった」との官僚の声もあります。(産経新聞3月1日)

まさに狂える王とそのしもべたちに国家存亡の非常事態は握られていたのです 

結局、このパニックの中でただひとり冷静さを失わなかった吉田所長が、官邸と東電本店の命令系統を無視して独自に海水注入作業を続行していたために事なきを得ました。 

これについて報告書はこのように結論づけています。
官邸の議論は結果的に影響を及ぼさなかったが、官邸の中断要請に従っていれば、作業が遅延していた可能性もある危険な状況であった。」

このように菅直人という異常な精神形質を持つ男が、事故対応の指揮のすべてを強引に掌握したために、本来行われるべき的確な権限委譲がなされずに、事故リスクをかえって拡大してしまいました。

報告書はこう書きます。

少なくとも15日の対策統合本部設置までの間は、官邸による現場のアクシデント・マネジメントへの介入が事故対応として有効だった事例は少なく、ほとんどの場合、全く影響を与えていないか、無用な混乱やストレスにより状況を悪化させるリスクを高めていたものと考える。」 

しかし、当時わが国はまさに破局の淵にいたことがよく分かります。ぞっとしたのは私ひとりではないでしょう。

報告書の全文がネット上で公開されておらず、市販までまたねばならないために入手できないでいますが、各種報道による要約を掲載します。




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民間事故調査委員会報告書 3章「官邸における原子力災害への対応」の冒頭部分「概要」の要約

「結果的にみて、官邸の現場への介入が本当に原子力災害の拡大防止に役立ったかどうか明らかではなく、むしろ場面によっては無用の混乱と事故がさらに発展するリスクを高めた可能性も否定できない」(P74) 

そして、官邸による現場関与の主要事例とその影響については、いくつか例を挙げると次のように事例別に評価を下しています。 (P94~)

 

電源車の手配(11日夜)……官邸では福山副長官がその手配を中心的に担当し、どの道路が閉鎖されているかが分からないので、各方面から40数台の電源車を手配した。しかし、これらの電源車は事故対策にほとんど貢献しなかった

 

 1号機ベント(11日夜から12日早朝)……少なくとも官邸の決定や経産相の命令、首相の要請がベントの早期実現に役立ったと認められる点はなかった。

 

 1号機への海水注入(12日夕方)……官邸の議論は結果的に影響を及ぼさなかったが、官邸の中断要請に従っていれば、作業が遅延していた可能性もある危険な状況であった。

 

 3号機への注水変更(13)……官邸で海水よりも淡水を優先する意見が出され、東京電力の部長から吉田所長にその旨が伝えられた。(中略)淡水への変更は、結局ほとんど状況改善につながらず、経路変更で無駄な作業員の被曝を生んだ可能性があり、官邸の指示が作業を遅延させたばかりでなく、原子炉注水操作失敗の危険性を高めた疑いがある。

 

 その上で報告書は、こう結論しています。(P98)

 

少なくとも15日の対策統合本部設置までの間は、官邸による現場のアクシデント・マネジメントへの介入が事故対応として有効だった事例は少なく、ほとんどの場合、全く影響を与えていないか、無用な混乱やストレスにより状況を悪化させるリスクを高めていたものと考える。」

 

 「政府のトップが原子力災害の現場対応に介入することに伴うリスクについては、今回の福島原発事故の重い教訓として共有されるべきである。」

 

 当時の官邸内の様子を表すこんなエピソードも紹介されています。(P111~)

 

ある官邸中枢スタッフは、原発事故に関して菅首相が「全然俺のところに情報が来ないじゃないか」と苛立ちを表明する度に、関係省庁が大急ぎで説明資料を作成して説明に上がろうとするが、説明を開始してまもなく「事務的な長い説明はもういい」と追い出されるパターンの繰り返しであったと述べている。」

 

 結論として、官邸の初動対応についてはこう書かれています。(P119)

今回の福島事故直後の官邸の初動対応は、危機の連続であった。制度的な想定を外れた展開の中で、専門知識・経験を欠いた少数の政治家が中心となり、次々と展開する危機に場当たり的な対応を続けた。決して洗練されていたとはいえない、むしろ、稚拙で泥縄的な危機管理であった。」

 

 さらに、最終章「福島第1原発事故の教訓復元力をめざして」は、こうも記しています。(P393)

 

官邸主導による過剰なほどの関与と介入は、マイクロマネジメントとの批判を浴びた。菅首相が、個別の事故管理(アクシデントマネジメント)にのめり込み、全体の危機管理(クライシスマネジメント)に十分注意を向けることがおろそかになったことは否めない。 

(以上 阿比留瑠比記者のブログより引用)  

■<福島第1原発>官邸初動対応が混乱の要因 民間事故調報告
毎日新聞 2月27日

東京電力福島第1原発事故を調査してきた民間の「福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)」(北沢宏一委員長)は27日、菅直人首相(事故発生当時)ら官邸の初動対応を「無用な混乱やストレスにより状況を悪化させるリスクを高めた。場当たり的で、泥縄的な危機管理」と指摘する報告書をまとめた。官邸の指示が事故の拡大防止にほとんど貢献しなかったと総括。緊急事態の際の政府トップによる現場への介入を戒めた。

 民間事故調は、科学者や法曹関係者ら6人の有識者が委員を務め、昨年の9月から調査していた。東電側は聴取を拒否した。

 報告書によると、原発のすべての電源が失われた際、官邸主導で手配された電源車が、コードをつなげず現地で役に立たなかった。枝野幸男官房長官(同)は「東電への不信はそれぐらいから始まっている」と、事故当日から東電への不信感が政府側に生まれていたと証言。報告書はこうした不信感が、官邸の現場への介入の一因になったと分析した。


 原子炉格納容器の圧力を下げるため気体を外に出す「ベント」が遅れたことについては、東電が現地の住民避難の完了を待っていたことや電源喪失が原因だったと指摘。「官邸の決定や経済産業相の命令、首相の要請がベントの早期実現に役立ったと認められる点はなかった」とした。

 1号機への海水注入では、12日午後6時ごろの会議で、注入による再臨界の可能性を菅氏が「強い調子」で問いただし、再検討を指示していた。海水注入は既に午後7時4分に始まっており、第1原発の吉田昌郎所長(同)は官邸と東電本店の中断指示を無視し注入を続けた。

報告書は「官邸の中断要請に従っていれば、作業が遅延した可能性がある危険な状況だった」との見方を示した。同時に、吉田氏の行動についても「官邸及び東電本店の意向に明確に反する対応を現場が行ったことは、危機管理上の重大なリスクを含む問題」と批判した

 一方、菅氏が昨年3月15日に東電に「(福島第1原発からの)撤退なんてありえませんよ」と、第1原発にとどまるように強く求めたことについては、「結果的に東電に強い覚悟を迫った」と評価した。

 また、菅氏の官邸での指揮に関し「強く自身の意見を主張する傾向」が班目(まだらめ)春樹原子力安全委員長や閣僚らの反論を「躊躇(ちゅうちょ)」させたとの認識も示した。さらに「トップリーダーの強い自己主張は、物事を決断し実行するための効果という正の面、関係者を萎縮させるなど心理的抑制効果という負の面があった」と言及した。【笈田直樹】

 
◇民間事故調報告書の骨子

・首相官邸の現場介入によって、1号機のベント(排気)などで無用の混乱を招き、事故の悪化リスクを高めた可能性。介入の背景は、マニュアルの想定不備や官邸の認識不足▽東電や保安院への不信感▽被害拡大の危機感▽菅直人前首相の政治手腕など

・01年の米同時多発テロを教訓にした新たな規制内容を未反映

・菅前首相は昨年3月22日、原子力委員会の近藤駿介委員長に「最悪シナリオ」の想定を依頼

・地震当時、原発構内の作業員は「この原発は終わった。東電は終わりだ」と顔面蒼白(そうはく)

・緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)の運用や結果の公表を巡り、文部科学省が原子力安全委員会に役割分担させるなど責任回避を念頭にした組織防衛的な兆候が散見

・航空機モニタリングで、文科省と防衛省の連携が不十分

■福島原発事故独立検証委員会とは

 東京電力福島第1原発事故の原因などについて民間の立場で検証しようと、財団法人が設立した組織。通称・民間事故調。委員は元検事総長の但木敬一弁護士ら民間人6人。研究者や弁護士ら約30人から成るワーキンググループがあり、菅直人前首相ら政治家や官僚ら300人余りから意見を聴取した。原発事故をめぐっては政府、国会、日本原子力学会なども独自に調査している。法律に基づいて設置された国会の事故調は、証人喚問といった強い権限がある。
 

■福島第一 対応「場当たり的」 民間事故調が報告書
東京新聞 2012年2月28日

 学者や元検事ら民間人でつくる「福島原発事故民間独立検証委員会」(民間事故調、北沢宏一委員長)は二十七日、報告書を公表した。菅直人前首相らから事情を聴き、東京電力福島第一原発の事故当時、政府内部が混乱していた状況を詳しくまとめた。問題点として、場当たり的な対応、規制当局の能力不足、縦割り行政の弊害などを指摘した。

 報告書によると、1号機の原子炉内の蒸気を放出するベント実施前に、避難区域が三キロとされたことについて、班目(まだらめ)春樹原子力安全委員長は「(放射性物質を含む気体を直接放出する)ドライベントは失念していた。ドライベントの場合、避難は三キロでは足りない」と述べた。

 1号機の水素爆発時、班目委員長は「あー」と頭を抱えるばかりだった。民間事故調の聴取に「水素爆発はないと首相に話していたので、水素爆発だと分かっても何も言えなかった」と答えた。


 官邸の危機感が頂点に達したのは、2号機の状態が悪化した三月十四~十五日。東電の清水正孝社長(当時)から福島第一原発からの撤退を申し出る電話が枝野幸男官房長官(当時)らに何度もあり、「まだやれることはある」とする官邸と対立。菅前首相の東電乗り込みにつながった。

一方で枝野長官らは近藤駿介原子力委員長に、事故が深刻になった場合を想定した「最悪シナリオ」を作るよう依頼しシナリオは九月の菅前首相退任まで秘密にされた、としている。

 民間事故調は、シンクタンク「日本再建イニシアティブ」(船橋洋一理事長)が主導し、委員六人と約三十人の作業グループが調査に当たった。政府関係者を中心に三百人に聴いたが、東電首脳への聴取はできず、事故調は「協力が得られなかった」としている。
 

■首相がベント指示、「米ではありえぬ」 元NRC委員長
朝日新聞 2012年2月27日
 

東京電力福島第一原発事故の原因を検証する国会の事故調査委員会は27日、参考人として米原子力規制委員会(NRC)のリチャード・メザーブ元委員長を招き、米国の安全規制や事故発生時の政府の対応などについて聴取した。  

 昨年の原発事故の際、原子炉から気体を出す「ベント」を、当時の菅直人首相が指示した。メザーブ氏はこれを念頭に「米国では考えられない。大統領が決めることではない」と明言。記者会見でも「米国では電力会社が決め、NRCが許可をする。日本の政治家のほうが知識があるのかもしれない」と皮肉った。  

■福島原発事故独立検証委員会 (民間事故調)について

福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)は昨年3月11日に起こった東京電力・福島第一原子力発電所における事故の原因や被害の状況、事故の直接的な原因だけでなくその背景や構造的な問題点を、民間の純粋に独立した立場かつ国民の一人という目線で検証してきました。

政府や国会の事故調査委員会とは異なり、既存の組織や枠組みにとらわれない自由な立場を生かして、今なお避難を続ける10万人を超える被災者をはじめ、日本国民、世界の市民に向けた検証報告書を作成しました。

福島原発事故の原因や被害の経緯を包括的に検証した報告書の発表は、これが世界初となります。

民間事故調の半年にわたる検証作業では、菅直人前首相や海江田万里元経産相など事故対応時に政務中枢にいた政治家や事故収拾に当たった当事者、事情を詳しく知るキーパーソンへのヒアリングを通じて、事故の原因や被害拡大の経緯について調査を行いました。

検証委員会は高い専門知識と識見があり、今回の事故に強い関心を持つ科学者、法律家、エネルギーの専門家計6人で構成されています。委員長は、東京大学名誉教授で、昨年9月まで独立行政法人・科学技術振興機構理事長を務めた科学者の北澤宏一氏です。


・福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)
委員長 北澤 宏一 (前科学技術振興機構理事長)
委員 遠藤 哲也 (元国際原子力機関理事会議長)
委員 但木 敬一 (弁護士、森・濱田松本法律事務所、元検事総長)
委員 野中 郁次郎 (一橋大学名誉教授)
委員 藤井 眞理子 (東京大学先端科学技術研究センター教授)
委員 山地 憲治 (地球環境産業技術研究機構理事・研究所長) 

 

(以上資料中の太字はすべて引用者です。)

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昨日は湖の水源を遡行してみました


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昨日、つくばの大学の先生と学生さんたちで、霞ヶ浦と北浦の水源地を歩いてみました。 

と言っても、たった数キロの範囲内におさまってしまうんですが。 

霞ヶ浦の水源の特徴は、水源地の森と里山がついそこにあることです。私の村の水源の里山など、湖まで北浦へ2キロ、霞ヶ浦へ4キロといった所です。 

ですから、簡単に遡行できてしまいます。ありがたみがないほどです。 

行方(なめがた)台地の中央を貫く開拓道路から下って、里山に分け入り、いちばん奥の谷津田の最後の一枚が、実は湧き水で潤っていることを見せました。 

ここから湧き水が、最初の四畳半ていどの猫の額のような一枚に溜まり、太陽の温もりをもらいながら、下の田んぼに水を手渡し、やがて広い田んぼに豊かな水を張るのを眼で確かめました。 

またわが村には、江戸時代に作られた溜め池がいまでも沢山あり、全部に「天神池」などの名前があることも分かりました。 

その溜め池には鮒やなまずがいて、農家がたまにおかずに釣ることも。おおきなナマズがほんとうにいましたよ。 

この溜め池があるおかげで干ばつの夏にも耐えられるし、大水が来てもいったんそこで溜め込んで下に大水を出さないスゴイ仕組みであることも理解できました。 

この水は細い農業用水を経て、小川に注ぎ、そしてそれらがもっと大きな川になることも見ました。

そしてだんだん大きな川になるに従って、その周辺に広い田んぼや畑が現れます。 

面白かったのは、村の住人の私も驚きましたが、川の流れの向きです。

ある川は北浦へ注いでいるのるかので東向き。別の地域の川は西に流れて霞ヶ浦に注いでいるのです。 

つまり、狭い地域で東西逆に流れる川が2本あるという不思議です。

まぁ地形でそうなっているわけですが、「弐湖の国」と自称しているわが地域の奇観でしょうか。でも、これ、村の人間は案外気がついていないぞ。

そして最後は、里山の水が集まる美しい湖周辺に到着し、水鳥の遊ぶ姿を堪能してもらいました。

私も自分の村の散策はひさしぶりなので、たいへんに楽しい一日をすごさせていただきました。

■写真 初夏の里山です。いまはもっと冬枯れの風景。イヌフツグリの可憐な青い花が畦道に咲いていましたね。

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政府原発事故調査国際会議が厳しい指摘。「危険だという情報もすべて公開を」

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政府の原発事故対応の検証のための原発事故調査国際会議が25日に2日間の日程を終了しました。 

この会議は昨年12月に出された政府の中間報告書について海外の5人の専門家の意見を聞いたものです。

海外の専門家からは日本の原子力事故対応について、「透明性や独立性が必要だ」という厳しい指摘が相次ぎました。 

米国NRC(原子力規制委員会)の元委員長であったリチャード・A・メザーブ元委員長
日本政府や事業者は国民の信頼を失っている。意思決定の根拠を明らかにし、透明性を確保する必要がある。」
 

スウェーデン保健福祉庁のラーシュ・エリック・ホルム長官
危険だという情報もすべて提供しなくてはならない。」
 

「(津波対策が不十分だった点は)起きそうもないことも怒りうるると考える安全文化を醸成し、原子力を扱う必要がある。」 

韓国科学技術院チャン・スンファン教授
「(政府の冷温停止状態宣言について)原子炉内の現状が評価できていないなか、どうして安全だといえるのか。」

特に政府の放射性物質の拡散を予測するSPEEDIの隠蔽工作が、強く批判されました。 

この放射性物質拡散予想の隠蔽は政府が意図的に行ったことです。 

このことにより政府が当時定めた20キロ同心円的避難区域の設定がまったく無意味であり、現実には放射性物質の飛散は北西方向の飯館村、相馬市方向に向かっていたことを握りつぶしました。 

たとえば赤木地区は20キロ範囲からそれていたためにひなんしませんでしたが、NHK取材班が独自計測で高線量に気がつき、とどまっていた住民に退避を勧めたたようなことも起きました。
(ソース NHK ETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図」)
 

原子力保安院は、ベントによる放射性物質の拡散をこのSPEEDIで事前予測していたにもかかわらず、それの公開を伏せました。 

政府は、3月11日以降出した避難命令をこの放射性物質拡散予想と、リアルタイムで知り得ていたはずのモニタリングポストからの数値に基づいて区域を設定すべきなのにもかかわらず、それをしませんでした。 

この同心円退避命令は、菅前首相が、福島第1原発からの「陣頭指揮」からの帰りのヘリの中でノートにクルリと輪を書いてできた素人の思いつきから始まっていることもわかっています。

同時刻、米国INRC(原子力規制委員会)は、独自にグアムからグローバルホーク無人偵察機を派遣し、福島第1原発上空の放射能サンプリング分析を開始していました。

そしてそれにより、直ちに80キロ圏内のすべての米国人の退避と、東京の米軍家族、大使館員家族などを横田から脱出させています。

それを聞いた日本政府は、それではメンツ丸潰れなので止めてくれと泣きついたそうです。恥の上塗りです。

このNRC情報を日本政府は知りながら、あいかわらずSPEEDIすら隠蔽し続け、一切の警告を国民に与えることなく、同心円避難にこだわり続けたのです。

菅政権が、国民の生命をどう考えていたのかよくわかります。

このことによる被曝した地域は、福島県中通り地域、茨城県、群馬県、栃木県、千葉県、東京都の一部という広域に及びました。

放射性雲の通過する下にいた国民だけで約1万人とも言われています。

今後、この国際会議を経て事故報告書の作成が最終段階に入るわけですが、事故対応関わったすべての政府関係者の当時とった行動、言辞、命令などか詳細に明らかになることを望みます。

しかしこれも、政府は対策本部の会議のほぼすべての議事録を「急場のことで作っていなかった」(!)そうなので、望み薄かもしれませんが。

もし中間報告書のような国民をバカにしたものが再度出てくるのならば、これにより被害を受けたすべての国民は、行政訴訟、民事訴訟などの法廷の場に政府を引きずり出さねばならなくなるでしょう。

 

 

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■ 原発事故、海外専門家から厳しい指摘  

 東京都内で24日から2日間にかけて行われていた、政府の東京電力福島第一原発事故・調査委員会の国際会議。昨年暮れに508ページにわたって報告された中間報告書の内容を受けて、アメリカやフランスなど5か国の専門家らの意見を聴取しました。 

 会議では、大量の放射性物質の放出や炉心溶融について、原因究明や国際社会への情報開示が不十分ではという声が相次ぎます。 

 「どの段階で炉心溶融に気づいたかが重要。情報公開や国際社会への連絡は、より適切に行われるべきだった」(韓国科学技術院教授 チャン・スンフン氏) 

 「日本の政府や事業者に対する社会の信頼が、明らかに欠如している。政府は透明性の確保に努力すべきであり、どのように意思決定が行われるのか明らかにすべきだ」(IAEA安全諮問グループ議長 リチャード・メザーブ氏) 

 会議を通じて繰り返し指摘されたのは、チェルノブイリや東海村の事故、インド洋の津波など、これまで何度も原発の安全性を見直すチャンスがあったのにその努力を怠ってきた日本政府と、日本人の「甘さ」に対する批判です。 

 「日本では人的被害を受けるような事故が、5年ごとに起きてきた。福島以前のことも考えて検証しないと前に進めない」(フランス原子力安全庁長官 アンドレ・ラコステ氏)
 この夏までに最終報告を取りまとめる政府事故調査委員会は、国際社会から大きな疑問符を突きつけられた格好で、重い課題を背負った形となっています。(25日19:33)

 

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「放射能は怖い」で止まらないで!

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首都圏のママさん。コメントありがとうございます。 

私はあなたといわゆる「論争」する気はありません。なぜなら、「放射能と闘う」、「原発はごめんだ」という立場は、あなたと私はまったく同じはずだからです。 

その意味で私は、あなたに外国で暮らせとは言いにくい。一緒の原発事故で苦しむ仲間だと思っています。 

しかし残念なことに脱原発運動は、被曝地の農民をおいてきぼりにしたままどんどんと都市生活者だけの低線量被曝反対論にだけ傾いていっています。 

たとえば、今の被災地からの瓦礫の搬入反対運動や、東日本の食品に対する過度な警戒感です。 

私はそのようなことが、脱原発運動の中に分断と対立を持ち込むと思っています。どうしてもっと被災地・被曝地の人々の苦しい境涯に心を寄せないのでしょうか。 

というところで、私の立場を知って頂いた上で意見を言います。 

➊誤読をされているようですが、私は「食物からの内部被曝の問題を空間線量で論じる」ことを意図していません。

もしそう読めたのなら、間違いです。おそらくおっしゃりたいのは、外部被曝は一時のもの、内部被曝は長期に体内に残留して後障害を引き起こす可能性がある、ということだと思うのですが、それではフォールアウトした土壌、あるいは内部被曝との相関関係がわからなくなります。

私が大阪の空間線量の値を出したのは、空間線量と同時に、問題ない範囲であっても土壌線量もそれなりに高いからです。 ただしその放射性物質はカリウム40や炭素14などですが。 大阪にだけ宇宙からの放射線が高いはずがありませんものね。

また空間線量が高い地域は土壌線量も高い値が出るのは今回の原発事故で証明されています。放射性雲の通過地域の土壌線量はおしなべて高く出ています

これは早川マップと、文科省のセシウム分布図を重ねるとはっきりわかります

外部からの放射性物質が、呼吸器内に侵入して内部被曝になることは知られており、それを考えると外部被曝と内部被曝は一定の相関関係にあります。 

❷さてそこで、その非被曝地域の自然放射線量を引き上げているのがカリウム40などの自然放射性物質です。

「放射性カリウムは蓄積されない」、とおっしゃいますが、それは生物学的半減期を指して言われているのだと思います。 確かにカリウム40には生物学的半減期があります。

ひるがえって放射性セシウムにはないということはありえません。 事実あります。

放射性セシウムもまた生物学的半減期をもっています。よく知られている放射性セシウムの生物学的半減期は以下です。

・乳児で9日間
・9歳児で38日間
・30歳で70日間
・50歳で90日間
 

このように、放射性セシウムも放射性カリウムも生物学的半減期、すなわち体外へ排出するメカニズムを人体は持っています。 

しかし超微量残留して蓄積されることはなしとはいえません。現実に放射性カリウムはすべて排出されたわけではなく、相当量が残留していることが知られています。

人体にはカリウム40が100~200gほどありますが、このうち放射性カリウムの比率は0..012%ですので、これも年間にすると0.3ミリシーベルトの被曝量にカウントされます。 

❸そこで、放射性カリウムの内部被曝は安全である、という科学的根拠です。 

私は科学的知見は実は経験則が積み重なったものだと思っています。なにかひらめき的な知見があって説明されるのではなく、臨床例、あるいは疫学的知見があって、ああそうだったのかという定見になったのです。 

疫学というのは、ひとつの個体から得られた知見ではなく、それを証明するために一定のボリュームのある母集団(通常は万単位)を調査することにより導き出された定説のことです。 

たとえば、ECRR(ヨーロッパ放射線リスク委員会)のクリストファー・バズビー氏は著書の中で、チェルノブイリの後にスウエーデンで万単位の小児ガンや後障害が発生したと書いています。 

残念でずが、国連科学委員会(UNSCEAR)はそのようなバズビー氏の学説を認めていません。なぜなら、バズビー氏が疫学データの裏付けをちゃんとしていないからです。 

こういう論述を、疫学では「記述疫学」と言っています。つまりバズビー氏の個人的「ご意見」です。氏は自らの学説の正さを、疫学的に証明しなければなりません。それが学説を出した学者のなすべき仕事です。 

➍さて、話を戻します。放射性カリウムが「安全」であると思われているのは、今までそれによる後障害の臨床例がなかったからです。 

こう考えてくると、放射性セシウムとどこが違うのでしょうか?

人工放射能と自然放射能の差ですか?

人工と自然の危険性の違いは放射性物質においてはないと断言します。 それは核爆弾の原料になるウラン235、238が自然放射性物質であることでもわかります。 

だから、私はしつこく書いてきたのです。疫学例を積み重ねなければ真実は分からない、と。 

そんな悠長な暇はないと言う人もいます。しかし、遅まきながらも福島では1万人単位の疫学調査はされてきています。 

今、1万人の福島の避難区域の幼児、妊婦のホールボディカウンターでの測定結果がでてきています。まずはここに注目すべきではないでしょうか

11年12月30日までのデータをご覧ください。http://www.pref.fukushima.jp/imu/wbc/20120125WBC_joukyou.pdf 

12月末までの時点で、福島県避難地域15市町村の11,816人がホールボディカウンターで測定を受けています。この結果は以下です。
福島県預託実効線量測定結果(2010年6月27日~12月31日)   

・1mSv以下   ・・・11.792人 (99.8%)
・1mSv以下        ・・・ 12人
・2mSv以下        ・・・ 10人
・3mSv             ・・・・・2人(0.00025%)
 

合計                  11,816人  

この疫学データによれば、99.8%の人は問題ありません。私はこれ以外に福島の避難民の疫学データを知りません。議論をするならまず、この疫学データを下敷きにして論じるべきではなりませんか。 

しかし、なおも福島の避難地域の人たち全員の測定は始まったばかりです。それを急ぐべきです。

こう書くと低線量長期内部被曝を恐れる人たちはこう言うでしょう。

「放射性セシウムが食品を通して内臓諸器官の筋肉組織に蓄積し、さまざまな障害を引き起こす可能性がある」、と。 

それにも一理あります。可能性は否定できません。ただ、こういう言説を語る人たちがなぜか断定的な口調なのが気になります。私は思います。それがいつ証明されたんだろう、と。

だから、私は昨日こう書きました。 

「今は脅威の可能性は否定できません。だから、できるだけ摂らないようにしよう、疫学データを蓄積していこうとしているのが、今の段階です。ゼロにしろというのは現実を無視した空論です。」

➎「放射線量が高くても、農作物に入らなければ安全」、とのことです。まさにおっしゃるとおりです。問題は、誰が、どこで、どうやったらそうなるのか、です。 

つまり放射能を安全にする「主語」は誰なのでしょう。いうまでもなく、それは私たち農民です。もっと絞り込めば、私たち被曝地の農民です 

私はそれこそが被曝地という宿命を与えられた農業者の社会的使命だと思っています。農産物にセシウムを侵入させない、そのために土を浄化する、これが私たちの「仕事」であると思い定めています。  

ならば、このような私たちの農業を何の支援もなく放置し、あまつさえその影響をもっとも受ける被曝地農家の意見を聞くこともなく、農業などなにも知らない厚労省がたった3回で決めて押しつける、こんな新基準値とは一体なんなのでしょうか。 

消費者にとっては暫定規制値の500倍はたまらなかったでしょう。同じように農業者にとってもたまらないのです。しっかりと消費者と農家が対立しないようにテーブルを設けて話合う場を行政が作ってもよかったのではないでしょうか

おっしゃるような低線量内部被曝を恐れる気持ちは分かります。では、どうしたらこの大地に降り注いだ放射性物質は減るでしょうか。

それは「耕す」ことです。まっとうな農業をすることです。それが土壌放射線量を減らし、食品の線量を下げていくことなのです。

今の食品規制値の決め方は、そのような被曝地農業を切り捨てるものだから許せないのです。

首都圏のママさん。私はできるだけ丁寧にお話したつもりです。私が言いたかったことは、まだなにもわかっていない今の段階で、農業と都市消費者が対立するような決めつけをするのはお互いにやめよう、ということです。

「食品はゼロベクレルしかない」と言われれば、それから先に進めません。そのようなことはとうてい不可能だからです。

子供を守りたいという気持ちは尊いものです。どの時代、どの国でもそれは社会の中で最も大切な規範です。

だからこそ、「放射能は怖い」で止まらずに、どうしたら放射能を少なくできるのか、そして放射能を子供たちが大人になる時代にまでにはなくせる社会にするにはどうしたらいいのかを一緒に考えていきませんか。

願わくば、私の気持ちがつたわりますように。

 

 

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「ゼロ・ベクレル食品」などこの世にはありません

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ゼロ・ベクレル食品などこの世に存在しません。 

いかなる国の、いかなる時代にもそのような「ゼロ・ベクレル食品」などはありませんでした。日本人は都合よくこのことを忘れています。 

大阪と東日本の空間線量を調べてみます。(11年9月現在) 

・大阪府・・・・・・・・・・・・・・・・・0.076マイクロシーベルト /時
・宮城県・・・・・・・・・・・・・・・・・0.061
・岩手県・・・・・・・・・・・・・・・・・0.023

・茨城県・・・・・・・・・・・・・・・・・0.083
東京都・・・・・・・・・・・・・・・・・0.056
・神奈川県・・・・・・・・・・・・・・・0.049
 

この数値を見て不思議に感じませんか?大阪府はなぜ宮城県より高いのでしょうか?素朴にこれを不思議だと感じなかったら、放射能問題を語る資格はありません。 

答から言えば、関西は自然放射線量が高い地域が多いからです。自然放射線量が高いために空間放射線量も高いのです。下図を見てください。

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この赤い地帯が0.127μSv/h以上最も高い地域で、大阪は世界的にみても高い地域に属します。セシウムという、今やわが国にとって放射能の代名詞のようになってしまった元素は、実は、原発事故由来だけではなく、なんと天然のボルックス石からも取れます。 

一方、東日本はおおむね濃い青である0.00561~0.0178マイクロシーベルト/時と世界でも最小の放射線量地域です。 

自然放射線量において大阪は、東日本(ホットスポットはありますが)の実に7.5倍の放射線量が常に存在する地域だといえるわけです。 

自然放射線というのは宇宙と地殻からきます。地殻からの放射線は土中の放射性物質を作り出します。

たとえばその中には、放射性セシウムさえあります。セシウム134の隣に元素番号133のセシウム133(133CS)があります。 

安定同位体ですが、核分裂でも作られます。厳重に管理が必要とされる物質です。これは医療や工業用計測器などで幅広く使われています。 

よくある研究室でのセシウム除去実験は、セシウム134、136を使用できないので、Ce133を使って実験しています。  

これは自然同位体ですが、さて、これは「安全」なのでしょうか?まさか自然だからナチュラルで安心などとは思わないでしょう。 

そのとおりです。自然だから「安全」だというなら、ウラン235、238も「安全」ということになってしまいますから。 

他にもこのような天然界の放射性物質というのは多数あります。カリウム40とか炭素14などです。  

カリウム40は人体を60㎏として4000ベクレル、炭素14で2500ベクレル入っていると言われています。 

カリウム40は、土壌中にかなりあるために、それを吸収した作物の中にも存在し、わずかずつ人体はそれを吸収しています。

福島県の農家・東山広幸氏が計測した作物中のカリウム40とセシウム137の数値です。(出典「現代農業」11年8月) 

品目         カリウム40(bq/㎏)    セシウム137(bq/㎏) 

・ホウレンソウ   210               0.54
・キャベツ      190               0.92
・ニンジン      85                3.7
・トマト        64                0.70
・ネギ        55                2.3
 

上図を見てわかるのは、カリウム40の線量がセシウム137とはケタが違って大量にあることです。 

なぜ、公表されないのかといえば、あえて計らないからです。また、政府の放射能年間被曝基準値は、医療関係と自然放射線は別扱いになっているからです。 

年間1ミリシーベルトという食品基準値はあくまでも、原発事故由来に限定されていて、自然放射線量+医療関係を合わせるとその2.4倍になります。 

さて、カリウムで自然に産出されるのはカリウム39、40、41です。これらのうち40だけが放射性同位体です。要するに放射性物質です。 

人間の神経伝達系に摂取されます。放射性カリウムは植物にとっても人体にとっても必須の成分であるために大量に吸収します。

しかし、カリウム40を低線量内部被曝脅威論野論理でいえば、長期の内部被曝により神経伝達系の各部位に蓄積されて、後障害を起こす可能性があります。

セシウム134、137が筋肉各部位に蓄積されて後障害をおこす可能性があるのなら、カリウム40の可能性も否定するべきではないのではないですか。

しかし、カリウム40の脅威を説く論者はいません。なぜなら、疫学的に無害であるということが立証されているからです。

実はセシウムもこれと同じ論理です。今は脅威の可能性は否定できません。だから、できるだけ摂らないようにしよう、疫学データを蓄積していこうとしているのが、今の段階です。ゼロにしろというのは現実を無視した空論です

私たちは通常の市民生活をしている限り、宇宙からの放射線や地下の鉱物からの放射線、食品に含まれている自然放射線などさまざまな放射線の中に暮らしているのであって、それらから隔離されて生きるわけにはいかないのです。

本気でゼロリスクを追求する人は、地下室で石油から作ったサプリメントだけで暮らし、レントゲンは一切拒否し、海外旅行には船で行くしかなくなります。  

国連科学委員会(UNSCEAR)2000年報告による知見では、以下の自然放射線被曝を受けています。  

・体内に存在している自然放射性核種(カリウム40、炭素14)から受ける年間内部被爆量・・・約290マイクロシーベルト  

・空気中に含まれているラドンから受ける年間被爆量・・・約1260マイクロシーベルト  

・合計・・・・自然界から受ける年間被爆量・・・2400マイクロシーベルト(2.4ミリシーベルト)  

・一日換算(8640h)・・・0.277マイクロシーベルト 

さきほど述べたように、この自然放射線量の年間被曝だけで、既に2.4ミリシーベルトであり、政府が安全だと定めた年間被爆量1ミリシーベルトを超えてしまっています。 

長くなりましたが、「ゼロ・ベクレル食品」などはありえません。現実には人体は毎日さまざまな放射線を浴びたり、摂取したりして暮らしているのをお忘れないように。

念のために申し添えますが、こう書いたからと言って、いわゆる低線量内部被曝が安全だなどというつもりはまったくありません。

私が言いたいのは、現実に人間が社会的な活動を行うためには、セシウムだけを対象にして生きているわけではない、という常識的なことです。

低線量内部被曝に脅威を感じるのは、「被曝地」の人間として実感で理解できます。私と家族は3月12日、3月15日、3月21日の3回の放射性雲の通過時に野外にいましたから。

そしてその後にトラクターで土壌中の放射性物質を無防備で吸い込んでいます。政府はなにひとつ警告のひとつも出しませんでした。政府の無作為にはらわたが煮えくり返ります。

村の人間は幼い子供まで皆「被曝」したはずです。だから、あえて言うのです。

農地で、通学路で、庭で「被曝」しているのはこの私たちだ、と。

だから、私たちは最前線で放射能と毎日闘っているのだ、と。

恐怖するなとは言いません。しかし都市の消費者が、微量の放射線量に恐怖するのならば、その恐怖の数十倍で闘っている人たちが大勢いることを忘れないでほしいのです。 

被曝地の人間は復興の中で、この放射能問題を考えざるをえないのだ、ということにもう少し都市消費者は敏感であってもいいのではないでしょうか

■写真 昨日の写真の朝です。

■お断り アップした後に煩雑だと思いましたので、途中の自然放射線の説明を大幅にカットしました。

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原発事故で苦しむ福島の人々を更に苦しめる新食品規制値

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2006年に、チェルノブイリ原発事故の当事国になったロシア、ウクライナ、ベラルーシ3カ国と、国際原子力機構(IAEA)や世界保健機関(WHO)など多くの国際機関が協同で「チェルノブイリ・フォーラム報告書」を作りました。http://www.iaea.org/Publications/Booklets/Chernobyl/chernobyl.pdf 

この報告書で身につまされるのは、単なる事故原因の究明や残留放射線量の記述だけではなく、いやむしろ重みとしては原発事故「その後」を詳細に追っていることです。 

原発事故が広範な地域住民の心になにを残したのか、生活がどう変わってしまったのか、ガンや奇形などの後障害があったのかについて詳細に報告されています。 

チェルノブイリ原発事故により多くの人々が、住み慣れた土地を離れて強制移住していきました。あるいは、政府による命令ではなく、自主的に数万の人が放射能禍を恐れて国外に移住していきました。 

その結果、多くの街や村が消滅して、バラバラになっていきました。生活の伝統から切り離され、職はなく、政府の補償金だけで食いつなぐという生活を強いられた人々が大量に出ました。 

人間を殺すに刃物はいりません。今まで生きてきた記憶のつまった土地から切り離し、隣人から隔離し、仕事を与えねばいいのです。 

人が施しだけで生きるような環境を作ることです。 

そうすれば人は人としての最も重要ななにかを急速に失っていきます。失われていくもの、それは人としての根っこの部分です。自分を信じる力とでもいったらいいのでしょうか。 

いったん人としての尊厳を奪ってしまえば、人は国に頼ってしか生きられなくなります。そして頼っても頼ってもその空白は埋められることなく絶えず人を蝕み、やがてアルコール依存症など強ストレスを引き起こすことになります。 

そして母体に放射能が残留しているのではないか、子供に遺伝してしまうのではないか、育っていく子供がガンになりはしないか、という恐怖は長い時間、女性たちを苦しめ続けました。 

確かにチェルノブイリでは後障害は起きました。 

このことを最新の国連科学者委員会(UNSCER)はこう報告しています。
UNSCEAR's assessments of the radiation effects

http://www.unscear.org/unscear/en/chernobyl.html 

事故の後のわずかな1カ月目での甲状腺への被曝(の原因)は放射性ヨウ素で、ウクライナ、ベラルーシ、ロシアでは、牛乳を飲んだ子供と若者に特に多く発症した。」  

「2005年までには、6,000件以上の甲状腺ガン事件がこのグループで診断されていた。そして、これらの甲状腺ガンの大部分が放射ヨウ素摂取に起因している。」 

この放射性ヨウ素の大量被曝による牛乳が原因で、15名(数十人という異説あり)が亡くなられました。患者数では6000人におよぶと言われています。 

注意していただきたいのは、これがことごとく放射性ヨウ素131の初期大量被曝によるものだということです。 

女性の卵巣に影響を与える放射線量は、650ミリシーベルだと言われています。チェルノブイリの避難民は、放射性ヨウ素が半減期を迎える前の7日間で750ミリシーベルトを被曝してしまっています。 

と同時に、国連科学委員会がこう指摘していることを忘れてはなりません。 

しかしながら、事故による広範囲の心理的反応があり、それは実際の放射線量ではなく、放射能への恐怖のためである。」 

その結果、チェルノブイリでは、1250人がストレスで自殺し、10万人以上が妊娠中絶しました 

この自殺者数は、直接の被曝によると特定できる死亡者数の数千倍です。中絶された胎児まで入れれば、実に数十万倍もの死者を出しています。 

私たち日本人は、チェルノブイリの教訓をしっかりと心に刻むべきです。 

それは第1に、放射線リスクが軽減されても、人が暮らしの中で放射能への脅威を感じ続ければ、それによる精神的ストレスは、直接の放射線被曝リスクより大きなものになりうるのだ、ということです。 

そして第2に、事故後のできる限り早い時期に避難を解除し、帰還が可能な地域には住民に帰ってもらうべきです。 

とうぜん、それに対応した被曝測定や土壌放射線量の測定、除染はいうまでもないことです。そのために地域各地に簡易ホールボディカウンターや食品放射線計測器を設置し、定期的に放射線測定をせねばなりません。 

この支援に国と東電は万全の責任を負うべきです。特に東電は最後の血の一滴まで絞り尽くしなさい。 

合わせて地域の地場産業の復興もせねばなりません。これなくしては、せっかく帰った地域もまた失業者の置き場になってしまいます。

このような流れの中で、食品の規制値の改訂を考えるべきでした。500bqを100bqにするならば、その次は10bqとなり、やがてゼロベクレルとならざるをえません。

ゼロリスク志向の消費者は、いかに小さな数字であっても検出されれば怯えるでしょう。その結果始まっているのが「福島切り捨て」です。続いてわが茨城も追随しています。

数値基準というのはそのような冷厳な体質をもっているのです。

この新基準値を決めた「薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会放射性物質対策部会」(長い!)はたった3回の審議でこの基準値を決めてしまいました。その間に、福島の避難民、行政、農業者、漁業者の意見を一切聴取していません。

なんという傲慢無礼な人々でしょうか。この人たちの頭には福島の復興や、避難民の帰還、農業、漁業の復興などはかすめもしなかったのです。

ベラルーシは緊急食品規制値(日本の暫定規制値にあたる)を、実に14年かけて讒言されていき、現在の国際的に最も厳しい規制値に落ち着かせています。

14年です。日本はまだ1年もたっていないのに、このベラルーシとほぼ同等のものを施行しようとしているのです。

これは国の自己弁護のための予防線です。これだけ厳しい基準値を設けたのだから、国民の健康を考えてやるべきことはやっている。なにかあったらそれは農家や漁民のせいだ、と

数値の妥当性はおいて、その心根の卑しさに耐えられません。食品の放射能規制値は、復興と並行して歩調を揃えて行われるべきです

原発事故で最も苦しんでいる福島の人々を、更に苦しめることになる規制値であってはなりません。

 

■写真 雪の夕暮れのわが家。

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小学校6年生の「抗議文」

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原発事故当時小学6年生だった福島県の女の子の書いた東電への「抗議文」
涙なくしては読めない。

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「裸のフクシマ」たくきよしみつ

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ひとのあかし

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「食べる」という行為は、人間の本源的な行為です。そこには、作る人とそれを受け取って食べる人が存在します。 

私はこの結びつきを長年「提携」といったり、「産直」という言葉で現してきました。こちらの思いを込めて食べ物を作る、そして届ける。食べ物の背後に畑や家畜、そして私たちの顔を思ってもらう、これが私たちの理念でした。 

この結びつきは、3.11以降急激に弱まり、今や崩壊の危機に瀕しています。 

というのは、この「結びつき」(絆といってもいいですが)は、「安全・安心」を中心にして作られていたからです。 

微量の化学物質も使用しない清らかな大地に種を播き、化学汚染のない生産物を作る、まさにこれがよりどころだったわけです。 

このような中で、私たちはアトピーがよくなった、化学物質過敏症が和らいできたなどの嬉しいお母さんたちの声を聞いてきました。 

これが私たちのなによりもの励ましであり、誇りでした。 

これが一挙に崩れ去ったのが3.11でした。福島第1原発事故による3波の放射性雲は私たち東日本の農地を広範に汚染しました。 

ある意味、化学物質などは手ぬるく見えるようなやっかいで危険な物質が降り注いだのです。しかも長期に残留する。 

私たちがよりどころにしてきた「安全・安心」はもろくも崩れ去りました。それは「安全・安心」を求めて食べてくれた消費者の層と、放射能を恐怖する層はまったく同一だったからです。 

安ければどんな食品でもいいという階層は比較的早く復活しましたが、この「安全・安心」を求めた消費者たちは、いかに線量が低いと言われても二度とこちらを振り向こうとはしませんでした

私たち有機農産物や環境保全型農産物を作る農家はこれにより巨大な打撃を受けました。支持してくれる消費者層がほぼ消滅してしまったからです。 

苦闘の日々を送りながら、私たち産直を中心にしていた農業者は根本的に考え方を変えるしかないと悟りました。 

3.11以降の私にとって、「安全・安心」だけが価値なのかという素朴な問い直しが心から離れた日は一たりともありませんでした。化学物質を使わない、それだけが価値なのか、と思いました。 

そして昨年夏頃、放射能と闘う私たちのもとに、「放射能には天敵がある」という驚きの科学的発見が届けられました。 

東日本の土壌中に広く存在する関東ローム層の粘土質土壌はマイナス電荷でセシウムを強力に吸着します。 

堆肥中の植物質成分である腐植物質もまた電気的吸着をします。土壌生物も土を摂取して体内にセシウムを取り込みます。 

そして福島県の土壌に大量に存在するゼオライトはセシウムの物理的な封じ込めをする地上最強の物質でした。 

これらは実は放射性物質の「天敵」だったのです。 

この発見に私は目を見開かされました。私たちが農業をし続けていくことこそが「除染」なのだ、という認識を強くもったからです。

私たちは長年「土を作る」ということが、なによりもの作物作りだと考えて実践してきました。その「土を作る」という原点こそが、放射能に対し闘う有力な武器でもあったのです。

私の心の中に温かい思いが溢れてきました。ああ、自分たちがやってきたことが否定されたのではなく、正しかったのだという思いでした。

私たち農業は土を作るという行為を通じて、風景を作り、自然環境をよりよく保全してきました。

それはこの放射能との闘いにおいてもまったく同じ文脈だったのです。

「安全・安心」という一点でこれを理解していたならば、その理解は農業のうわっ面をなぜたにすぎません。

農業がなしている本質的な行為は、食料を供給することにを通じて、よりよい環境を創造していくことなのです。

一時的に多くの消費者は有機農業から去っていきました。それは、私たちがあまりに消費者目線によった「安全・安心」だけを強調してきた罰なのです。

もう一回農業の原点に立ち返る必要があります。それは誰がなんと言おうとも、オレたち農家がこの地上を耕し続けている限り地球は大丈夫だ、という自信です。

この自信をもう一回取り返そうと思います。もう見る影もなくズタズタになってしまいましたが、この自信がなくなったら私たちはもう農業者ではなくなります。

今日も土を耕す中で、いつの日かわかりませんが、また去っていった消費者に再会することもあるでしょう。その日を夢見ます。

農業とはひとのあかしなのですから。ひとが耕すことがその「あかし」なのですから。

「ひとのあかし」というすばらしい言葉は、この詩人に教えられました

福島在住の詩人  若松丈太郎 英訳アーサー・ビナード

       ひとのあかし

 ひとは作物を栽培することを覚えた
We humans, long ago, learned to grow crops,
ひとは生きものを飼育することを覚えた
 learned to raise animals too.
作物の栽培も
生きものの飼育も
 THe crops we grow, the animals we raise:
ひとがひとであることのあかしだ
 all living proof we're human.
あるとき以降
 Along the way, though, things changed.
耕作地があるのに耕作できない
 A field waiting to be planted,
but from now on, no crops must be grown.
家畜がいるのに飼育できない
 A barn full of animals,
but raising them just adds to the damage.
魚がいるのに漁ができない
ということになったら
 Fish are there in the sea,
but the fisherman's catch
 is no longer fit to eat...
ひとはひとであるとは言えない
のではないか
 which is where we stand.
What makes us human?

■写真 雪の下の梅のつぼみ。なんか身につまされます。

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大手青果流通の放射能独自基準に思う

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果流通において放射能の独自基準が登場してきています。これは、この4月から国が食品規制値を大幅に下げる先を行く流れです。 

政府新基準値は以下です。
・飲料水・・・・10bq
・牛乳・・・・・・・・50
・乳児用・・・・・・50
・一般食品・・・100
 

これに対して、ある大手青果流通はこのような独自基準値を設けました。
・飲料水・・・・・・・・・・6bq
・牛乳・乳製品・・・・・10
・乳児用・・・・・・・・・・・5
・米・パン・・・・・・・・・10
・青果・穀類・・・・・・・20
・肉類・・・・・・・・・・・・20
・卵・・・・・・・・・・・・・・6
・魚介類・・・・・・・・・・50
・海藻類・きのこ類・・100
・その他・・・・・・・・・・50
 

ご覧のように、政府が野菜、米などを統合して「一般食品」として統合したのに対して、従来の政府規制値よりいっそう細かいジャンルわけがなされています。 

ここまで細かいジャンルわけをすして、それに対応する規制値を設定するとなると、消費者に衆知させることが大変になることは予容易に想されます。 

また、これにかかる測定も煩雑になり、複数の農産物を出す産地では混乱が生じることもありえるかも知れません。 

次にその独自基準のレベルの先鋭さです。 

特に量的に中心を占める野菜が政府規制値の5分の1の20bq、米が10分の1の10bqという数値設定は、正直に言って驚きました。 

これはケタ落とし以上の内容で、ひたすらスゴイもの作ったねぇ、と嘆息してしまいました。 

お分かりのように、この野菜20bq、米10bq、肉20bqという独自基準値は、測定機器の測定最下限に等しい数値です。旧式の測定機器では20~30bqが下限ですから、最新鋭のゲルマニウム測定器で対応するしかないというレベルになります。 

この独自基準値は、事実上の「ゼロリスク宣言」であると解せざるを得ません。 

現行で産地がクリアしているという自信があっての設定でしょうが、茨城、福島、千葉、群馬、栃木などのでは、たとえば米20bqなとは検出される可能性が高い数値です。 

また野菜類も現行ではクリアしているものの、今後でないという確証はありません。肉に至っては野外放牧していた牛があるわけですから厳戒を要します。 

チェルノブイリにおけるドイツ南部の被曝地帯では5年間もの長きに渡って低レベルではあっても放射性物質が食品から検出され続けました。 

ということは、わが日本においても今後短くとも5年間は地雷源の上を歩くことになります。 

一方、残念ながら現状では茨城、千葉の産地では測定が大きく遅れており、現状把握すらできていないのが実態です。 

これは測定機器の圧倒的不足によります。産地レベルではシンチエーションベロメータが高価なために所有している産地は限られています。 

いきおい、計測会社に依頼するわけですが、一検体が30bq以下だと3万円と高額になります。 

私が繰り返し書いてきているように、よくやられているような一枚の畑での一カ所だけの測定は言い方は悪いですが、気休めかアリバイ作りのようなものです。 

一枚の畑にもホットスポットは隠されており、たまたまそれに当たらなかっただけかもしれません。一枚の畑で最低5検体をとる、というのが私の持論です。

しかし、農業現場に対する測定支援、除染支援はほとんど無に等しいのが現状です。この現状を改善することなく、基準値だけ先鋭化していくのならば、必ずどこかで問題が生じる恐れがあります

基準値はしょせんペーパーの世界。農業は現場仕事なのですから、まず農業現場の測定-除染に対する支援をして、その流れを見ながら独自基準値を設定しても遅くはなかったのではないかと思います。

と言っても、作られた以上、数値基準はひとり歩きします。おそらく競合する同業他社はこの独自基準以下のものは作れなくなってしまったでしょう。

青果市場卸を除く、食品流通業界はこの独自基準値に合わせた基準値に統合されていき、政府基準との二重規範状態になります。

私はベラルーシの食品基準値が14年かけて現行の厳しい内容になったことから見て、食品の放射能からの安全には時間が必要であり、その時間とはなにより農業現場の測定-除染作業に要する時間だと思っています。

この独自基準値は「時間」という担保なき付加価値生産ではないでしょうか

今回のこの独自基準は消費者の放射能に対する内部被曝の恐怖を和らげる付加価値にはなったでしょうが、農業にとってはいかなる意味をもつのかやや暗澹たる気分です。

■写真 カンボジアのハスの花です。日本のとは違ってド派手。

 

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ジャポニカ米をめぐる国際的要因について

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昨日に続けて穀類の国際市場を考えてみます。 

現在原油はイラン情勢の緊迫化を受けて9か月ぶりの高値を更新しています。 

「指標である米国産標準油種(WTI)3月渡しの終値は、前日終値比0.93ドル高の1バレル=103.24ドルと、昨年5月10日以来、約9カ月ぶりの高値をつけた。」
(毎日新聞2月16日)
 

よく国際穀物相場で言われる変動要因は、たとえばロシアやウクライナといった穀物輸出国の輸出制限であったり、あるいは、オーストラリアの干ばつといったことですが、今ひとつ重要なファクターに原油相場があります。 

下の表をご覧ください。

002_3              表は九州大学大学院農学研究院伊東正一教授によりました。

赤線の原油相場と黄色線のコーンの相場に着目してください。完全にパラレルになっていますね。これが穀物相場の基調をなす原油-コーン相場曲線です。 

2008年7月までの原油価格の上昇は、アメリカの投資ハゲタカ集団が餌をあさりに原油に食いつき、価格をつり上げてしまったためといわれています。 

そして原油価格が上昇すると、ガソリンの価格が上昇し、そしてガソリン代替物が上昇します。それがバイオ・エタノールです。 

ハゲタカ共は、それを見越してバイオ・エタノールの源材料となるコーンまでホットマネーを注ぎ込んでおり、コーンまで上昇してしまうわけです。 

この連動はコーンで止まらず、他の穀物相場の大豆、小麦、コメなどにも波及して穀物相場が原油高騰と同時に上昇していきます。 

この連鎖はコーンを餌とする畜産価格にまで波及し、小麦、コメなどの主食関連まで影響を与え、特に輸入外貨をもたない貧困国に食料危機をもたらしています。 

ただし例外としては、2008年3月(グラフ左から3分の1の部分)の小麦ように原油価格が上昇しても、原油は貯蔵が効くのに対して、穀物は長期保存に適さないために市場放出が行われた結果、価格が原油価格とは反対に下がるというケースもあります。 

このように国際穀物相場は、原油、ヘッジファンド、新興工業国の買い、天候、穀物輸出国の輸出政策などの多くの要因で変化をしています。 

またジャポニカ種のコメ生産が現在されている地域は以下です。 

➊中国・・・・東北3省(黒龍江省、吉林省、遼寧省)や北京市・河北省の周辺。長江の河口周辺の省や雲南省など。生産量も精米換算で一千万トン超。生産余力あり。 

❷アメリカ・・・カリフォルニア、南部・アーカンソー州。800万トン超。生産余力あり。 

❸南米・・・ブラジル南部、ウルグアイ、アルゼンチン北部。生産余力不明。 

➍東南アジア諸国・・・タイ、ベトナムなど。生産余力あり。 

➎オセアニア諸国・・・オーストラリア・NZ。生産余力あり。

今まで日本のコメは700%の高関税の堤防で外界から遮断されてきたわけであり、国際穀物相場やジャポニカ米の競合国の輸出生産量とは無関係な真空状態の中にいました。

TPPの是否とは別に、TPP以降は今上げたすべてのファクターが日本農業にいっせいになだれ込むという事態は冷静に想定しておくべきでしょう。

 

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大手牛丼チェーンが豪州米導入開始。コメ輸出国ダークホースとしてのオセアニア諸国

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牛丼チェーンの大手松屋が、この4月から使用する米を国産から豪州産に変えると発表しました。 

松屋によれば、「食味には問題がない」とのことです。「身体がよろこぶ自然の味」(松屋プレスリリース)とはよく言ったものです。

100円台の牛丼がいよいよ真実味を帯びてきました。 

現在の時点では、最大手のゼンショー系列すき屋は追随していませんが、あそこのことですから、一挙に輸入米を使った195円牛丼をぶつけてくるかもしれません。 

この米はあの悪名高きMA(ミニマム・アクセス)米です。700%超という高関税を維持するためにという逆説的な理由でWTOにより年間80万トンも輸入されています。というか、押しつけられています。 

これを年間500億円の保管費用と、数千人の農政事務所の職員をかけて日々管理しています。 

農水省がもっとも国民に見せたくない負の縮図でしょう。このMA米大量保管作業がなくなると、農政事務所の仕事の半分はなくなってしまいますから。 

ちなみにあと半分は、減反監視です。TPPになれば、同時にすべての仕事がなくなるわけですので、農水省のTPP反対のリキが入るはずです。TPP以降になれば、農水省は今の2万人体制から、その半分以下で済むのではないでしょうか。 

それはさておき、MA米は各国の一等米という最上級の米です。そのわりに価格が安いので国内の米加工業者から重宝がられていました。 

昨年産の北海道産、青森産玄米が250円前後で昨年同期より2割値上げし、MA米の政府入札価格と200円前後の格差がつきました。 

私の感想は、来るものがとうとう来た、というところでしょうか。既にTPPは批准前から始まっているという実態が明らかになってきました 

TPP諸国で米を輸出している大国は、米国とベトナムです。ベトナムは年間700万トンというタイにつぐ世界第2位のコメ輸出国です。 

米国はベトナムの半分の350万トンで第3位。このタイ、ベトナム、米国の上位3カ国で、世界のコメ市場3千万トンの半分に達します。 

さて、これらの米輸出国は米に特化しているというわけでは必ずしもなく、米国に典型ですが、そのときの市場相場をにらみながら作物をシフトし続けています。

コメに競合的な作物としては、デントコーン(飼料用トウモロコシ)、大豆、サトウキビ、綿花などです。 

ですから、コメの国際市場相場が上がれば、従来デントコーンを作ってたのがコメに切り替わるというわけです。 

今回MA米として輸入された豪州米は、2000年に18hを作っていたのですが、干ばつが深刻になった2007年からコメをを止めて縮小傾向にありましたが、近年になって2010年は10万hにまで回復してきています。 

一方米国はといえば、2010年だけで市場2位の作付け面積の146万hに達し、玄米換算で800万トンを超え、わが国のコメ生産高とほぼ一緒です 

しかも、米国のコメ生産は、さまざまな穀物との混在した地域で作られているために、コメの国際市場が上昇に転じれば、すぐにでもコメにシフトすることが可能だと言われています。 

この米国における特殊事情とでもいえるのは、デントコーンとの関係です。下図をご覧いただくと、コーンの生産(緑線)に波があるのがわかります。 

これはコーンが生産過剰となると政府が減反政策をするために急激な落ち込みを見せます。特に1983年の減反時には激減しています。

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                      表は九州大学大学院農学研究院 教授 伊東正一市氏よりました。

このようにコーンが生産過剰で減反がかかると、コメにシフトしていく農家が増えるという仕組みになっているようです。 

現在はコーンは有力なバイオエネルギー源で増産が活発ですが、この上昇が停滞に転じた時にはコメへの転換がみられることでしょう。

また、ダークホースなのはオセアニア諸国です。豪州、NZは潜在的に大きなコメ生産高を持っています

豪州米の可能性は今回実証されたといっていいでしょう。そしてNZは干ばつに苦しむ豪州と違って豊富な水量を有しています。

そして東南アジアと違って寒冷な温帯地域に入ります。農業技術的にも高い水準を持っています。

つまり生産環境、生産技術、共にわが国のコメ市場を狙うことのできる位置にあるということです。

私はコメ市場開放に関してやや楽観にすぎたかもしれません。今回は堤防のひと穴ですが、TPP以降はこの堤防全体がなくなるわけです。

このまま手をこまねいていれば、TPPと共に日本の稲作は一挙に押し流される可能性が出てきました。

天皇陛下の手術の成功をお喜び申し上げます。3月11日までには治すと仰せられた陛下のお言葉にどれだけ多くの国民が感動したことでしょうか。

■写真 昨日の綿帽子をかぶった草原。雪が綿花のようですね。

                     ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。 

日経新聞 2月12日
牛丼大手の松屋フーズはオーストラリア産のコメを使用する
方針を固めた。商社経由で豪州産玄米を調達、今春にも試験的に導入する見通し。
すかいらーくも輸入米を使用する検討に入った。大手外食チェーンが店舗で
提供する白米はいずれも国産だが、国産米の価格は東日本大震災後に高止まりしており、
外食企業には収益圧迫要因。外食大手が使用に踏み切れば、割安な輸入米を求める動きが加速しそうだ。

政府は輸入米に高い関税率を課す代わりに、ミニマムアクセス(最低輸入量、MA)を
設けて海外からコメを77万トン輸入している。MA米を希望する企業は入札で購入する。
2011年度分の主食用(10万トン)については需要が旺盛で完売した。松屋は使用する
年間約2万トンのコメに対し、4千トン以上の豪州産玄米(主食用)を確保するとみられる。
これを自社工場で精米し、店舗で「牛めし」などに使う。
 

松屋、豪州産米を試験導入へ…原料費を圧縮 

読売新聞 2月13日(月)19時26分配信 

 牛丼チェーン「松屋」の松屋フーズは、今春にも豪州産米を試験導入する。

 国産米よりも2割程度安い豪州産米で原料費を圧縮する。牛丼大手が輸入米を使うのは異例だ。背景には低価格競争の激化がある。

 また、「牛焼肉定食」(630円)と「カルビ焼肉定食」(680円)の定価を16日午後3時から50円値下げすることも決めた。主力の「牛めし」も値下げしており、対象を広げる。
 

最終更新:2月13日 

松屋プレスリリース 

このたび松屋フーズ(本社:東京都武蔵野市、代表取締役社長:緑川源治)では、牛めし・カレー・定食店「松屋」におきまして「牛焼肉定食」・「カルビ焼肉定食」の価格を値下げすることといたしましたのでご案内申し上げます。
 新価格でのご提供は、2月16日(木)15時より開始いたします。
 「牛焼肉定食」・「カルビ焼肉定食」は長年多くのお客様からご愛顧いただいている商品で、ジューシーで柔らかな牛肉が味わえるこだわりの逸品です。
 また、化学調味料、人工甘味料、合成着色料、合成保存料を使用しない、身体がよろこぶ自然の味もお楽しみいただけます。
 更にお求めやすくなった「牛焼肉定食」・「カルビ焼肉定食」を是非お召し上がりください。

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二日続けて雪です

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おはようございます。
当地は二日続けて雪です。

今日は雪景色を撮りに出かけてきますので、更新はお休みさせていただきます。

天皇陛下のご快癒を心より祈念いたします。陛下、無理をなさらないで下さい。

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東電という怪物は政府が作り出した。猪瀬副知事と資源エネルギー庁長官との会談全文

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昨夜の晩から関東も雪が降りました。雪に馴れない関東、きょうもステンコロリンが続出することでしょう。

リボン様。PPSの問い合わせありがとうございました。大変参考になりました。貴兄のパワフルな調査力にはいつも感嘆させられております。

東電は今まで電気事業法というトンデモ法に守られて、経費をジャブジャブ使えば使うほど電気料金に上乗せできる、という総括原価方式に安住してきました。

つまり電気料金は、いかなる企業努力を払うことなくユーザーに転化できるという、民間企業とは思えない「夢のような異次元」に東電は棲んでいたのです。

今回の原油の値上げに名を借りた大幅値上げは、このような異様な東電の体質から出たと私は思っています。

いつものことならば、この東電の電気料金値上げはすんなりと通ったことでしょう。

しかし東電の誤算は、福島第1原発事故以降の東電に対する国民の怒りの眼を忘れたことですした。

「帝国」といわれる巨大企業にありがちな、身内だけに視線を向けていればいいという体質は、彼らが今、いかなる社会的な立場にいるのかを、忘れさせたのでしょう。

東電は今や、その根本的なあり方そのものまで問われていることを知ったほうがいい。

単に国営化すればいいとか、東電を潰す潰さないという話ではなく、今まで東電という会社がなにをなしてきて、どのような企業だったのか、一切を白日に照らしてみる時期なのではないでしょうか。

これは東電帝国という異様なモンスターを作り出した張本人の日本政府を問うことでもあります。

政府との癒着がなければ、東電は一日たりとも生存できなかったはずです。

それがはしなくも露になったのは、福島第1原発事故においても彼らは初めから国の賠償支援を当て込んで自らの身を絞る改革をしなかったことでも明らかです。

この時に、彼らの検事席に、たまたま道路公団民営化で辣腕を振るった猪瀬直樹東京都副知事がいたことが、東電にとって不運な巡り合わせでした。

欄外に猪瀬副知事と資源エネルギー庁長官との会談を転載します。非常に興味深い内容です。ぜひご一読ください。

ちなみに資源エネルギー庁長官職は、東電副社長へ天下るポストとして有名です。政-官-業の癒着という日本の悪しき縮図が見て取れるでしょう。

■写真 夜明け直前の雪の草原。見るものすべてが群青です。

          ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

「高原一郎資源エネルギー庁長官と猪瀬副知事の面会録」

日 時:2月10日(金曜日)10:40-10:55
場 所:資源エネルギー庁長官室(経済産業省別館 4階)
参加者:高原一郎資源エネルギー庁長官、猪瀬直樹

□猪瀬□ 東京都副知事の猪瀬直樹です。首都圏連合の東京都、それから神奈
     川県、横浜市、川崎市、相模原市、千葉県、千葉市、埼玉県、さい
たま市、この九都県市という首都圏連合として、今回、高原長官に対して、東
電の値上げだけではなくて、このまま、この東電のあり方でいい
のかということをね、きちんとしていただかないと、こちらとしては、なかな
か値上げを受け入れることはできませんという趣旨であります。

■長官■ かしこまりました。

□猪瀬□ きちんと、はんこを押してあります。

■長官■ 頂戴いたします。

□猪瀬□ 首都圏連合の申入れ骨子は、ここに書いてありますけれども、改め
     て申し上げますとね。

■長官■ いただきます。

□猪瀬□ 東京都は1月26日に、東電の一方的な値上げ通告に対して、ちょっ
     と待てと言いました。東京都だけではなくて、いま申し上げたよう
な首都圏の自治体、首都圏連合としてもきちんと改めて申し上げたい。基本的
には大臣もいるけれども、大臣はころころ代わるから、資源エネルギー庁長官
の高原さんが責任者だと思っています。

 値上げの根拠である情報開示が非常に不完全です。再三、東京都としても、
「これは納得できるものではない」、「値上げの根拠である経営内容について
なぜ今回6800億円分の値段を上げるのか、それなら内訳をきちんと出せ」と申
しております。子会社が都心にいっぱいある。そんなに贅沢してんじゃないよ、
企業年金の問題もどうなってるんだよ、こういう見えるところでも、いっぱい
あるんだけれども、更にもう少しね、開示しない資料を要求して確認したりし
ています。とにかく値上げの根拠が不十分です。

 それから経済産業省は前からこの問題に直面してきたわけですが、電力会社
は「自由化部門」という産業向けの値上げだと言っているんですけど、全然自
由化じゃないじゃないか。

 西澤社長が、「自由なんだから、自由化してるんだから、値上げする権利も
ある」と言うんですが、東電は独占企業であって競争・競合ができる状況では
ないということですね。さらに家庭向けの場合には、まったく自由化ではなく
て、選べる選択肢が一つもない。
 
 家庭向けの値上げも今後くるだろうということで、地域独占の弊害というも
のについて、きちんと電力制度の抜本的な改革をしなければ、簡単に「はいそ
うですか」とはいかないと思います。

 それから、これは東電の問題ではありませんが、資源エネルギー庁として、
東電の経営責任をもう少し明確化していただかないと。いま、総合特別事業計
画というのを策定している、その中にちゃんと東電の経営責任の問題も明確に
位置づけしてほしい。

 首都圏連合として首都圏の住民を守る立場から言うと、資源エネルギー庁が
責任を明確にして見通しも出してもらわないと困ります。

 一つは、いま言いました6800億円の根拠が不明であるということ、もう少し
経営の内容をわかるように、明確な情報開示を求めたいということです。二点
目は、産業向けを「自由化部門」と呼称しているが、3.5パーセントしか、
自由市場がないわけですね。これでは、競争原理がまったく働かない。

(「情報通信事業と電気事業における自由化の状況」資料を見せて)
 
http://www.inose.gr.jp/mailmaga/mailshousai/zuhyou/120216/1.pdf 

 この資料ですけど3パーセントしか自由化市場がない。

 通信の場合はね、まあブロードバンドのところを見ると、これはNTT東と
西ですが、他のソフトバンクやイーアクセスやKDDI、その他あとケーブル
とか、ケーブルテレビとかあります。やはり市場の半分が開かれています。そ
れとはちょっと違うかなということです。

 そして、この「電力システムのイメージ」
http://www.inose.gr.jp/mailmaga/mailshousai/zuhyou/120216/2.pdf 
を見てください。

 よく言われていることですが、PPSという民間の発電所、独立系の発電所
はこの東電の配電網を使用すると託送料が取られます。

■長官■ はい。

□猪瀬□ 東電の原子力、火力、水力。これはIPPといって卸専門ですね。
     その前に、卸専門の独立系の会社は東電に売電することはできても、
小売であるPPS発電所には売電することはできない。自由ではない一つのポ
イントです。

 そして、このPPSの発電所が独立系の発電所から電力を調達したとしても
東京電力の送配電網をつかって電気を送る。このとき東電に対してPPSは託
送料という通行料金を支払う。インバランス料金という一般の人にはなじみの
薄い言葉でありますが、供給する電力がちょっとでも足りなくなったりしたら
通常の3~4倍の料金、つまり罰金を取られる。罰金がやたらと高いのですね。

 この託送料が20パーセント以上取られますが、非常に不可解なのは電源開発
促進税が、この託送料に2割くらい上乗せされている。PPSは火力しかない。
原子力はない。原子力は東電のところにある。東電の原子力の問題でなぜ電源
開発促進税をPPSが負担しなければいけないのか。これはおかしいのではな
いか。

 あと細かいバックエンド費用と言う核燃料の再処理のお金を取っている。あ
るいは配電網を安定させるためのアンシラリー・サービスというのも、ここに
上乗せされている。つまり送配電網のコストが非常にわかりにくくて、これ以
外の物が託送料に乗せられていて、非常に不可解であって、自由化を妨げてい
る。

 先ほど言いました「自由化」、これは3.5パーセントという世界です。に
もかかわらず、東電が値上げの権利があると言うのはおかしいのではないか。
インバランス同時同量というのは、皆さん、そろそろ頭に入ったと思うのです
が、これは少しでも30分単位で送る量が狂うとですね、罰金が取られたり、色
々大変です。

 一つ例を挙げるとですね、40万キロワットの発電所が夏の期間にたった5時
間、発電を止めることが起きたと。そうしたらですね罰金が8000万円発生した。
たった5時間で8000万円発生している。ちょっと、おかしいんじゃないか。新
規参入が非常に行われにくくなっている。

 そういう構造的な世界があって、そこで、「電力値上げは権利である」とい
う発想とか、考え方とか、根本的な部分については、やはり経済産業省、資源
エネルギー庁長官として、国民にわかりやすく説明して、東電はおかしくない
と言っても、エネルギー庁長官は「おかしい」と言ってもらわないとと、思っ
ています。

 今回の値上げについて、ご承知のように、大企業も中小企業も一律です。中
小企業は利益率が1パーセント、2パーセントのような会社がいっぱいありま
すからね、これ皆、利益が吹っ飛んでしまいますよね。そういうことで、その
へんの柔軟性のあるメニューが、全然ない。

 東電はじめ九電力会社の送電線の長さを調べてみました。だいたい100万
キロメートルありますね。地球25周分もある。それを地域ごとに区切る必要が
あるのだろうか。これは、やはり少なくとも50ヘルツと60ヘルツの境があった
としても二つないしは一つの送電網というか、どこからもアクセスできるよう
なかたちになっているべきです。

 そうすると、潜在的な発電能力のあるところが参加できるので、電力不足が
解消されるのではないか。枝野大臣が「この夏は、電気使用制限令を使わない」
と言っているけれども、口だけで言っていたのでは仕方ないので、じゃあ、そ
の根拠になるものは何か。要するに構造改革的なものを示してもらわないと仕
方ないですね。

 スマート・メーターをつけるということについても東電はこの10年かけて1
割ずつ、その端末をつけ替えると言っているけれども、かつて、電電公社が黒
い電話から、スーパーで、3000円とか、5000円で売っている赤い電話とか、黄
色い電話とかありましたけれど、あれに一気に変わりましたね。端末を自由化
しましたからね。いまは携帯の時代ですけれど、その前の黒電話の時代から、
カラー付きの電話機の時代に大きく転換しましたよね、ああいう端末をきちん
と自由化しておかないといけない。東電は自分のところでメーターをつけて、
そのスマート・メーターを10年かけて、取り替えていくというのですけれど、
これじゃ何も変わらない。そこも自由化しないと。

 あとは経営責任の明確化ということを申し上げたい。

 何か、一言くらい、言っていただかないと困りますよ。これで終わっちゃっ
たら、困りますよ。

■長官■ 今日の、この緊急要望、大変、多岐にわたる内容で、今回、東京電
     力の値上げの問題に加えて、お話いただいたのは、今の電力システ
ムの問題についても、問題提起をいただいたと思っております。ご案内のとお
り、今、エネルギー政策の見直しの一環として、こういった問題についても、
特別の審議会を立ち上げて、夏ごろを目途に結論を出そうといたしております
けれども、今日、色々いただいたご意見、非常に重く受け止めさせていただい
て、また、一生懸命、検討させていただきたいと思っておりますし、大臣にも
すぐお伝えいたします。よろしくお願いします。

□猪瀬□ 審議会ね、色々、立ち上げあるのもいいが、立ち上げっ放しだとね、
     やっぱり保証が与えられない。だから、東京はご存知のように、2.
7パーセントの東電の株主ですけれど、いまやっている総合特別事業計画の策
定は実質、株主総会のようなものなんです。

 ですから、東京都が一枚も加わることができないで、政府だけで、非公式な
株主総会を続けているということになるわけですから途中できちんとした経過
を出してもらいたい。

 それとやっぱり、我われの意見を求めるようにしていただきたい。とにかく
いま出ている東電の言い方は、この間の政府と東電の会議とか、或いは、政府
の審議会等が色々出している結論と、どういう整合性が17パーセント値上げに
あるのかふつうの国民にはわからないですよ。わかるような言い方を、もうち
ょっと工夫して言わないとわからない。

■長官■ じつは昨日、東電の西澤社長にも話をして……。

□猪瀬□ 昨日、西澤社長がここに来ているのは、映像で見ましたよ。

■長官■ あのときにも、どこまで全体は報道されたかわかりませんけれども、
     国民の皆様は、東電のいろんな動きをですね、充分に理解しておら
れないのではないかと。西澤社長ご自身もお認めになっておられましたけれど
も、まだ充分なご理解をいただけていない動きも多いので、そこは先ほど、副
知事、ご指摘がありました中小企業の皆様のことも含めてですね、できるだけ、
しっかりと情報開示しながら、ということを申し上げましたし、私どもも私ど
もで、努力していきたいと思っております。よろしく、お願いいたします。

                                (了)

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東電という藪の中

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埼玉県様(申し訳ない。略します)、青空様。貴重な知見をありがとうございます。 意見が違うのは健全なことです。

当時のスポット買いについては、見解が分かれて当然だと思います。というのはまったく情報のブラックポックスだからです。PPS(日本卸電力取引所)の取引量で見るしかないというのが現状です。 

したがってご指摘のように、震災による発電施設の打撃による供給量そのものの崩壊は大きかったと思います。 

私自身の記憶にも、3月11日の夕暮れに、燃え盛り、黒煙を発する鹿島-神栖工業地帯を遠望していたことを思い出します。

あの工業地帯には鹿島火力発電所があり、それが大きなダメージをくったことも想像できました。

埼玉様が仰せのように、このような受給バランスの崩れが故にPPSが一時取引を中止したことは日経新聞にも乗った情報でした。

当時、自民党河野太郎議員は経済産業省に直接このPPSの一時停止を問い合わせており、「止まっていない」という返答を得ているそうです。

ただし「止まっていない」というのが、東電管内以外で東電管内だけが止まっていたなど詳細は分かりません。もう少し追跡調査をしてみたいと思います。

さて、3月11日 から 3月17日までに、停止していたすべての水力発電所 22機、停止していた11機の火力発電所のうち2機が復旧しています。

実は3月11日から3月17日までの発電所の打撃状況と再開の程度、そしてスポット市場の回復状況の電力量推移を表にしてまとめていたのですが、今の時点では確たることが言えない状況です。

直感的言い方を許していただけるのなら、3月11日から17日まで、実は存在したはずのかなりの電力量が宙に浮いているような気がしてなりません。

ほんとうにあの首都圏を麻痺に陥れた計画停電や節電は必要なことであったのか、というのが素朴な私の疑問です。

もし、何らかの理由で不要なことならば、単に会社の利益だけなのか、もっと大きな別の理由なのかと考えてしまいます。私は陰謀論は嫌いですので、数値的な裏が取れればと考えている次第です。、

というわけで、今日の段階では、震災前の東電の電力量と震災による打撃、そして回復の数値、そして需要量との相関をしっかりとした数値的な裏付けで描く事ができませんでした。(参考までに東電プレスリリースを欄外に載せます。)

私が言いたかったことは、あの3.11の非常時に東電がいかなるスポット買いの手当てをしたのか、その記録がまったく開示されていないことです。

国家的な被災に関わらず、送電網という最重要なライフラインが唯一の独占企業の自由な裁量に任されているという事実は、非常に脆弱だと思います。

東電処分については、二段階国有化論が浮上したようですが、次元の違うテーマですので、別な機会に譲りたいと思います。

            ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

東電プレスリリース

3月11日
東北地方太平洋沖地震における当社設備への影響について【午後11時現在】

【原子力発電所】(福島は省略)
・柏崎刈羽原子力発電所 1、5、6、7号機は通常運転中
(2~4号機は定期検査中)

【火力発電所】
・広野火力発電所   2、4号機 地震により停止中
・常陸那珂火力発電所 1号機 地震により停止中
・鹿島火力発電所   2、3、5、6号機 地震により停止中
・大井火力発電所   2、3号機 地震により停止中 
・五井火力発電所   4号機 地震により停止中
・東扇島火力発電所  1号機 地震により停止中

【水力発電所】
・福島県内で14発電所、栃木県内で4発電所、山梨県内で4発電所が地震により停
 止中

【流通設備等への影響】
地震により、当社の変電所は8カ所が停止中
・那珂変電所  地震により停止中
・新茂木変電所 地震により停止中
・常磐変電所  地震により停止中
・茨城変電所  地震により停止中
・石岡変電所  地震により停止中
・西水戸変電所 地震により停止中
・河内変電所  地震により停止中
・芳賀変電所  地震により停止中

3月15日
東北地方太平洋沖地震における当社設備への影響について【午後4時現在】

【原子力発電所】(福島は省略)
・柏崎刈羽原子力発電所 1、5、6、7号機は通常運転中
 (2~4号機は定期検査中)

【火力発電所】
・広野火力発電所 2、4号機 地震により停止中
・常陸那珂火力発電所 1号機 地震により停止中
・鹿島火力発電所 2、3、5、6号機 地震により停止中
・大井火力発電所 2号機 地震により停止中 
・東扇島火力発電所 1号機 地震により停止中

【水力発電所】
・すべて復旧済み

【流通設備等への影響】
・地震により停止した変電所はすべて復旧済み

3月17日
東北地方太平洋沖地震における当社設備への影響について【午前10時現在】

【原子力発電所】(福島は省略)
・柏崎刈羽原子力発電所 1、5、6、7号機は通常運転中
 (2~4号機は定期検査中)

【火力発電所】
・ 広野火力発電所 2、4号機 地震により停止中
・ 常陸那珂火力発電所 1号機 地震により停止中
・ 鹿島火力発電所 2、3、5、6号機 地震により停止中
・ 大井火力発電所 2号機 地震により停止中 
・ 東扇島火力発電所 1号機 地震により停止中

【水力発電所】
・すべて復旧済み

【流通設備等への影響】
・地震により停止した変電所はすべて復旧済み

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3.11直後、東電は電力のスポット買いを6割減らしていた!送電網を東電に独占させてはならない!

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東京電力が17%に及ぶ大幅値上げを一方的に通告してきました。たいした会社です。 

地域独占にアグラをかき、「東電帝国」とまで言われた体質はなにひとつ3.11以降も変化してはいないことが、はしなくも暴露されてしまいました。 

電力は建前上は「自由化」されています。その証拠に、ちゃんと「日本卸電力取引場」(PPS)というものまであります。 

自分で電力を発電したり、あるいは調達したりするためにはこの「取引所」を通さねばなりません。 

なぜなら、送電網が100%東電の独占だからです。 

ですから、わずか3%ていどの微々たるものですが、東電以外の電力会社が売ったり、買ったりするためにはこの「卸取引所」を通さねばなりません。 

現在企業内でかなり数を増やしてきた企業自家発電も、余剰電力が出ればこの「取引所を通すことになります。将来急速に増えるであろう自然エネルギーもまた、これを通さねばなりません。 

この電力取引は、期間を決めて電力を売り買いする先渡市場と、一日を30分刻みで48コマに分けて売り買いするスポット売買の二種類があります。 

この電力スポット市場は、緊急時に大きな電力の穴が開いた場合に威力を発揮するはずでした。たとえば3.11などです。

3.11直前までの売り買い高を見てみましょう。下図をご覧ください。

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グラフのほぼ真ん中に運命の3月11日があるのがわかりますか。そこまでは毎日1500万kWhから2000万kWhがスポット取引されているのが分かりますね。 

3月11日には翌週月曜日の分2000万kWhの取引が確定していました。しかし、これは大震災により物理的に不履行となります。 

ここまでは不可抗力です。問題は、3月14日からの急激な電力買い取り量の低下です。 

3月14日から東電はあろうことか電力の買い取りを下げます。800万kWhにまで下げてしまいました。実に6割の買い取り量の低下です。 

一方、あの時期に東電管内でなにがあったでしょうか? 

いうまでもなく大停電です。私の茨城エリアでは4日間の大停電で呻吟しました。そして、それからえんえんと続く長期の計画停電と節電に国民と企業は苦しんだのです。 

しかし、この時期に東電は電力のスポット買い取りを6割減らしたのです!まさにこのような非常時の穴にこそ威力を発揮したであろうスポット買いを、東電は意図的に減らしてしまったのです 

理由は至って簡単、高かったからです。圧倒的な電力供給の崩壊に際して、この時点でスポット価格は急上昇していました。 

だから東電は買い取りをしなかったのです。なんと見事な「公益法人」であることでしょうか。このような時の「安定供給」のためにこそ、国は東電に地域の独占を許し、無競争でぬくぬくと保護してきたのではないのですか。 

千年に一度の災厄時に、与えられた社会的責任を投げ捨てて、自らの社の利益を優先する、これが東電の真の姿です

なるほど、これが一般の民間企業ならばその選択もありえるでしょう。

しかし電気事業法という法律に十重二十重に守られて、地域独占を許され膨大な巨益を得てきた会社が、一時の電力スポット買い取りを拒むということは絶対に許されるべきことではありません。

いかなる価格であろうとも、国家の非常時に全力をあげて電力を供給するのが東電の責務だったはずです。しかも自社の原発が事故を起こした事が原因ならましてものことです。 

3.11以降のような国家の非常事態に対しても、東電が恣意的にスポット電力買い取り量を下げるというまねができ、国民と企業に甚大な損害を与えることが可能だった、これが電気事業法の悪法たる所以です。 

これで、このような体質の東電に送電網を独占させる危険性が明らかになりました。 

もし送電網が独立して送電会社が複数の競争をしていたのならば、3.11のような場合、一系統が壊滅しても、他の系統が送電を行い、そしてすべてが回復した後には競争により適正な電力価格に落ち着くはずでした。 

競争なき電力送電市場は、いかに自然エネルギーが増えようと、事業所が自家発電に力を入れようと、しょせん最後は東電帝国の送電網にご厄介にならざるをえない致命的なネックがあります

このような東電の私利私欲のスポット電力の買い控えさえなけれは、311直後の大停電も短期間で復興し、計画停電すらも回避できた可能性が非常に高いのです。

この事実を知った上で、欄外の東電・西沢社長が傲然と「値上げは権利だ」と言い放った会見をご覧ください。その鉄面皮ぶりに胸くそが悪くなるでしょう。 

■写真 一足先に春の気分を。

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.■<東電議決権>「3分の2を」議決権掌握へ、政府最終調整  

毎日新聞2月14日(火)2時31分配信 

政府は13日、東京電力への公的資本注入に伴い、東電の議決権を最大3分の2超取得し、経営権を得る方向で最終調整に入った。議決権の3分の2超を取得すれば、重要案件で拒否権を封じることができるようになり、経営改革を徹底させることができる。政府はこれをテコに抜本的な「東電改革」を目指す。原子力損害賠償支援機構と東電は3月にまとめる総合特別事業計画に議決権比率を盛り込む。

【なぜ強硬に】東電議決権:枝野氏、改革へ強硬 進まぬ変化にいらだち

 枝野幸男経済産業相は同日、福島第1原発事故の賠償原資となる約6900億円の追加の損害賠償支援を認定。その際、東電の西沢俊夫社長に対し「注入額に照らして十分な議決権が伴わない特別事業計画を認定するつもりは全くない」と強調。西沢社長も「経産相の考えを踏まえて調整する」と回答せざるを得なかった。

 議決権は、株主総会で提案された議題について、賛成や反対をする権利のこと。政府は、東電による企業向け電気料金の突然の値上げ表明などを受け、「東電の体質は変わっておらず、このままでは改革が進まない」(政府関係者)と判断。枝野経産相は、電力会社を発電部門と送配電部門に分ける「発送電分離」などの電力制度改革への迅速な対応のためにも、重要案件の否決を拒める3分の2超の議決権取得が必要との判断に傾いた。

 政府は支援機構を通じて東電に1兆円規模の公的資本を注入する方針。東電の時価総額は約3200億円で、仮に取得する株式のすべてに議決権がついていれば、政府の議決権は3分の2超に膨らむことになる。

 ただ、東電内の一部には、国に経営権を握られることへの強い反発がある。また、政府内にも、財政負担増を懸念する財務省などに「議決権は3分の1超で十分」との意見がある。議決権の過半数取得でも、取締役を選んだり、解任したりすることができるため、最終的に3分の2超になるかどうかは流動的な面も残されている。

東電西沢敏夫社長値上げ会見全文 

当社は本年3月11日の大震災による、福島第一、第二原子力発電所の被災に加えまして、当社が購入している他社の原子力発電所の被災、さらには柏崎刈羽原子力発電所停止の長期化などに対応するなかで、電気の安定供給を何としてでも維持しなければという事で、火力発電の焚き増し、長期計画停止しておりました火力発電所の運転の再開それから新たな電源の設備、ガスタービン等でございますけれども緊急設置などに懸命に取り組みまして、供給力の維持確保に努めてまいりました。
こうした取り組みによりまして、燃料費の負担が大幅に増加しております。

23年度につきましても、燃料費だけみましても昨年度と比較して8300億円程度の負担増となる見通しでございます。
これは先般の特別事業計画の中でもお示しさせていただきました

当社は平成19年に発生いたしました新潟県の中越地震以降、柏崎刈羽原子力発電所の復旧費用や、燃料費の負担が増加する中で効率化を徹底して進めまして、社内の資本を取り崩しながら料金の水準の維持に努めてまいりました。

今回これをはるかに上回る、3月11日の大震災以降も現行の電気料金制度では、火力発電に大きくシフトした現状の電源構成を前提とした燃料費の大幅な増加に対応するものとなっていないそのような状況の中で、さらなる効率化と社内資本の大幅な取り崩しにより、
これまでなんとか、対応してきたというのが実情でございます。

しかしながら、現在の状態が継続すれば、遠からず経営として成り立たなくなり、燃料調達に支障をきたし、電気の安定供給にも影響を及ぼしかねないという状況にございます。

以上のような厳しい状況を踏まえまして、自由化の部門のお客さまにつきまして、さらなる徹底した合理化を大前提としまして、燃料費負担増に相当する部分について、来年4月以降電気料金の値上げをお願いせざるを得ないというふうに考えてございます。

現在詳細な見極めを鋭意進めてございます。
来年1月には具体的なお知らせを改めてさせていただきたいと考えてございます。

大変厳しい環境におかれている産業界をはじめ、自由化部門のお客様には本当に申し訳なく思っておりますが、ただ今申し上げました状況を、なにとぞお汲み取りいただき、ご理解いただきますよう、よろしくおねがいいたします。

わたくしどもとして何度でもお尋ねし、ご説明し、ご理解を賜ります。
本当にご理解をよろしくお願い申し上げます

なお、規制部門につきましても、置かれております状況は自由化部門と同様でありますが、現在、操業事業特別計画の策定事業、作業や電気料金制度運用に関します有識者会議の議論が進められておりますので、それらの動向を踏まえたうえでできるだけ早い時期に申請させていただきたいというふうに思っております。


私からは以上でございます

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去年は緊急対応の時期だった。今年は放射性物質と農業との闘いを深める初年度だ

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2月9日に医茨城大学で行われた有機農業シンポジウムほんとうに刺激になりました。

その中で、今私たちが被っている放射能禍について、木村園子ドロテア東京農工大学 大学院准教授のひとことが非常に印象的でした。

木村准教授は、チェルノブイリ原発事故のヨーロッパ、特にドイツ南部の放射能の影響を調査されています。それを踏まえてこう言われていました。

放射能の農作物、、あるいは森林に対する影響は短期間で終わらないこと。作物によっても異なるが、特に特に5年目までは警戒を要する。忘れた時に検出されて驚くのではなく、そのようなことが起きうるということを予測して対処した方がいい」。
(以上発言は聞き取りによる)

まさにそのとおりです。事故当初から確かに農産物への監視体制は急速に整えられました。しかし、本質的にはなにも変わっていないことがいくつかあります。

あえて言いますが、それは私たち農業者の意識です。私たち農民は「喉元過ぎれば熱さ忘れる」になりかかっています。

有機農業への打撃は巨大すぎたために未だ衰えることはないのですが、慣行農法市場は表面的には回復に向かっています。

村人には台風一過といった気分がかいま見られます。私たちの計測運動を「時期尚早」と見ていた村人は、今度は喉元過ぎて思い出のページに綴じ入れようとしているようです。

私は違うと思います。放射能禍の状況は本質的になにも変化していないからです。セシウム134、137は未だ大量に村の内部の森林の落ち葉に蓄え込まれており、常時水系を通して流出し続けています。

その水を使ってまた今年も米を作るのです。安心するのは10年早い!

去年とどう変わりがあるというのでしょうか。ただ去年の3.11直後と異なるのは外部被曝が減少しただけであり、土壌には徐々に線量を減らしてはいるものの放射性物質は強固に存在していることを忘れてはいけません。

放射能禍は現在も進行中なのです。突然、食品規制値を超える農産物が出てしまうことは確率論としてはありえるのだ、ということを肝に銘じるべきです。

たとえば、事故後2年たってそれが検出された場合、「忘れかけていた」だけにその衝撃は倍加するでしょう。

ほんとうの意味での「安全宣言」など出すのは5年後、10年後かもしれません。それまでに現実的な放射性物質への対処方法をきちんと作り上げて行かねばなりません。

今年も、茨城大学の教官の皆さんと、計測と対処の協同研究を継続することに決まりました。これは最低でも、5年後まで継続されねばなりません。

現在のわが地域の田畑の放射線量はいかなる値なのか、いかなる農法が放射線量を下げていくのか、いかなる土中メカニズムが働いているのか、それを科学的に解きあかして、現実の農業現場に役立てていかねばなりません。

去年は緊急対応の時期でした。今年は放射性物質と農業との闘いを深める初年度です。

■写真 棕櫚の樹が夕焼け空に映えています。

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政府の原発事故の内部文書・「深刻事態ありえる」を公表保管せず

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一昨日の有機農業シンポジウムは、今まで私たち農業者がおそらくこうであろうな、と思ってきた直感の根拠を科学的な見事に解き明かしていただきました。 

長年に渡って農業者のいわば勘でやってきた有機農業に、ようやく科学の光が当たり始めたようです。 

さてNHK ニュースにこのようなニュースがありましたので転載します。

福島第1原発事故はその処理のみならず、致命的とも言えるリスクコニュニケーションの失敗がありました。

それが政府みずからの手で総括されるどころか、あろうことか議事録を削除するという常識を疑う手段で隠蔽させれようとしました。現在「復刻中」だそうですが、ズタズタに改竄されたものになることでしょう。

本日転載するNHKニュースの記事は、政府が「最悪首都圏の避難もありうる」という原子力委員会の重要な内部文書を、政府が作ることを指示しておきながら、国民に公開せずに隠蔽し、そして保管すらしていなかった実態が暴露されています。

            ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

以下転載

原発 “最悪の事態”、首都圏避難もありえた…政府、
“深刻事態シナリオ”の提出を受けながら公表せず、「公文書」としても管理せず

(NHKニュース 2月12日※ソース元に動画があります。)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120212/k10015965831000.html

 原発事故を巡って、去年3月末、政府が、原子力委員会の委員長から、「深刻な事態に陥れば、首都圏を含む範囲での住民 避難などが必要になる」という内容の文書の提出を受けながら公表を見送り、去年末まで情報公開の対象にしていなかったことが 分かりました。

 民間の有識者で作る原発事故の調査委員会は、この間の経緯について詳しく調べています。

■“最悪の事態”首都圏避難も

 公表されなかったのは、原子力委員会の近藤駿介委員長が、原発事故から2週間後の去年3月25日に政府に提出した、
「福島第一原子力発電所の不測事態シナリオの素描」というタイトルの文書です。

 近藤委員長によりますと、この文書は、当時の菅総理大臣からの要請で作成したもので、今後起こりうる不測の事態とその影響、 それらを防ぐためにとるべき対策が記されています。

 不測の事態としては、原子炉や使用済み核燃料プールに注水できなくなって、格納容器が壊れたり燃料が露出したりすれば、 大量の放射性物質が放出されることも想定されるとしています。

 こうした事態が起きた場合、住民を強制的に移転させる範囲が半径170キロ、任意の移転が必要になる範囲が半径250キロと、首都圏を含む範囲での住民避難などが必要になる可能性があり、こうした事態を防ぐため、原子炉を冷やす手段を多様化する 必要があるなどと対策を示しています。

 文書に記された内容を巡って、菅前総理大臣は去年9月、NHKとのインタビューの中で、最悪の事態を想定したシミュレーション を行っていたと明らかにしていますが、当時、「過度の心配を及ぼす可能性がある」などとして、公表は見送られました。


 また、文書は、去年末になって原子力委員会の事務局に保管されているのが偶然見つかるまで公文書として扱われず、情報公開 の対象になっていなかったということです。

 この間の経緯については、民間の有識者で作る「福島原発事故独立検証委員会」=民間事故調も強い関心を寄せていて、 当時の政府関係者などからヒアリングを重ね、詳しく調べています。

■“菅前首相の要請で作成”

 公開された文書は、原子力委員会の近藤駿介委員長が去年3月22日に政府の要請を受けて作成し、25日に提出したものです。

 要請を受けたときは、福島第一原発で1号機や3号機の水素爆発が起きたあと、各号機に海水を注水して原子炉を冷やしながら、外部電源の復旧作業が進められる一方で、燃料プールを冷やすため、連日、消防などによる放水が繰り返されていた時期です。

 文書は表紙を含めて15枚あり、今後、起きうる不測の事態を想定したうえで、その際の周辺への影響のほか、不測の事態を防ぐ ために検討すべき対策が記されています。

 このうち不測の事態は、1号機の原子炉の内部で水素爆発が起きて原子炉へ注水できなくなることをきっかけに、付近の放射線量 が上昇して、作業員が待避せざる得なくなり、4号機の燃料プールに注水ができなくなって燃料が露出し、溶け出すことを想定しています。

 同時に2号機と3号機も、原子炉に注水できなくなり、最終的には格納容器が壊れて、放射性物質が外に漏れ出すとしています。

 さらにこうした事態が起きた場合、放射性物質の放出に伴って、住民を強制的に移転させる必要がある範囲が半径170キロに、任意の移転が必要になる範囲が半径250キロに及ぶとしています。

 そのうえで、こうした事態を防ぐ対策として、最初のきっかけとなる水素爆発を防ぐために、格納容器を窒素で満たす対策が重要だとしたうえで、原子炉を冷やす手段を多様化することや、当時、原子炉に入れていた海水を淡水に切り替え、水源を確保することが 必要だと指摘しています。

 近藤委員長は「文書は3月22日に当時の菅総理大臣の要請を受けて作成した。最悪のシナリオ』を想定するのが目的ではなく、起きうる不測の事態を考え、それを防ぐために検討すべき対策を示すのが目的だった」と話しています。

■“公文書”管理に問題は

 近藤原子力委員長が作成した文書は、去年3月に政府に提出されてから去年末まで公文書として扱われず、情報公開の対象 とされていませんでした。

 この文書は去年3月25日、当時の総理大臣補佐官の細野原発事故担当大臣に提出されました。

 その内容について菅前総理大臣は、去年9月、NHKとのインタビューの中で明らかにし、細野大臣も、ことし1月6日の記者会見で 「知っているのは総理と私程度で、そのほかに出していなかった。過度の心配を及ぼす可能性があると考えた」などと、公表しなかった
理由を説明しています。

 こうした事情から、総理大臣の任務を補佐する内閣官房や内閣府も、この文書の存在を把握しておらず、公文書として管理してきませんでした。

 こうしたなか、去年末、情報公開請求が行われたのをきっかけに、原子力委員会事務局が文書を探した結果、偶然、一部 見つかり、初めて公文書として扱われることになったということです。

 総理大臣の職務を補佐する内閣官房では、「総理大臣や補佐官が個人的に受け取った文書については把握しきれず、指示がない場合は管理できない」としています。

 また、現在、この文書を保管している原子力委員会事務局は「委員長が個人的に作成したもので、本来は原子力委員会として保管する文書ではない。今回は偶然事務局で見つかったので保管している」という見解を示しています。

 国際政治が専門で、政府の公文書管理の実情に詳しい、流通経済大学の植村秀樹教授は、今回の文書について、「公人が 公人に提出したもので、本来、内閣官房、原子力委員会の両方で保存すべき公文書だ。アメリカなどでは、このレベルの文書は、出した側、受け取った側の両方が保存している。総理や補佐官に対して提出された文書について、
完全な『私信』以外は、すべて公文書であるという認識を持ち、保存・管理してもらいたい」と話しています。

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震災で亡くなられた御霊に祈りを捧げます

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1日遅れになりましたが

震災で亡くなられた御霊に祈りを捧げます。また冷たい海底で眠る数多くの同胞が、一日もはやくご家族の元に還ることを祈念します。

そして破壊された街がもとの安らぎと活気に満ちた街に戻り、農民と漁師が誇りをもってその日の糧を得る日が来ますように。

安らかに眠って下さい。あなたたちのことは絶対に忘れませんから。
そしてこの日本をもっと美しい国土にする努力を誓います。

神というものがあるのならば、わが国を助け給え。

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福島米作付け問題に思う。規制は田んぼごととにするべきです

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福島農業が壁で苦しんでいます。 

もう目前となった米の作付けをめぐってです。(欄外参照)

2月に農家は米苗の作業を開始せねばなりません。籾を選別し、苗床に薪、そして丁寧に苗をそだてていきます。「苗半作」という言葉があるほどこれは重要な仕事です。
 

東日本ではまさに待ったなしの時期に入りました。 

消費者団体は、「制限を緩めれば不信が増幅する」という態度で同調しています。おそらくは生協や有機農産物流通関係まで含めてこのような見解で統一されると思われます。 

要するに、100bqの規制値を超えた地域で作っても、実際にできた米から検出されるかどうかは別にして、消費者は買わないですよ、ということです。 

農水省は、この4月から施行される新食品規制値の100bqに合わせて作付け制限をしろ、と言い出しています。もう少し細かく言えばこういう流れです。 

まず、去年度の11年度産で当時の暫定規制値500bqを上回った地域は「作付け制限が必要」としました。ここで注意していただきたいのは、「地域」に網をかけるように作付け規制をかける方式を農水省がまた言い出していることです 

この方法は実は、去年3月から5月にかけての風評被害真っ盛りの修羅場で農水省がとった方法と同一です。 

当初は、暫定規制値を超えた農産物が出た地域をなんと愚かにも県単位までかけたために県単位で農産物がストップしたのみならず、かえって風評を拡大するということにつながりました。 

そりゃそうでしょう。仮に同じ村のA地域というスポットで検出されたとしても、隣のB地域は安全だという場合など沢山ありました。 

それを市町村単位どころか、一挙に県単位という農産物の現実の出荷単位としてはマキシムなところで規制をかけたら、もうミソもクソも一緒となって全部アウトとなってしまいました。 

しかも品目単位で出荷規制をかけました。意味が分かりますか? 

たとえば、ホウレンソウを一律に県単位でアウトとするわけです。 

ならば、畑の横の畝に小松菜があったらどうするのでしょう。小松菜はたまたま検査に引っかからなかっただけかもしれません。 

放射能はホウレンソウにだけ選別的に降下してくるわけじゃありませんね(苦笑)。規制をかけるならば、その畑に対して属地的にかけるべきなのです。まったく粗雑もいいところです。 

こんな手抜かりだらけの方法を国がとれば、「茨城県産はまとめて危険だ」、と国が言っているに等しいわけです。 

私は菅直人内閣総理大臣名でファックスされたあの出荷自粛通告書を一生忘れないでしょう。菅前総理こそが、東日本農業に塗炭の苦しみを与えた張本人だと私は思っています。 

さて、百歩譲って、「あの時は検査機器も圧倒的に不足していたので検査をするまでの間、一時出荷自粛してもらったのだ」、というならば分からないではありません。

しかしあれから1年。しっかりと検査する期間はあったはずです。 

国は多少の補助金を出した程度で、地域農政事務所のヒマ役人たちは懐手していましたが、11年度産の米は福島県とJA福島が中心となって、必死に全袋検査をするという荒技をやってのけました。 

36万3600トンの新米を全部調べようとするのですから、恐ろしいまでの手間とコストです。これをなし遂げた福島県とJA福島、農業団体に敬意を評します。 

結果はこのように出ました。 

「福島県は昨年11月16日~今年2月3日、県内の農家2万3240戸を対象に玄米の放射性セシウム含有量を調べた。「検出せず」(検出限界は測定機器で異なり最高50ベクレル)は1万9580戸で全体の84・3%。「1キロ当たり100ベクレル以下」は3077戸(13・2%)で、全体の97・5%が新規制値案の100ベクレル以下だった。 

一方、暫定規制値(500ベクレル)を超えたのは38戸(0・2%)で、福島、伊達、二本松3市の一部地区に集中した。県は100ベクレルを超えた地区の米の出荷を今後、見合わせる方針だ。」
(毎日新聞2月10日 欄外グラフ参照))
 

問題は福島県内の地方で内部意見がまとまらなかったことです。 

JA福島は去年段階から、一時たとえ微量でも放射性物質が検出されれば作付けを許さないという誤報が流れたほど、新たな作付けには農水省と同調する厳重な態度をとる方針を固めていました。 

しかし、このある意味原則論とも言えるJA福島の方針に対して、福島県内各地域はそれぞれの置かれた立場で意見が割れました。 

避難地域は
「相馬市は「100ベクレル以下でも売れていない。市場に出すのは検出限界値未満(ND)と定め、他は国が買い取るなどの措置が必要」と、国の対策に期待する。」
(同上)
 

哀しい現実ですが、既に売れない現実を想定して、規制値以上は国の買い取りを要求するとしています。 

ある意味もっとも苦悩しているのは、避難地域に隣接するいわばグレーゾーンの市町村です。たとえば条件つきで全水田の作付けを要求している福島市は 

「100ベクレル超は31地区中18地区で、農地面積に換算すると市の全農地の6割に達する。ただし11地区では検出された農家が1~2戸にとどまり、市農政課は「一律に制限すれば、不検出だった農家に説明できない」と困惑する。4月上旬から全ての水田で除染を始めれば、多くの水田が新基準値を下回るとみている。」
(同上)

いっぽう浜通りから内陸に入った会津地域では、他地域に対してやや冷やかな批判をしています。
 

「11年産米すべてがNDだった会津地方では、作付けに慎重な意見が相次ぐ。昨秋は国の検査後に暫定規制値超えのコメが相次いで見つかったことが福島県産米全体への不信感を広げた。JA会津みなみは「耕作したい農家の気持ちは分かるが、消費者の立場とは違う」と指摘する。」
(同上)
 

有体に言えば、放射能汚染がひどかった浜通り地域と内陸部を一緒にするな、ということです。 

すべての地域の態度は正当です。問題は別にあります。作付け制限が行政区単位だということです 

地域で作付け制限をかける方法には重大な欠陥があります。この方法は確かに、地域ごとに出荷団体が作られていたり、土地改良区が設定されているなどの実態には即していますが、放射能問題には即していません

放射能は一律に降るわけではなく、地形と風向きでホットスポットを作ります。ですから、一律に市町村の単位としても、何の解決にもならないのです。

最小の単位の字(あざ)ですらバラつきます。これが私が測定運動で得た経験則です。

ですから、市単位の規制は無駄な出血を強いてしまうでしょう。規制をかけるのは、まずその地域の100bqの規制値を超えを出したした地域をくまなく測定してからにすべきです。

これは思うほど難しい相談ではありません。100bq超えを出した生産者はわかっているわけですから、その水田を検査すればいいだけです。

しかも、ホットスポットが出る法則性は既に発見されています。
❶山林との境の沢口付近。従って谷津田の上部に多い。
❷土質は砂質。
❸放射性物質吸着資材の投下が少ない。

これで作付けをすれば検出の可能性が出る水田は絞り込めるはずです。去年のようにやみくもにすべての田んぼを測る必要はありません。

私は、このように考えます。
100bqを超えた米が出た水田の土壌測定をする。
土壌の作付けゴーサインのめどは、土壌移行係数の0.1(農水省)かけた1000bq超とする。
❸これを超えた田んぼは緊急除染対策を施して作付けをする。
➍この田んぼはあらかじめ登録される。収穫前測定などは優先される。

収穫後測定の後に、100bqを超えたのならば、全量を国が買い取る

私は作付けすることを前提とします。一回荒らしたら戻りません。これは米作りの常識です。

まずホットスポットを絞り込むこと、そして除染して作付けして、それでもなお超えたのならば全量を国が補償することです。

 

 

 

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福島産、作付け制限計画 コメ混乱、収束遠く 国、産地にらみ合い
(毎日新聞 2月10日)
 

今春の福島県でのコメ作付けを巡り、従来より厳しくなる放射性セシウムの新基準値(1キロ当たり100ベクレル)を踏まえ「制限を広げたい」とする農水省と、「コメを作りたい」とする産地がにらみ合っている。 

下流の卸・小売りには昨年産の福島米を敬遠する空気があり、消費者団体は「制限を緩めれば不信が増幅する」と警戒。原発事故がもたらした生産者と消費者の苦悩、混乱に収束は見えない。 

 ◇揺れる農家も意見割れ 

 「田植えの準備もあるから早急にしたいが、地元の皆さんが納得しないことを一方的に決めるのも紛糾のもとになる」。9日の記者会見で、筒井信隆副農相は作付け制限を巡る国の立場を説明した。 

 農水省は昨年末、11年産米で暫定規制値(1キロ当たり500ベクレル)超の放射性セシウムが検出された地域は「作付け制限が必要」との考えを示した。しかし、自治体からは「原則として作付けしたい」との意向が続出。一方、JA福島中央会は「500ベクレル超の地区は制限する」と逆の方針を掲げており、地元でも意見はくい違う。 

 500ベクレル超の地区はコメへのセシウム移行のデータを取る実験田として作付けし、100ベクレル超は除染などを前提に全面的な作付けを要望している福島市。 

100ベクレル超は31地区中18地区で、農地面積に換算すると市の全農地の6割に達する。ただし11地区では検出された農家が1~2戸にとどまり、市農政課は「一律に制限すれば、不検出だった農家に説明できない」と困惑する。4月上旬から全ての水田で除染を始めれば、多くの水田が新基準値を下回るとみている。 

 風評被害への懸念も根強い。桑折町は「作付け制限地区だと見られれば、桃などの売り上げにも影響が出る」。相馬市は「100ベクレル以下でも売れていない。市場に出すのは検出限界値未満(ND)と定め、他は国が買い取るなどの措置が必要」と、国の対策に期待する。 

一方、11年産米すべてがNDだった会津地方では、作付けに慎重な意見が相次ぐ。昨秋は国の検査後に暫定規制値超えのコメが相次いで見つかったことが福島県産米全体への不信感を広げた。JA会津みなみは「耕作したい農家の気持ちは分かるが、消費者の立場とは違う」と指摘する。 

 作付け制限地区のアフターケアも今後の課題だ。水田は一度作付けをしないと荒廃し、簡単に再開できなくなる。各市町村の担当者らは、農家が農業を続けていく意欲を低下させ、農業人口の減少につながることを懸念し、「食用にしない条件でコメを作ってはどうか」との要望も多い。 

 だがある同省幹部は「実験田を作るとしても、全域でやるわけにはいかない。汚染米が作られれば、食用米に混入するリスクはどうしても残る」と慎重だ。08年には、工業のり用などとして出荷された「事故米」が菓子の原料などになっていた問題が発覚している。【曽田拓、深津誠、清水勝】 

 ◇生産量激減、7位転落 

 昨年、福島県では約8500ヘクタールが作付けを制限された。地震・津波被害を含めれば県全体の作付面積は6万4400ヘクタールと前年比1万6200ヘクタール減り、生産量も全国4位(44万5700トン)から7位(35万3600トン)に転落。作付け制限による大幅な生産減が続けば、コメどころ福島の地位は揺らぎかねない状況だ。 

 業界団体などによると、11年福島県産コシヒカリの取引数量(卸業者の買い入れ量)は2月第1週までの累計で前年同期の4分の1程度にとどまる。特に昨年12月以降の落ち込みが激しく、業界関係者は「消費者の反応を気にして敬遠する業者が多い」と話す。 

 価格面にも影響は出ている。農水省がまとめたコメ取引価格(卸業者の買った価格)は全国的には安値だった前年より2割程度高い値が続く中、福島県の中通り産コシヒカリは昨年12月時点で14%高と伸び悩む。全国農業協同組合連合会福島県本部(JA全農福島)は先月30日、卸業者に示す基準価格を60キロ当たり500~1500円引き下げ、中通り産コシヒカリで1万3800円などにした。割安感を武器に販売先を確保する狙いだ。 

 作付け制限の行方には、消費者サイドも注目する。主婦連合会の山根香織会長は「生産者には気の毒だが、コメは主食なので、厳しくなる新基準に合わせてしっかり作付け制限すべきだ。それが福島産米への信頼を回復させ、ひいては福島の復興につながる」と指摘。さらに「作付けを制限される農家は原発事故の被害者。国の補償や東京電力の賠償などできちんと救済していくべきだ」とも語る。 

 一方、国の食品安全委員会の専門委員を務めた消費生活コンサルタントの市川まりこさんは「従来の暫定規制値でも健康に影響はないが、ゼロ・リスクを求める消費者はおり、対策を尽くしても国民全員の不安を解消するのは不可能だ。新基準値を超えるコメを流通させないのは当然だが、農家の営農意欲を維持し産地を守るためには、なるべく作付けを認め、最後は消費者の判断にゆだねるべきだ」と提言する。

 

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「被災地瓦礫」の拒否運動は、「脱原発運動」に分断を持ち込みます

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あすみさん。コメントありがとうございます。コメント欄は狭いのでこちらでお答えします。 

まず、私は「因果応報」などという表現はまったく使っていません。言っていないことを批判されても困ります。 

私が述べたのは、「100bq以下の被災地瓦礫の受け入れを拒否しているならば、自分たちの1000bq超の下水汚泥の将来はどうするのですか?」と言っているだけです。 

また、もうひとつ私が言いたかった重要なことは、この反対運動をされている方たちが、「被災地瓦礫搬入拒否」の名で「脱原発運動」に大きな亀裂を持ち込んでいることです 

分断といってもいいでしょう。

私は茨城の「被曝地」の農業者です。しかも日中は土に触れています。私の衣類は土埃を吸収しているでしょう。私の手にも指にも付いています。 

さて、こんな「汚染された土壌」の上で暮らし、生産する私をあなたはどう対応しますか?家に入れてくれますか。握手していただけますか? それとも白眼視しますか?

私たちはこの3.11以降1年間、毎日家族を守り、地域を守るために心を砕いてきました。 

そのために3月の段階で測定器を購入し、計測してきました。震災の傷跡も生々しい自分の畑や住宅、地域などをです。子供たちの通学路も測りました。 

この恐怖はお分かりですか。たぶんお分かりだと思います。今、あなた方が「被災地瓦礫」に怯えている心と根っこは一緒ですから。 

政府の意図的な情報隠蔽により苦しんだのは、都市住民だけではありません。むしろ、野外活動を中心とせざるをえない私たち農業者だったのです。 

情報の開示を求めたのも、私たち農業者が最初でした。東電抗議デモも私たちの仲間の農家が初めて行いました。 

いうまでもなく、私は「脱原発」の立場です。それは農業者こそが最大の原発事故の被害者であるからです。 

いや、もっと厳密にいえば、私たち以上に避難地域の生活と生産の根こそぎを奪われた人たちこそが最大の被害者だからです。

この最大の被害者たちを無視した「脱原発運動」とはなんなのでしょうか?

被曝したというだけで苦しみ「差別」されている地域が視野に入らない「脱原発運動」とはなんなのでしょうか?

陸前高田市は大文字焼きの薪の参加を拒否され、
一関の野菜を食べたら死ぬと言われ、
「毒を撒くテロリスト」とまで罵られ、
疎開した学校で「放射能が移る」と言われていじめられ、
婚約者から「奇形児が生まれる」と一方的に破談にされ、
避難した土地には職がなく、
福島県だけで数万人がいなくなる
・・・こんな人たちと一緒に闘わない「脱原発運動」とは一体なんでのです。

もっとも苦しむ人たちと共に歩まない「脱原発」とはなんなのですか!

もし、被災地瓦礫搬入に危惧をもつなら、行政に対して、地元ゴミと搬入ゴミを分けて処理し、相互に測定結果を常時モニタリングするなどの方法も提案できたはずです。

処分地におっしゃるような破断層があるのなら、別の場所を探せばいい。

対案なく、頭から「被災地瓦礫搬入阻止」を叫べば、あなた方の声はこだまして、私たち「被曝地」の人間の心にひとつの声としてこう伝わるでしょう。

お前らなど来るな。お前らは怖い。お前らの住む地方は放射能汚染されているからだ」。
あなた方はそう言っているに等しいのです

これは単なる無視ではなく拒否です。百歩譲って無視されるのはいたしかたがないとしても、能動的に拒否されるとなると、それは「脱原発運動」が何者であるのかの根幹に関わることです

私は放射能に怯えることはまったくあたりまえだと思います。しかし、ならばもっと脅威の中で生きてきた人々に対して想像力を持ってもいいのではないでしょうか。

涙をしてもいいのではないでしょうか。手を差し伸べてもいいのではないでしょうか。

そして単なる反対運動ではなく、もっとよりよい解決を探してもいいのではなかったのでしょうか。

残念ながら、私には説明会で叫ぶ人たちからはその姿勢をまったく感じなかったのです。

最後に、下図の早川由紀夫氏の作成した放射性物質飛散マップをご覧ください。宮古市はほぼ放射性物質飛散の影響下にありません。宮古市には放射能雲は通過していないのです。

だから福島第1原発との距離を神奈川と比較してみました。放射能雲の影響下にない以上、神奈川と宮古市とは距離による差があるのみです。

それもほぼ等距離距離でした。現在の環境放射線量もほぼ一緒です。反対運動をされている方々は、東北=放射能汚染地帯という先入観ににとらわれて見ているのです

これでもなお、宮古市の瓦礫は危険であり、清浄な神奈川には持ち込ませない、とおっしゃるのでしょうか。

■写真、心の青空はかえってくるのでしょうか。

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被災地瓦礫搬入反対運動の矛盾とは

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被災地から神奈川県への瓦礫搬入について黒岩知事が住民に理解を求めたところ、怒号を浴びて説明会すら満足に開く事ができませんでした。 

テレビ映像を見ると、何人かの反対派市民が聞く耳をもたぬとばかりに一方的に行政をつるし上げている様が見られました。 

正直に言って、あのような人たちが「脱原発」を唱えているのだとしたら、私は一緒になにかをすることはできないですね。 

私には、これは科学性を欠いた「脱原発運動」に名を借りた地域エゴにであると思います。一体なにに怯えているのでしょうか。 

宮古市の瓦礫が放射能を拡散させるというのはナンセンスな言いがかりです。彼らの反対運動の主張は、「放射能を全国に拡散させるな」というものです。http://akitacity.web.fc2.com/link.html 

被災地で今もっとも深刻なことは、瓦礫処分がいっかな進まないことだということを百も承知でこんな「反対運動」をやっているのでしょうか。 

瓦礫が津波で壊滅した町を新たに復興する上で最大の障害になっており、1年たった今なお未だ着工すらできていない地域が多いことの原因だと知ってやっているのでしょうか。

この人たちは被災地の復興を、真正面から妨害しているのです。 

同じ時期に国は、双葉町に恒久的な放射能中間処理施設を作ることを発表しました。双葉町町長は、「これが法の下の平等か」と嘆きました。 

被災地の瓦礫はいっさい搬出させない、しかし、放射能汚染された廃棄物はどんどん搬入する施設を作る・・・。

人間を馬鹿にしてはいませんか。被災地を踏みにじるのはいいかげんにしなさい。 

さて、宮古市は神奈川の茅ヶ崎市とほぼ同等の距離にあります。 

福島第一原発からの距離比較
宮古市    ・・・260km
横浜市    ・・・253km
川崎市    ・・・242km
相模原市   ・・・254km
横須賀市   ・・・267km
 

被曝線量は、外部被曝、つまり環境放射線量と、内部被曝が積算されたものです。この人たちは、自分の住む町の外部被曝線量を見たことがあるのでしょうか。 

2012年1月28日の空間放射線量率の最大値
宮古市     ・・・ 0.052マイクロシーベルト/時
茅ヶ崎市    ・・・ 0.047マイクロシーベルト/時

ほぼ一緒じゃないですか。宮古市が特に危険でもなんでもありません。
 

次に内部被曝を恐れて神奈川に搬入させないと叫んでいるわけですが、かくいう神奈川は生ゴミをの処理を他県に移動しようとしています。

やがては、今満タンになりつつある下水道の汚泥も自分の県の処理施設で処理しきれずに、他県に搬出しようとしています。 

下水道汚泥は都市部の放射性物質の最終蓄積場所です。東京や神奈川の処理施設で高い線量が検出されたことはご承知のとおりです。http://news.kanaloco.jp/localnews/article/1105310059/

もしここで反対派の人たちがいかなる線量であろうとも搬入を許さないと主張するのならば、とうぜんのこととして神奈川の下水道汚泥の搬出も他県によって阻止されることでしょう。 

因果は巡る水車です。宮古の瓦礫をその放射線量もろくに計測しないうちから、まず拒否しようとする。

その理由に、「いかに低線量であろうとも危険だ」というゼロリスクの論理を持ってくれば、やがては自分に跳ね返って、自分の県の下水処理施設が稼働できなくなります。

ここに、相模川流域下水道右岸処理場の汚泥の焼却灰の放射線量のデータがあります。宮古市瓦礫とは比較にならない高線量です。 

神奈川下水道汚泥放射線量(相模川流域右岸処理場・2012年1月16日)                                      ・・・・・1024bq/kg 

千ベクレル超の下水道汚泥をやがて県外に搬出せねばならない地域の住民が、その10分の1以下の瓦礫の搬入を断固阻止するという笑えない構図です。 

問題は「いかなる低線量でも反対」と立ててしまう非現実性にあります。このような硬直したオール・オア・ナッシング論を言い出すから、議論が膠着してしまうのです。 

今回、神奈川県が受け入れを表明したのは100ベクレル以下の、分類上は通常ゴミです。100ベクレルというのは、瓦礫を食べる人はいないでしょうが、食品の規制値(4月発効)でもあります。 

食品規制値以下なのに搬入拒否するならば、一切の食品は他県から持ち込めないことになります。この人たちは、神奈川県を自給自足にして、瓦礫はおろか食料も持ち込ませないという運動でもするつもりなのでしょうか(半分冗談です)。

ところで、既に東京都は被災地からの瓦礫の搬入を始めており、現実に被災地瓦礫の放射線量のデータも出始めています。 

東京都の被災地瓦礫の放射線量測定値
❶都内のゴミと完全に分別された状態で、確実に被災地瓦礫だけの状態で処理された廃棄物の放射線量                    ・・・・検出限界以下(40bq以下)
❷一つの処理ラインで、時間帯を分けて都内のゴミと被災地瓦礫を流した場合(少量の都内のゴミが混ざった可能性がある)         ・・・・・60bq~90bq/㎏
❸都内のゴミと被災地瓦礫を同時に処理した場合・・・・111bq
 

これをみればわかるように、被災地瓦礫単独での処理の放射線量は、都内のゴミ処理単独の放射線量の2分の1以下です。 

被災地瓦礫に反対する人たちは頭を冷やしたほうがいい。どうせ反対するのならば、自分の地域の下水処理場の汚泥の放射線量を計ってからにしていただきたい。

そして遠からず満杯になる自分の処理場汚泥が、宮古の震災瓦礫の比ではない1000bq超という危険水域の放射線量であることを自覚したほうがいい。

その時、自分たちの高濃度放射性物質汚泥が他県から確実に搬出拒否される事態になる未来に対して思いをめぐらせたほうがいい。

被災地復興に手を取り合って進もうという1年前の誓いをもう忘れましたか。自分たちの身に降りかからなければ、この人たちは目が覚めないのでしょうか。哀しいことです。

■写真 ロウバイ(蝋梅)です。蝋のようにすきとおった質感。清涼感のあるかぐわしい香りが特徴です。

 

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疫学的思考で内部被曝を考える。まずは1万人の疫学データから始めるべきだ

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私は、茨城トリインフル事件と、宮崎口蹄疫事件の時に学んだ重要なことがひとつありました。それは疫学的な思考ということです。 

疫学はこのように定義されています。
「疫学(えきがく、Epidemiology)は、個人ではなく、集団を対象とした、疾病の秩序ある研究である。」 (Wikipediaによる)
 

たとえば、宮崎口蹄疫事件の発端と疑われたある農場について、韓国からの人の出入りが噂されました。私自身もそれを信じた時期もあります。 

しかし、後の疫学調査チームによってほぼ完全に否定されました。私は初発の疑惑を持たれた方に対してお詫びせねばなりません。 

「韓国からの人の出入り」という「説」は、疫学仮説でしかないからです。単なる仮説の域を出ない「意見」でしかないわけです。しかしまことしやかに流布します。 

非常の時必ず情報は錯綜し、諸説が飛び交います。見てきたような情報もたくさん寄せられ、マスメディアも混乱するか、沈黙してしまいます。 

残念ながら、人々はこのケイオスの中でもっとも自分が「好む」疫学仮説で自分を納得させようとします。利害関係や好悪の念で選択してしまうのです。 

この仮説の「意見」が、証明されるためには因果関係が立証されねばなりません。そのためには足で歩いたデータの集積が不可欠とされます。 

口蹄疫の場合、発生例と発生例を結ぶ感染の細い線を洗い出し、ウイルス分析にかけていくという気の長い作業が必要でした。 

この疫学調査でシロならばシロなのです。気に食わなくてもシロなのです。 

ではひるがえって、今の放射能について考えてみます。今まさに「仮説」の全盛期です。 

特に福島の事故の後障害について、クリストファー・ラズビー、武田邦彦両氏などは、「福島では今後40万人がガンになる」と言い切っています。 

これが疫学でいう「記述疫学」というものです。つまり一定の考えから導き出されたその人の「意見」、ないしは「哲学」です。 

この段階では、いわば言論であって学説ですらありません。「〇〇となるであろう」というご託宣とでもいいましょうか。 

これを言う人が博士号をもっていようと、あるいはも医者であろうとも、その肩書はとりあえず関係ありません。そのような説を自ら立証するために測定データを集積し、因果関係を立証しなければ信頼性は低いと判定されます。 

バズビー氏の活動仲間であるパンダシェフスキー教授のこのような「言論」はどうでしょうか。
http://peacephilosophy.blogspot.com/2011/09/non-cancer-illnesses-and-conditions-in.html

パンダシェフスキー教授によれば、低線量のセシウム137が臓器の筋肉に蓄積された結果、「心臓血管系、神経系、内分泌系、免疫系、生殖系、消化器系、尿排泄系、肝臓系における組織的・機能的変異によって規定される代謝障害が起こる」としています。 

このバンダシェフスキー説は、わが国の内部被曝脅威論の学的論拠となっているようです。 

私はこの学説が正しいとも間違っているとも判断がつきません。なぜなら、疫学データの測定も不十分な段階では判断材料が不足しているからです。 

このバンダシェフスキー教授の説は、ラットの未確認実験によっています。教授の説が正しいと立証されるには、量と反応が必ず一定の関係であることが証明されなければなりません。 

この教授が行ったラット実験が、他の研究者がいかなる国で行おうとも、何度やっても同一の再現性がなければならないわけです。 

残念ですが、バンダシェフスキー教授のこの低線量と内蔵諸器官への障害の因果関係説は、それを欠いています。

もちろんあくまでも現時点では、ですので後にそれが何度やっても再現されればまた評価は違ってきます。 

もし、ゼロリスク派の論者の言うように、「内部被曝のほうが外部被曝よりもっと怖い。後障害で大量のガンが発生する」というならば、最低でも避難地域の人たちの内部被曝線量の疫学データを検証するところから始めるべきでしょう。 

今、そのデータが出つつあります。欄外の12月30日までのデータをご覧ください。http://www.pref.fukushima.jp/imu/wbc/20120125WBC_joukyou.pdf

12月末までの時点で、福島県避難地域15市町村の11,816人がホールボディカウンダで測定を受けています。この結果は以下です。(欄外参照)
引用開始
 

福島県預託実効線量測定結果(2010年6月27日~12月31日)  

・1mSv以下   ・・・11.792人 (99.8%)
・1mSv以下        ・・・ 12人
・2mSv以下        ・・・ 10人
・3mSv             ・・・・・2人(0.00025%)
 

合計                  11,816人 

(注)
・対象者の抽出は、子ども及び妊婦を優先にそれぞれ市町村に依頼して行った。
・「預託実効線量(mSV)」とは、体内から受けると思われる内部被ばく線量について、   成人で50年間、子どもで70歳までの累積線量を表したもの。
引用終了

この疫学測定データ以外に私たちは内部被曝のデータがありません。もし内部被曝を議論するのならばこのデータを基に議論すべきです。いや、自分の支持する説では違う、という前にまずデータから始めるべきではないでしょうか。

確かに遅れているとはいえ、既に2万人弱の預託線量が測定されており、しかもそれが妊婦や子供を優先して測定している以上、有意なデータであると私は思います。゛

この疫学データには、預託実効線量が50年後に1ミリシーベルト未満が99.8%になると出ています。 

ならば、ゼロリスク論者は内部被曝が50年後に1ミリシーベルトになることが、人体に対していかなる脅威を与えるのかを、数値を上げて定量的に語らねば説得力がありません。

耳目をひきやすい説にのみにとらわれるのではなく、地道に積み上げられていく疫学データに立ち返ってからでも遅くありません。

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■写真 少し温みましたが、まだ春は遠いですね。豪雪地帯の皆様、庇からの雪の崩落にご注意下さい。

 

 

 

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有機農業シンポジウムのお誘い 2月11日(土)茨城大学農学部にて

              有機農業公開シンポジウムのお誘い

2月11日(土) 午前10時から
茨城大学農学部

私も現地報告者で発言いたします。

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「4年後に東京直下型大地震が来る確率70%!」はでたらめ。  東大ゲラー教授、「あの数値にはなんの意味もありません」

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このところテレビのチャンネルを回しても出てくるのは「4年以内に東京直下型地震が起きる可能性70%」という、いやなんともスゴイ話が花盛りです。 

これを言い出したのが、これまた事もあろうに東京大学地震研究所の平田直教授というのですから、こりゃ誰でも驚きますよね。 

あたりまえですが、私は地震学について何も知りません。放射能について知らないのといい勝負です。 

ただ放射能と一緒で、実地体験は去年に震度6強から、月に数十回の余震までふんだんにあります。 

震度6強はすごいですよ。ズーンという低周波が地底から来て、あっと言う間もなくシェカーの中に放り込まれてしまいます。 

私たち被災地は3月11日にこれを45分間に前後3回経験しました。もういい、もう二度とごめんだ。 

もう体感で震度がわかるんだから、我ながらすごいっしょ(←えばることか)。 

さて、もういいかげんゲンナリなりなんですよ。まだ震災からわが地域は立ち直ったとは言い切れないのに、今度は首都直下ですか。 

地震野郎に平手打ちの二、三発も張って、「バカヤロー、たいがいにしやがれ!」と言いたい。 

と苦々しく、なにか嬉しげに大震災が首都に来ると興じているメディア連中の騒ぎを見ていたわけですが、こんな冷静な記事も片隅にありました。 

「週刊新潮」2月9日号の煽り記事の隅っこに言い訳のようにちょこんとこの記事がありました。 

平田教授と同じ東大の地震学者ロバート・ゲラー大学院教授です。ゲラー先生はこう言います。 

残念ながら、現代科学では地震を予知することはできません」。

おーゲラー先生、よーゆうた。こういう言いにくいことを正直に言う学者が私は好きです。だって、つい去年の地震学会でなんと言って地震学者連中は国民に頭を下げたのでしょうか。

「東北大の地震学者らが22日、東日本大震災の発生メカニズムなどを一般市民向けに解説する シンポジウムを仙台市内で開催した。国内有数の専門研究機関を持ち、宮城県沖では以前から  巨大地震が予想されていただけに、東北大の教授らからは「悔しい」など、震災発生を予測できな  かった反省の言葉が相次いだ。

東北大地震・噴火予知研究観測センターの海野徳仁センター長は冒頭、「今の地震学は自然の 持つエネルギーに比べてあまりにも未熟。二度とこのような悲惨な事態を繰り返してはならない、 とあいさつし、研究の立て直しを誓った。」

この舌の根も乾かぬうちに、今度は4年以内に東京でM7ときました。 

私は、後づけでこっちのプレートがもぐり込んだ、やれ引っ張られたという事後解説はできても、これから何年以内に震度いくつの地震がどこでなんて、現代科学の力量の外だとかねがね思っていました。 

東日本大震災のような、あれだけの史上最大規模の地震すら、まったくノーマークだった地震学が、突如数年以内、(それも4年以内ですぜ)の予知が可能になるなんて、そんな虫のいい事があるわけがない。

ただ、専門家じゃないので黙っていたわけです。 その素人の私のモヤモヤをゲラー先生が一気に解消してくれました。

ゲラー先生は地震学の限界をこう言います。 

「私は首都直下型地震が起きない、と言っているのではありません。たとえば1000年以内には確実に東京で大地震が起きるでしょう。
しかし短い間(たとえばこの4年間)の発生確率の正確な予測は困難です。私たちが地震について把握している観測データはせいぜいが100年ていど。
地球誕生から46億年が経過していることを踏まえれば、このデータは一瞬に等しい。要するにサンプル数がすくなすぎるのです」。
 

そして4年以内という数字を弾き出した平田教授のチームに対しては 

出鱈目です。あの数値になんの意味もありません。平田チームが試算したのは、M(マグニチュード)が1上がると発生確率は10分の1になるという地震学の経験則グーテンベルグ・リヒターの式です。 

しかし平田さんらがサンプルをとった期間は昨年3月11日から9月10日までの6カ月間です。あたりまえですが、この半年間、余震の数が極めて多かった。その数値をサンプルにとれば当然、M7の地震が発生する確率も高くなります。彼らの試算は極めてあいまいな数値の上に立脚しているのです。 

そもそもわか国の確率論的な地震予想ははずれにはずれてきた。文科省の地震調査研究推進本部はHPで確率論的地震動予測地図を公表していますが、この地図は北海道南西沖地震も、阪神淡路大震災も、東日本大震災も、なにひとつ予測できなかったのです」。 

「それどころか1979年以降、10名以上の死者を出した地震はこの地図で比較的リスクが少ないとされていた場所ばかりで起きています」。 

そうか、パシッ(←私が膝を打つ音)、そうですよ、地震予測なんて競馬予想より悪い。思い出してみれば、いっそう所ジョージに「日本全国ダーツの旅」で当ててもらったほうが当たろうというものでした。 

私はこんなハズレ馬券の山を築いてきた地震学界が、突如4年後に占い師よろしく大地震が首都で起きるぞよ」などとのたもうても、では大はずしした東日本大震災の時からなにか確率論的予測法に新機軸でも生まれたんでしょうか、と聞きたいところです。

ところが、そんな新発見の確率予想法はないわけです。あいかわらずかつてのはずしまくった経験則の延長上で「4年後に来るぞォ」とハマルゲドン予想をしているにすぎないわけです。

ゲラー先生の言う結論は、明解かつシビアです。煽り媒体の諸君、耳をかっぽじってよく聞きなさい。 

地震研究者たちは東日本大震災を経験したいまこそ、地震予知が不可能であること率直に国民に伝えるべきです。日本は1年間に地震予知に投じられる予算が50億とも100億ともいわれている。徒に危機感を煽り、地震予知を求める国民の気持ちを圧用して国から予算をだましとっているようなものです」。

地震に備えるというのはいいことです。そのために緊縮財政でガタがきている日本のインフラをもっと強化していくのは必要なことです。

地震ですぐ崩落して死者を出すようなわが村の橋のようではなくもっと強い橋に掛け替えるべきです。崩れそうな道路脇の崖も補強工事を施すべきです。それがなされていないために大震災で、道路が各所で寸断された苦い経験があります。

津波に備えるための新たな避難施設や堤防補強も必要でしょう。避難道路も貧弱です。避難を知らせる警報網もまだまだ改良の予知がたくさんあります。

自治体の非常用の用具類も充実とはほど遠いことがわかりました。大震災が起きた時には、非常警報すら鳴りませんでした。そのために地震観測網を更に充実させることもいいことです。

つまり、なにもかも足りなかったのが、今回の東日本大震災だったのです。サイコロを振っているような地震学者と、他人の不幸が商売のマスコミの言説に惑わされずに、地震被害から国民を救う非常時インフラを整備することが先決です。 

そして煽り情報はもうたくさんです。復興から必死に立ち直ろうとしてんいる人たちを、これ以上弄ばないでくれ!

■写真 雪景色の里山。まだ零下5度が続きます。豪雪地帯の皆様、がんばって下さい。

 

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国連科学委員会議長の福島第1原発事故の人体に対する影響の見解

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国内ではなぜかまったく報道されていませんが、2月6日づけ英国ロイターの報道によれば、国連科学委員会((UNSCEAR)のウォルフガング・ワイス委員長は福島第1原発事故の人体への影響について「深刻な被害をもたらすとは考えられない」という見解を述べました。

なお国連科学委員会は、1955年に放射線の影響を研究するために作られた国際機関です。国からの独立性とイデオロギーからの自由が強く謳われている国際機関です。

このワイス委員長のコメントは、昨年のものと内容的に変わりありません。以下、私のコメントなしで転載します。

        ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

[ウィーン 2011年4月6日 ロイター] 国連放射線影響科学委員会(UNSCEAR)のウォルフガング・ワイス委員長は6日、東京電)福島第1原子力発電所の事故について、現時点の情報では、人体に深刻な被害をもたらすとは考えられないと語った。

 ワイス委員長は、環境への影響という観点から、この事故が1986年に旧ソ連で起きたチェルノブイリ原発事故より環境への影響が小さいものの、1979年の米スリーマイルアイランド原発事故に比べると、環境への影響が「はるかに深刻」との見方を示した。 

 一方、福島での事故による健康への被害については、「現在分かっていることからすると、(放射能)レベルが低いため皆無だ。食物においても、年間1ミリシーベルトや5ミリシーベルトなどと話題にされているが、この程度では健康への大きな影響はない」と説明。 

 また、日本の当局が原発周辺地域で子どもの甲状腺被曝(ひばく)調査を始めたことを評価した。

ロイター記事英文 2012年2月1日
http://www.reuters.com/article/2012/01/31/us-japan-fukushima-health-idUSTRE80U1AS20120131

No big Fukushima health impact seen: U.N. body chairman

Reuters) - The health impact of last year's Fukushima nuclear disaster in Japan appears relatively small thanks partly to prompt evacuations, the chairman of a U.N. scientific body investigating the effects of radiation said on Tuesday.

The fact that some radioactive releases spread over the ocean instead of populated areas also contributed to limiting the consequences, said Wolfgang Weiss of the U.N. Scientific Committee on the effects of Atomic Radiation (UNSCEAR).

"As far as the doses we have seen from the screening of the population ... they are very low," Weiss told Reuters. This was partly "due to the rapid evacuation and this worked very well." 

Weiss was speaking on the sidelines of a week-long meeting of 60 international experts in Vienna to assess for the United Nations the radiation exposures and health effects of the world's worst nuclear accident in 25 years. 

The March 11 disaster caused by a 9.0 magnitude earthquake and tsunami wrecked the Fukushima plant on the coast north of Tokyo, triggering a radiation crisis and widespread contamination. About 80,000 residents fled a 20-km (12-mile) exclusion zone. 

Weiss said Japanese experts attending the meeting had told him that they were not aware of any acute health effects, in contrast to the 1986 Chernobyl disaster in Ukraine. 

"What we have seen in Chernobyl - people were dying from huge, high exposures, some of the workers were dying very soon - nothing along these lines has been reported so far (in Japan)," he said. "Up to now there were no acute immediate effects observed." 

Several thousand children developed thyroid cancer due to radiation exposure after the Chernobyl disaster in the then Soviet Union, when a reactor exploded and caught fire and radiation was sent billowing across Europe. 

Weiss said a few workers at Fukushima had received high radioactive doses, but "so far the initial medical follow-up of these workers who had high doses, as far as the Japanese colleagues told us, was OK." 

A preliminary report on the radiation effects of Fukushima will be presented at UNSCEAR's annual meeting in May and a final document will be submitted to the United Nations General Assembly in 2013. 

"We are putting together a jigsaw puzzle, evaluating the exposures of the general public, of workers, and radiation effects, and looking for the missing pieces," Weiss said. 

The U.N. committee, which has published reports about Chernobyl, groups scientists from 27 countries. 

Asked whether he was optimistic that the overall health effects would be quite small, Weiss said: "If we find out that what we know now is representing the situation, then the answer would be yes ... the health impact would be low." 

(Reporting by Fredrik Dahl; editing by David Stamp)

本日は休載とした記事を初めに出しましたが、国連科学委員会の記事速報と差し替えました。

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母親の皆さん、国にしっかりとした放射能後障害に対する長期的計測と医療処置を取るように要請してください!

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まだ若かった時に、「黒い雨」という今村昌平の映画を見たことがあります。亡くなられた田中好子さんが演じる矢須子が、空から降り注ぐ黒い雨に打たれる所から悲劇は始まります。 

黒い雨に打たれた村人の野辺送りが絶えません。 

そして彼女の豊かだった黒髪は抜け落ち、やがて彼女は原爆症だと分かります。そして結婚差別。 

私は見ていませんが、今村監督は巻末に原作にない19分のシーンをつけ加えたそうです。矢須子は死なずに、40数年後四国を巡礼しているシーンだそうです。 

このシーンを今村監督は悩んだ末にカットしました。そしてオリジナルバージョンでは、矢須子がトラックに載せられてトラックに乗せられて去るのを見送る、という死を予感させる場面だっただけに、救いを感じます。 

さて、広島においてもっとも強い放射線量にさらされたのは、実は爆心地ではありませんでした。 

原爆は広島市の頭上600mで炸裂し、巨大な火球になり、上昇気流を発生させながら、核爆弾の中にあった核物質の10%が核分裂を起こし、90%は高度1万メートルの大気圏外に達しました。 

この10%の高エネルギー放射性物質が広島市に注いだのです。光線と爆風、高熱により一瞬にして燃え上がった民家が、黒い煤煙となって風下の北北西方向に流れていきます。これが黒い雨の正体です。 

爆心地では一瞬にして大量の人々が命を奪われました。遺体すら消滅してしまった方が大勢います。そのときの放射線量はガンマ線で100シーベルト(10万ミリシーベルト)、中性子線で140シーベルト(14万ミリシーベルト)にも達します。 

そして爆心地から離れるにしたがって放射線量は下がり500m地点でガンマ線28シーベルト(2.8万ミリシーベルト)中性子線で31.5シーベルト(3.15万ミリシーベルト)になっています。 

この数値は直後に計測できるはずがありませんので、推定数値ですが、おおよそ200mについて被爆量は半分になっていきます。

しかし、問題はもっと別にもありました。それは爆心地より、黒い雨が降った地域のほうが高い残留数値を出していたことです。 

爆心地の残留放射線量は、意外にも、黒い雨降下地域のほうが多いのです。もっとも多い放射性物質の残留が見つかったのは、爆心地ではない場所でした。それは爆心地の約10倍にも登りました。 

原爆内のウラン235の半減期は2億年ですが、この多くは爆発直後に成層圏外に飛ばされてしまい、1970年代の測定では核分裂しきっていない濃縮ウランの形で微量発見されたにとどまりました。 

この風下周辺地域と、投下の翌日から救助のために市に入った人々、そして家族を捜索に入った人々の「入市者」の中から大量の被爆者が生まれました。これが映画「黒い雨」の主人公の女性のような人々です。 

この被爆者のデータは詳細に取られています。発ガンに関しては10年後から乳ガン、胃ガン、大腸ガン、肺ガンを患う人が増えました。 

白血病は2年後から増え始め、子供の発症は大人の2倍になりました。また白血病は、5年から6年で減少に転じて、20年たつと日本人平均にまで落ち着いています。 

1990年の放射線影響研究所の調査結果によれば、後障害により白血病による死亡者数は0.18%、固形ガン死亡率は0.68%とされています。http://www.jichiro.gr.jp/jichiken/report/rep_gunma30/jichiken/4/24.htm

この被爆者を襲った放射線量は100ミリシーベルトと推定されました。この100ミリシーベルトを境にして一挙に発ガンリスクが高まるという経験値はこの広島の被爆者の疫学調査から生まれています これが今にも残るICRP(国際放射線防護委員会)の100ミリシーベルト閾値です

これは学者の学説から生まれたのではなく、多くの尊い被爆者の生命で贖ったものだということを日本人は忘れるべきではありません。 

またこの被爆者の疫学調査では2万5千人の被爆2世の調査も行われました。この結果、遺伝的影響はないという結論が出ました。 

もちろん、よく言われるように「黒い雨」の主人公がそうであったように被爆者差別は根強く、結婚を拒否されるという例が多くあったのも、残念ながら事実です。 

日本の広島・長崎に対する事後対応には学ぶべきものを多く含んでいる思っています。その最大のものは「被爆者手帳」です。 

爆国としてわが国は戦後復興期という、現在と比較にならない困難な状況下で、30万人を超える被爆者を救援しました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A2%AB%E7%88%86%E8%80%85%E5%81%A5%E5%BA%B7%E6%89%8B%E5%B8%B3

被爆手帳、正式には被爆健康手帳はこのような人たちに交付されました。

・原爆と宇梶に広島・長崎の両市とその隣接する地域で直接被爆した人
・投下から2週間以内に爆心地から2キロ圏内に立ち入った人(入市被爆者)
・被爆者の胎児

この被爆手帳によって得られる国家支援は以下です。 

「医療特別手当・特別手当・原子爆弾小頭症手当・健康管理手当・保険手当・介護手当(費用介護手当・家族介護手当)・葬祭料などの手当。

また、指定医療機関・一般疾病医療機関での治療について、本手帳などを提示することで全額国費で、あるいは自己負担分を負担しないで受けることが出来る。また、なんらかの理由で手帳を提示しなかった場合についても、後日都道府県知事に払い戻しを請求することが出来る。」(Wikipediaより)

つまり、放射能の後障害はもちろん、一般病まで含めて被爆者は原則無料で受診することができます。

この被爆手帳により22万人(2010年現在)、最大時で37万人(昭和55年度)が医療サービスを受けました。

これは、直接被爆者のみならず、比較的低い被爆量、今風に言えば「低線量内部被爆」の人々も対象としているために、多くの後障害(晩発性障害)に怯える人々を救済しました

そして広島・長崎の放射能禍がいかなる被害を人体に対してもたらすのかの膨大な疫学データがここから生まれました。

米軍調査団のように冷厳にデータ採取しただけではなく、治療しつつ、その後40年以上にわたって付き添いながら測定していったのです

この膨大な臨床記録が、広島・長崎の疫学データです。これを無視して放射能災害を語ることは許されない存在です

そして原爆投下から65年。広島市の平均寿命は全国一の86.3歳(女性)の地位を誇っています。素晴らしいことです。

現在、わが国で早急に求められているのは単なる補償金ではありません。それすらするそぶりも見せない冷酷非情な政府ですが、忘れてはならないのが被爆者に対する手厚い事後処置です。

定期的な測定と医療体制、カウンセリングなどが、ただ今直ちに必要です。そのためにひつような「福島第1原発事故被爆者支援援護法」を作らねばなりません

いま、政界は被曝した人々をおきざりにして増税と政局にうつつを抜かしています。まさしく為政者の責任放棄です。

しかも広島・長崎と違って、福島第1原発事故は人為的事故です。東電は私企業として会社を潰してでもこれらの人々を救済しなさい!

国は被爆救援法を制定しなさい!

福島の皆さん、特に母親の皆さん。放射能に怯える気持ちは痛いように分かります。私も茨城で「被曝」しました。私と家族は被曝者手帳をもらう資格があります。

ですからあえ言わして下さい。避難だけ主張するだけではほんとうの解決になるでしょうか。チェルノブイリでは数万の避難者が出ましたが、その避難自体によって多くの障害が発生しています。

特に、避難した地域になじめないことによるストレス障害、失業など、避難は必ずしも最良の選択とは言えません。

国にしっかりとした後障害に対する長期的計測と医療処置を取るように要請してください。家族を守るのは母親しかいないのですから!

 

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被曝した広島市民は世界一の長寿をまっとうした

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コメントありがとうございます。
さて、私は言うまでもなく専門家ではありませんが、分かる限りお答えします。 といいますか、ご意見をいただきながら一緒に考えていきましょう。

遺伝子や染色体に対する影響  

前回載せた被曝疫学調査40年間の資料によれば「「性染色体、「平衡型染色体再配列」など、いわゆる奇形に関する統計データには有意な差は認められていません。  

このデータは、責任ある広島大学医学部研究機関による、実に20万人以上の、しかも40年間という被曝者の半生にも渡る追跡調査です。  

統計母集団の多さと長期間にわたるこのデータ解析の信憑性は極めて高いと思います。 

この広島・長崎の被曝者に対する40年間の調査の結果、以下のような放射能の影響があることがわかっています。 

障害は被曝後数週間で発生する急性障害と、数か月から数十年の潜伏期間をへて発症する後障害(晩発障害)に分けられます。 

これは受けた放射線量によります。 

・250ミリシーベルトを短時間に受けた場合・・・・早期に影響が出る
・250ミリシーベルト以下        ・・・・臨床症状が出ないが、後障害に注意を要する
・500ミリシーベルト           ・・・・リンパ球の一時的減少
・100ミリシーベルト           ・・・・吐き気、倦怠感、リンパ球の激減
・1500ミリシーベルト          ・・・・半数の人が放射線宿酔(頭痛、吐き気など)
・2000ミリシーベルト          ・・・・長期的なは血球の減少(白血病)
・3000ミリシーベルト          ・・・・一時的な脱毛
・4000ミリシーベルト          ・・・・30日以内に半数の人が死亡
(「放射能と人体」1999年による)
 

広島・長崎では500ミリシーベルト以上被曝した場合、その線量によってガン発生率が増大することがわかっています。 

つまり、1時間に年間許容限度の放射能を浴びてしまうと、人体はDNA損傷を修復できなくなってしまいます。それがガンなどの原因になる可能性があります

安全か危険かを問う前にしてほしいこと

さて、私が福島住民の被曝に関して、 安全か、危険かと問う前に確認していただきたいことがあります。

どこで、どのような状況で被曝したのか。そのときの空間線量の値を知ること。室内なのか、屋外なのか。
❷被曝期間の長さ。数時間なのか、それ以上なのか。
❸妊娠していたのか、していなかったのか。乳児はいたか、いないか。成長期の子供はいたのか、いなかったのか。
➍安定ヨウ素剤を飲んだか、飲まないか。
➎被曝直後なにを食べたのか。
❻ホールボディカウンタで診断を受けたか、受けないか
 

これらの住民の状況を把握することは体系的にやらねばならず、現在県外に避難している人々も含めて最低でも浜通地域のすべての住民を対象にして、国家が責任をもって行うべきです 

放射能によって奇形がでるという説があるが 

放射線によって奇形異常があるという説も承知していますが、それの多くはその科学者の知見、要するに意見です。 

たとえば低線量被爆についてはECRR(ヨーロッパ放射線リスク委員会)のバズビー氏がチェルノブイリ以降にスウエーデンで数万規模の発ガンがあったと唱えていますが、疫学データの裏付けに疑惑が持たれており、国連科学者委員会(UNECEAR)では採用されていません。 

知見の発表は尊重されねばなりませんが、疫学的データに基づかないものは仮説の域を出ません 

しかし残念ながら現在仮説を百倍膨らました妄想のような意図的差別言辞がネットを中心に多く流されて福島の人々を苦しめています。許しがたいことです。 

これらの愚劣な言辞は、福島の人々を差別し、結婚差別や児童差別を生み出すだけではなく、今後の福島の人々のあるべき健康管理を妨害しています。この人たちがよく使う表現でいえば、かれらこそ真の「東電の手先」です。 

α線とγ線では、人体(染色体など)に対する影響が違うのではないか  

私は専門外ですが、α線であろうともβ線であろうとも、飛ぶ距離や、透過する厚みなどの違いはあっても、いかなる放射線の種類であろうとも人体に対しての影響は出ると思われます。 

核種による放射線の種類は欄外資料をご覧ください。 

セシウムはベータ線・ガンマ線ですが、同じ放射線の仲間には私たちが体内に大量に蓄え込んでいる自然放射性物質のカリウム40などもあります。

横浜で発見されて大騒ぎになったストロンチウム90は(原因は米ソの核実験野残留物質でしたが)、人体が取り込むと骨に蓄積し障害をおこすベータ線です。 

あるいは、原爆で大量に放出される中性子線は、人体を透過しますが、確実に生命体を殺します。 

決定的なことは言いかねますが、放射線の種類は、人体に対する影響に関係ないのではないでしょうか。  

放射線はその量と時間によって、大量に一時期に被曝すれば活性酸素を発生させてDNAに損傷を与えます。 

このDNA損傷に対して修復が間に合わない場合、ガンを発生させます。少量の放射線は日常的な人体のDNA修復作業の中で解消されるとされています。

なお、低線量被曝についての異説は存在します。といいますか、今や異説のほうが社会的に影響力をもっているようですが、とりあえずこれが放射線防護学界の国際的な共通知見だと思って下さい。

ということで、このメカニズムは放射線の種類によるものとは無関係だと思います。  

内部被曝と外部被曝の違い  

外部被曝と内部被曝の差は、おそらく影響と起きるタイミング、時期の違いではないでしょうか。  

内部被曝は食料、呼吸によって臓器内部に侵入しますから、晩発性です。一方、外部被曝してしまうような条件は、空間線量が多いということですから事故初期に限られます。

外部被曝は屋内に退避したり、それなりの防護措置をすれば防ぐことができます。  

たとえば、昨年の3月から4月の一定の時期までは外部被曝に警戒が必要でした。しかし、今は避難地域を除いては、焦点は内部被曝という関節的なものに変化してきています。  

内部被曝は食べないわけにはいかない食料や水を介します。これについて結論的なことは控えますが、私は現時点では発ガン、あるいは奇形を発生させることはないのではないかと思っています。 

それは放射能の影響を受けやすい細胞分裂が盛んな器官である、腸管、造血器官、生殖腺、皮膚であるために、逆にいえば排出も早いことになります。

また成長過程の乳児や子供は警戒を要するのですが、これも比較的早く体外に排出されてしまうことが知られています。これを生物学的半減期といいます。

放射性物質はセシウム136が半減期30年間などとよくいわれますが、現実には生体内から排出されてしまうので身体の中で30年間あるわけではありません。

セシウムの生物学的半減期
・乳児の排出までの期間・・・9日間
・9歳児で         ・・・38日間
・30歳で         ・・・70日間
・50歳で         ・・・90日間
 

週刊誌に福島の子供たちの尿からセシウムが出たと大騒ぎしていましたが、あたりまえです。正常な人体の放射能防御だというだけの話です。週刊誌は他人の不幸が嬉しいようです。 

ただし、呼吸器系は腸管などより排出はむずかしいようです。また微量の低線量放射性物質が各種臓器に蓄積された場合、長期間のうちになんらかの影響が出る可能性は否定しきれません

「福島でガン患者が40万人でる」などというECRRの発言は悪質な妄想の類だと思いますが、性周期の乱れ、呼吸器系の障害、強い心理的ストレスなどは既に福島県の女性から多く寄せられています。

何度も言いますが国は責任をもって福島県の人々、特に子供と女性の健康管理を徹底する必要があります。国は福島県浜通リを中心として県民の医療無料化に踏み切るべきです。

福島の住民の内部被曝線量の疫学データはあるのか 

不完全ですがあります。まだ測定の過程で1万人ていどの住民しか終了していませんが、徐々になされてきています。 

非常に遅い!もう1年ちかくたっているのですから第1次測定は終了してもいいはずなのに。無能政府の不作為と言われても仕方がありません。 

それはさておき、9月末までの福島県の住民4463名の疫学データによれば、この内部被爆量は以下です。
 
・最大数値であった3ミリシーベルト・・・2人
 
・2ミリシーベルト           ・・・・8人
 
・1ミリシーベルト以下     ・・・・4447人 

セシウムが、女性の卵巣に影響を与えるとすれば、650ミリシーベルト以上の被曝線量が必要です。それがチェルノブイリでのラインでした。 

仮にセシウムが全身均等被曝することなく、卵巣にのみ蓄積されたとしても、福島の最大内部被爆量3ミリシーベルトは、チェルノブイリの750ミリシーベルトの、250分の1でしかありません 

ただし、繰り返しますが、これに関しては疫学データが圧倒的に不足していますので、結論的なことは言う段階ではありません。 すこしでも早い住民の測定を願います。

広島・長崎と福島とは違うのではないか

原爆と原発事故は同じ性格の部分と違う性格の部分があります。

ひとつは、原爆と原発事故で出る核種に違いがあることです。原爆は爆発的に高エネルギーのγ線、α線、中性子線を出します。核種としてはプルトニウム、ウラン、ストロンチウムなどです

1970年代に広島大学原爆放射線医学研究所が広島市の土壌残留放射能測定をしましたが、結果はセシウム137はほとんど検出されず、濃縮ウランが検出されました。

原爆はほとんどセシウムを出さずに、ウラン、プルトニウム、ストロンチウムなどを放出します。ですから、小出裕章先生が「広島で落とされた原爆140発分が福島に放出された」という発言は、この広島大学の測定を知らないか、意図的に無視した発言です
もっとも小出先生の専門は原子炉であって、放射線防護学ではありませんが。

一方、福島第1原発事故においては、事故直後に放射性ヨウ素131が大量に放出され、その後にはセシウム134、136が9割以上を占めています。ストロンチウム90やプルトニウムはごく微量が原発近辺で見つかったのみです。

このような核種の違いはありますが、どう考えてもプルトニウムや濃縮ウランとセシウムを同列に並べるわけにはいかないでしょう。言うまでもなく前者のほうが数百倍凶悪です。

次に広島・長崎と福島の共通点ですが、投下直後に亡くなった方を除いて、大部分の方はいわゆる「入市者」という被爆直後に救援のために市に戻った人たち、家族、知人の安否を求めて帰った人々、そして映画にもあった「黒い雨」という煤煙を含んだプルーム(放射能雲)からの雨を浴びた2キロ圏内の人々です。

この方々を中心にして40数年間データ採取されています。 それが昨日に掲載した疫学調査結果です。 

これらの人々は誘導放射能(*原爆から出た放射能が土壌に当たってはねかえて出る放射線)やフォールアウト(*放射性降下)によって被爆しました。 

その数は、被爆直後に亡くなった人々より多い37万2千人(昭和55年度)にも及びます。 

広島・長崎と福島と安易に同列に扱うことは憚られますが、しかし初期における劇症の外部被爆を除けば、あるていどの時間がたった後の土壌や食品、水などを介しての間接的な内部被爆という構図は一緒だと思います 

いや、広島・長崎のほうが福島よりはるかに大きな放射線量を日常的に浴びていたり、吸収していたのではないでしょうか

広島の再生は福島より早かったのか

比較にならないほど速く広島のほうが福島より早期に復興しています

投下から2か月たった広島市内には相当量の放射線が残留していたと思われます。当時の土壌放射線量のデータが見つかりませんが、現在の避難地域以上の線量であったことは確かです。 

しかしその広島に、その年の10月には人が戻り始め、翌年春には交通などのインフラが復旧しています。なんという再生と復興の力でしょうか!

さて、ここに広島で被爆した人たちの後半生のデータがあります。下図をご覧下さい。

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グラフの外縁の-●-が「入市者」という先ほど述べた被爆直後に救援や捜索で市内に戻った人たちのその後です。 

女性、男性の平均寿命(左側)ともに、一目でお分かりのように、全国平均を上回っています。三大疾病、つまりガン、心筋梗塞も全国平均より下です。 

そして広島市の病床数、病院従事者数は全国を上回っています。広島市の平均寿命は女性で全国一です。日本一ということは世界一ということです。 

世界一の長寿の県、これが「60年間草木も生えない」と言わしめた広島の現在の姿です。 

これは、被爆による後の日本政府がとったフォローが正しかったことによります。この核心となったのが被爆者手帳の存在です。 

私は今の福島に必要なことは被爆者手帳だと思っています。長くなりましたのでこれは次回に続けます。 

 

■写真 芽吹いた桜のつぼみ。もう少しでこれを見られます!寒波にめげず芽は春を待っています。

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■ 放射射性物質と放射線野種類

名称        記号  半減期 放射線の種類
 

炭素-11       11C  20分   ガンマ線
酸素-15       15O    2分   ガンマ線
リン-32       32P  14日   ベータ線
カリウム-40     40K  13億年  ベータ線、ガンマ線
鉄-59        59Fe  45日   ベータ線、ガンマ線
コバルト-60     60Co  5.3年  ベータ線、ガンマ線
ストロンチウム-90  90Sr  29年   ベータ線
ヨウ素-131     131I   8日   ベータ線、ガンマ線
セシウム-137    137Cs  30年   ベータ線、ガンマ線
ラジウム-226    226Ra 1600年   アルファ線
ウラン-235     235U   7億年  アルファ線、ガンマ線
ウラン-238     238U   45億年  アルファ線
プルトニウム-239     239PU    2万4千年   アルファ線

 

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放射能の遺伝的影響はない

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このような哀しい話があります。ある福島の若い女性は3.11の後に突然、関西に住む婚約者に婚約破棄を告げられたそうです。 

震災当初は狂ったように婚約者の安否を探し求めた男性は、原発事故の後だんだん疎遠になり、やがて破談を一方的に通告してきたそうです。 

彼は彼女にこう告げたそうです。「もし結婚して子供に放射能の遺伝が出たら大変だ」。 

彼女は一時精神的にぎりぎりまで追い詰められ、自殺すら念頭をよぎったそうです。 

現実に福島では統計数字にこそ現れませんが中絶が秘かに進行しているということを聞くことがあります。 

福島の女性の皆さん、そのようなことは絶対になさならないで下さい。子供を祝福の中で迎えてやって下さい。そしてあなたの腕の中で抱きしめてやって下さい。 

放射能の遺伝的影響は科学的には完全に否定されています。 

それは日本が世界の中で唯一原爆の被曝を受けた民族であり、その膨大な調査記録が残っているからです。 

よく原爆の疫学調査記録はすべて米軍が持ち去ってない、などと知ったかぶりのことを言う人がいますが、それはデマです。

日本政府は、広島大学原爆放射線医学研究所、長崎大学医学部などと共に、膨大な疫学調査をしており、その記録は精査されています。 

これは40年以上に渡って続けられた質量共に世界で最大級の放射能晩発障害の疫学データであり、放射線防護学上のゴールドスタンダード(絶対基準)とまで称されています。

欄外資料を見てください。これは、原爆の被曝者の遺伝的影響を調べたものです。 

「親の被曝量」にレムとありますが、これは古い単位呼称で、0.01シーベルト = 1レムに相当します。よく使われる単位であるミリシーベルトはその1000分の1となります。またマイクロシーベルトはそのまた1000分の1です。 

ですから、この表の上段の被曝量36レムは0.36シーベルトであり、360ミリシーベルトとなります。 

現在、政府は年間1ミリシーベルトで管理しようとしていますから、その大きさがお分かりになるだろうと思います。ちなみにICRP(国際放射線防護委員会)は100ミリシーベルトを閾値として、それから上を放射能の影響が出る範囲としています。 

この資料は爆発時の光線と熱波、そして高線量被曝により即死した方々ではなく、その後に入市された生存者の調査です。それにして600ミリシーベルトです。

いかに広島、長崎の市民の頭上600mで炸裂した原爆が非人道的で許されざるものか、この数値をみただけで伺い知ることができます。 

この統計グラフをよくご覧になって下さい。この背後には膨大な被曝者の苦しみと怒り、嘆きと思いがこめられています。

そしてそれを40数年に渡って採取し続けた科学者たちの執念がこもっています。日本人の宝と言っていいでしょう。 

では、もっとも高い60レム=600ミリシーベルトの項を見てください。 

よろしいですか、600ミリシーベルトは、現在よく私たちが見聞きするマイクロシーベルト単位にすれば実に60万マイクロシーベルトです。一瞬計算間違いをしたかと思ったほどの放射線量です。 

参考までに福島市の事故直後の3月27日の環境放射線量は3.87マイクロシーベルト/h(現在0.67マイクロシーベルト)、3月15日夜の浪江町では330マイクロシーベルト/hでした。
http://www3.nhk.or.jp/news/genpatsu-fukushima/houshasen/fukushima/index.html
http://icanps.go.jp/111226Honbun5Shou.pdf#search='

年間被曝線量に換算すれば、福島市は33.2ミリシーベルト、双葉町で2890ミリシーベルトです。

ただし、事故直後にはヨウ素131が激増し、急速に消滅して空間線量が下がりますから、この単純な初期線量の積算では正しくないような気がします。こういう場合の年間線量はどの時点でするかご存じな方はご教示下さい。

さて、上から3列、4列目の「平衡型染色体再配列」、「性染色体異常」の項になんと記されているでしょうか。

「対照」、すなわち被曝しなかった人は、「平衡型染色体再配列」において異常個体の発生率は9%低く、「性染色体異常」において7%多いのです!  

また最下段の「遺伝性ガン」の項においては430ミリシーベルトの被曝者と一般人との異常個体率は0.05%とまったく同率でした。

これでもまだ放射能の遺伝的影響があると言うのでしょうか。 

現在、この広島・長崎の遺伝的影響の調査を超えるものは世界に存在しません。 

ネットではまことしやかに福島で生まれた奇形のうさぎとか、魚の例が流されています。うさぎや魚の奇形を持ち出すのならば、出産数に対する奇形発生率のデータを出して下さい。 

そのうさぎの出産数の母集団が1万、いや百歩譲って1000個体あって、その中での突然変異数が広島・長崎の突然変異数である0.05%を超えたのならば、有意性があります。

私は現時点で、放射線による遺伝的影響はないと断言します。ですから、福島の人々を遺伝的影響にがあると騒ぐのは止めなさい。それはいわれなき差別です。

■写真 福島の皆さん、もうすぐ春が来ます。春が来ない冬はないのですから。

        ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

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有機農業とはよりよい調和を作る仕事です

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ニックさん。まぁまぁそう思わないで下さい。

浅薄なんてまったく思っていませんよ。特に今の日本の農業者に必要なことはフランクな話をすることです。 

今、東日本の農業者のガードはものすごく高くなっています。理由は分かりますよね。例の風評被害です。まさに「風の評判」でいつまで吹き続けるンだといったかんじです。 

慣行農法のほうはそれでもひと頃より大分よくなってきたのですが、未だ有機農業には強い風当たりがあります。 

それはおっしゃるように「安全・安心」ということを売り物にしてきたからです。それが原発事故で大きく揺らぎました。いや、揺らいだなんて生易しいものではなく、崩壊したような気分すらしたことがありました。 

私が提携しているある有機農産物流通など、社員の夫婦が6所帯も西に逃げたなんて話を聞くと、「おい、じゃあ、畑かついで逃げられないオレなんてどうするんだよ」、なんてガックリします。 

なんせ、親しくしていた元担当者が、赤子を背負って西に逃げよった。ひとことくらい挨拶してけってんだ、などとぶつぶつ言っています(笑)。 

まぁ、「私アブナイ関東には住めません」なんて言いにくいだろうけどさ。 

さて、3.11から私も鈍い頭で考えました。今まで言ってきた「安全・安心」という論理だけで有機農業を語ってきたのは、どこか間違っていたんじゃないか、って。

「安全・安心」って非常に分かりやすいので、今まで20数年そう言い続けてきたわけですが、ちょっと違うんじゃないか、と。 

だって、消費者の皆さんの放射能に対する脅威の水準はどんどん低くなるわけで、今や先鋭な消費者の間では、「5ベクレルあったら買わない」などということがささやかれているわけです。 

いわゆる「ゼロリスク」ですね。このゼロリスクを求める人と、今まで有機農産物に「安全・安心」を求めてきた人の層はほぼ重なっています。 

しかし、私たちはゼロリスクには対応不可能です。 

ひとつは言うまでもありませんが、外部から来る福島第1原発からの放射能です。これは大分減りましたがゼロではありません。 

そして見逃してしまいがちなのですが、今一つは自然放射能です。関東では年間で1.5ミリシーベルトくらいあります。関西はもっと高いですね。 

それは地中にもあって、代表的なものがカリウム40です。ほうれんそうなど210ベクレル/㎏もあります。これだけで規制値の倍です。大根など70ベクレル /㎏。(「現代農業」10年8月号) 

ね、すごいでしょう。これは関東だけではなく、地球上、いかなる地域も地殻がある以上一緒です。数値は上下しますが。日本は北米や南米、インド亜大陸よりはるかに自然放射能は低い地域です。 

今の食品規制値はセシウムですからあまりとやかくは言われていませんが、もし自然放射能も含めるとなると地球上で作物を作れる場所は海以外になくなります。 

なんで私がこんなことを言い出したのかというのは、「ゼロリスク」など地球上にはないということです。ないものねだりだということです。 

しかし、地球というのはよくできているもので、新たに発生した人工的放射能に対しては防御する力をもっているのです。 

ある放射性物質の新たな攻撃といいますか、侵入に対して地中で防御して、もとの環境に戻してしまう働きがあります。

生物学者の福岡伸一さん風にいえば動的平衡ですね。有機農業風にいえば拮抗作用です。

代表的なのが、土中に多くある粘土質土壌です。これはマイナス電荷をもっていて、プラス電荷のセシウムを面白いようにピタピタとくっつけてしまいます。 

次にスゴイのが地中の腐植物質です。落ち葉や木質の発酵分解したものですが、これも電気的セシウム・ホイホイの役目を果たしています。

三つ目は土中生物や微生物です。彼らはミミズや地虫、バクテリアや微生物の類ですが、土をパクパク餌として取り込む時に一緒に放射性物質も食べてしまいます。

食べたものは一部が排泄されてまた食物連鎖下位の土中生物が食べ、そしてだんだんとセシウムは減っていきます。

これでもまだ逃げているセシウムがいるわけですが(遊離セシウムといいます)、これは土壌改良材として土栗に利用されていたゼオライトという粘土質資材がガチッと捕捉してしまいます。

ゼオライトには、それはそれは小さな孔があって(細孔)、なんとそれがセシウム分子と偶然にも同じサイズなのです。そしてコロコロとセシウムがその細孔にころがって満杯になると、ズーンとその孔が閉じてしまうのですからむごい。シーニング現象と言います。

このゼオライトのセシウム捕捉は他と違って物理的吸着ですから、電気吸着よりはるかに強いわけです。

このように土中のさまざまな物質や生物は新たな人工放射能に対して防衛して、自らの営みを通して再生する働きをしています。

そしてもうひとつ忘れてならないのは、人間が行う「耕す」という営みです。セシウムは地表5㎝にだいたい集中して存在していますから、これをロータリーで攪拌してやれば希釈されることになります。

私の実測では、耕耘前と後では多い場合10分の1にまで放射線量は低減されました。

つまり、人工放射性物質はヒトが耕耘することで希釈し、土壌物質や生物によって吸着されていくんですね。これを知った時には,、私はジーンとなりましたよ。

なにもクソ高いプルシャンブルーだ、なんとか化成のセシウム除去剤なんかを使わなくとも、今まで私たちがやってきたあたりまえの農業のやり方でよかったんだ、と思いました。

特に「有機農業」だなんて言わなくとも、まっとうに土作りをしている農地は時間はかかっても確実に線量が減っていきます。

そういう意味で、農業は放射能の最前線で闘って地域の放射線量を減らす重要な働きをしているのです。

去年作物を作らない福島の農家が妙に消費者にもてはやされましたね。私はその時うまく言えないが、どこか間違っていると思いました。

農家が耕さなくなったら負けじゃないですか。農家としてのなにか大事なものを捨てたようなものじゃないですか。

そうなんです。耕さないということは放射能との闘いをあきらめたことでもあるのです。

耕すことにより、地中で一生懸命に闘っている土壌物質や土壌生物により希釈された環境という支援を与えているのです。

私たち人間は放射能に対して孤独ではないのです。地球上のあらゆるものが味方してくれています。

それがおぼろに分かってきた時、私は「安全・安心」、化学物質を使わないということだけで有機農業を考えるのは止めました。

有機農業とはたぶん、土中のハーモニーを大事に思って、それを人が少しだけ手助けすることでもっとよい調和を作り出すことだと思います。

人だけでなんとかしようと思わずに、うまく土壌や土壌生物とつきあって調和のある「土」を作ることです。

それによって「安全・安心」になるのであって、それは結果であって原因ではないのです。

この10か月失くしたものはたくさんありますが、得たものも負けずにたくさんあります。その得た最大のものは、私たち人間は孤独ではない。さまざまなものによって支えられているんだということが分かったことです。

それが私の「絆」です。

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