ジャポニカ米をめぐる国際的要因について
現在原油はイラン情勢の緊迫化を受けて9か月ぶりの高値を更新しています。
「指標である米国産標準油種(WTI)3月渡しの終値は、前日終値比0.93ドル高の1バレル=103.24ドルと、昨年5月10日以来、約9カ月ぶりの高値をつけた。」
(毎日新聞2月16日)
よく国際穀物相場で言われる変動要因は、たとえばロシアやウクライナといった穀物輸出国の輸出制限であったり、あるいは、オーストラリアの干ばつといったことですが、今ひとつ重要なファクターに原油相場があります。
下の表をご覧ください。
赤線の原油相場と黄色線のコーンの相場に着目してください。完全にパラレルになっていますね。これが穀物相場の基調をなす原油-コーン相場曲線です。
2008年7月までの原油価格の上昇は、アメリカの投資ハゲタカ集団が餌をあさりに原油に食いつき、価格をつり上げてしまったためといわれています。
そして原油価格が上昇すると、ガソリンの価格が上昇し、そしてガソリン代替物が上昇します。それがバイオ・エタノールです。
ハゲタカ共は、それを見越してバイオ・エタノールの源材料となるコーンまでホットマネーを注ぎ込んでおり、コーンまで上昇してしまうわけです。
この連動はコーンで止まらず、他の穀物相場の大豆、小麦、コメなどにも波及して穀物相場が原油高騰と同時に上昇していきます。
この連鎖はコーンを餌とする畜産価格にまで波及し、小麦、コメなどの主食関連まで影響を与え、特に輸入外貨をもたない貧困国に食料危機をもたらしています。
ただし例外としては、2008年3月(グラフ左から3分の1の部分)の小麦ように原油価格が上昇しても、原油は貯蔵が効くのに対して、穀物は長期保存に適さないために市場放出が行われた結果、価格が原油価格とは反対に下がるというケースもあります。
このように国際穀物相場は、原油、ヘッジファンド、新興工業国の買い、天候、穀物輸出国の輸出政策などの多くの要因で変化をしています。
またジャポニカ種のコメ生産が現在されている地域は以下です。
➊中国・・・・東北3省(黒龍江省、吉林省、遼寧省)や北京市・河北省の周辺。長江の河口周辺の省や雲南省など。生産量も精米換算で一千万トン超。生産余力あり。
❷アメリカ・・・カリフォルニア、南部・アーカンソー州。800万トン超。生産余力あり。
❸南米・・・ブラジル南部、ウルグアイ、アルゼンチン北部。生産余力不明。
➍東南アジア諸国・・・タイ、ベトナムなど。生産余力あり。
➎オセアニア諸国・・・オーストラリア・NZ。生産余力あり。
今まで日本のコメは700%の高関税の堤防で外界から遮断されてきたわけであり、国際穀物相場やジャポニカ米の競合国の輸出生産量とは無関係な真空状態の中にいました。
TPPの是否とは別に、TPP以降は今上げたすべてのファクターが日本農業にいっせいになだれ込むという事態は冷静に想定しておくべきでしょう。
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