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大手青果流通の放射能独自基準に思う

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果流通において放射能の独自基準が登場してきています。これは、この4月から国が食品規制値を大幅に下げる先を行く流れです。 

政府新基準値は以下です。
・飲料水・・・・10bq
・牛乳・・・・・・・・50
・乳児用・・・・・・50
・一般食品・・・100
 

これに対して、ある大手青果流通はこのような独自基準値を設けました。
・飲料水・・・・・・・・・・6bq
・牛乳・乳製品・・・・・10
・乳児用・・・・・・・・・・・5
・米・パン・・・・・・・・・10
・青果・穀類・・・・・・・20
・肉類・・・・・・・・・・・・20
・卵・・・・・・・・・・・・・・6
・魚介類・・・・・・・・・・50
・海藻類・きのこ類・・100
・その他・・・・・・・・・・50
 

ご覧のように、政府が野菜、米などを統合して「一般食品」として統合したのに対して、従来の政府規制値よりいっそう細かいジャンルわけがなされています。 

ここまで細かいジャンルわけをすして、それに対応する規制値を設定するとなると、消費者に衆知させることが大変になることは予容易に想されます。 

また、これにかかる測定も煩雑になり、複数の農産物を出す産地では混乱が生じることもありえるかも知れません。 

次にその独自基準のレベルの先鋭さです。 

特に量的に中心を占める野菜が政府規制値の5分の1の20bq、米が10分の1の10bqという数値設定は、正直に言って驚きました。 

これはケタ落とし以上の内容で、ひたすらスゴイもの作ったねぇ、と嘆息してしまいました。 

お分かりのように、この野菜20bq、米10bq、肉20bqという独自基準値は、測定機器の測定最下限に等しい数値です。旧式の測定機器では20~30bqが下限ですから、最新鋭のゲルマニウム測定器で対応するしかないというレベルになります。 

この独自基準値は、事実上の「ゼロリスク宣言」であると解せざるを得ません。 

現行で産地がクリアしているという自信があっての設定でしょうが、茨城、福島、千葉、群馬、栃木などのでは、たとえば米20bqなとは検出される可能性が高い数値です。 

また野菜類も現行ではクリアしているものの、今後でないという確証はありません。肉に至っては野外放牧していた牛があるわけですから厳戒を要します。 

チェルノブイリにおけるドイツ南部の被曝地帯では5年間もの長きに渡って低レベルではあっても放射性物質が食品から検出され続けました。 

ということは、わが日本においても今後短くとも5年間は地雷源の上を歩くことになります。 

一方、残念ながら現状では茨城、千葉の産地では測定が大きく遅れており、現状把握すらできていないのが実態です。 

これは測定機器の圧倒的不足によります。産地レベルではシンチエーションベロメータが高価なために所有している産地は限られています。 

いきおい、計測会社に依頼するわけですが、一検体が30bq以下だと3万円と高額になります。 

私が繰り返し書いてきているように、よくやられているような一枚の畑での一カ所だけの測定は言い方は悪いですが、気休めかアリバイ作りのようなものです。 

一枚の畑にもホットスポットは隠されており、たまたまそれに当たらなかっただけかもしれません。一枚の畑で最低5検体をとる、というのが私の持論です。

しかし、農業現場に対する測定支援、除染支援はほとんど無に等しいのが現状です。この現状を改善することなく、基準値だけ先鋭化していくのならば、必ずどこかで問題が生じる恐れがあります

基準値はしょせんペーパーの世界。農業は現場仕事なのですから、まず農業現場の測定-除染に対する支援をして、その流れを見ながら独自基準値を設定しても遅くはなかったのではないかと思います。

と言っても、作られた以上、数値基準はひとり歩きします。おそらく競合する同業他社はこの独自基準以下のものは作れなくなってしまったでしょう。

青果市場卸を除く、食品流通業界はこの独自基準値に合わせた基準値に統合されていき、政府基準との二重規範状態になります。

私はベラルーシの食品基準値が14年かけて現行の厳しい内容になったことから見て、食品の放射能からの安全には時間が必要であり、その時間とはなにより農業現場の測定-除染作業に要する時間だと思っています。

この独自基準値は「時間」という担保なき付加価値生産ではないでしょうか

今回のこの独自基準は消費者の放射能に対する内部被曝の恐怖を和らげる付加価値にはなったでしょうが、農業にとってはいかなる意味をもつのかやや暗澹たる気分です。

■写真 カンボジアのハスの花です。日本のとは違ってド派手。

 

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原子力事故」カテゴリの記事

コメント

恐怖こそが大衆を煽る最大のツールです!。
近代以降の世界政治を思うと実に分かりやすい。

大手(イ〇ンですね。山形でも侵略が進んでます)は金と力で正当性を謳い、消費者は集まる。
地域商店街をぶっ壊す巨大モールやスーパーですが、間違いだとは言えないだけにもどかしいです。

ああ、地物の野菜や肉を食いたいんだけどなあ…流通システムなんか皆さん知らずに安ければ買うわけです。

すいません、現在いろいろとメタメタなので、こんなとこで失礼。

投稿: 山形 | 2012年2月21日 (火) 10時38分

個人的には、現状、食べる前に、放射線汚染量を確認するより、例えば、1週間分の料理そのものをミキサーに掛けて、シンチレーションメーターに掛けながら、生涯食品被曝率を自己管理する方法の方がベターだと思ってます。

測定費用も安価に出来ますし、サンプル採取頻度も、短時間で測定できるので、ベターだと思ってます。
農家さんとしては、単品目についての、安全性PRにより、地域JAや卸し仲買人、直接販売者に、含有放射線量を知らせたいと言う立場でしょうが、ホットスポットと言われる地域以外の農産物は、その単品を、1食食べたから、入院したり、死亡したりするレベルではないので、呼気被曝総量をガラスパッチで、測定すると同様に、仕入れた産地、使用量をメモしておいて、先週食べた、総被曝量を、自己管理するのが、1番簡単で、自分の被曝量管理には、良い方法と思います。
すでに、一部の学校給食では、使われていて、学校給食は、過去2週間分の使用原材料を冷凍(-18度)で、50gづつ保存してますので、調べれば、どこの地域のどんな食品が、汚染量が高かったと言う事は、追跡できます。

鮮度が命の農産物に、NDに近い値を個々で、測定したところで、販売促進という1メニューでしか、ない行為を、ゲルマニウム半導体測定器で、測定し続ける意味は、減ってきていると思えます。今後は、魚介類の測定に、それらの機器を使っていただいて、サンプル量を増やす方向に向かうべきと思ってます。1週間分の総ベクレル量は、現時点では、大問題になるようなレベルは聞いていませんから。

投稿: りぼん。 | 2012年2月21日 (火) 10時41分

山形様
管理人さんが書いている大手青果流通ってイ○ンじゃないのではないでしょうか??

もともと有機農産物を扱ってきたところですし、震災後は早い時期に自前でゲルマニウム半導体の測定器を配備して、ゼロリスク志向の消費者に対しての販売も行っている所です。(確か、福島の取引農家と連携して放射性物質の低減の取り組みを行っているとの記載も読んだことがあります)
うち(千葉県)の近所の民間企業が経営している直売所では、簡易検査機器(LB200)を導入して、20Bq/kg以下の不検出の生産者のものにシールを貼るという取り組みが始まりました。ううむ。

投稿: ろこ | 2012年2月21日 (火) 12時36分

ろこ様。実在の団体名は差し障りがありますので、その関連部分を消させていただきました。ごめんなさい。

投稿: 管理人 | 2012年2月21日 (火) 12時55分

他スーパーとの差別化による優位販売であると思いますが、どうやって現実的な対応をするのか?まだ一ヶ月チョット有りますが、時間的余裕は無いと思います。
実際は北関東から東北にかけての青果物を排除する動きになるのではないか?と想像していますが、その影響はかなり大きなものと考えます。
消費者にとって、どこまで安心出来得るのか?まったくのゼロでなくてはならないのか?安心できる基準も人それぞれだし・・・難しい・・・・

投稿: 北海道 | 2012年2月21日 (火) 16時56分

>特に量的に中心を占める野菜が政府規制値の5分の1の20bq、米が10分の1の10bqという数値設定は、正直に言って驚きました。
これはケタ落とし以上の内容で、実に現行政府規制値の0.06%、米で0.02%です。ひたすらスゴイもの作ったねぇ、と嘆息してしまいました。

米は現行の基準値が500Bq/Kgですから
10Bq/Kgという独自基準値は、
10÷500X100=2%という計算になりませんか?
%表示で100倍計算が間違っていると思います。

投稿: 首都圏のママ | 2012年2月21日 (火) 21時43分

福島市ではインだけではなく地元の比較的大きいスーパー他二社も数ヶ月前から独自の基準を作って地元の野菜、特に 原木椎茸などは例えセシウムがNDであっても取り扱いはしないようです。
米も同じように例え基準値以下でも喜んで買ってくださる消費者は地元でも多くはありません。
喜んで食べていただける消費者の方がいたから作り続ける事ができたのに…
すみません愚痴になってしまいました。

投稿: さくら | 2012年2月21日 (火) 22時33分

首都圏ママさん。うっかりミスを修正しておきました。ありがとうございます。もう少しご意見をお聞きしたかったですが。

さくら様。同感です。食品は、作るものと食べるものが対になってできていくものです。
その原則が3.11以降うやむやになり、農民だけが加害者にされてきました。

そして政府基準値は消費者にしか向いていない内容でした。この某流通の独自基準値はそれの上をいくものです。
現実にいかにして線量を下げていくのかという取り組みが明確になっていないところで規制だけ強めてもしかたがないのではないか私はと思います。

投稿: 管理人 | 2012年2月22日 (水) 05時43分

ろこ様、ご指摘ありがとうございます。

さくら様。
もう随分前ですが、ichiiで何度か買い物したことあります。
販売する側も、供給する農家も大変なことですね。


先週のフジテレビ・ニュースジャパンの特集、
10bq以下NDとした検査結果を提示して販売していた独立系果樹園が、ネット販売壊滅。しかし、東京のNPOで図ったら9.6bqだったとか(本来ND表示のはずがNPOの方針で全て数字公開、どちらも測定時間は30分です)。
もう測定誤差の範囲そのものですが、具体的な数値を示したら受注復活したとか。
ゼロリスク信者は論外として、なんとなく心配だという消費者…このケースを見て複雑な気持ちになりました。

投稿: 山形 | 2012年2月22日 (水) 06時45分

http://www.aeon.jp/information/radioactivity/pdf/inspection3.pdf

独自ブランド食品と米のみ、自主検査して、ほとんどの食品は、JAなどの検査結果のみで、流通販売してるらしいので、イOンで購入すれば、セシウム汚染リスクがないとは、言えない状況でしょうね。米200トンに1サンプルとかのレベルだし。。

ほとんど、コマーシャルのためでしかなく、実態が、ついてきていないです。
購入した商品を、自主検査場で、再検査したら、自主基準オーバーの食品が出てくる可能性がありますね。

自主測定して販売する姿勢は、良いのですが、安全、安心の確保より、コマーシャル優先だと思えるのですが。。

投稿: りぼん。 | 2012年2月22日 (水) 09時41分

http://www.fujielectric.co.jp/about/news/11080102/index.html
~梱包された食品を連続的に測定可能~
すくなくとも35Bq/Kgなら、上の機械で全量検査が可能だと思いますがいかがでしょうか?


投稿: 首都圏のママ | 2012年2月22日 (水) 21時03分

首都圏のママ様。
35bq程度なら許容されるということでしょうか?
私など気にしないレベルですし、それはまあよろしいのですが、この高価な機械の導入コストは誰が負担なさるのでしょう。

富士電機は地味ながら、産業用機械の部品などで良い仕事をする会社です。
これからもっと高精度で安価になればよいし、メーカーもそこを狙っていることでしょう。
ただ残念ながら、今すぐにどこにでも導入とはいかないでしょうね。

投稿: 山形 | 2012年2月23日 (木) 09時18分

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