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NHK「真相ファイル」は脱原発を言いたいために捏造を繰り返した

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先日、あるシンポジウムで福島、茨城の農業者と語り合う機会がありました。 

そのとき、見事に一致した意見が、「いちばん欲しかったのは情報。今も正しい情報と誤った情報が混沌としている。正しい情報がほしい」、というものでした。 

正しい情報なくしては闘えません。私たち現場の人間には声高なアジテーショーンはいらないのです。必要なのは、正確な事実と証拠です。 

さてNHKが、2011年12月28日に放送した「低線量被ばく 揺らぐ国際基準 追跡!真相ファイル」は、まさに誤報と捏造のデパートでした。 

まず、スウエーデンで低線量被曝により34%事故後にガンが増えたとする「有名な」トンデル説が紹介されます。 

これについては、一昨日述べたようにスウエーデン当局の疫学資料があり、明確に否定されています。低線量被曝でガンが増加したという事実も証拠も存在しません

このトンデル説は、疫学資料を意図的に改竄して、被害を持説に都合のいいような誇張をおこなっていたことが証明されています 

とうぜんのこととして、国連科学委員会では相手にされていないトンデモ説です。 

しかし、この34%増加説に従ってECRR(*ヨーロッパの反原発運動団体)のバズビー氏は、日本で「福島で40万人がガンになる」と放言し、「福島から避難しろ」というパニックを引き起しました。 

この34%増加説を、NHKという公共放送が番組で流すことで権威づけてしまったのですから罪が重いといえます 

これはNHKが日本でも公開されている疫学データの裏をとらなかったためですが、とりあえずまだ誤報の範疇といえます。 

しかし、「2011年10月、ICRP勧告の見直しをめぐって開かれた会議において、ICRP(国際放射線防護委員会)元委員から、低線量被曝の基準を半分に緩和した、という証言を得た」、という報道に至っては、もはや誤報ではなく意図的捏造です。 

番組の中でNHKは、こう言います。 

「ICRPは1980年代に広島・長崎のガン死亡率が1Svで5%だったのが、500mSvで5%にデータが修正された時、ICRPは勧告を修正しなかった。
その理由を、この元委員は「政治的な判断だ」、17人の委員のうち13人が原子力産業の出身者であるからで、「原子力村」の政治的圧力があったからだ。」
 

事実は真逆です。NHKのいうようなICRPの上限値引き下げの事実はありません。まったく逆に、ICRPは1990年に第60号勧告(*ICRPには命令する権限はない)の中で、公衆被曝の年間を5mSvから1mSvに規制強化しています 

この引き下げ勧告についてICRPの元委員が、「政治的なものだ」と言っている言葉を、NHKは「基準を緩める政治的な圧力があった」というふうにねじ曲げて報道しました。

この元委員の言う「政治的なもの」という部分は、「5mSv以下にする科学的根拠はなかったが、放射能の健康被害についてチェルノブイリ以降心配する世論が強いので大幅に下げた」と解するべきです。

私は「原子力村」を憎みます。しかし、このような少し調べれば勧告の内容など簡単に分かるものを、真逆に報道する神経が理解できません。 

これに対して直ちにICRPの委員から厳重な抗議を受けています。もしこれでNHKが負ければ(負けるでしょうが)、NHKの意図とは正反対の効果を生み出すでしょう。 

捏造はまだ続きます。 

次いで、番組は「驚くべき事実」なるものをセンセーショナルに伝えます。ICRP の クリス・クレメンス氏のインタビューとして、氏の画像と原音を流しながら字幕を入れていきます。 

その字幕ではこのように出ています。 

「ICRP が採用している低線量の被ばくによるガンのリスクは、広島・長崎での被爆者の追跡調査の結果から得られたリスクの約半分だ」、そして「低線量のリスクを半分にしていることがほんとうに妥当なのか議論をしている」。 

この字幕では重要なことが伏せられています。クレメンス氏がNHKのインタビューにに対して答えている対象は「低線量のリスク」一般ではありません。 

これは字幕と原音を聞き較べれば歴然としています。 

原音・One is this question of DDREF, and one is the question of  extrapolation. So, we have ah ... dose in this direction ...
・「一つは DDREF(線量・線量率効果係数)についての疑問であり、一つは外挿についての疑問です。さて、ええと、こちらの軸に線量をとり 」
字幕・「問題は低線量のリスクをどうするかです。」
(ソース buveryの日記による)
 

NHKは明らかにDDREFというこのクレメンス発言の主語を字幕で意図的に伏せているのがお分かりいただけると思います。 

クレメンス氏が答えているのは、あくまでもDDREF(線量・線量率効果係数)のことです。DDREFは、一般には聞き慣れないでしょうが、少なくとも米国に健康被害を調査する取材チームなら基礎知識でしょう。 

DDREFは放射線量の基準値ではありません。低線量低強度被曝の場合の健康煮与える効果が、高線量での結果の何分の一かを計算する係数です。

ですから、この中でもクレメンス氏は原音の中ではっきりと「DDREF2」と言っています。この最後の「2」というのが係数で、実際の線量の2分の1分で実効放射線量を考えましょう、という目安です。 

「低線量の放射線をゆっくりと浴びた場合は、強い放射線を一気に浴びた場合よりも健康被害が少ないので、それを補正するために DDREF(線量・線量率効果係数)で割ることにする。 ICRP では DDREF を 2 に選ぶ」。
(
被ばくによってガンで死亡するリスクについて) 

あたりまえですが、実際の防護は実効線量を基準にして行うわけですから、DDREFが2であろうと、15であろうと、ICRPが「リスク評価を半分にしてしまった」などということはありえません。 

たとえば、仮に年間10mSv浴びたとするのなら、DDREFがいくらの値であっても、被曝線量はあくまでも10mSvであって、実際の防護の行動はDDREFによらず全く同じです。 

米国 BEIR(米国科学アカデミー 電離放射線の生物学的影響に関する委員会) はDDREF を 1.5 くらいに取ろうと言っていますし、国連(UNSCEAR)はそもそも DDREF の概念自体を認めていません。(ソース 学習院大学・田崎晴明教授) 

したがって、クレメンス氏は単に「DDREFを半分として考えることが妥当か議論をしている」、と言っただけであり、ICRPが「リスクを半分にしてしまった」などということではまったくないのです 

被取材者が言っていないことを字幕で流すという行為は、報道の原則を逸脱した情報操作であり、許されざる行為です。 

NHKの番組制作意図は、たぶんこのようなことではなかったかと思います。
➊低線量リスクはある。
❷それをICRPはリスクを過少に評価している。
❸それは国際的な原子力推進勢力の圧力だ。

この意図自体は意味がある調査です。ほんとうに低線量リスクが実際に証明されたのなら画期的なことですし、それをICRPが握りつぶしていたのなら大変なことです。

まして、それが国際原子力村の仕業ならば、ピタリと脱原発の構図にはまります。

実際に番組の中でもICRPの名誉委員であるマインホール氏が、「ICRP は原子力エネルギー推進派の圧力を受けている」という発言をしています。

ああ、もったいない。こんな発言をもらっておきながら、その前段➊❷の論証部分が勉強不足と捏造だったためにだいなしになりました。

初めから結論を決めて、それに合ったものしか取材しないからこうなるのです。

しかし、NHKがこのまま頬被りしていけば、「真相ファイル」は「真実」ということで流布されていくことでしょう。そしてその虚偽が崩壊した時に、「脱原発」の信頼性までもが瓦解してしまうのです。

次回は原発の近隣でガンが増えているという番組内の報道を検証します。

■写真 春一番に咲くのはイヌフグリの可憐な小さな青い花です。

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コメント

ETV特集や、昨夜のクローズアップ現代スペシャルで、被災現場に焦点を当てた良い番組を作っておいて、
これまで評判良かった「真相ファイル」ではこんなカス番組を意図的に流す…これが残念ながらわれらが国営放送の実態。
全く悲しくなりますね。

結論ありきでそれに合わせた捏造構成など、あってはならないと思います。日本の恥。

投稿: 山形 | 2012年3月 6日 (火) 09時38分

http://www.e-kea.org/atom/solar/start

今、東電と仲の良い、スーパーゼネコンやゼネコンによる、福島第1原発復旧作業が行われてますが、
純粋に技術的最適な収束方法は、URLの案も、良い案だと思います。
架橋作戦は4号炉対策です
 モグラ作戦はメルトダウンした燃料の取り出しです
 遮蔽ダムは 公海汚染防止です

これらも検討案に入れてもらって、東電との随意契約的なスーパーゼネコンに、依頼しなければならない理由は、ありませんから、きちんと、正しい工事が出来る会社や設計監理が出来る技術者を送り込むべき段階だと思うのですが。。
どうなんでしょうか?

投稿: りぼん。 | 2012年3月 6日 (火) 20時11分

世界中の地震の規模と頻度、原発の立地を考えると、日本みたいな地震大国に原発をつくるのは自殺行為だと思います。
はっきりいって、日本中に時限爆弾を仕掛けられていると一緒。
津波で、F1が破壊されたみたいな報道が繰り返されています。たしかに、原子炉を冷やす冷却設備が破壊されたことも原因ですが、一番の問題は、原子炉への送電線が倒壊し、全電源を喪失しちゃったことだと思います。だから、地震や津波が防げても、停電すると日本終了ってことだと思うのですが。F1の放射能問題がなかったら、今回の地震も津波の被害もあっというまに復興していく力があると思いますが、放射能の問題が、今後も重い足かせになると思います。
捏造までいうのは、言い過ぎだし、そもそも、放射能障害を発ガンと白血病(白血病も骨髄の発ガン)ばかりに限局して言及し、ベラルーシで小児に証明された循環器の問題や、チェルノブイリエイズの問題を無視するのはどうかと思います。

ま、低線量内部被曝を否定したい人には、そういう論調になるしかないんでしょうね。

管理人さんが捏造とおっしゃるNHKのサイトから。
ピックアップ@アジア 「チェルノブイリの教訓・ベラルーシの知識と経験を日本に活かす」
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/450/107991.html

投稿: 首都圏のママ | 2012年3月 7日 (水) 00時43分

首都圏のママさん。

>津波で、F1が破壊されたみたいな報道が繰り返されています。たしかに、原子炉を冷やす冷却設備が破壊されたことも原因ですが…

だいぶ違います。
鉄塔の倒壊に続き、バックアップの非常用ディーゼル発電機及びバッテリーが配電盤を含めて地下にあり浸水したためです。
だから「全電源」喪失という表現なのです。

地震多発国には危険が大きいのは確かです。

>放射能問題がなかったら…

三陸の復興が遅々として進まない現状は、連日放送されています。瓦礫受け入れ以外に沢山の問題があるのが解るはずですが。

その他、あくまで「真相ファイル」の矛盾についての記述にたいして、
>そもそも、…以下のコメントは的外れです。

リンク貼られましても、別に誰もその内容を否定してはいませんし…

>ま、低線量内部被曝を否定したい人には…
の1行。それこそ単なる邪推ですね。話が飛び過ぎです。

投稿: 山形 | 2012年3月 7日 (水) 01時56分

めぐクン(当然クン付けでいいよな)本人かね?
ついに言うに事欠いて爆発したのか?
昨年夏には私はキミに好意的だったのだがねえ。
一方で同時期にコソコソと(自覚はなかろうが)ネガキャンやってたのを私も知ってしまったのでね。
アク禁は当然だろう!

わざわざそちらに出向いた北海道さんへの扱いなど、悪質すぎたろうに。

妄想の世界で生きていきなよ。
オレ、オカマちゃんきらいじゃないんだけど、この一連のめぐブログで印象が相当悪くなった。

別に恨んだりしてないけどね、オカマさん達の印象は確実に悪くなったわ。

今更もう来んなっての。
「来んな」ってのは私に言う権利は無いんだけど、これじゃただの荒らしだろ。そんなことすら分からないの?

投稿: 山形 | 2012年3月 7日 (水) 07時39分

職場の決算が2月末なので、色々と気ぜわしかった事と今週から来週にかけて、東京・札幌と出張予定で準備もありご無沙汰していました。(今日は東京ですが、午後から帰ります)

公共放送に限らず、テレビの影響は大きいですから、放送内容(解釈)を確認の上にも確認して、真実のみを放送してほしいです。
マスコミに「右だ・左だ」の判断を求めているわけではありませんから、正しい情報をいち早く伝えて欲しい・・判断は視聴者がするものと考えています。

山形様
めぐ様がこちらに来られたのですか?
色々な意味で相手にするレベルではありませんから、構わない事が一番ですよ。
管理人様もその事を分かっていて即削除しているものと理解しています。

話が脱線してしまいました。


投稿: 北海道 | 2012年3月 7日 (水) 08時51分

首都圏ママさん。私はこのICRP元委員のインタビューが捏造だと、原音と字幕を照会して書きました。
それ以外のことについてベラルーシの例を持ってこられても、この記事の範疇外です。

ところで、ICRPの勧告の基準がゆるいのどうのという書き込みがありましたが、ICRPは勧告だけしかできません。各国政府に対しての命令権がないからです。

またDDREFは「緩い」もなにも単なる実効線量のめどでしかなく、実際の放射線防護とは別の概念です。
DDREFを2ととろうと15ととろうと、現実にはまったく意味をもちません。
その意味がないことを、あたかも「ICRPは放射能リスクを半分にした」というデマ報道に仕立てたから問題になったのです。

ところで、首都圏ママさんが1Fというから原発の一階が壊れたということかとおもっちゃいました。(笑)

復興が大幅に遅れているのは、一に民主党の無能、二に政府の緊縮財政路線による財源不足、三に原発事故、四に過度な放射能恐怖症による瓦礫受け入れ反対運動のためです。

投稿: 管理人 | 2012年3月 7日 (水) 09時11分

濱田様

本日の首都圏のママ様のコメントでは「F1」と記載しています。「1F」では無いので上げ足を取られる事もあり得ますので、訂正お願いします。

首都圏のママ様がそんな人とは思いませんが、念のために・・・

投稿: 北海道 | 2012年3月 7日 (水) 11時31分

北海道さん。
お忙しい中どうもです。
たまたま早朝に見たらめぐが来てたので…捨て台詞吐いては(爆笑)だとかやってましたので、
応射したら、すでに削除されていたという流れです(大爆笑)

ようやく遅い春が感じられるようになりました。雪崩や屋根の落雪危険です。

投稿: 山形 | 2012年3月 7日 (水) 12時59分

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