自民党の「TPPについての考え方」は一歩前進だ 全文つき
野田政権は、「交渉参加をするかどうかの情報収集」と言いながら、事実上の交渉参加につながる事前交渉をしています。
この事前交渉は、外務当局が行うために外交機密上の秘匿事項とされる始末です。
国民は、目隠しされたまま国内法を自由に超越できるTPP行きバスに乗せられています。その間に既成事実づくりといわんばかりに、今度は西友が「中国吉林米」を出し始めました。
これは5キロ1299円で販売されるそうです。主食用10万トンの特別枠で輸入されたもので、一定の上乗せはかかりますが778%の関税はかかりません。
間違いなく量販大手は「TPP以後」を狙っており、そのための準備を進めています。この「吉林米」はその観測気球にすぎません。
彼らはデフレをいっそうひどくして、我が身をけずる消耗戦に未来がないことにいいかげん気がつくべきです。そのデフレの大津波がTPPです。
さて、このようになし崩し的に進められるTPP交渉に対して、野党・自民党は主流派が原則賛成ながらも、野田政権のなし崩し交渉参加に反対の方針を決めたようです。
自民党のTPP判断基準を転載します。
自民党は、これまで論点となってきた、交渉品目を定めない「聖域なき開放」、輸入数量目標、健康保険改悪、金融サービスの開放、農業の安全基準改悪、毒素条項・1SD条項などに、反対する方針のようです。
自民党にしっかりとした原則的対応を望みます。
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『TPP交渉 判断基準まとまる 聖域なき関税撤廃反対 自民党
(日本農業新聞 (03月08日)
自民党は7日、TPPについて、政府が「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り交渉参加に反対することを柱に、交渉参加の是非の判断基準「TPPについての考え方」をまとめた。政府が米国などとの事前協議で安易な妥協を重ねないよう縛りをかけるもので、従来より慎重な姿勢を鮮明にした。次期衆院選マニフェスト(政権公約)にも反映させる。
『判断基準は、党外交・経済連携調査会(高村正彦会長)で決定をした。総務会などを経て、早ければ週内にも党全体の方針とする。同方針は、政府が進める交渉参加9カ国との事前協議について「外交の常識では、事前協議の段階から事実上の交渉は始まっている」と指摘。政府が「国民の知らないところで交渉参加の条件に関する安易な妥協を繰り返さぬよう」、判断基準を示すとした。(中略)
山田俊男農林部会長は「農産物など重要品目を関税撤廃の例外としない限り、参加はあり得ないということ。民主党政権が方針を定めずに事実上の交渉を進めることへの危機感で、党内がまとまった」と語った。
■自民党TPPについての考え方 (全文)
TPPについては、国民の理解を得るための情報が決定的に不足しており、政府の改善努力も全く見られない。従って、国益を踏まえて、何を取り、何を守るかの国民的議論が未だ深まっていない。
昨年11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)前に、野田佳彦総理は「(交渉参加のための)関係各国との協議を開始する」と表明したが、これは国内的事情によって、あえて曖昧な表現にしたものであり、外交の常識では、事前協議の段階から事実上の交渉は始まっていると言わざるを得ない。
アジア太平洋地域における経済連携については、さまざまなオプション・進め方(例えば、東南アジア諸国連合=ASEAN=プラス3/プラス6など)が考えられ、わが党もその構築の必要性については、関係各国、国内各層と共有してきたところである。さらに、日・欧州連合(EU)や日・中・韓の経済連携も着実に進めていくことが重要である。
また、アジアが今後も世界の成長センターとしての地位を維持していくために、米国との経済的なつながりを一層強くしていく必要があることは言うまでもない。わが国は、米国も含めたアジア太平洋全体の経済発展に主体的に取り組んでいく。
政府が11月と同様に二枚舌を使いながら、国民の知らないところで、交渉参加の条件に関する安易な妥協を繰り返さぬよう、わが党として、この段階から以下の判断基準を政府に示すものである。
(1)政府が「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り交渉参加に反対する。
(2)自由貿易の理念に反する自動車などの工業製品の数値目標は受け入れない。
(3)国民皆保険制度を守る。
(4)食の安全安心の基準を守る。
(5)国の主権を損なうような投資家・国家訴訟(ISD)条項は合意しない。
(6)政府調達・金融サービスなどは、わが国の特性を踏まえる。』
「聖域なき関税撤廃」を前提とするTPP交渉参加に反対。数値目標等は拒否。国民皆保険を守る。SPSやTBTで、妙な妥協をしない(BSE問題や、遺伝子組み換え作物の問題)。ISDはNO! 政府調達(公共事業)や金融サービス(簡保、共済)は、日本の特性を踏まえて交渉。
(太字引用者)
■西友が中国産のコメ販売へ 原発事故で国産米価格上昇を受けて
産経新聞月8日(木)
西友は8日、10日から中国産のコメを低価格帯の国産米より約3割安い5キロ1299円で販売する、と発表した。首都圏と近郊の1都6県で10日から始める。大手スーパーでの中国産米の販売は、深刻なコメ不足で緊急輸入した平成5年以来とみられる。
背景には、東京電力福島第1原子力発電所の事故の影響で国産米の取引価格が上昇したことがあり、外食大手にも豪州産米などの導入の動きがある。輸入米の販売動向は、政府が交渉参加を表明した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の議論にも影響しそうだ。
商品名は「中国吉林米」。中国北部の吉林省産で、種類はジャポニカ種(うるち米短粒種)。玄米を輸入して、日本で精米し、首都圏と茨城、群馬、静岡の計149店で売る。
安全性について西友では「中国の倉庫と船積み時に、国の輸入制度に基づく残留農薬などの検査を行っている」(幹部)と強調。「低価格米を求めるニーズに、安心・安全なコメでこたえたい」としている。1.5キロ(449円)の少量販売もする。
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ヤフーニュースヘッドラインの『自民、TPP条件付き反対。玉虫色』には、ヘナヘナっとなりましたが、内容を見ると確かに一歩(半歩くらいか)前進ですね。
やはり記事のタイトルで先入観を植え付けられる危険は、常に注意が必要だと感じることでした。
西友、やってくれましたね。このご時世、安けりゃ飛び付く人も多いかと思いますが、そんな値段ならタイやインドネシアあたりのインディカ種を、それなりの調理で楽しむほうが食生活として有意義じゃないかと思いますが…西友はやはりTPP後のことを見据えた作戦なのでしょう。
だったら、さらにずっと安くできそうな気がしますが。
まあ、所詮金儲けの手段でしょうね。
投稿: 山形 | 2012年3月10日 (土) 07時23分
安全性について西友では「中国の倉庫と船積み時に、国の輸入制度に基づく残留農薬などの検査を行っている」(幹部)>>>>
賄賂や手抜き前提の中国国内検査ですから、契約当初は、守られても、汚染輸入米は、出てきます。
工業用廃液で、食用油を作る専門のプラント工場がある中国です。まだ、ベトナム米の方が安心。ベトナム人は、東南アジアで、もっとも文盲が、少ない国ですし、まじめな性格ですし。。
TPP云々以前に、中国での検査と日本での検査を同じ扱いっていうのはね~。西友も、相手国の国内事情を、考えてほしいですね。
投稿: りぼん。 | 2012年3月10日 (土) 15時21分