「ダッシュ村」チェルノブイリを訪問する!どっこい、生き抜いているベラルーシ農民たち
「ダッシュ村」3.11特番を続けます。現在のチェルノブイリがレポートされています。
訪問地はベラルーシです。これは、チェルノブイリ原発は所在地自体はウクライナにあっても、実は国境付近であり、なおかつ、当時の風向きによってベラルーシが放射能汚染の7割を受けてしまっているからです。
さて、現在のチェルノブイリ原発は石棺という原子炉を覆うコンクリートが1986年の事故以来26年の歳月でボロボロになって放射能の漏洩が始まっているそうです。
今も4号炉には3500名もの労働者が石棺を覆う鋼鉄製ドームを建設中だそうです。そのための町まであるとか。
そのチェルノブイリ原発周辺の空間放射線量は0.48μSv/hで、ダッシュ村の畑の13μSv/hより低いくらいでした。
後に訪れた30㎞から40㎞圏内にある農村部のプラギン地区では0.11μSv/hといっそう低下します。暮らしていくには問題のない線量です。
プラギン地区はこの位置にあります。
プラギン地区はゾーン3と呼ばれる移住権利区域に属していますが、一部はゾーン2に入っているようです。
ちなみに、上図でわかるように、ゾーン1の立ち入り制限区域の放射線量は148万bq(ベクレル)という高濃度汚染地域だったようです。
そしてプラギン村もかかるゾーン2移住義務区域は、55万5千bq、ゾーン3の移住権利区域は18万5千bqです。
福島県内と比較して下さい。ゾーン1、2は日本の計画的避難区域に相当します。(欄外参照)。
現状は、森林内などホットスポットは多数あるようですが(*計測では47.1μSv)、全体としてはあっけにとられるほど線量は低下しています。
この原因はやはり26年という「時間」にあります。
セシウムは134と137との合計量で見るのですが、その比率は7対3と言われており、半減期が2年と短い134のほうが圧倒的に多いのです。
134は2年で5割が半減し、10年後にはほぼ消滅してしまいます。一方、3割を占める137も26年間のうちに気象状況や自然条件によって除染をしないでも消滅・拡散していくようです。
おそらく来年の今頃には、セシウム134の半減期を迎えますので、福島においても急激に放射線量が低下していくと予想されます。
これは理屈ではわかっていても、チェルノブイリ現地で測定した数値を知ると、私たちが今入ってしまっているトンネルにも出口が必ずあるのだと分かって心がなごみました。
そしてこの条件の中で、どっこい農業はしぶとく生き残っていました。
もともとベラルーシは東欧の穀倉地帯であり、ライ麦の生産高は世界3位、ジャガイモは世界10位、乳製品輸出高は世界5位という農業大国の位置を占めています。国土の44%は農地です。
これがチェルノブイリゾーン2(移住義務区域)に生きる農民の面構えです。なんと零下29度で素手で雪かきをしていました。
いい顔しています。彼は6歳の頃に原発事故に遭遇して一時避難していましたが、また戻って、今はたくましい農民に成長して、従業員を多く雇う大規模農業に挑んでいます。
この取材時にもトマトなどを温室栽培して、冬季も農業を続けていました。まったくたいした奴です。
彼を見ていると、「東日本は終わった」とか「福島から全員逃げろ」などという声が虚ろに聞こえてきます。
彼の自慢は、野菜が安全基準値を上回ったことがなく、30bq以下なことです。もちろん日本の新基準値にも適合します。
ゾーン2(移住義務地域)で作物が30bq以下です。これは土壌放射線量が低下してきていることと、カリウムの使用にあると彼は言っていました。
農民はいろいろと知恵を絞って線量を下げたり、作物が吸わないような努力をしていることが紹介されていきます。それについては次回。
お断り 「鉄腕ダッシュ村」の3.11特番より、計画的避難地域の現状、そしてチェルノブイリの現状を理解するために有意義だと考えて、参考のために引用させていただきました。
改めまして、この番組を作られました日本テレビに感謝いたします。
゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。
« 3.11から1年を迎えた「ダッシュ村」の今 | トップページ | 「ダッシュ村」チェルノブイリを訪問する!その2 残された森林汚染はいまでも悲劇を再生産していた »
「原子力事故」カテゴリの記事
- 福島にはもう住めない、行くなと言った人々は自然の浄化力を知らなかった(2019.03.11)
- トリチウムは国際条約に沿って海洋放出するべきです(2018.09.04)
- 広島高裁判決に従えばすべての科学文明は全否定されてしまう(2017.12.15)
- 日本学術会議 「9.1報告」の画期的意義(2017.09.23)
- 福島事故後1年目 大震災に耐えた東日本の社会は崩壊しかかっていた(2017.03.16)
コメント
« 3.11から1年を迎えた「ダッシュ村」の今 | トップページ | 「ダッシュ村」チェルノブイリを訪問する!その2 残された森林汚染はいまでも悲劇を再生産していた »
畑(土地)が唯一の農業者は逞しく生きているのですね。
耕作や家畜飼養が出来ないなら、そこから避難すればよい・・・と人は簡単に言いますが、離れられない宿命を農業者は背負っていると思います。
当然一時的に避難しても、土地や家畜を思う気持ちがある限り農業者は諦めません。補償すれば云々ではなく、その土地で作物を作りながら生きていく事が生きる全てなのです。
サラリーマンが転職するのとは訳が違います。
そんな農業者の気持ちを理解しないと、何事もスタート出来ず、話し合いは平行線で終始します。
チエルノブイリやベラルーシの消費者の反応はどうだったのか?興味があります。
投稿: 北海道 | 2012年3月18日 (日) 12時03分