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2012年3月 7日 (水)

NHK「真相ファイル」 原発近くで白血病が3割増えたというのは嘘

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私は原発と放射能の問題は調査し尽くすべきだと思っています。 

今回の福島第1原発事故で、大きく信頼が揺らいだ以上、再稼働に対しては、かの斑目委員長も言うように、ストレステストだけではたりず、耐震性、防災対策まで含めた総合的な見直しが必要です。 

その中でぜひ実施すべきなのは、既存の原発周辺の徹底的な放射線量測定と疾病調査です。 

現在、ほぼ全基が稼働していない状況ですから空間線量はさほど意味がありません。むしろ、原発からの距離によって土壌放射線量がどのように変化するのか、核種はなにか、住民、特に子供のガンや白血病は増加しているのか、などを調査すべきです。 

それをしないと、住民は不安から解放されないでしょう。 

ドイツの原発周辺の疫学調査ではこのような方法をとっています。(Kaatsch et. al. Int J Cancer 122:721, 2008)

まず、原発からの距離を最短5㎞から最長70㎞までに6段階に分けます。そしてその中の小児もまた年齢別に分け、他のコミュニティの対照例とランダムに比較します。 

実はこれはかなり大変な作業で時間もコストもかかります。

ドイツなどの場合、そもそも5キロ以内に子供が少ないとはいうことも多々あるわけで、その場合対照コミュニティと調査母集団の数が違ってきてしまい正確な比較にはなりにくいようです。 

そのようなメンドーな統計プロセスを全部省いて、えいやっと原発立地自治体のガンの増加数だけを見たのがこのNHK「真相ファイル」です。 

すると、米国のイリノイ週シカゴ郊外の3ツの原発が集中する地域では、原発事故が起きていないのに、住民に脳腫瘍、白血病が30%増えた。これも低線量被曝が原因である、ということになったそうです。 

これは統計学を少しかじった人間がみれば、幼稚なトリック数字だと分かります。だって、統計母集団の人口動態数が明示されていないではないですか。 

ただ「30%増えた」ではなにも分かりません。何年から何年まで、人口動態がこれだけあって、これだけの発症率の増加があったというなら有意な数字です。 

しかし、何年の白血病の人数と、何年後の発生人数を単純比較して、はいこれだけ増えましたね、それでは増加率は30%です、なんて言う報告書を出してもまったく意味がないのはお分かりでしょう。 こんなレポートを調査会社が作ったら、バカヤローと殴られます。

それは単純な発症人数の比較であって、発症率ではないからです市の人口が増加してしまえば、母集団の分母が増えますから当然発症人数も増えるわけなのはあたりまえです

実、このNHKの「真相ファイル」で取り上げたイリノイ州ブレトンウッドという原発立地自治体は、1990年から2010年までの20年間で人口が72.2%も増加しているそうです。 

同じく、ドイツのドレスデン原発のあるシャナホンもまた3倍に人口が増加しています。つまり、統計母集団の人口が大きく増加しているのです 

もしNHKの言うことをまともに取れば、ドイツ・シャナホンでは3倍に増えた母集団のうち3割が白血病になったというとてつもないことになってしまいます。このようなことは絶対にありえません。

しかし視聴者は、立論プロセスを気にして見ているわけではありません。番組で落ち着いた女性アナの声が深刻そうに告げる「結論」だけを記憶しているのです。

ですから、視聴者の頭には、「原発立地地域では3割も白血病が増えるんだ」という強烈な刷り込みがなされたわけです。このような報道を印象操作といいます。

ういう原発の近くで白血病や小児ガンが増えたという情報は今や都市伝説となって、国立ガンセンターの患者の多くが東海村住民だ、などというデマに発展していっています。

これが福島や原発立地地域への放射能差別の原因のひとつにもなっているのです。本当に罪深いことをNHKはします。

NHKが原発の恐ろしさを訴えたいのなら、このようなデマゴギーまがいの手段ではなく、自分で東海村なりどこなりの疫学調査を実施すればいいのです。そしてその結果を国民に報告すれば意味があります。

しかし、原発立地自治体は3割も白血病が増えたというNHKのデマの火消しにやっきとなっていると思われますから、警戒心をもって疫学調査に協力しないでしょう。

いやまったく、ふぅ~という気分ですね。どうしてこういうことをNHKは堂々とするのでしょうか。

この短い番組の中で、トンデル説は国際的に認知されていない学説への偏向、ICPRの元委員のインタビューは捏造、そしてこの原発近隣の白血病3割増加説は印象操作と、やってはいけない報道手法の展覧会です。 

これではICRP委員たちからBPO(放送倫理・向上機構)に提訴されてもいたしかたありません。

いつからNHKは脱原発プロパガンダ宣伝局になったんのでしょう。目的がよければ、方法は合理化されるという悪しき見本です。

NHKは脱原発運動の支援番組を作ったつもりで、実は妨害をしていることに気がつくべきです。

■写真 雪の早朝。トリ小屋の間から日の出を見る。

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コメント

昨夜の「東北Z」再放送、児玉龍彦教授の苦闘とインタビューなどは、地元に寄り添ったよい内容だったんですがねえ…。
NHKはちょいちょいやらかしますが、影響力大きいですからねえ。
もう、ネット社会で嘘編集はすぐにバレるのに。
受信料払っても見たい良い番組も多いだけに残念です。

民放はもっと酷いの多いですから…。

私は旧式の管理の悪い原発や廃棄物処分場周辺での放射能の漏洩によるなんらかの障害の発生はありえることだと思っています。

ですから、このようなズサンな子供だましのような方法でこのテーマを追求した気になっているNHKを許せないのです。

低線量被曝との関係にしても、なんでよりによってあの「反原発界の過激派」のトンデル氏などにひっかかるのでしょうか。
もっと良質の資料がベラルーシやウクライナ、あるいはドイツにはあるのですが。

このような劣悪な番組を一度作って社会に影響を与えてしまうと、その後の立論崩壊が明らかになった時の反動が怖い気がします。

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