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NHK「真相ファイル」 スウエーデンの低線量被曝地帯で発ガン率が高いというデータはない

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事実ではないデマゴギーが、「脱原発」の美名のもとに拡散しています。その多くが低線量内部被曝や東日本の食品ににまつわるものです。 

脱原発を言うためには、低線量被曝の脅威を肯定せねばならないような今の日本の風潮はおかしいと思います。原発問題と放射能の健康リスク評価はまったく別次元のテーマだからです

私は「運動」には行き過ぎがあるのはやむを得ない部分があると思いますが、「脱原発運動」の論理的な基盤の危うさを感じています。 

たとえば、NHKは原発事故以降、精力的に「脱原発」の立場で報道を続けてきました。 

それは「ETV特集 ネットワークでつくる放射能汚染地図」などのような民間放送局にはまねできない優れた業績も残しています。私はこれを高く評価しています。 

しかし一方、NHKは明らかな誤報もしています。それが2011年12月28日に放送された「低線量被ばく 揺らぐ国際基準 追跡!真相ファイル」です。
動画 
http://blog.livedoor.jp/amenohimoharenohimo/archives/65782795.html 

このNHK「真相ファイル」はこのような要旨です。 

  • ➊チェルノブイリ事故以降、低線量内部被曝によって、スウエーデン北部、事故当時0.2mSv(ミリシーベルト)だったにもかかわらず、少数民族のサーメ人に事故前と比較してガン発生率が1年あたり34%増加した。
  • ❷米国のイリノイ週シカゴ郊外の3ツの原発が集中する地域では、原発事故が起きていないのに、住民に脳腫瘍、白血病が30%増えた。これも低線量被曝が原因である。 

    ❸11年10月、ICRP勧告の見直しをめぐって開かれた会議において、ICRP(国際放射線防護委員会)元委員から「低線量被曝の基準を半分に緩和した」という証言を得た。

    また、ICRPは1980年代に広島・長崎のガン死亡率が1Svで5%だったのが、500mSvで5%にデータが修正された時、ICRPは勧告を修正しなかった。その理由を、この元委員は「政治的な判断だ」、17人の委員のうち13人が原子力産業の出身者であるからで、「原子力村」の政治的圧力があったからだ。
     

    ➊の北欧の低線量でのガン34%増加説は、はスウエーデンのトンデル氏というECRR(ヨーロッパ放射線リスク委員会)という脱原発団体の人の説です。 

    クリストファー・バズビー氏はこのトンデル説を低線量内部被曝の根拠にしており、わが国の低線量被曝脅威論に必ずといっていいほど登場する事例です。 

    ただし、信憑性はかぎりなく低いと私は見ています。なぜなら、この番組の中でも「事故後1年から4年で発症した」とされていますが、放射性物質による発ガンはこんな短期間ではありえません。 

    もし、このような短期間で発症するなら、大量に一時に被曝した場合の急性放射線障害であったか、あるいは白血病か、甲状腺ガンしかありえないからです。http://www.remnet.jp/lecture/forum/02_04.html 

    そして両者の可能性は、北欧においては考えられません。

    ありえるとすれば、フォールアウトした放射性物質が蓄積した地衣類か、それを食べたトナカイなどの肉を食べたケースです。 

    これはありえます。しかし、その場合の晩発性障害が発見できるだけのしこりとなるまでには平均25年かかると言われています。

    こんな短期で発症したのならば、別な原因、つまり強制移住や食料制限などによる強ストレスによる免疫力の低下が原因だと思われます。 (ソース ルイ・パストゥール医学研究センター分子免疫研究所所長・藤田哲也氏)

    ところで、このトンデル氏の説はこのようなものです。
    「1986年から1987年の値を基準にして、種々の補正を加えた結果、1988年から1996年のスウエーデンでの癌の発生率を調べると、セシウム137の100kBq/㎡の放射性物質降下に対して、癌の比率は11%(95%信頼度:3-20%)増加した。白血病と甲状腺癌は増加していない。」 

    これを読むと、トンデル氏自ら初期被曝による白血病、甲状腺ガンを否定しているのが分かります。 

    では、下図でスウエーデンの汚染分布とガンの発症・死亡率の相関を現した疫学グラフをみます。 

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    この図は大変に面白いといってはなんですが、低線量とそれ以上の線量との比較が見られるという貴重なグラフです。

    上段図をみると、低線量の0-3kBq/m2のところと、それ以上の、60-79kBq/m2が同じだけの発ガン率をしめしています。

    これは低線量こそが危険であるというトンデル・バズビー説とは激しく食い違います。

    そしてもっと興味深いのは、死亡率ですが、有意に増加しているのは40-59kBq/m2と、80-120kBq/m2の2カ所です。

    60-79kBq/m2の線量域に至っては、低線量域の0-3kBq/m2のところと比べて1割強下がっているのが分かります。

    これでは低線量被曝脅威説の真逆の「悪名高き」ホルミシス効果(*)の証明になってしまいかねません。

    私はホルミシス効果を言うヤローは即座にブン殴りたい欲求にかられるのですが、このスウエーデンのグラフを見る限り、ガンが1年あたり34%増えたという説は眉に唾をつけるシロモノだと思わざるをえません。

    ❷と❸は次回に検証します。これもそうとうにおかしいのです。

    NHKはこのようなトンデモ説、もといトンデル説を無検証で放送した責任を問われるべきでしょう。まじめに放射能と闘っている私たちにとって迷惑です。

    *ホルミシス効果 1978年、ミズーリ大学のトーマス・D・ラッキーは「電離放射線によるホルミシス」という書籍を著し(略)、低線量の放射線照射は生物の成長・発育の促進、繁殖力の増進及び寿命の延長という効果をもたらしうるとした。 (Wikipedia)

    ■写真 雪の麻にすっくと雪をまとって立つ欅。りりしいなぁ。

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    原子力事故」カテゴリの記事

    コメント

    http://d.hatena.ne.jp/buvery/20110520

    欧州放射線リスク委員会(ECRR)は、欧州議会内の政党である欧州緑の党から出来た団体で、低線量放射線被曝の主張に、科学的論拠を持たない仮説をずっと、主張している。
    本来、チェルノブイリ事故以降、もっと、調査でき、論文発表できるはずの組織が、なぜ、政治的意図を介入させないで、論文を発表できないのか、モデル論、仮説から、脱却できないのか?よくわかりません。

    http://www.jca.apc.org/mihama/ecrr/ecrr2010_dl.htm

    勧告と書かれると、何か、非常に、重いことのように、見えるが、中身は、仮説として、面白いと言う、根拠が薄い話を、誇張しているように、見える。使われているグラフなどに、瑕疵があったり、説明内容ほどのはっきりした優位が見られないのは、なぜでしょうか?

    美浜の会も、いわゆる政治団体と同じで、科学的根拠は、薄いが、原発反対と言う事らしい。

    私は、放射性物質の最終処理法が、ない現在、原発は、お勧めしたくない電源ではありますが、ただし、原発反対論と科学的論文についての、判断は、別次元であると思っています。

    投稿: りぼん。 | 2012年3月 4日 (日) 09時43分

    りぼん。さんに同意です。

    NHKは良い番組を沢山やってますが、こと放射能になるとひたすら「怖い怖い!」と煽る傾向が強いです。
    「追跡ファイル」も詐欺の追跡調査などは大変素晴らしかったんですが…。

    昨日から今朝にかけて、昨年放送されたアーカイブスで「シリーズ原子力事故」を4本集中放送してました。
    スリーマイル事故直後の30年前のNHK特集から去年の番組までだったんですが、1本ごとにはよく出来た番組なのですが、続けて観るとやはり矛盾だらけなのです。

    ちなみに
    ①スリーマイルからの報告、秘められた巨大施設
    ②チェルノブイリの教訓
    ③チェルノブイリからフクシマへ
    ④地球核汚染

    だったと思いますが、特に③でベラルーシの医師を飯舘村に招いて、チェルノブイリの取り組みと現状をインタビューしていましたが、初期被曝による甲状腺ガン以外には避難民と他の地域に有意な違いは無い。
    定期的検診や食物の検査は欠かせないが、放射能を怖がるばかりにストレスを溜め込むほうが遥かに有害です。とのことでした。

    あらためて、避難を余儀なくされた方々にはお見舞い申し上げます。
    しかし、自分には何ら実害が及んでいない人が低線量被曝を騒ぎ立てるのには、激しい違和感を感じています。

    投稿: 山形 | 2012年3月 4日 (日) 10時53分

    放射能を怖がるばかりにストレスを溜め込むほうが遥かに有害です>>>>

    ストレス脳による子孫作りや自己死滅免疫行動は、あるように思います。まあ、うつ病のようなホルモンや神経伝達物質の体内バランス異常による細胞自滅です。(詳しい論文の引用先をまだ、私自身、発見できてませんが)

    福島被災者はじめ、大震災被災者は、仕事が無くなった方が多いので、体内時計の毎日の修正が、出来にくいでしょうから、朝、日光を浴びること。歩行すること。ストレッチすること。などをしながら、出来るだけ、単身ではなく、家族同居で、お暮らしねがえることや、少しでも、楽しい話題を中心に持っていく交流が出来ると良いと思えます。簡易的には、車の運転をしない時間帯で、デパスなど、緩い筋弛緩効果のある薬など、利用するのも、ありだと思いますが、被災地には、心療内科など、医療機関も少なく、医者側も、津波のトラウマが影響が強いため、放射線への何となくの不安について、医師も分けて判断できず、積極的治療には、至らない背景は、あるように、思えます。

    朝、起きて、大勢でラジオ体操、って言う昔の生活パターンも、捨てたもんじゃないと思ってます。


    自分には何ら実害が及んでいない人が低線量被曝を騒ぎ立てるのには、激しい違和感を感じています>>>>

    これは、特に、西日本では、敦賀には、11も原発があり、耐用年数40年を超えた原発も、多分、2基ありますし、PWRという加圧水型原子炉と、BWRを改良して、コストダウンの目的で、格納容器の耐圧を、鉄製でなく、鉄プラスコンクリートで、作られたABWRと言う、新しい原子炉もあって、正直、自分も、コンピュターシュミレーションのストレステストが合格した。あるいは、電源車を新規配備しただけで、再稼動OKと言う気持ちには、なれない自分が居ます。少なくとも、1号機から6号機まで動いていて、1基が、多量の水素ガスが出れば、6基とも、危機に陥ると言う事が福島で、解ったので、敦賀湾の11基が、水素爆発したら、名古屋、大阪は、避難地域になりえると言う事は、可能性が、非常に高いので、全面再稼動について、納得しがたい気持ちは、ありますよ。

    ただ、科学的検証から、電力会社は、逃げていて、政治問題化しているので、原発反対論者も、政治闘争化しているのだと思います。西日本の原発反対運動は、主に女川、福島第2原発を対象には、していないで、地元の敦賀湾の11基を、問題にしているのが、本音でしょうね。

    日本の原子炉の製造規格や安全装置の装備レベルは、個々の原子炉で、違うのですが、電力各社は、その違いについて、全く述べないし、情報公開しません。

    ICと言う電源不要の冷却プラントや自己落下型ホウ酸バケツの装備、空冷の冷却水循環装置など、諸外国で、安全装置として、付けられている装置の有無さえ、報道されませんから、非常に心配ですし、責めて、水素爆発は、発生しないと言う担保するプラントが無ければ、ECCSだけでは、心配なのが、西日本住民の気持ちではと思います。

    投稿: りぼん。 | 2012年3月 4日 (日) 11時44分

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