米国民の大半はTPPに反対だ
春の嵐のお見舞いありがとうございます。こちらは農場入り口が倒木で塞がれるといった以外特に被害はありませんでした。
と言っても大きな樹がふっ倒されたのですから、まぁすごかったですね。私は放射能研究会の会合の終わった夜12時近くに帰宅しようと思ったら、なんと通れない。杉を乗り越えて、泣きながら帰り着きました(笑)。
さてひさしぶりにTPPについて考えてみたいと思います。この間書かなかったのは、書けなかったのです。書くだけの情報がなかったからです。
だって、政府からなんの情報提供がないじゃないですか。政府はこれを外務省管轄の外交交渉上の条約締結事案に突っ込んでしまいました。これでシールドは完璧。
国会答弁で情報開示を求められても、「相手国との関係がございますから、答弁は差し控えさせて頂きます」、と木で鼻をくくったようなことを言うだけで罷り通ってしまったわけです。
となると、暗闇の中手さぐりで象をなぜるということになります。日本でただ一紙明確にTPP反対を掲げている「日本農業新聞」のみにチラホラと情報の破片が乗ります。
そんな中、3日のNHKが「ニュースウォッチ9」で、政府の内部文書のリークをしていました。
それによれば、独占入手したとされる政府内部文書にはこうあったそうです。
「米国は日本の煮え切らない姿勢に苛立ちを強めている」として、「首相の訪米によるTPP交渉参加の判断を急ぐよう」にと報道していました。
政府府内部からの意図的リークにNHKが乗ったのでしょうね。おそらく出所は外務省か経済産業省。
目的は考えなくても分かりますが、5月GW時の首相訪米時にTPP参加をオバマ大統領に明言するための世論作りです。このようなことを世論誘導と言います。
しかしそれにしてもえぐい。情報はまったく出さないでいるものだから、国民はなにが話し合われているのか、いやTPP交渉が進んでいることすら知らないわけです。忘れかかっている、と言ってもいいでしょう。
去年あれだけ盛んだったTPPの国民的議論が今、嘘のように消えてしまっています。
その中でまるで日本が足を引っ張っているために、「米国が苛立っている」という「政府内部文書」を流して煽る、フェアじゃないですね。
米国ですら、オバマ氏が大統領再選目的で揚げたTPPのアドバルーンに対して、共和党を中心にして猛烈な反対があるのを知らないのでしょうか。
米国自動車業界は、2.5%の輸入関税が撤廃されれば日本車と勝負することは不可能となると読んでいます。(欄外切れ抜き参照)
なにせ、日本の自動車関税はゼロである上に、6割までが米国内生産ですから。これで関税までなくなると、もう再建のめはなくなります。
もちろん自動車業界は、USTRが飽きずに言っているような、「日本の貿易外障壁が米国車の日本市場参入の壁である」なんてノーテンキなことは考えていません。
だいたい右ハンドル車を作らなくなって、日本に新型車の投入ができなくなった国がなにを言っているんです。とうに彼らは日本市場などあきらめています。
彼らの念願は、米本土市場死守です。それだというのに、オバマはなんて余計なことを、これが米自動車業界の本音です。
これは自動車産業の経営陣のみならず、労働側の全米自動車労組も同じで、自動車労組は民主党の大票田です。
米農業界ですら、あまり乗り気ではありません。TPPで豪州産牛肉が入ってくればどうなるのか。米国は輸入牛肉に関税をかけていますから、かなり熾烈な豪州牛肉との競争を演じることになります。
そして、米国はWTOで批判にさらされている悪名高き輸出補助金制度を綿花や小麦などに出しています。
これがTPP交渉で打ち切られてしまえば、今のままでも充分に安定している日本向け輸出の多少の改善と引き換えに、これを失うにはあまりにも痛いのです。
米国の各産業でTPPでをビジネスチャンスとみるのは、わずかに金融業、保険業、医薬品、化学工業、建設業ていどであとはどうでもいいか、反対です。
オバマ氏が再選戦略でぶち上げた200万人雇用増大など、絵に描いたモチなことは米国民はとっくに見抜いています。
つまり、米国内には日本と変わらないくらいに強い反対があり、日本と同じくらいに判断をしかねている人々が大多数なわけです。
こんな状況でなにを急ぐのでしょうか。急いでいるのは、オバマ氏と野田氏だけです。
いずれにせよ、野田政権の賞味期限はあと数か月ですから、米国が様子見なのはあたりまえです。
■写真 霞ヶ浦の夕焼け。無効に見えるのは、筑波山のツインピークス。
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■ 日米TPP協議、米自動車業界反対で停滞
(中国新聞)
【ワシントン共同】日本の環太平洋連携協定(TPP)交渉参加に向けた米国との事前協議が停滞している。自動車関連の関税引き下げに伴い、高性能な日本車の輸出攻勢を受けて競争が一層激化すると懸念する米自動車業界が、日本の参加に反対姿勢を崩していないためだ。米政府が日本の政局を見極めようとしていることも影響しているようだ。
2月に開いた日米の事前協議は、具体的な要求が米側から示されないまま協議継続で一致したものの、今後の見通しは定まっていない。 16日付の米通商専門誌「インサイドUSトレード」は、協議進展を念頭に米通商代表部(USTR)が自動車業界に対し、日本市場の参入障壁に関する一覧を提出するよう求めているが、業界側は拒んでいると報じた。
業界は、障壁を示しても改善が見込めない一方「手続きが進んで日本の参加につながる」と警戒。日本との協議を担当するカトラー通商代表補は先に業界代表と会談したが、議論は平行線に終わったとみられる。
USTRは日本側にまだ要求をする段階ではないと考えているようだ。米政府高官は「業界との調整には時間がかかる」と指摘。交渉担当者の間では、日本が参加する前に協定の大部分をまとめたいとの意向があるとされる。
米政府は、TPP反対論が根強い日本の国内情勢にも強い関心を持っている。政局が混乱し、TPPに熱心な野田政権が倒れた場合、事前協議そのものが空中分解する恐れがあるからだ。
米議会で通商問題に影響力を持つ下院歳入委員会のブレイディ貿易小委員長は、日本の参加について「いつ、どのようにと決断するのは時期尚早だ」としている。
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ちょっとズレ気味なコメントですいませんが…
散々低線量被曝云々で、政府やテレビ報道なんか信用できない!
と執拗に騒いできた方々は、TPPに関しては無反応なのは何故なんでしょうねえ?
ただの無知なのか、無関心なのか…。
輸入食品基準なんて散々言われてるんですがねえ。
私の学生時代の試算ですが、オージービーフがアメリカに無条件で入ったら…農業保護大国アメリカなんか、とても相手になりませんよ。品質・価格・安全性全てで。
アメリカなんか「ピンクスライム」で現在大騒ぎしてる程度ですから。
まあ、日本も価格だけでは話にならないわけですが。
自動車業界もTPPが実施されたら、日本独自の「軽自動車規格」なんて真っ先に『障壁』扱いされて撤廃になることでしょう。
誰がそんなことを望むのやら。
投稿: 山形 | 2012年4月 5日 (木) 08時52分
http://www.npu.go.jp/policy/policy08/pdf/20120329/20120329_1.pdf
http://www.npu.go.jp/policy/policy08/bunya.html
私がTPPについて、知っていることは、国家戦略室の古川大臣経由くらいでしょうか。
彼は、愛知県の国会議員で、一応、質問すれば、答えていただけますが、本人は、総理より忙しいくらいらしく、地元には、全く帰ってきません。
他の国会議員よりは、ある程度、きちんとした、返答は、いただけます。ただし、相手に、時間的余裕があれば。。ですけど。。外務省は、まったく、相手にしてくれません。表向き、正式参加国ではありませんから。。
個人的付き合いの範囲での、リークは、あるのでしょうが。。
基本は、オバマ再選目的以外には、考えていないと言うことらしいですが。。(オバマ氏落選した場合、突っ込みが言えて、条件が言えるように、シュミレーションしておく必要があるのかもしれませんね)
投稿: りぼん。 | 2012年4月 5日 (木) 15時43分
追伸
輸入食品基準370ベクレルは、4月以降、国産農産物と原則、同じ値(100ベクレル/kg)になったはずです。
ただし、検疫時のサンプル数は、非常に少ないので、効果が出ているとは、思えませんが。。
投稿: りぼん。 | 2012年4月 5日 (木) 15時46分
http://www.mhlw.go.jp/shinsai_jouhou/dl/qa_120330.pdf
根拠はPDFの6ページ、17番のQ&Aです。
Q:輸入食品の監視指導における暫定限度である370ベクレル/kgはどのような扱いになるのでしょうか。
A:今回の新しい基準値や測定方法は輸入食品にも適用されますので、チェルノブイリ原子力発電所事故後に設定された暫定限度は廃止されます。
投稿: りぼん。 | 2012年4月 5日 (木) 16時10分
TPPの全体はともかくとして、コメ関税の漸進的撤廃には大賛成。コメ農政の非合理性を解消するには黒船が必須だと思う。
消費者としては「ホドホドに安全な」コメが安く買えるようになってほしい。野菜が中国産に負けてないんだから、コメだって負けないよね、と思ってる。
でも、下々の賛否にかかわらず、日本は不参加になりそうですね。野田政権には、交渉力や判断力という以前に、そもそも統治能力が欠けている。実行力ゼロ。
がんばってる専業農家のための農政って、どうあるべきなのでしょう。
投稿: とおりすがりTPP | 2012年4月28日 (土) 13時10分