小沢氏裁判判決 無罪だが無実ではない
小沢氏の裁判で、東京地裁は無罪を言い渡しました。争点は三つありました。
➊検察審議会の起訴議決の正当性の是非。
❷政治報告書の虚偽記載の認定。
❸既に判決が出ている秘書との共謀関係の認定。
(欄外判決主文抜粋参照)
以上3ツについて、東京地裁は、➊の検察審査会の起訴は有効としました。❷の政治資金報告書の虚偽記載も事実であるとして、違法性を認めました。
❸の秘書たちとの共謀については、東京地裁は秘書の報告を了承したが、指示した明確な証拠はないとして無罪としました。これは東京地検特捜部の、取り調べの違法性が批判され、石川秘書供述調書が却下されたために、共謀認定には至りませんでした。
石川証言については、地裁はかねてから東京地検特捜部の、「強力な利益誘導や圧力があった」として大部分を却下していますから、そう驚くことではありません。
つまり、小沢氏は政治資金規正法を逃れるために巨額の現金を動かしたのは確かだが、それを元秘書が独断でやったとは言い難いが、決定的な証拠・証言に欠けるということになります。
東京地裁としても9割まで小沢氏をクロと考えているが、最後の詰めがないために司法としては仕方がなく無罪とした、というところでしょうか。
なんのことはない、小沢氏は特捜部の敵失で救われたことになります。起訴すらできずに、それに替わっての国民の起訴の足まで引っ張るとなると、ダメダメにもほどがあります。
小沢氏にとって薄氷の「勝利」です。判決内容としては、共謀関係のみを認定していないだけで、問われていた案件についてはほぼ起訴内容を認めています。
これでは小沢氏としても、とても潔白とは胸が張れない判決でしょう。よくてイーブン、はっきり言って内容的には負けていると言ってもいいと、私は思います。
小沢氏の疑惑はありすぎて一覧表にでもしたほうがいいくらいです。
ざっと上げてみれば
➊19994年12月、小沢が代表幹事を務めた新生党が新進党移行時に解党した際の党本部政治資金残額9億2千万円が、小沢氏資金管理団体「改革フォーラム21」へ流れたとされる事件。
❷新進党解党の後に、小沢氏が設立した自由党が、民主党と合併するために解党した際の党資金残額13億8千万円(うち3億5千万円が政治資金)を小沢氏の影響下にある「改革国民会議」に流したとされる事件。
❸2009年衆院解散時に、「「改革フォーラム21」から小沢氏が代表をしている党支部を迂回して小沢氏の資金管理団塊「陸山会」に3億7000万円を流したとされる事件。
➍2000~06年の間、「改革フォーラム21」にゼネコンからダム建設の見返りとして賄賂性が強い5億5千万円の献金があったとされ、この献金を後に企業献金が禁じられている「陸山会」に移したとされる事件。
他にもなにかあったような気がしますが、小沢一郎氏という政治家が金こそが権力の源泉であることを信奉する人であることは間違いない事実です。 概算で26億7千万円もの政党資金と5億5千万円のゼネコンからの企業献金、しめて32億円を超える巨額な資金が、小沢氏の元に流れ込んだとみられています。そのうちのそうとうな割合が政党助成金でした。
つまりは、税金をかすめ取ったと言われても仕方がない所業でした。一般国民が30数億もの金を、出所不明で持っていようものなら、持っているだけでマルサに徹底的に洗われてしまいます。しかし大物政治家は違うようです。
小沢氏は、今まで自分の作った政治資金規正法を見事すり抜けて蓄財を続けてきました。「改革フォーラム」や「改革国民会議」に資金を移動させること自体は違法ではないからです。
なにせ政治資金規正法を立法し、法の裏の裏まで知り抜いている小沢氏本人がやっているのですから間違いはありません。
しかし、その次にこれを個人の資金管理団体である「陸山会」の懐にねじり込んだとなると、どうみても私物化以外のなにものでもありません。
ところが、これまた政治資金規正法上は「想定外」なのでセーフです。違法行為はしていない、単なる脱法行為だ、というわけです。
なにかすごいですね。さすが大学院まで行って法を、いや法の裏側を研究なさってきただけはあります。
東京地裁も、この脱法行為を罰する法がないので、「政治資金規正法の精神にそぐわないことは明らか」(判決主文)というお叱りだけにとどめざるを得ませんでした。
法的には小沢氏本人に言わせると、単なる「記入ミス」の微罪にすぎません。しかしさきほど述べたように政治資金とは税金から出されたものですから、ずいぶんと国民を馬鹿にした話です。
これらの不正蓄財、もとい、脱法蓄財により「陸山会」は都内の一等地から沖縄にいたるまで巨額の不動産を買いあさりました。
この脱法マエストロもお歳のせいかボロを出したのが今回の事件でした。あろうことか突然4億が小沢氏のタンスから湧きだした怪奇現象に国民が沸いたものでした。
小沢氏はまだ枯れる気などさらさらないようですが、もうこんな危ない橋を渡るのはお止めになったほうがいいかと思います。
小沢氏の師匠であった田中角栄氏が、刑務所の塀の上を歩くと評されて、結局本当に向こう側に落ちたことをお忘れなきように。小沢さん、あなたは無罪だが無実ではないのですから。
まぁ、TPPと増税に反対する立場の私としては、ちょっといい判決だったのかとも思いますので、あながち皮肉ではなく、ぜひ小沢さんとそのご一党には奮闘していただきたいと願っております。
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■小沢元代表裁判 判決の要旨
NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120426/k10014737421000.html
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