帰村と中間貯蔵施設をめぐっての避難地域ふたつの首長選挙
この震災と原発事故を通じて思うのは、地方自治体の首長の立ちふるまいの見事さでした。
飯館村の菅野典雄村長、南相馬市・桜井勝延市長などはその代表格でした。国の事故対応に当たった面々の醜態と比して、見事に村を守りきった強さには打たれます。
さて、この避難地域の中でふたつの自治体首長選挙が行われます。
ひとつは川内村の遠藤雄幸村長の任期切れをによるものです。遠藤村長は、1月末に「帰村宣言」を行い、3月26日にはいままで一時的に役場を間借りしていた郡山市から、村に戻りました。
この帰村運動に対して、村内は一枚岩ではなく、関西への「全村移住」を主張する候補が2人立っています。
2候補は、「健康不安がわからない中での帰るのは間違いだ」(西山千嘉子候補)、「原発事故後、村長は住民の声を充分に聞いていない」(猪狩健寿候補)といった訴えをしています。
22日の開票ですが、真っ正面から「村に帰るのか」、村をあきらめて全村移住するのか、の選択を問われることになります。
4月5日現在、帰村した住民は全村民2856名中545名にとどまっており、大部分は帰村を決しかねているようです。
これは、確かに空間線量が下がったとはいえ、浪江町で13μSv(4月11日午前9時現在)残っている空間線量と、未だ高い数値を出している土壌線量が原因です。
同様の問題は、飯館村などの近隣自治体でも一緒で、飯館村に帰ろうと訴えた菅野村長に対しての、住民の対応はひとつではないのが実情です。
菅野村長はこの「住民をモルモットにする気か」という住民の批判に対してこう答えています。
「村民の健康のリスクと生活のリスクをどうバランスとるかが大事と考えていました。「村民をモルモットにする気か」「殺人者だ」という抗議のメールも連日10通以上届きました。とはいえ、避難に当たって村民の生活リスクを少しでも小さくしてやらねばなりません。さらに、村をゴーストタウンにしない手立てもしっかり考えておかないといけない。私は村の長ですから、その責任があります。
集団移住で新しい飯舘村をつくるべきだという意見があることも知っています。でも、「村民の命を守るために集団移住を」というスローガンは美しく聞こえるが、そんなにたやすく実現できることではない。かえって村民の将来へのリスクを大きくしてしまいかねません。」
この村長の声に動かされて村内の企業を残せたことはその成果のひとつです。これは村がまだ死んでいないのだという大きな証になります。
帰る村にまだ地場企業が残って、操業を続けているかぎり、雇用が確保され、村には仕事があるのです。
「村には大小含め90社の法人企業がありましたが、老人ホームや金型製作会社など9つの企業が残りました。政府は、年間20ミリシーベルト以上の地域は避難という見解を取っていましたので、それは逆に言えば、線量の低い屋内での操業ならいいのではということ。飯舘村はこの条件を国に認めさせました。」
(過去ログに菅野村長インタビュー全文がありますので、ぜひご覧ください。)
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/post-e7b0.html)
同時に楢葉町町長選も闘われます。これは現村長の草野氏が東電と関係深かったために、これを批判する候補との間で争われます。
争点は国が楢葉町に置きたいとする中間貯蔵施設です。
現職の後継として出馬した松本幸英氏は、「中間貯蔵施設には反対。しかし、村の廃棄物は自分の村で処分すべきだ」と訴えています。
一方、中間貯蔵施設に反対する町議の結城政重氏は、「村内設置には絶対反対。廃棄物は一カ所でまとめて、他の地域をいかすべきだ」と主張しています。
これはデリケートな問題で、私にも白黒を言うことができません。
ただ、放射性瓦礫などの放射性物質を含んだ廃棄物を一カ所に集中させ、拡散させないことはICRPで定められた国際的な手順です。これに反することは不可能だと思われます。
いずれの地域にせよ、放射性廃棄物の貯蔵施設は必要なのは確かです。
これには国がしっかりとした施設周辺地域の国有化が前提であり、帰村可能な地域に設置することは、その地域が半永久的に貯蔵施設以外使用できなくなることを意味します。
これはその地域に死刑判決を下すことに等しいわけで、為政者が泥を被ってでもせねばならないことです。現政権にとそれができるでしょうか。
このふたつの首長選挙は、避難区域の今後を決定する大きなものになります。
■写真 椿が満開となりました。春の空気を出すためにソフトフォーカスで撮ってみました。ピンポケじゃありませんからね(笑)。
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コメント
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放射性がれき等の中間保存施設をどうするか?も、緊急的問題だと思いますが、各原発建屋内の使用済燃料保管プールが、8割方埋まっているとの情報が出てきている中で、全国54基の原発の再稼動をしようとする政府や電力各社は、どういう神経なのか、私には、理解できません。原発敷地内に、使用済燃料保管プールを新たに作れば、それらの維持管理に、膨大な費用がかかり、また、原発立地自治体の危険性が、限りなく増大することは、解っているのに、原発事故被災自治体以外で、なぜ、再稼動について、具体的な問題点が、表面化しないのかが、不思議です。もちろん、自治体予算が組めないから、再稼動に賛成するという議員達の立場もわかりますが、命と引き換えに、交付金をくださいと言うのも、変な感じを覚えます。
投稿: りぼん。 | 2012年4月13日 (金) 10時46分
りぼん。さん
もちろん博識な貴兄ならご存知でしょうが、一度原発を作ってしまうと地元自治体は電源三法に基づくヒモ付き補助金でがんじがらめなのです。
今、大飯の再稼働が話題になってますが、地元が賛成多数なのはそのためです。運転してくれないと「食えない」構造にされているのです。
しかし福島の事故でわかった通り、万一の事態になったら自治体単位の災害ではなくなる。京都や滋賀の知事が反発するのも当然です。
命を担保にする違和感には同意です。
あと、あれほどの事故を体験しながらなぜか「原発の火を消してはならない」的な政府の拙速さにも疑問を感じています。
投稿: 山形 | 2012年4月14日 (土) 07時33分
再稼働がテーマではないので、ひとつそのあたりをよろしく(笑)。再稼働は私以外にもたくさんのブロッガーが書いていますので、まぁいいかと。
山形さんのおっしゃる電源立地3法でうるおうのは当該自治体だけです。
わが県なら東海村ですが、一度事故になれば私も避難しなければならなくなります。最低限でも30キロ圏内すべての自治体の合意を前提とすべきでしょう。
それも社会資本に投入されるだけで、現実には維持すること自体がやっととなり、今や大きな体育館、公民館が重りになっている地域もあるほどです。
それでも自治体としては、予算の大きな部分を占める立地3法は魅力だったのも事実です。
避難地域の首長選挙を取り上げたわけですが、今後大熊町などの首長選挙が行われます。どのような選択を町民がするのか、注目しなければなりません。
投稿: 管理人 | 2012年4月14日 (土) 07時53分