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早くも骨抜きとなった食品新基準値の実態とは

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新基準値の一般食品100bq/㎏は、事実上骨抜きになっています。

なぜでしょうか?

ひとつには、食品流通の中でもっとも支配力が強い流通部門が、全国量販チェーン、地域量販、生協を問わず、一斉にゼロベクレルの方向に舵を切ったからです。

昨日頂戴したりぼん様の情報によれば、大手流通のイオンは「放射性物質ゼロを目標に自主検査体制を強化」という文書を発表しています。http://www.aeon.jp/information/radioactivity/pdf/120329R_3.pdf

この中で、イオンはこう言います。

「当社は、お客様の安心を担保するために、店頭での放射性物質ゼロを目標として、ゲルマニウム半導体検出器による検査の結果、検出限界を超えて放射性物質が検出された場合には、同エリアの同品種調達を当面見合わせることを原則としております。」

つまり、イオンは超微量でも出たら最後、出荷停止だ、と言っているわけです。

ようやく少し知られてきつつあることですが、この世の中には「放射性物質ゼロ」という食品は存在しません。

それは自然放射性物質が既に、カリウム40のような形でセシウムより多く含まれているからで、「放射性物質ゼロ」というのは、あくまでもセシウム134、137を指しているにすぎません。

リボン様がご指摘のように、「放射性物質ゼロ」を謳うのは、誇大な表現であり、優良誤認すれすれでしょう。ただあくまでも「目指す」という努力目標なのだ、ということで逃げています。消費者の「誤解」を利用した巧妙な表現です。

イオン系列の茨城の大手量販店のカスミも、店頭に「50bq以上は取り扱いません」という張り紙を出していました。

またパルシステム生協連合や生活クラブ生協も、先だって大地を守る会が打ち出した野菜20bq、米10bqという基準値に合わせた方向に進むようです。仕方がないとは思いつつ、やや複雑な心境です。

このように流通業界は、ゲルマニウム計測器の検出限界、つまり5bq~30bqを事実上の基準値においたことになります。

この動きの背景には、厚労省が食品基準値の半分の50bq以上を警戒監視範囲として設定し、50bq以上検出された場合には、その地域全体を監視区域として測定に入る、とした方針があります

現実の青果物流では、厚労省が警戒区域とした瞬間に取引は打ち切られることでしょう。

従って、事実上の新基準値は厚労省において50bq、流通業界においてゲルマニウム測定器の検出限界以下となったわけです。

これではなんのために新基準値を作ったのか、意味がなくなります。あってもなくても同じです。

作った張本人の厚労省が半分の50bqで「監視」し、流通業界も10分の1以下で「運用」するのならば、国家基準の意味がなくなります

この厚労省の新基準値は、国が農業の放射能対策に対しての方策を打ち出さず、農家に丸投げしている現況においては、国が私たち農業者に一切の責任を転化するものです。

また、流通は口では「政府、生産者、流通業の三者が一体となった生鮮品の安全・安心の担保と持続可能な生産・流通体制の構築」(前掲イオン文書)を言いながら、現実には農業にすべての重荷を投げるものでしかありません。

もし、本気で50bq以下を目指すのならば、出荷の最初のロットを検査する必要があります。

これを検査しないと、出荷団体は怖くて後が出荷できないことになります。万が一ホットスポットの農産物が出た場合、その団体のみならずその地域全体が監視区域となり、出荷が難しくなるからです。

ならば、各団体にひとつのチェンバータイプの測定器を配布する必要があります。言い訳のようにゲルマニウム測定器を役場にひとつ飾っても仕方がないのです。

末端の農業団体まで配布できるような測定体制が今直ちに必要です。

私は去年から、川上側である農地の放射能対策と、農業現場での測定体制も満足にないところで、基準値だけ引き下げるのはナンセンスだと言ってきました。

新基準値が高い低いの問題ではなく、それを担保する対策と体制がいるのです

今年は早くもゼオライトは品薄になり、入手困難となっています。カリウムもきちんとした土壌検査なきところで散布してもカリ過多障害を起すだけです。

放射能対策への支援なきところで、消費者をなだめるだけが目的の国の新基準と、それを更に過敏にした流通業界の実態は、農業を裏切るものです。

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コメント

農業者としての切実な現状と、行政の無作為への怒りがひしひしと伝わってきます。

イオン、さっき行ってきました。
昨日のニュースでも出ていた通り「0ベクレルを『目指します』」の表記があちこちにありました。

なんだか89年の消費税施行の時に「ウチは消費税を受けとりません」と言ったら国から怒られて、現在でも毎月「消費税分値引き還元セール」やってる生協はOKなのと似てるなあ…と感じました。

0ベクレルを目指すのは勝手ですし、少しでも線量を下げることは当然です。
だが、0ベクレル食品など現実には存在しません。
現場では計測時間の設定とNDをどこに置くのか、これにつきます。
そして、現実に支援も受けられずに「責任転嫁」させられ、苦しむのは農家の方々です。

国も自分たちで作った基準くらい守れ!
国も流通関係も、一部の過激な人々だけでなく、ごく一般的な「なんとなく不安」な消費者に媚びすぎ。
むしろ言葉巧みな詐欺まがいですね。

私は、ブログ主の言うように数年かけて品目ごとに現実的データで基準値を段階的に下げるべきだったと思います。

以前も書きましたがあのベラルーシの牛乳でさえ、未だに100Bq/lですからねえ。

いかに日本の政府が国民に信頼されていないか、という証明でもありますが…。

投稿: 山形 | 2012年4月12日 (木) 10時29分

公に発表されるものは県での正式な検査ではならないそうです。
生産者がJAに検体を持ち込み結果が出るまで二週間以上かかる場合もあります。それから公表されるまで一週間。
JAや市の支所などで行っている簡易検査ならば30分で結果が出ます
野菜は二週間も待っていたら腐りますよね。もっと効率の良い仕事をJAや県、国に望んでいます。
ビニールに放射性物質がついているのは生産者ならわかるはずですが、JAは大丈夫と言っていたと思います。
福島の農家は気力も無くしながらも基準値とやらと闘わなくてはいけないのです。
いっそ出荷制限にされた方がと思ってしまうときもあるのも事実です。
すみません、愚痴になってしまいました。

投稿: さくら | 2012年4月12日 (木) 12時55分

3.11以前の実際の放射線量がどれくらいだったか、調べたら、

http://www.niaes.affrc.go.jp/sinfo/publish/niaesnews/086/news08608.pdf

こういう情報が、農業環境技術研究所のデーターベースから、出てきました。

百姓(100の苗字を使いこなせるスーパーマンを表した職業名、)からすれば、従前の出荷データー以下であれば、文句を言われることはないはず。

ところが、マスコミも、消費者団体も、国も、すべて、3.11以前の汚染状況を正式発表しないような動きをしながら、流通業と生産業に、おんぶにだっこという感覚で、規制値を決め、流通し、最大の加害者である、国政担当者と東電は、刑事罰は、受けなくて良いという判断のようです。

この問題で、裁判員裁判のメンバーになれば、自分は、とことん、行政の不作為、東電の安全意識の無さを全面に、訴えたいところですが、どうも、公務員は、被告には、ならないような感じで、原子力規制庁が出来れば、保安院は、無罪放免らしいですが、個人的には、納得行きません。大体、フィルター付きベントとか、電力に依存しないホウ素バケツなど、安全設備がついていないのは、国内54基だけで、米国の原発は、そういう設備が、すでにあるとのこと。。

その事実さえ、公表しない政府やマスコミ、東電は、許せませんね。

投稿: りぼん。 | 2012年4月12日 (木) 19時25分

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