住宅屋根設置型太陽光は解決になるだろうか?
埼玉零細様。コメントありがとうございます。
さて住宅屋根型太陽光についてですが、私はそれがむしろメーンの設置場所になると思っています。事実ドイツなどでは、この屋根設置型を企業が買い取る制度が定着しています。
経済産業省と、孫さんの太陽光ロビー団体・自然エネルギー協議会がほぼ同時期に一般民家の屋根設置型太陽光について、前のめりの発言をしています。(資料1、2参照)
仕組みとしては、このようなものです。
「経産省によると、新制度では、家庭が発電会社への屋根の貸し出しを希望すれば、発電会社の負担で太陽光パネルを設置。発電会社は集めた電力を電力会社に販売し、利益の中から各家庭に屋根の賃料を 払う仕組み」。
既に「DMMソーラ」などという企業が、「8万円で太陽光パネルを設置しませんか」という広告をうって普及を開始しています。http://www.dmm.com/solar/personal/
DMMの広告を見ると、どうやら設置者は8万円を払って屋根に太陽光パネルを設置して、その発電量の8割をDMMが持っていくという仕組みのようです。
広告のうたい文句では、「昼間の電気料金が安くなり、節電すれば充電分に回せる」とのことです。
う~ん、これってあまり設置者にとって得じゃないって感じですね。確かに設置料は負担してもらえるのでしょうが、そもそも発電量がたいしたことがない夏場や冬場といった一番電気が使いたいときに8割持って行かれたら、手元に残りません。
充電もできます、なんて簡単におっしゃるが、大型バッテリーは現時点では技術的に未完成な上に、しっかり高価です。わずか2割の設置者取り分の確保のために、新規投資するのは合わないですね。しかも昼だけの話ですもん。
私だったらやりませんね。パネルはかなりの重量なので住宅が痛むし、メンテナンスはどちらがするかもはっきりしない、11年で元がとれるなんて言われても、それは机上の数字にすぎません。自分の所有になった時にはしっかり老朽化しています。
そして設置者に対しての賃料がどうなるのか分かりません。孫さんは払うようなことを言っていますが、いくらくらいなのでしょうか。おそらくは、四季を通じて一定の発電量は望めないし、設置場所にもよるので゛発電量に対しての歩合制でしょうか。
孫さんの思惑は、全量・固定買い取り制(フィードインタリフ 以下FIT)が前提です。FITで高く電力会社に買わせて(42円)、売電利益の一部を新規の屋根型太陽光に回し事業拡大することを考えているようです。
これによってメガソーラーが設置しにくい都市部での普及をするということを狙っています。
前にも触れましたが、メガソーラーという集約型は決して有利な方法ではありません。たとえば、行田市のメカガソーラーでは1.2MW(実発電量0.12MW)で、5040枚パネルを並べて、旧浄水場跡を使い実に2..2ヘクタールの敷地です。孫さんのメガソーラならその倍です。
これだけ広大な面積を使って、たったと言ってはなんですが、0.12メガワットですよ。農村部でも2ヘクタール一年借りれば、10アールあたり年2万が相場ですから、土地賃貸だけで40万円です。
だから孫さんは、「電田」(ネーミングはいい)とかいって耕作放棄地に設置することを考えたのでしょうが、孫さん甘かったですね。
耕作放棄地は、賃料はただ同然で大喜びされます。しかし、その実態は、人が立ち入れないような場所が小面積で点在しているのです。
おまけに、谷津田といって日当たりの悪い山の中の田んぼが多いから発電効率は最悪。もちろん電線なんかなし。どうします、こんなところ借りて。(資料3画像参照)
理論数値で耕作放棄地は東京都24区分とか誰かに吹き込まれたのでしょうが、実態を知らない思いつきでしたね。
地方自治体のほうは、そりゃあ日本一の大金持ちが頭痛の種の耕作放棄地をなんとかしてくれると言うんで色めき立ち、自然エネルギー協議会にも喜んで参加したのでしょうが、どうやら同床異夢に終わりそうです。
また、売電企業側の心配としては、設置者が勝手に余剰電力を使ってしまうことの歯止めがないのです。
これは企業側も百も承知ですから、全量買い取り制度を要望書の形で経済産業省に提出していて、おそらくその方向になるでしょう。
太陽光発電システムの調達価格、期間への要望http://www.meti.go.jp/committee/chotatsu_kakaku/003_03_00.pdf
「固定価格買取制度の施行により、屋根貸しビジネスモデルの普及が想定され、個人住宅での全量買取適用が可能となると見られる。」
という屋根設置した発電はすべて企業のものとなる仕組みができそうですが、そうなると今度は設置者のメリットって一体なんでしょうかね。
屋根を貸して多少の賃料は入るのでしょうが、100%発電したものは企業に売ることになり、自分の家ではFIT制のために高くなった電気料金を支払うわけです。 42円で売って、20数円で買う、わけですから。
太陽光は脱原発の夢を乗せた翼だ、という夢が制度の重みが生活にのしかかってきた時、ふとわれに返って虚しくならないでしょうか。
■写真 ポピーが満開です。ほんとうに勝手に野辺に咲き乱れている可愛いやつ。
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■資料1民家の屋根借り 太陽光発電事業 電力買い取り新制度
2012/02/08(水) 09:17:42.00 ID:???0
枝野幸男経済産業相は七日の参院予算委員会で、発電会社が一般民家の屋根を借りて太陽光パネルを
設置し、発電事業をできるようにする制度を検討していることを明らかにした。今夏にも始めたい考えだ。
再生エネルギー特別措置法に基づき、電力会社が再生エネを固定価格で全量買い取る制度が七月に 始まるのに合わせた取り組み。
経産省によると、新制度では、家庭が発電会社への屋根の貸し出しを希望すれば、発電会社の負担で太陽光パネルを設置。発電会社は集めた電力を電力会社に販売し、利益の中から各家庭に屋根の賃料を 払う仕組みで、枝野氏は答弁で「こういう形で進められないか研究している」と述べた。
民家への太陽光パネルの設置費用は、標準的な住宅で二百万~三百万円程度。自治体によっては、 既に助成制度が設けられており、発電した電気の余剰分は電力会社に売れるが、家庭が自己負担費用を 回収するのに十~二十年程度かかるため、設置はあまり進んでいない。
新制度なら、パネル設置時の家庭の負担は原則ゼロ。発電会社と各家庭の契約になることから、 政府にとっても、設備投資などに税金を投入せずに太陽光発電の普及を期待できる。
経産省は「家庭が飲料の自動販売機の設置場所を提供し、メーカーから賃料を受け取るようなイメージ」と説明する。
ただ、発電会社と家庭の権利関係がこじれる可能性もある。政府は問題が起きないよう論点を整理し、 再生エネ特措法の政省令や規則でルールを定める方針だ。
■資料2 太陽光発電業界が提出した要望書要旨
ソフトバンクの孫社長が事務局長を務める「指定都市自然 エネルギー協議会」は、企業や団体が一般家庭の自宅の屋根を借りて太陽光発電事業に参入できるようにするなど、自然エネルギーの普及に向けた提言書をまと め、経済産業省に提出しました。
広い土地が少ない都市部では有望な事業で、孫氏は「自然エネルギーの普及につながる」としています。
■資料3 耕作放棄地について
私が数年前にわが市の耕作放棄地の調査をしたときのものです。写真左のガードレールの横の雑草が生い茂った土地が耕作放棄地です。捨てられた谷津田ですが、これはましなほうで、崖のような斜面が大部分でした。
全国を積算すれば東京都24区とかになるのでしょうが、一枚がそれだけあったらたいへんなものですが、現状は細々と細分化されて点在している使用不可能な土地が大部分です。
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コメント
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DMMって会社も、エロビデオから始まってネットで急成長し、今はいろんなことに手を出してるようですね。
経営多角化というと聞こえはいいですが、カネの匂いに敏感なのでしょう。
不採算になったら、あっさり撤退するのでしょうか…。
孫さんのいってる休耕田や耕作放棄地の活用って、バブル期に
「食料安保が心配だ?日本にはこんなに沢山のゴルフ場があるんだから、有事には全部田んぼにすれば反収500kg計算で充分量確保できる!」
とのたまってた経済人(どうやってその広大なゴルフ場を即座に田んぼに転換するんだか…)の愚にもつかない発言そっくりで、激しくデジャヴですなあ。
まあ、田んぼ作るよりは楽でしょうけど、どれだけ金かかって、どんな効率なんだか。
投稿: 山形 | 2012年5月12日 (土) 07時21分
耕作放棄地は別名「耕作不適地」でもあります。
作業効率が悪い狭い土地や、暗渠しても水はけが悪い土地がほとんどで、単に耕作していた人が歳をとって耕作できなくなっただけではありません。
耕作放棄地にはそれなりの理由があるのです。
条件の良い土地なら、周りの人が借りるか購入し、ほとんど利用されています。
土地が豊富にあると思われる北海道ですら、そんな状況ですから、都府県で日当たりが良く平らな土地が耕作放棄地として荒れているようには思えません。
民家の屋根の利活用は一つの手段ではありますが、一般企業が「儲け・利益」を無視して事業は行いません。
投資したコストは可能な限り短期間に回収する事が命題ですし、慈善で大金は投資しません。
屋根を貸す事を考える人も、じっくり考えて結論を出すようにすべきでしょうね。ほとんどの人が一生に一回しか出来ない「高価な買い物」として手に入れた「マイホーム」ですから、大切にしてほしいですね。後悔しないように・・・
投稿: 北海道 | 2012年5月12日 (土) 09時08分
実験したのではありませんが、都市部の住宅の屋根に、ソーラーパネルを設置しても、やはり電力会社の売電を買うことは、並行してやらねば、生活できませんし、光化学スモッグなのか、薄汚れた都市部の太陽光より、郊外の太陽光の方が、かなり強いですし、パネルの表面が汚れると発電量も減って行きます。
結論は、40円とか42円とか言われる固定買取制度での収入だけが、メリットということになるのでは?と、思ってます。
ハイブリッドプリウスと同じで、蓄電バッテリーは、せいぜい5年が寿命で、かなりコストが高いですし、安物の充電設備は、段々、最大充電が、出来なくなります。
この充電回路も、かなり研究して、回路を作らないと、絶えず充電していると、バッテリーの寿命が短くなります。
リチウム電池も同じです。要は化学反応発電と蓄電と言う事なので。。
大体、天候は、自然の摂理で決まりますから、電力が足りない時間帯は、多分、発電量も、期待できないと思えます。
結局、ブームで、終わってしまうだろう太陽光発電。
日本のエネルギー救世主としては、心もとないシステムと言わざるを得ないと思います。
一時、太陽光で、湯を沸かし、風呂に使うと言う屋根におく温水器が、流行りましたが、条件の良い地域限定の商品でしかありませんでした。
まあ、設備の一般耐用年数は、10年くらいまでですので、果たして、大吉とは、いかないのでしょうねと思ってますけど。。
うちは、マンションによって、日陰になってますので、余り設置する重要性を感じてませんね。
投稿: りぼん。 | 2012年5月12日 (土) 10時10分
とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。
投稿: 株の購入 | 2012年6月 1日 (金) 16時03分