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FIT推進派一色の調達委員会では、結論が初めから分かっていた 

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よくこんな話をテレビなどで聞きませんか。

「日本はかつて太陽光パネルで世界一の技術とシェアを持っていたが、いまは大きく脱落した」。

あるいは

「ドイツはグリーンエネルギー大国になったのに、日本は原発に固執したために大事故を招いた」。

ついでに

「日本の電気料金は世界一高い」。

これはよくマスメディアがしたり顔で言う台詞ですが、別にウソを言っているわけではありません。ただ、自分にとって不都合なことを言わないのでアンフェアなだけです。

ドイツで急速に太陽光発電が普及したのはふたつの原因があります。ひとつは全量・固定価格買取り制(以下FIT)と、中国製の激安太陽光パネルによる市場支配です。

つまり、ドイツは「グリーンエネルギー大国」にはなったというのはウソではありませんが、グリーンエネルギー産業は育たずに、儲けたのはFITの初期参入者と中国企業だけだったのです。

ドイツは、この結果のツケを今になって支払っています。この3日間書いてきたように、ドイツでは、巨額な財政負担と電気料金の高騰、国内グリーン産業の倒産続出などのために、FIT制の維持が困難になりました。

ドイツは脱原発を急ぐあまり、誤った方向に行ってしまったのです。

ドイツ政府は、現在全量・固定価格買い取りをやめて、80%から90%のみ買い取って、余った電力は自家消費するか、一般の市場に放出して化石燃料電源と同じ安値で売るような改訂案を連邦議会に提案しています

当然買い取り価格も下がっていく一方です。(下図は家庭用発電)

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初年度2005年は90.6円で、現在は38.5円です。半分以下の買い取り価格に下落しているのがわかります。

そして皮肉にも今や、ドイツの太陽光発電の買い取り価格は通常の電気料金よりも安くなってしまったために、売電するより買ったほうが安いということになってしまいました

頂戴したコメントにFIT制はエコカー減税のようなものだ、というご指摘がありましたが、やや違います。エコカー減税は、買った消費者のみが優遇税制を得ることができます。

しかしFIT制では、買わなかった者にも税金負担がくるという点では一緒ですが、電気料金の上乗せという形で二重の負担になります。いわばエコカーでない車も高くなってしまったのです。

その結果、ドイツの電気料金は事業用で 24.33ユーロセント(26.8円)、日本の13.77円(中部電力)のほぼ2倍となっています

日本の電力料金が世界一高いというのは、2005年のEU諸国のFIT導入までの話で、現在は日本の買です。

こんな調子ですから、ドイツを先頭とする「グリーン革命」は急速に退潮しており、特にその中心だった太陽光発電には大幅な見直しが始まっています。

マスメディアは、初年度から数年の破竹の勢いの「太陽光バブル」のみを切り取っているのであって、そのバブルが弾けてしまった現在の「アフターグリーンバブル」の姿を伝えようとしません

これはFIT政策の失敗によるものと結論づけてもいいのではないかと思います。これをそのままデッドコピーしようというのがわが国です。

日本では2003年からRPS制度が導入されて、全ての電気事業者に一定割合のぐりーンンエネルギーの調達が義務づけられました。
*RPSRenewables Portfolio Standardの頭文字で、「再生可能エネルギーの利用割合の基準」のこと。

当時はグリーン電源の普及についてFIT制度にするか、RPS制度にするかで意見が分かれていました。最終的にはそれがRPS制度になったわけですが、その時の政府の見解はFIT制の欠陥をよく分析しています。(欄外資料1参照)

ここで当時の政府が言っていることは

FIT制では適切な固定価格の設定が難しい。

❷FIT制では競争努力がされにくく、事業者の効率化インセンティブがなくなる。

❸以上の結果電力価格がコスト高になり、電力料金が上昇し、高値固定化する。

珍しく政府は正論を語っています。この当時の日本政府見解が正しかったことは、マスメディアが礼賛するドイツの現在の惨状を見れば分るでしょう。

この政府方針がひっくりかえったのは、民主党事業仕分けで飯田哲也氏が従来の太陽光発電の補助金をバッサリ切り、FIT制を導入することを結論づけたからです。

飯田氏が強硬なFIT制の主導者であることは知られており、彼を再生可能エネルギーの事業仕分け人に選んだこと自体、FIT制への転換という思惑が既に民主党政権内にあったと思われます。

この事業仕分けの流れを受けての調達委員会では、買い取り事業者側の候補がすべて排除され、FIT推進の人たちのみの会議となりました。

なにか不透明ですね。このような重大な決定を利用者側の意見をシャットアウトしたところで、、現在のドイツを総括することなく、太陽光事業者の言い値でを丸飲みして決めてしまったわけですから、先が思いやられます。

■写真 もみじの若葉です。もみじというと紅葉ですが、青葉のもみじもなかなか。

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■資料1 RPS 制度とFIT 制度:新エネルギー導入政策に関する研究
3-2-2 RPS 制度と固定価格買取制度の比較(政府見解)

 第一に、対策効果の確実性の面でみると、固定価格買取制度は、価格設定を発電事業者にとって十分魅力ある水準に設定すれば効果は大きいが、固定価格を常に適切な水準に設定することは困難を伴い、仮に低すぎる水準に設定されれば、期待された導入効果が達成されない可能性が高い。

 また、このため、目標を確実に達成しようとすれば、価格は適切な水準より高めに設定され、しかもそのまま固定されやすい可能性があり、その結果、社会的コストが膨大なものとなり、経済効率性を欠く

第三に、コスト削減インセンティブの面に関して、固定価格買取制度は、固定価格での買い取りが保証されるため、発電事業者側にコスト削減インセンティブが働きにくい。価格が仮に適正な水準より高めに設定された場合には、非効率な設備の導入が増加する懸念がある。

 また、一度設定された価格は、発電事業者等の予見可能性等を考慮すると、機能的な見直しに限界がある可能性があり、そのような場合には、発電コストが低下しても、最終消費者のコストは下がりにくい可能性がある。
(太字引用者)

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原発を真面目に終りにする方法」カテゴリの記事

コメント

うーん、これが民主政権のデキレースってやつですね…。
本当に上手くいくとは思えないんですが。
再生可能エネルギーとは、あくまで多彩なものを組み合わせてこそだと思います。が、特に効率の悪い太陽光パネルの極端な優遇政策とはこれいかに…。

これまで上がった以外にも、藻からバイオ燃料を取り出す実験が実用化研究に入ってますし(米軍が先行しとるようですな)、
有機ELばかりが注目されていた山形大学工学部では、従来比2倍の高効率リチウムイオン電池を昨年開発し、国の補助で来年度には本格的に安価な量産技術の確立を目指しています。
あ~スパイが怖いですねー。

東北大学で20年前には学長まで務め、ノーベル賞に最も近い男と言われた「西澤研究室じゃ」
多国籍の学生を受け入れており、広大なサハラ砂漠に太陽光・太陽熱発電を全面展開して、超高電圧送電線で世界を結ぶという、壮大な計画を目指しています。メンテナンスは主にロボットで。

京大などは宇宙からのマイクロ波送電なども。これまた左翼団体が「人体への悪影響。人間に電子レンジ当てるのか」とかトンチンカンに騒いでおりますが、初期実験は成功してます。

もう、宇宙戦艦ヤマト2みたいな世界が近付いてるんですよ。

りぼん。さんがおっしゃるような小規模揚水発電も「早く実現できるピーク時シフト対策」としてはいいと思います。
残念ながら効率性が悪いのと、設備投資が高いのがネックかなあ。

まさかのあのJAL123便墜落現場の地下には、東電の世界最大の揚水発電所があります。

ファミリー企業や給料やボーナス云々の問題はありますが、電力会社もそりゃあ必死ですよ。

まあ、関電は未だにオール電化住宅推進で叩かれているようですが。アホか。

あの震災の日、停電して電子制御のボイラーやファンヒーターを失ったウチは、プロパンガスのキッチンは健在。1台だけあった従来型石油ストーブで凌ぎました。
やはりエネルギーは多様化しといたほうが、冗長性が確保できます。
断水する前に風呂に満タン確保。

一方、岩手県で新築オール電化の親戚は…もう悲惨だったこと。
近所付き合いで料理頼んだり、庭でバーベキューしてなんとか凌ぎ耐えたそうです。

投稿: 山形 | 2012年5月 8日 (火) 11時41分

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