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「この夏」以後の脱原発を予想する

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この夏の大節電令によって、全国民はうんざりすることでしょう。原発ゼロで乗り切ることは可能でしょうが、それは薄氷の上を歩くようなものになると思います。

東日本は、去年の経験がありますが、西日本や九州、北海道などは未体験です。スーパーは、照明が半分になり、家でもクーラーを自由に使えない、職場も町並みも薄暗くなる、そんな暑く長い夏が全国的に始まります。(欄外資料参照)

工場の生産は制限され、今度は去年のように他の地域に生産を移せませんから、部品調達は困難になり、サプライチェーンはガタガタになります。

製造そのものにも、支障をきたすでしょう。日本が誇ってきた、納期の厳守という信頼が、危なくなってきます。

電気料金はハネ上がり、自家発電に切り換える工場が増えますが、これも原油高でコストを押し上げます。コストの上昇は、それでなくとも薄い利益率を更に下げます。

株価は下落し、このような不安定な日本経済を観察していた格付け会社は、一斉に評価の切り下げを行います。ひょっとして、国債の格下げもあるかもしれません。

すると、連動して長期金利が上がり、景気はさらなる後退をするかもしれません。消費税増税と緊縮財政という政府政策と相まって、日本は果てしのないデフレスパイラルを転げ落ちていきます。

これが去年の私たち東日本が、震災と原発事故で経験した「3.11後」の日常風景だったのです。その全国版が始まります。

そんなときに、ある電力会社の火力発電所が故障したとします。これは今年2月の九電の事故でも現実になりました。

そのときは、他の電力会社の支援でどうにか乗り切ったのですが、今回は各電力会社も、供給余力を出し尽くしていますから対応ができません。

頼みのPPS((特定規模電気事業者)も、自社電力の余剰ですから、すでに引き合いが殺到して供給が圧倒的に不足している現状です。隠し玉の揚水発電も、電力不足のためにフル稼働できません。

かくして、こんなたった一基の火力発電所の故障で、一瞬で大都市への電力供給がパンクし、大停電が起きるかも知れません。

それでなくとも暗闇に弱い現代人は、パニックに走ります。溢れるエネルギーを前提にした生活が、あまりに脆いことを知ります。

一瞬にして辛抱の限界を軽々と超えて、エネルギー枯渇という本源的な恐怖が背中に忍び寄ります。

そして必ずこんな世論が、どこからともなく生れます。「そろそろ原発、いいんじゃない、許してやっても。再稼働すれば解決なんだぜ。すぐに事故るってわけじゃないだろう」。

これは居酒屋のサラリーマンや、公園のママさんたちの愚痴から始まり、またたくまに唱和する声が拡がり、マスコミが悪のりし、世論は逆流を一斉に開始します。

これを待っていた国は、立地自治体の了解を取り付けて、いち早く再稼働に踏み切ります。そこで一基、ここで一基、今日一基、明日また一基と。

すると、たちまち町は明るくなり、工場の操業は平時に戻ります。

ムード的に始まった脱原発運動は、この現実の前にみるみるうちに後退していくことでしょう。まるで、始まった時のように。

そうならないために、リアルに脱原発を考えていきたいと思っています。原発を批判するのは簡単です。放射能に恐怖するだけではなにも始まりません。

なにが本当に脱原発に必要なことなのか、どうしたらほんとうに原子力社会から離脱できるのか、考えていかねばなりません。

        ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

■資料 夏の節電目標と電力受給

・北海道電力・・・ 7%   -1.9%
・東北    ・・・数値なし 3.8 
・東京    ・・数値なし  4.5
・中部    ・・5      5.2(*関西に電力融通)
・関西    ・・20    -14.9
・北陸    ・・5     2.6(*関西に電力融通)
・中国    ・・5     4.5(*関西に電力融通)
・四国    ・・5     0.3
・九州    ・・12    -22

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原発を真面目に終りにする方法」カテゴリの記事

コメント

まさにその通りで、まあ今年の夏が冷夏なら問題も無いことでしょう。
しかし、それでは農民には大変な損害となります。

出来る限りの節電をした上で、新規自然発電やバイナリー温熱、小水力など、総動員できる体制が求められますが、実際に今年の夏にはどうやっても間に合いません。

原発再稼働とも関連して、極めて難しい選択を突き付けられているのが実情だと思います。

私は、あくまでも厳しい査察をやった上で、とりあえず安全な原発は再稼働した上で、次第に自然エネルギーにシフトしながら廃止していく漸減作戦が、最も現実的だと考えています。

投稿: 山形 | 2012年5月16日 (水) 07時37分

とりあえず安全な原発>>>このとりあえず安全と言うものさしが、政治的ではなく、科学的にリスク評価として、私には、解りませんし、未だ電力会社は、ほとんど説明しません。

特許というか、企業秘密もあるのでしょうが、例えば、大飯1,2号機と3,4号機は、余分な水蒸気を水に戻す方法が、全くちがいますし、福島のBWRと大飯のPWRでは、格納容器の設計耐圧も違います。
冷却に必要な、真水のタンクの容量も、相当の差があります。

きちんとしたウエットベントが、大飯3,4号機には、存在しないことも解りました。

津波だけ、ひとり歩きしていて、西日本でも、津波シュミレーション図面が、発表されているのに、50基の原発のシビアアクシデント時のスピーディの季節ごとのシュミレーションすら、出てきません。

理由は?と尋ねたら、ストレステストの1次評価項目には、ないからとのことです。

福島4号機が、爆発したのに、2次評価を待たず、再稼動する、しないを、政府4役だけで、決めるっていうのは、菅元首相が、原発事故に、過剰に介入したのと、同じスタンスですよね。
原子力村の斑目委員長が、1次評価だけでは、科学者として、安全評価は、不可能と宣言しているのに、とりあえず安全な原子炉って、どこなんでしょうね?本来、リスク評価をきちんとすれば、安全度の順位が、1~50まで、付くはずなんだと思うのですけど。。

結局、崩壊熱の冷却が重要なのに、そのシステムが、付いていないとか、能力の足りない原発が多すぎるように思えます。ECCSで、緊急時の初動対応が出来ても、その後の対応が、ないのです。関電は、本来、近隣のダムから、真水を送れるような方策が必要と思いますが、現状は、海水しかない状況のようですね。

琵琶湖の水を投入できるくらいにしておかないと、11基の原子炉と燃料貯蔵プールの冷却は、無理かもしれないし、メルトスルーは、ありえないと言う条件での、ストレステストって、意味があるのでしょうか?
私には、解らないことだらけです。

投稿: りぼん。 | 2012年5月16日 (水) 10時34分

りぼんさん。「とりあえず安全な原発」などと私は一行も書いていませんが?頂戴したコメントは、私のエントリーに対してではありませんね。

いまの原発の危険性はわかりきった話で、私はこの間一貫して、原発の危険性などというわかりきった問題ではなく、「どうしたら離脱できるのか」、「なにが障害になっているのか」、「それを克服するにはどうしたらいいのか」、という「その後」を書いています。

改めて今更、再稼働の危険性を書かれても、それは承前です。議論を引き戻さないで下さい。

投稿: 管理人 | 2012年5月16日 (水) 11時21分

東日本は、去年の経験がありますが、西日本や九州、北海道などは未体験です>>>

全くその通りで、本当にここまでやってきた・・・と言う感じです。

一昨日農水省からホクレン(都府県で言う全農のようなもの)に、酪農家の電気の契約なんてどのくらいで、一ヶ月どのくらい必要?との問い合わせがあったそうで、私の所の酪農家の調査(聞き取り)してくれないかと依頼がありました。

私が住んでいる小さな町では、電気を大量に使うのは酪農家しかありません。
その中でも大きな酪農家に問い合わせし、ホクレンに回答しておきました。

7%と言ってもどのくらい節電すればよいのか見当がつきませんが、可能な限り節電しなきゃ・・・と今から覚悟しています。
酪農家での節電・・は中々厳しいものがあります。
搾乳機器の稼働や搾った牛乳を冷やす為の電気はどうしても必要です。特に暑い夏は冷やすのに電気を使います。
計画停電なら何とか対応可能ですが、突然のダウンはさすがに対応不可能です。

管理人様が予想しているような、背に腹は代えられない的ムードで再稼働に持って行かれる事が危惧されます。

投稿: 北海道 | 2012年5月16日 (水) 13時29分

北海道様。ありがとうございます。ここのところ、あ~、オレはなんて孤立した論陣をひとりで張っているのだろう、と弱気になりかけておりました。

いまの時期ならば、脱原発、再稼働反対とだけ言っていればいいものを、「その後」論議をしてしまう自分が哀しい(苦笑)。

放射能をかぶった地域だからこそ、リアルな論議にしていきたいと考えております。

投稿: 管理人 | 2012年5月16日 (水) 15時09分

再稼働の危険性を書かれても、それは承前です。議論を引き戻さないで下さい>>>>

管理人さんは、原発被害者ですから、再稼動は、安全では、ないとの、認識で、動いてきたことは、もちろん、承知してますが、現状、東電の家庭向け電力値上げ価格は、柏崎刈谷原発、再稼動を、条件に入れてますし、関西電力も、大飯3,4号機の再稼動を前提に、大阪市と、対応している現実があり、特に、西日本は、計画停電と言うものすごく大変な目にあっては、居ませんので、西日本の脱原発論者も、1年経った今、すこし慣れというか、危機感というかが、昨年より無くなってきています。
どこかの原発が、再稼動すれば、なし崩し的に、再稼動してしまう危険性があり、山形さんのコメントに、反応してしまいました。


管理人さんの危惧する「マスコミが悪のりし、世論は逆流を一斉に開始します。」は、すでに、西日本では、そういう容認報道は、流されています。さすが、ひどい目にあった、東北、関東地区では、そういうマスコミの態度は、まだ、出てこないでしょうけど。。

管理人さまには、エントリー(お題)から、外れたコメントをしてしまって、申し訳なかったですが、ほとんど実害の無かった西日本は、茨城の農家さんほど、脱原発でもないようですよ。

ただ、50基の1基でも、再稼動したら、雪崩のように、再稼動してしまうと想像してますので、西日本の都市部の危機感と、関東、東北地区の危機感が、違っていることだけ、考慮していただき、なんとか、安全で、適正価格で、電力が、地域に渡ることはできないものかと思ってのコメントでした。ごめんなさい。

投稿: りぼん。 | 2012年5月16日 (水) 15時53分

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