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中島紀一先生のTPP講演その2 農業が変われば、地域が、国が変わる

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私の農業の師・中島紀一先生のTPPについての講演記録第2回を転載いたします。

師と私は呼びますが、先生の学生ではありません。私自身がある程度の農業体験、農業団体経営を得てから知遇を得ました。

かえってそれはよかったと思っています。というのは、青年期の時に出会っていれば、私は農業技術論になるか、正反対の理想論の眼鏡をかけて先生を見たでしょうから。

実は私が本当に先生を師と考えたのは、この3.11移行の苦しい日々の中からでした。

先生は現場主義です。ですから、学会発表論文づくりより、農業現場に走ります。先生ほど現場の農業者とのつながりがある研究者はいないのではないでしょうか。

いとも軽々と現場を訪れ、どんなにちいさな農民の勉強会にも無償で足を運びます。

放射能問題の重く厚い暗雲が、福島、茨城を覆った時、先生はすぐさま現地に走りました。

先生は飯館村の老農から話を聞き、心打たれました。その老農の畑は周囲が避難してしまい、荒れた村の中で唯一まるで浮島のように「昔の村」のたたずまいを残していたからです。

昔・・・、と言ってもわずか数か月前のとでした。死ぬなら産まれた村だと決めた老農は日々の常として耕し、種を播き、育てました。

子供たち夫婦が見舞いに来ると、出来た野菜を土産に持たせます。若夫婦はオジィちゃん、すまないと思いながらも、途中のインターで捨てました。

そしてその次もその次も。しかし、ある時測ってみました。暫定規制値を大きく下回る数値でした。

それが土の持つ力です。それを先生は「土の神様」と呼びます。そして、その時に先生が思ったのは、「農業とは耕すことが放射能への抵抗の証なのだ」ということでした。

放射能は無敵ではなく、天敵があるのです。それが土と耕す人なのです。

そして科学的なバックデータを取るべく、避難区域周辺の田んぼを率先して仲間の研究者と共に測定して回られました。

このように生きる先生は研究室の住人ではありません。常に農村を歩き、現実を見て共に悩み、百姓と話し、その中で私たち農民の歩みの杖たろうとする人です。

その意味で、私は先生を総合学問としての農学者、百姓の友としての学者だと思っています。

この講演の中で、先生はたんなるTPP反対にとどまらず、米国流大規模農業に浸食されない日本農業のあり方までお話になっておられます。

貿易論という範疇でTPPと闘うのではなく、「国のあり方」から説く先生のお話には説得力があります。

残念ですが、この短い講演記録からは先生の穏やかで心に響く口調は分からないかもしれませんが、まずはお読みください。

講演記録を掲載された「まほろばブログ」様に感謝いたします。
http://www.mahoroba-jp.net/blog/2011/04/post_912.html

        ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

      日本が進むべき遣は「開国」=「通商国家」ではない その2 

―TPPの喧曝のなか、いま改めて農と食と地域の結び合いの意味を考えたいー

                          中島紀一(茨城大学元農学部教授)

承前

失われる雇用・地域、自然・風土

このまま第三の開国論を突き進めば、雇用も地域も減茶苦茶になっていくことでしょう。
企業の生産、営業拠点は海外に流出し、国内には外国人労働者が大量に流入し、労賃水準は安価な外国人労働者賃金に引っ張られて下落していくことになるでしょう。

中国からの農産物の大量輸入で、国内農産物の価格が下落しつづけている現実からすれば容易に推察できる事態です。

TPP=開国論の諭議では日本の道は通商国家だという認識が当然のこととされています。
たしかに「資源に恵まれない日本には、加工貿易による立国しか道はない」という考え方は第二次世界大戦後の日本の基本路線となってきました。

しかし、そこには、日本の自然と風土を経済と社会の基本において活かしていく
という視点が欠落していました。
振り返れば、こうした国のあ.ゆ方が環境を壊し、経済を歪め、地域を痛めつけ、そして社会をダメにしてきたのだと言わざるを得ません。

日本は決して資源小国ではありません。
四季に恵まれた温暖な気候があり、適度に雨が降り、豊かな土壊があり、そこには実に多彩な生きものが生きており、そして風土を活かす文化の伝統があります。

それを踏まえて、
日本列島には
素晴らしいレベルの農業生産と
安定した地域社会が築かれてきました

しかし、戦後の日本では、豊かな風土を経済と暮らしに巧みに活かしていくあり方は国の基本路線としては退けられ、外部資源に依存した、すさんだ貿易立国へと突き進んでしまったのです。

土とつながる白給的な暮らしを

私たちはこうした国のあり方に強い危機感を覚え、日本の自然を活かした循環型農業のモデルとして有機農業を提唱し、その道を生産者と消費者の協力によって切り拓いてきました。

低投入、内部循環による高度な安定した生産体系を構築し、地域の自然の恵みを活かした豊かな自給的な暮らしを創り出してきました
それは、アメリカ的な工業化された巨大農場をモデルとした「強い農業」論とは根本的に異なった道です。

私たちはいま、「農」が変われば「国」が変わる、「地域」が変わる、「暮らし」が変わる、と周りの人たちに呼びかけたいと思います。
その大前提は、農業・漁業・林業を大切にし、農村の価値を評価することです。

そして、健全な食といのち育む農を取り戻し、土とつながる自給的な暮らしを再建していきましょう。
同時に、働き方を転換して、農業・漁業・林業を基盤とした地域の持続可能な産業の連鎖を生み出していくことです

このことによって、子どもからお年寄りまで、あらゆる世代が元気に生きる地域社会を創造すること、これこそが21世紀を拓く大きな課題だと思います。

(了)

*太字は「まほろばブログ」様の原文ママです。

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コメント

私は20年以上も昔ですが、大規模化・効率化の研究を半分嫌々ながらやった経験があります(稲作でシミュレーション)。
どうやっても、我が日本の国土ではいずれ行き詰まる。
低価格競争になったら勝てません。

農村を守ることこそが、強い日本を守る基盤です。残念ながら山間部を中心に過疎化と荒廃が急激に進んでしまいました。
安全で高品質な作物を作ることこそがキモです。
巨大な震災と原発事故が起きた今こそが試練であり、復興の要でしょう!

もはや途中参加など不利にしかならないTPPなどには、とても賛成出来ません。

農民や農協vs経団連のような構図に単純化したものばかり強調した報道がなされていることは、こちらのブログで明らかなように間違っています。

食い物は食い物です。
「日本にはカネがあるんだから、必要なら外国から買えばいい。安上がりだ」
などとウソぶく者もTVでは横行してますし、
こちらのブログでも昨年末には善人顔して100円牛丼などとぶち上げるバカもおりましたね(笑)しかも自分は食わないとか。

大概にしやがれと。
最近数年でも海外の気象変動や需要、原油やバイオエタノール価格の高騰、さらに人口増加や途上国の発展。
イザとなったら、もはや金持ちでもない日本がいくらカネだしても、当然生産国が優先されるでしょう。

一見矛盾するように聞こえるかもしれませんが、「日本の食料自給率」 のまやかしは理解した上での意見です。

投稿: 山形 | 2012年5月 4日 (金) 09時05分

日本政府の農政は、間違っていると思います。
過去の事実関係をみても、はっきりしています。
例えば、八郎潟での大規模稲作について、強制的減反をさせ、死亡者まで、出したことなど、どこか、原発は、安全で、絶対爆発しないと、言ったことと、似ているような感じさえ、受けます。埋め立て干拓地ですから、水田にとって、あぜで、段差を作らなくても良い八郎潟の大規模米作について、なぜ、減反命令を出し、裁判をさせたのは、自分には、いまでも、理解不可能な政策です。
大規模農業が、日本の未来計画というなら、八郎潟を造成して、わずか数年で、減反命令を出すなんて、大規模農業は、政策論としては良いけれど、実際には、やってはいけない農業だと、政府自身が、正反対の意思表示を、いつもしていて、長期的な日本農業のありかたが、未だ決められない日本政府が、そのままTPPに、参加したところで、日本の風土や地形、自然に適合した「日本の農業」を海外に示すことは、不可能に思えます。

八郎潟で、自殺に追い込まれた農業者と同じ運命が、何の自国の農政戦略の無いまま、TPP参加すれば、同じ運命に、農業現場が、追い込まれ、さらに、金融、保険など、あらゆる分野に、ダメージを与えることは、わかっていることです。
リーマンショックでも、結局、実体経済を無視した、金融政策や仮想金融論で、ありえない金融数学商品を、売り逃げした結果でしょう。

もうすぐ中国は、不動産バブルが、破綻していることが、内国で、社会問題になっていくでしょう。

TPPも、同じで、日米同盟の傘下で、米国との付き合いをしていく以上、米国の無理な政策を、日本政府は、受け入れていくのでしょうが、、NATOのような各国の軍事主権がありながら、同盟関係にある国と、専守防衛というまやかしの日米同盟とは、レベルが違うので、結局、米国に、食いつぶされる現代版植民地構想なんでしょうね。

投稿: りぼん。 | 2012年5月 4日 (金) 09時37分

タミフルのシュミレーション唐澤俊樹本人。出生1956/12/29/擬人の徘徊に困る。正統性のタミフルのシュミレーション唐澤俊樹本人。の内容の記事を知りたい。どうぞよろしくお願いいたします。埼玉県新座市野火止5-24-14番地。唐澤照子邸内唐澤俊樹本人。

投稿: タミフルのシュミレーション唐澤俊樹本人。出生昭和31年12月29日。住所。〒352-0011埼玉県新座市野火止5-24-14番地。唐澤照子邸内唐澤俊樹本人。タミフルのシュミレーション唐澤俊樹本人。内容 | 2012年5月 4日 (金) 09時57分

いつも拝読しております。

TPP断固推進派の議員は、
「農業を大規模化して強くすれば、
外国に打って出ることもできる」
などと、のたまいますが、
私は疑問に思っています。

集約化・大規模化に、万一、成功したとしても、
その先にあるのは、
デフレ下における際限の無い価格競争です。

農業を工業と割り切って
トヨタ方式で効率経営を追求すれば、
一握りの成功者は出て来るでしょう。
ただし、
国土も人心も荒廃しそうですね。

TPPについては、
現時点で得られる情報から判断すると、
私は賛成できません。
農業はもちろんのこと、
我が国のあり方を
根本的に引っ繰り返しそうな協定だからです。

投稿: 紅而遊戯 | 2012年5月 4日 (金) 17時22分

管理人様 

TPPのくくりではないのですが
中島先生は どうして耕すことで放射能の数値が下がるのか 何か理由をおっしゃってましたでしょうか?

土壌の数値をあちこち測り続けてますが たしかに
腐植の多いところは 値が低いのです。
それが なぜなのか 理由がわかればいいのですが・・・

ある工学博士は 腐植はセシウムを吸着する能力は高いが数値が下がるということはないといいます。
しかし 現実は下がっています。そのりゆうを知りたいのです。

投稿: みずほ | 2012年5月 9日 (水) 17時33分

みずほ様。このブログでほぼ1年間を通して、いかにして放射性物質を封じ込めるかを考えてきました。
カテゴリーの「原子力事故」に大量に入っています。
あまり多いので、どれにしようとわわれながら迷いますが、とりあえず下記の記事に総合的に書いてあります。ブログ右袖の一番下の検索で「セシウム吸着」などを検索してみて下さい。
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-ff9f.html
詳細はQ&A形式でで3回ほど書いてあります。

投稿: 管理人 | 2012年5月10日 (木) 05時57分

管理人様

早速 返事をいただきありがとうございます。
どのカテゴリーだったかなと探しもせずにした問い合わせにお返事いただき 恐縮です。
 
実は ある大学の先生に ベクレルの数値が下がること
イコール放射性物質が減ることなのかとの質問に
「yes」の回答をもらったものですから
土中の様々な微生物がセシウムを取り込むと どうなってベクレルの数値が低くなるのかわからなかったのです。
単に取り込んだだけでは 数値は他とそんなに変わらないのではないかと思ってみたり 取り込むことで遮蔽効果みたいなものが働くのかなと思ってみたり・・・

もういちど カテゴリーを読み直してみます。
ありがとうございました。

投稿: みずほ | 2012年5月10日 (木) 23時30分

TPPは、その内容( いまさら「 開国・国際化 」はないでしょう。)はもちろん、住友化学が推進するということが信じられないのです。
今までさんざん、農薬を売って儲けて世話になってきた会社が、農民を窮乏化して自殺に追い込むことの手先となる。

その豹変振り、恩知らず振りが、信じられない。
現代のキリシタン大名らしい、恥しらず振りです。

米倉昌弘、高尾剛正の顔を見ると、ブラック企業の役員らしさを感じます。

「 僕ちゃんの後ろには、海兵隊がついている、
JA(農水省、大本営)がついている 」
といったところでしょう。

住友化学が農薬・肥料で利益を上げていることを考えると、不買運動が効果を挙げるわけですが、米の供給過剰対策として、減反だけを進めたことにも疑問がわきます。

有機農法への補助を出して、農薬を減らして、収穫量を減らしてゆく道もあったのではないかとも思います。

住友化学は、その頃から、農水省への対策をしていたのでしょう。

投稿: 住友化学とモンサント | 2012年5月20日 (日) 08時30分

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