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2012年5月 9日 (水)

ドイツ・早すぎる喝采 ドイツ電力責任者は語る

↑ Matthias Kurt氏

ドイツは日本の合わせ鏡のような部分があって、お互いに影響されあっているところがあります。

今回の福島第1原発事故のとき、もっともセンセーショナルに事故を煽った国はドイツでした。私もドイツの媒体は英米と比較して、どうしてここまで事実を歪めるのか、と憤りすら感じたものです。

そして日本側にも、ヨーロッパ発のプロパガンディストグループの主張を丸のまま鵜呑みにする人たちが大量に生れました。

するとドイツもまた、自らの過激報道に自ら煽られるようにして、脱原発を宣言し、グリーンエネルギーにシフトすると宣言しました。

今度はこれを日本のマスメディアは過剰に礼賛し、日本はドイツに見習えという報道が繰り返しなされ、とうとう高額の全量・固定価格買い取り制までスタートしました。

まさに日独がお互いに煽り合い、一緒になって極端に走るという図式です。

ついでながら、極端に走るという国民性は熱しやすく冷めやすいわけで、いまドイツの脱原発派は苦境にたたされています。

さて、脱原発宣言を実行に移し、再生可能エネルギーにシフトしたドイツ人自身は、これをどのように評価しているのでしょうか。

「早すぎる喝采」と題された興味深いインタビューがあります。語るのはドイツ連邦ネットワーク庁所長のマティアス・クルト氏です。

原文フランクフルター・アルゲマイネ紙で、ドイツの中道左派の新聞で、緑の党などを支持してきた媒体ですhttp://www.faz.net/aktuell/wirtschaft/energiewende-es-wird-zu-frueh-hurra-gerufen-11655191.html

このネットワーク庁とはインターネットではなく、電力を統括する責任官庁です。

クルト氏はこう語ります。

「エネルギーシフトにのぞむにあたり、ドイツはここまでとてもよく対処しています。しかし、だから大丈夫と考えるのは早計です。厳しい冬を乗り越えた今だからこそ油断大敵で、気を引き締めてかからなければなければなりません。

エネルギーシフトの成功を喜ぶのは少し早すぎます。まだドイツの電力のおよそ6分の1は原発によるものです。エネルギーシフトの本当の試練は、これらの原発を稼働停止しはじめてから始まるのです。われわれは、今後10年かけて大変な問題に取り組んでいかなくてはなりません。

自然エネルギー施設の拡充方針に反対する人はいません。しかし問題は建設地の確保で、特に南ドイツでは不足しています。現在建設中の発電所では不十分なのです。すべての関係者には、この冬の経験を通じて新規建設の必要性を認識して欲しいと思います。

今多くの人は、ドイツが数週間フランスに電力を輸出したと喜んでいます。しかし2011年全体でみれば、ドイツはフランスに対してかつての電力輸出国から輸入国へと転落しています。都合のいい数字ばかりではなく、事実を見つめるべきです

極度の寒波とガス輸送の停滞により、予想を超えた困難に直面しました。…非常に逼迫した状況で、数日間は予備電力に頼らねばなりませんでした。万が一の場合もう後がないわけで、極めて異例な措置でした。」

この記事にはドイツの読者のコメントが寄せられています。繰り返しますが、このフランクフルター・アルゲマイネ紙は、日本でいえば朝日新聞のような媒体です。

そのコメントはエネルギーシフト政策に対して激しい怒りが叩きつけられています。ある意味、こちらのほうもたいへんに面白い。

●エネルギーシフトの失敗は日毎に明らかになるばかりだ。ドイツの電力は限界で、電気代の値上がりもひどい。なにより雄弁に失敗を物語るのは、プロパガンディストがほんの小さな成功に大騒ぎして、プロジェクトの成功を声高に語るところだ。たまたま天気に恵まれて、ほんの少しフランスに輸出しただけだというのに。

●私の知る限り、2011年にフランスから輸入した電力は約18000GWhで、輸出は140GWhだ。これは輸入超過なんてレベルではなく、130倍もの差だ。だがドイツの政治家とメディアは、エネルギーシフトに疑いを持たせる数字は語ろうとしない。

●バイエルンではすでにエネルギーシフトは破綻している。原発の半分を停止したため、電力はチェコとオーストリアからの輸入頼み。州政府はガス発電所を建設しようとしているが、自然エネルギー優先政策のせいで採算が合わないとドイツ企業は撤退し、今はロシアのガスプロムと交渉中。外国頼りで不安だ。しかも新規発電所の稼働は残りの原発の稼働停止に間に合わないとくる。

●エネルギーシフトなんていうのは、素人をその気にさせるためのコピーにすぎない。ドイツは輸出工業立国であり、安くて安定した電力はその命綱だ。ドイツの存亡に関わる重大な問題をエコロビーに任せるべきではない。プロの判断を仰ぐべきだ。

●かつてのドイツは一流の電力産業と一流の原発を有し、安くて安全な電力を生み出していた。だが政治家のゲームに滅茶苦茶にされてしまった。本当の悪夢はこれからだ。

●つい最近までエネルギーシフトを熱く語っていたやつらはどこに隠れたんだ?天候次第では停電してたんだから仕方ないか。巨額の税金をつぎこんだのに風力と太陽光発電は見込みの2割しか発電せず、そのくせ電気代は去年から2割増しだ。そろそろバカなことはやめるべき時だ。

日本のマスメディアは、ドイツの脱原発・グリーンエネルギーの光と影を客観的に報道しません。

このコメントにも出ている、「ドイツが原発を止められたのは電気をフランスから買っているからだ、などというのは間違いだ。今は電力輸出国にさえなっている」、という報道も大分聞かされた記憶があります。

事実はクルト氏が正直に言うように「数週間売ったことがある」ていどの話で、実態は絶対的輸入超過です。

グリーン産業が伸びたというのも間違いで、巨額の税金を投入して大儲けをしたのは中国企業だけでした。税金で中国の太陽光産業を育成したようなものでした。

日本が高い電気料金だというのもウソで、ドイツは日本の2倍の電気料金です。

このように光の当たる部分のみ取り上げて、実情を伝えようとはしませんでした。その結果、ドイツが陥っている問題点の洗い出しができず、回避できるはずの失敗の道を歩もうとしているように見えます。

■ きょうからカテゴリーに「脱原発」を加えました。
私は脱原発に与しますが、いまのあまりにも性急で加熱した状況には疑問を持っています。ひとつひとつ論点を押えてグリーンエネルギーシフトをしていかないと失敗するのではないかと思っています。

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コメント

いまのあまりにも性急で加熱した状況には疑問を持っています。>>>>
私も、そう思います。確かに、どの原発も、安全だとか、リスクゼロだとは、とても、言えませんが、GE製BWRマーク1初期型を引き合いに出して、PWRの大飯3,4号機の安全性を判断すると言うのも、科学的ではないような気もします。泊原発だって、テスト運転も、営業運転も、危険度は、ほぼ同じだから、1年営業運転しちゃった訳だし、ICが動けば、メルトスルーはしなかったのか?大飯1、2号機のように、製氷機を通せば、水蒸気が、水に戻るのか?と考えていくと、50基全部が、それぞれ、崩壊熱をコントロールする方法が違うし、負荷を掛けるタービンの数も、出力も違うし、燃料集合体1基あたりの燃料棒の数も違うし、格納容器の体積も耐圧も違うしで、放射線による金属疲労も違っていて、すべてリスクはあるけれど、リスクの度合いというか、順番は、付けられるとは、思えますが、東芝と三菱で、足を引っ張る話はしないから、あくまで、想定外の全電源喪失が原因になってるけど、プラントの故障と修理は、日常的にやってる作業なのに、秘密主義なんだよね。きっと。。。

これだけドイツの実情を冷静に分析されていて、どうして結論が脱原発になるんですか?少なくとも、再生可能エネルギーは今のままでは限界です。無論、原発の代替にはなりません。では、脱原発後の代替電源はどうするんですか?

名無しさん。いままで大量に書いてきているので、そちらを読んでいただきたいのですが(右のカテゴリーの「原発をまじめに終わりにする」にあります)、私は再エネに関しては、小規模で地場の基幹エネルギーと良好な補完関係にある時にのみ生きる電源だと思っています。

ベース電源としては箸にも棒にもかかりません。これについてはこのブログは再エネ批判ブログと勘違いされかねないほど書いてきましたので、そちらをご覧ください。

「脱原発」という表現ですが、私はいわゆる運動家とは一線を画しています。原発はその誕生から今に至る時間ほど、消滅ないしは削減まで時間がかかるでしょう。

したがって小泉氏が言うような「即時ゼロ」などおとぎ話です。これについてもかなりしつこく書きましたので、そちらをご覧ください。

私は自分が「脱原発派」であろうとなかろうと、そのようなレッテルとは別に真面目に現状を分析して、かんがえていくことが大事だと思っている次第です。よろしくご理解ください。

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