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原発のリアルな終り方  脱原発で今や化石燃料大国に転換してしまった日本

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先日、北九州市で宮城県石巻市の震災瓦礫80トンの試験焼却に実力阻止行動があり、2名が逮捕されるという事件が起きました。

このような瓦礫搬入反対運動は、なにものも生まないばかりか、脱原発運動に放射能差別と被災地差別を持ち込んでいます。
(*これについては過去ログで批判していますので、詳しくはそちらをご覧ください。)
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-2240.html

さて、「脱原発」という言葉は一種のマジックワードです。アブダカダブラみたいなものです。

それを言っただけで、あ~これで解決したぁという錯覚を与えてしまうといった便利な言葉です。しかしもちろん、言っただけでは現実は変わりません。

「脱原発」という目的そのものが無意味なのではなく、それだけでは何も言ったことにならないからです。ですから、具体的に原子力社会から離脱するには、もっと具体的に踏み込んで多方面から考えていかねばなりません。

さて、私は原子力社会からの離脱を、「原発のリアルな終り方」と言ってみることにしました。

どうやったら本当に原子力から足抜け出来るのか、そのためになにをしなければならないのか、逆になにをしてはいけないのか、あれこれ考えていきたいと思っています。

ところがこれは複雑な方程式での解けない解のようです。とりあえず3ツのパラメータを挙げてみましょう。
➊環境問題
❷原発をなくした場合のエネルギーの安定供給
❸代替エネルギーの普及=経済効果

たとえばまず、「環境問題」です。安全問題と言い換えてもいいかもしれません。

「原子力を選ぶのか、命なのか」というような問いかけが去年からよくなされましたが、それはあくまで「気持ち」であって、原発のリアルなたたみ方については何も言ったことにはなません。

そこで、もう少し別な角度から見てみましょう。それは原発事故が起きる前まで一番のテーマだったはずの地球暖化問題です。

「自然エネルギーは環境にやさしい」といっても、ならば原子力もCO2を出さないというコダマが返ってくるでしょう。事実、原子力のうたい文句は地球温暖化でした。

2009年の国連気象変動サミットにおいて、鳩山元首相が勝手に国際公約してしまった1990年比で2020年までに2%温室効果ガスを削減するという目標には、あと8年しかありませんが、原子力発電なくしてどのようにするのかはまったく不透明です
(*CO2削減率問題については過去ログをご覧ください。)
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2009/12/post-a3c7.html

それ以前の1990年に8%削減という政府目標を立てた時ですら、そのために原発を9基増設し、当時60%台だった稼働率を一挙に81%にまで引き上げ、太陽光も20倍にする、と試算されていました

また、2009年時点で、政府は電力に占める原子力の割合を当時の30%から2030年には50%にまで引き上げる計画を立てていました

とうぜんのこととして、それらの計画は3.11以後、完全に白紙になったのは言うまでもありません。

ここで、ではどうやったら原子力なしでCO2削減ができるのか、という放射能以外のもう一つの環境問題のパラメータが出てくるわけです。

当座の間、新エネルギーで現実的に供給体制に入っているものはありません。存在するのは、唯一化石燃料のみです。

実際、止まっている原発の代わりとなる電力は、今まで稼働を止めていた旧型火力発電所を再稼働したものによって補われています。

発送電実績をみればそれは明瞭です。事故前の2010年11月時点で原発は230キロワット時をを発電し、電力需要の30%を超えて供給していました。

それが事故後の2011年11月には70億キロワット時と3分の1以下に減少し、10%を切りました。それが現在2012年5月時点ではゼロです。

では、火力発電の増加ぶりを見ましょう。2011年11月時点で、363億キロワット時であったものが、493億キロワット時と35%増大し、今や電気供給量の実に68%を占めるまでになっています。

脱原発の世論の流れによって、皮肉にも日本は今や約7割を化石燃料に依存するCO2大国に生まれ変わってしまったと言っていいでしょう。

この状況が続くのならば、1990年比25%削減など夢のまた夢であって、大量の排出権購入を考えない限り、わが国は外国に排出権購入で膨大な富をむしりとられ続けることになります

つまり、原子力をゼロにする環境問題解決を実現すれば、片方の地球温暖化阻止というもうひとつの環境問題を犠牲にせざるをえないパラドックスが現実のものとなったわけです。

片方を立てれば片方が立たない、これが原発のたたみ方の解けない解のひとつです。脱原発は呪文ではありません。

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