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2012年5月 6日 (日)

再生可能エネルギー元年に、EUの失敗の轍を踏むな!

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もう少し再生可能エネルギー固定価格買い取り制(フィードインタリフ 以下FIT制)について考えてみましょう。

FIT制は、再生可能エネルギー法のキモのように言われた制度です。

まだ出来上がっていない自然エネルギー市場を、安定した価格で買い上げることによって急速にその普及をめざすというのが目的です。そのために、今まで以上の固定額で電気を買い取ります。

孫正義社長はたいそう満足だったようです。孫氏は「世界的な相場に近い」と言っているようですが、ほんとうにそうなのか調べてみましょう。(資料1参照)

では、今までもっとも高額買い取りを実施していたドイツの太陽光買い取り価格を見てみましょう。
経済産業省 調達価格算定委員会第1回資料

lhttp://www.meti.go.jp/committee/chotatsu_kakaku/001_06_00.pdf

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これを見ると、2012年現在で18.8ユーロセント、約29.7円です。FIT制開始時の2005年には45.7ユーロセントで72.2円でした。7年間で半分以下になりました。

上図は、事業者の地上設置型太陽光発電所ですが、一般家庭用の屋上設置型の価格推移は下図のようになります。

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初年度2005年は90.6円で、現在は38.5円です。これも半分以下の買い取り価格に下落しているのがわかります。

この下落速度は近年になるにしたがって深刻なものになり、2012年は1月に改訂されたばかりの買い取り価格が、その3カ月後の4月にはまた引き下げられるという状況になっています。

ドイツはFIT制導入時には超高額の買い取りをした結果として、たちまち7年で制度が持たなくなったのがわかります。今年のめまぐるしい改訂ぶりをみると、次年度は大幅に下落するか、制度そのものが廃止を迎えると予想されます。

つまり、孫氏の「世界的相場に近い」という言い方は、初年度のことだとするとほんとうで、現時点ならウソだと言うことになります。

再生可能エネルギー先進国のEU諸国では、このようなメカニズムが起きました。(資料2参照)

初年度参入を優遇するために高額買い取り価格を実施した結果、大量の新規参入者が殺到した。特に太陽光発電に集中した。その理由は
・立地条件を選ばない
・設備投資が安価である
・技術的に簡単である
・再生可能エネルギー中でもっとも買い取り価格が高い
・利潤の優遇措置が取られた

❷以上の理由で、太陽光発電の初期参入は、事業リスクがなく、いわば濡れ手に粟状態となった。EU。では太陽光バブルが生じ、異業種からの大量参入が続出した。

❸FIT制による買い取り費用は、電力料金として需要家に転化されるため、当初の予測より導入量が多くなり、政府に想定以上の負担をかけた

発電導入量の増加により、電力料金がスライドしてハネ上がった

・EU各国の電気料金がハネ上がった。日本の家庭用電気料金は、だいたい1kWhあたり21円前後で推移しているのに対して、デンマークは1.5倍、ドイツは1.4倍ほどとなっています。(資料3参照)

発電量が予測を下回り、不安定な電源であることが実証される結果となった

「(ドイツでは)ここ数週間、国内の太陽光発電設備がまったくといっていいほど発電していないこと、太陽光発電設備のオーナーたちが80億ユーロ(8240億円)を超える補助金を受け取ったにもかかわらず、全体の3%程度の、しかもいつどれくらいの量かが予見不能な電力を生み出すに過ぎない」。
(ドイツ「シュピーゲル」誌 昨日の欄外資料3参照)

➎多額の補助金(ドイツでは8240億円)を投下したにもかかわらず、国内の自然エネルギー産業が育たなかった。パネルメーカーは軒並み倒産したか、その危機にある。原因は中国製の低価格パネルの大量参入のため。

「これだけ補助金を出しても、国内に還流され、産業が育つのであれば国民の理解も得られるだろう。しかし、現実はそうはなっていない。」
(同)

電力料金の高騰で、国内産業が海外逃避を開始した

「ドイツ商工会議所がドイツ産業界の1520社を対象に行なったアンケートによると、エネルギーコストと供給不安を理由に、5分の1の会社が国外に出て行ったか、出て行くことを考えている」。
(同)

このようにドイツでは、「太陽光はドイツの環境政策の歴史で最も高価な誤り」とまで言われるようになってしまいました。

わが国はドイツのFIT制度の経験をまったく学んでいません。むしろ輪をかけているふしすらあります。

再生可能エネルギー法では、呼び水として最初の3年間は利潤に配慮する、と銘記されており、高額買い取りと相まって初期参入が一気に増大するでしょう。

しかし、ドイツの例をみるまでもなく、条文に3年間優遇とある以上、3年後には収益率の低下がはっきりしているために、それ以降の投資は警戒されてしぼねむことになります。

しかも他の自然エネルギーより倍以上の買い取り価格を太陽光に設定したために、太陽光のみに過度に投資が集中し、3年後に弾けます。

なんとまぁ、すごい制度設計だこと・・・。これだと、初期投資家のみが莫大な収益をあげることがわかりきっています。

FIT制は、ドイツ、イタリア、フランスの例でも2年もたたずに制度改訂を繰り返し、5年から7年めには、固定買い取り制からの離脱を考えています

脱原発は間違っていない国の選択だと私も思います。しかし、だからと言って欧米で明らかに失敗が宣告されたFIT制度をカーボンコピーすることはないのではないかと思います。

           ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

■資料1 ■クローズアップ2012:再生エネ価格案決定・太陽光42円 普及優先、急ごしらえ

毎日新聞 2012年04月26日 東京朝刊

 経済産業省の有識者会議「調達価格等算定委員会」は25日、太陽光など再生可能エネルギーの「固定価格買い取り制度」の原案を提示した。再生エネの普及を優先するため、発電事業者の要望に近い価格水準となった。太陽光など5種類の再生エネで発電した全電力を、電力会社が固定価格で一定期間買い取ることを義務づけた買い取り制度は7月スタート。制度開始を目前に、急ごしらえの印象は否めず、費用以外のハードルも多い。政府は、再生エネを原子力発電に代わる新しい電源と位置づけるが、課題は山積している

 ◇家庭は月100円未満負担増
 「(自然エネルギー普及に向けた)第一ステップ。よいことだ」

 北海道や京都府で大規模太陽光発電所(メガソーラー)建設を計画するソフトバンクの孫正義社長は会合後、1キロワット時あたり42円とする買い取り価格案を評価した。採算が取れる価格設定を強く訴えてきただけに、要望通りの内容に満足した様子だ。

 委員の中には「太陽光は30円台後半でも採算が合う」との声もあったが、高めの価格設定になったのは、欧州などに比べて遅れている再生エネ導入を加速させる狙いがある。太陽光以外の発電でも、業界団体の要望に沿った価格となった。

■資料2 欧州で露呈するFITの欠点
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/1468?page=1

欧州では制度導入から10年が経過し、FITの欠点も明らかになり、各国政府は制度の見直しを行っている。発電コストが高い再生可能エネルギーの買い取り負担が大きいにも拘わらず、理論通りのメリットが少なくFITの費用対効果に疑問が出てきたためだ

 FITによる買い取り費用は電力料金として需要家が負担する。当初の予測より導入量が多くなった場合には、政府も予想しなかった大きな負担を引き起こす

スペイン、イタリアなどでは大規模太陽光発電の買い取り価格が、事業者にとり有利であったために、異業種から多くの参入を招いた。FITで長期間収入が保証されるが、事業リスクがほとんどないという極めて稀で有利な投資であるためだ。イタリアでは、予定された導入上限量が瞬時にうまってしまい、08年には政府は上限量を撤廃することになった。

 導入量の増加は消費者の負担増を招く。イタリアでは09年に1キロワット時(kWh)当たり0.25ユーロセントだった買い取りの負担金は、11年には1.54ユーロセントに達すると報道されている。制度が続き太陽光発電設備が増える限り、長期に亘り消費者の負担増も続くことから、政府は買い取り価格の引き下げを決めた。さらに6月1日に発効した新制度では大規模太陽光発電設備からの買い取り総額に上限値が設定された。

 FITにより再生可能エネルギーの導入が進んだ欧州諸国は軒並み電力価格の上昇に直面している。EU27カ国の4月1日現在の家庭用電力料金を見ると、年間3500kWhの標準使用量で、風力の発電量が20%に達したデンマークが最も高く1kWh当たり28.64ユーロセント、2番目は風力と太陽光の発電量が20%近くになったドイツの25.88ユーロセントだ。年間7500kWhの使用量の家庭向けではイタリアが最も高く25.40ユーロセント、次いでデンマーク24.81ユーロセント、ドイツ24.33ユーロセントと続く。いずれも日本を上回っている。

 家庭と産業の電力料金の負担による再生可能エネルギーの導入により、どんな成果が得られたのだろうか。再生可能エネルギーの導入は化石燃料の消費減に結び付くはずだが、実際にはEU27カ国の近年のエネルギー自給率は低下している。一次エネルギー消費量の増加に対し、再生可能エネルギー増加量が絶対値では大きくないためだ
(太字引用者)

■資料3 EU各国の電気料金とわが国の電気料金比較

2011年4月現在、1kWhあたりの電気料金(1ユーロ=110円で換算)
・家庭用(年間3500kWh向け)
・デンマーク 28.64ユーロセント (1.5円)
・ドイツ     25.88ユーロセント (28.5円)

・事業用(年間7500kWh向け)
・イタリア   25.40ユーロセント (27.9円)
・デンマーク 24.81ユーロセント (27.2円)
・ドイツ     24.33ユーロセント (26.8円)

○日本家庭用・・・20.54円
 事業者向け・・・・13.77円
(中部電力21年度)

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コメント

太陽光発電をした電力を電力会社の電気料金よりも高い価格で電力会社に売電することができる。
その差額は電力会社が電気料金に上乗せする。
従って、太陽光発電をしていない人々が負担しなければならない。
その結果、普及すればするほど、貧しい人々はますます貧しくなる。
その上、国や自治体が税金を使って太陽光発電設備の設置に補助金を出している。
太陽光発電をしない人々はその税負担もしなければならない。
このような、貧乏人にしわ寄せがいくような制度は廃止してもらいたい。

再生可能エネルギーには、永久機関のような不思議な魅力があります。

昔、太陽光発電が話題になりかけた頃、
「これこそ理想の発電システムだ」と思い、
いろいろ調べてみました。

その結果、
発電効率はそれほど高くないこと、
耐用年数があること、
故障の事例が結構多いこと、
熱には弱いこと、
などを知りました。

蓄電や常温超伝導の分野に劇的な技術革新が起こらない限り、
今の段階では再生可能エネルギーは補助的な役割しか果たせないでしょう。

私は個人的にメタン・ハイドレートに期待しています。

なんだか日本は、その破綻したEUのシステムに向かってまっしぐらですね。

民間といいつつ実質官営の電力会社なら、ゴリ押しもできるでしょうが、今のままでは将来の失敗は目に見えてます。

電力の安定供給と再生可能エネルギーの活用。
もちろん経営の監視も必要ですが、拙速にならずに、地域性や地場産業を見据えた上でじっくりと進めるべきなのが、今後10年だと思います。

つくばの災害が報道されていますが、
皆様ご無事ですか?

皆心配していると思います。

FIT制は言ってみれば期間限定のエコ減税みたいなものと考えれば?
>導入量の増加は消費者の負担増を招く。
車に乗って無くてもエコ減税、原発にも、公共工事にも直接的に恩恵なくても多額の税金を支払っているんだから

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