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アジアに架ける送電網の夢と現実

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壮大な夢というのはいいものです。セシウムが5bqあろうものなら、天下の一大事になるような現実から離れて、パッと大きな夢を描くのもいいことです(笑)。

「エコノミスト」誌5月22日号には、「アジア太平洋州電力網」というドデカイ構想が載っていました。掲載されたのが由緒ある経済誌ですから、あながちホラでないようです。

さて構想は、10年後の日本を見据えた構想を出し合うという、経済人、学者、政治家などのお歴々の集まった「日本創成会議」というところが発信元です。http://www.policycouncil.jp/

いろいろな提言をしているのですが、その中に壮大なホラ、失礼、夢がありました。これがさきほど書いた「アジア太平洋州電力網」構想です。(資料1 参照)

2020年までには韓国に海底ケーブルを通して送電網をつなぎ、その勢いで50年までには東南アジア、そして豪州にまで引っ張ろうというかんがえです。

いや、ズゴイ。まことに気宇壮大ですが、実はアジア・太平洋州の送電グリッドは非常に遅れています。

これはこ個別の国の事情が、アジアでは大きく違っており、電気さえ行き渡っていない国がある一方、日本のような原発大国もあります。

運営形態も民営あり、韓国のような国営あり、はたまた日本のようなのような国策民営もあるとでんでんバラバラです。おまけに周波数も違います。

これらをアジア統合の系統化にするとなると、そうとうに柔軟性のあるグリッド・システムが必要となるでしょう。

これをヨーロッパのような、いくつかの系統をもつ欧州広域連系系統(UCTE)のようなものにしようというわけです。(資料2参照) 

また、この電力問題になると必ず顔を出すようになった孫正義氏は、独自に中国、モンゴル、インドまで及ぶ3万6000キロにも及ぶ送電網を考えています。

外国とネットワークを結ぶのは賛成ですが、その前に自分の足元をみてみましょう。

かなり知られるようになってきましたが、日本の送電網はヨーロッパのような広域ネットワークになっておらず、電力会社の幕藩体制ごとの環状ネットワーク構造になっています。

要するに、沖電を除く本土の電力会社は、めいめいに自社所有の送電網をもっていて、他者との連携は緊急時以外に想定していません。

特に電力会社間で送電を行うための高圧送電網の能力には限界があり、増強しないと電気融通もできません。

例えば、中部電力は去年東電に電気融通をしましたが、そのときネックになったのはこの問題でした。

中部電力から東電に電気を流すためには、中部電力の東清水変電所で周波数を変換せねばなりません。

しかし、15年前に工事を開始した275万キロボルト(kV)の高圧電線の工事がいまだ終了しないために、30万kWの変換設備が3分の1の13.5万kWしか使えない現状です。

15年かかってこのザマですから、おい、やる気があるのかよという気がしますが、ハイないのです。だって、3.11以前まで東電が電力融通を求めたことは確かなかったはずですから。

不要不急の施設に金かけるほど、中部電力はお人好しじゃありません。万事この調子で、今回の関西電力のSOSに対して、スムーズに電力融通ができないのは、余剰電力問題以外にこの変電施設の低能力にありました

もっとも、ただヤル気がないとだけ言ってはかわいそうで、電力会社は電気事業法の定める所に従ったまでですが。

この、地域間で自閉した環状ネットワークを、ドーンと貫通して全国を貫通するという構想があります。これが、飯田哲也氏が提唱し、孫正義氏がラッパを吹いているスーパーグリッド(高圧直流送電網)です。

いわば「電気のハイウエイ」(飯田氏)というわけですが、これが出来れば50Hzと60Hzの壁などへいちゃらというわけです。

もっとも飯田氏の場合、日本の電力事情から発想したというよりも、自然エネルギーを普及させるために発想したようです。

自然エネルギーのボトルネックは、とりもなおさず送電網にあるからです。というのも、今まで何度か述べて来ましたが、自然エネルギーには、お天気任せであるために約30%といわれる発電量のブレという宿命があるからです。

実用化するには、このブレをどうにかしないわけにはいかず、そのためにはスマートグリッドが必要であり、発送電分離がなくてはそれが出来ず、ええい、こうなったらいっそスーパーグリッグだぁ!、という論理展開のようです。

問題はアレをどうするのかです。アレ、つまり資金です。

高圧送電網の敷設費用は、とんでもない金食い虫で、1キロメートル当たり9.5億~10億円かかると言われています。仮に最低限の直線だけで南北2000㎞とします。するとそれだけで1兆9000億円から2兆円です。

この幹線に、地域ごとに支線が張り出しますから、さてどれだけの距離になるものやら。

変電設備やら、ケーブル維持管理や、更新費用なども必要でしょう。震災で通信用の海底ケーブルが切れましたが、最近やっと復旧したようです。切れたケーブルや中継器を、船に引き上げて継ぎ直す作業をしたようで、それは大変だったと聞きます。

ちなみに、欧州広域連系系統(UCTE)は、2000億ユーロ(22兆円)かかったという話もありますから、島国の日本では10兆は楽にかかってしまいそうです。

これを現行の総括原価方式でやるのだけはかんべん願いたいものです。それでやられた日には、ザブザブとコストばかりがかかって、一切合切のツケが電気料金に上乗せになります。冗談じゃないってもんです。

孫さんがいくら持っているか知りませんが、いくら資材を擲っても無理でしょうから、国家事業としてやることになるのでしょうが、自然エネルギーだけで作る必要があるのか、あるいは電力融通だけでやらねばならんのか、と異論が噴出しそうな問題です。

ましてや、陸上より数倍増しの海底ケーブルとなると、アジアに架ける送電網の夢も前途多難のようです。

■写真 ピンポケではありません。ソフトフォーカスでタンポポの教室を撮ってみました。春の眠い午後。

■追記 今日は仕事が押していて、ロクな推敲もしないでアップしたら、転換ミス、脱字の山(大汗)。ごめんなさい。これからしっかり推敲してアップいたします。

       

         ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

 ■資料1 日本創生会議構想  「エコノミスト」誌5月222日号より

Photo

■資料2 新エネルギー導入時の系統安定に向けた取り組みに関する欧州現地調査概要http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g90522a03j.pdf#search=

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コメント

なんじゃこりゃ!な送電網計画ですね…。夢が無い。
50/60Hzの国内東西分離は、数少ない明治時代の先人の失敗だと考えています。

夢を語るなら、まあ世界平和が前提ですが、サハラ砂漠を太陽光・太陽熱のプラントで埋めて、世界中に高電圧送電で電力供給しようというほうが夢が大きいです。

実際に東北大学西沢元学長(以前はノーベル賞最有力候補と呼ばれていました)の研究室では、この研究を続けています。

これこそ壮大な夢であり、人類全体へ投げ掛ける希望です。

投稿: 山形 | 2012年5月19日 (土) 09時17分

15年かかってこのザマですから、おい、やる気があるのかよという気がしますが、ハイないのです>>>
あるわけないでしょう。第1、火力のLNG調達先国ですら、東電は、共同仕入れを拒否しているくらいですから。
電力事業会と言う電力10社の団体ですら、まあ、ライオンズクラブみたいな感覚の付き合いで、いわゆる社業的には、東電と中電はライバル会社なんですから。。

東電は、主にインドネシア産LNGがメインですが、中電は、そことは、取引できなくて、ホルムズ海峡の危機を承知で、浜岡原発での不足分の火力LNG調達を、カタールに新規申し込みを、わざわざ、社長自ら、カタールへ行き、交渉してきたのです。

まあ、東電が、全国の大手電力会社のボスですから、中電の言う事は、聞く訳はありませんし、

ある意味、優良顧客をたくさん持ってる東電は、今や、裸の王様状態。

他の大手電力会社は、いじめられて来ましたので、利用されない関東方面への周波数変換と送電に、お金を使う意味は、ありませんね。第一、中電側が、50Hzに変電所で、大量の電気を作っても、東電側が、その中電からの電気を送電する高圧鉄塔のケーブル送電容量を上げてくれないと、意味がないです。細いケーブルしか、東電が、持ってなければ、100万キロワット以上の送電は、事実上、不可能です。

スーパーグリッド構想は、技術的には、日本の技術で、可能でしょう。お金さえあればですが、廃炉費用に膨大なお金が必要ですから、いち早く、そのお金を、直流スーパーグリッド送電にすることと、交流と違って、電気を瞬断するのが、難しい高圧直流をコントロールできさえすれば、無駄な投資では、ないと思えます。
直流モーターの方が、トルクもあり、利用しやすい産業も多いですから。。

まあ、福島第1から東京への送電量は、膨大で、すでに、相当の送電量が送れる設備がありますから、そういう設備を生かしながら、一部の基幹送電網を、直流スーパーグリッド化すれば、良いのではと思いますが。。

まあ、本来、国が、公共性の高い電力エネルギーに、基本政策を打てない、つまり民間企業相手に、きちんと、ものが言えないと言う、日本独特の官民状態では、暗い未来しか、ないと思いますが。。

投稿: りぼん。 | 2012年5月19日 (土) 10時07分

何故かこの送電網、 中国がハブられてますね。
あちらの共産党政権には許しがたいものづしょう。

チャイナリスクの回避想定か、はたまた包囲網なのか…ロシアも含めて、魑魅魍魎なのが国際政治ですね。
まだまだ先がみえませんね。
状況次第で急変することもありましょうですし。


とにかく、今大切なことは、この夏が猛暑だった場合の関西電力。
今になって、猛暑なら14%節電などと騒いでますが、そりや原発依存の高いがゆえの結果。
むしろ、事故当事者であり福島や柏崎刈羽が止まっているものの、節電は回避できるとする東電。
なんだか酷く皮肉なものです。

投稿: 山形 | 2012年5月19日 (土) 13時03分

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