風力発電大国デンマークの秘密 デンマークにとって電気は「輸出商品」だった!
再生可能エネルギー、いや、自然エネルギーといったほうが適切だと思いますが、この問題点はひとつに集約できます。
それは「ブレ」の激しさです。下図は浮島太陽光発電所の発電状況のグラフです。12時ころをピークとして崖型に発電量が推移するのがわかります。
6時以前と4時以降はまったく発電を停止します。曇りと雨でも稼働しなくなります。
このグラフは太陽光発電が活発な春3月のグラフです。春は太陽光のベストシーズンで、利用側もエアコン使用がないため電力需要にも余裕があります。
一方、夏の気温上昇はパネル内の温度上昇により電気抵抗が増すので効率が下がるにかかわらず、ご承知のように一年でもっとも電力需要がピークを迎える季節です。
つまり、太陽光は一番必要とされる時には発電が減るという本質的な欠陥を持っているクセのある電源だということです。
ですから、「発電量」公称1メガワット(100万ワット)と発表されていても、実態の実発電量はその7から10分の1にすぎません。中とって8分の1として、公称1MW太陽光発電所の実発電量は0.12MWにすぎません。
他の自然エネルギーである、たとえば水力発電、地熱発電、バイオマス発電などはとても安定しており、24時間昼夜を問わず、春でも夏でも一定の発電量をキープ可能です。
ただ風力のみが不安定ですが、発電コストが安価な利点があります。
次に将来的な技術発展の可能性ですが、残念ながら太陽光は既に理論値に達しており、今後大きなブレークスルーは見込めないというのが、おおかたの専門家の意見です。
当然、より小型化、効率化、低価格化は進むことは間違いありませんが、季節と天候、時間に縛られる太陽光の本質的な欠陥が解決できるかどうかははなはだ疑問です。
私は初期太陽光設置者としての経験からも、太陽光は自然エネルギー兄弟の一番のデキンボーだと思っています。このような使いにくい電源にもっとも高い買い取り価格を設定して政策誘導する気がしれません。
このような太陽光発電のみに高い買い取り価格を設定し、資源再利用の観点からも有意義なバイオマス系の自然エネルギーにてこ入れしないのか不思議です。(資料1参照)
ところで、平均30%の「ブレ」があると言われている自然エネルギーを、国のエネルギーの20%にまでにした国があります。デンマークです。
デンマークは、1980年代から風力発電に熱心に取り組んだ結果、現在では5500基の風力発電所が稼働しています。
水上風力発電所などの写真を見られた方も多いと思います。この20%という風力発電のシェアは、世界の自然エネルギーの中でも突出しており、評価が高いものです。
さて、すこしでも自然エネルギーというものの特性を知っている者には、20%という数字が驚異的なものだとすぐにわかるでしょう。だって、デンマークの電力は、2割も不安定なのですから。
この秘密は、デンマークが、日本と違って一国だけの閉じた送電網ではなく、北はスカンジナビア諸国、南はイタリア、西南はイギリス、・ポルトガルといった17カ国もの送電ネットワークの中に位置するからです。
デンマークは、この送電網を使ってドイツやノルウエー、スウェーデンに風力発電の電気を売っています。その割合は、04年から08年実績で50%、06年など4分3まで輸出に回しました。
13年に800MWの世界最大級の風力発電所が完成しますが、ここで出来た電力は初めから国内向けとして考えられておらず、「輸出商品」として考えられています。
またデンマークは人口が少ないために、使用電力量も、デンマークを1とすると、スウェーデンは5、ドイツなど15にもなります。
ですから、デンマークは、このような隣国の電力需要があって、初めて大規模な風力発電の建設に踏み切れたわけです。
このようなデンマーくも、風力発電に多額の補助金を注入しているために、電気代はEU諸国で随一という高さになっています。(資料2参照)
一方日本は、島国という特性から近隣国と送電網をつなぐのは非常に困難です。技術的にやればできるのかも知れませんが(小沢鋭氏が提唱したことがあります)、現実的には巨額の投資と、政治的な困難さが待ち受けています。
その前にどう考えても、東西の電力融通が先決でしょう。国内融通すらできないでいるわが国が、他国との電力融通を構想するのは10年早い。
わが国は、デンマークをうらやむことができません。わが国はわが国の特性の中で問題解決をせねばならないのであって、山の向こうに青い鳥は住んでいないのです。
■写真 少し前に盛りだった椿です。
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■資料1 1KWhにおける買電買い取り価格
・メタン発酵バイオマス・・・40.95円
・未利用木材 ・・・33.6円
・廃棄系バイオマス ・・・17.85円
・リサイクル木材 ・・・13.65円
・太陽光 ・・・42円
■資料2 EU各国の電気料金とわが国の電気料金比較
2011年4月現在、1kWhあたりの電気料金(1ユーロ=110円で換算)
・事業用(年間7500kWh向け)
・イタリア 25.40ユーロセント (27.9円)
・デンマーク 24.81ユーロセント (27.2円)
・ドイツ 24.33ユーロセント (26.8円)
○日本 事業者向け・・・・13.77円
(中部電力21年度)
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来日した、とあるデンマークの教授が言っておりました。
「日本はデンマークのような風車大国にして下さるな!」
山形県も、知事が「卒原発」なる言葉を訴え、主に風力発電を中心に再生エネルギー導入を進める方針が示されましたが…よくよく考えた上で進める必要があります。
福岡大学の「レンズ風車」などには、興味ありますねぇ。
投稿: 山形 | 2012年5月11日 (金) 12時39分
いつも興味深く見させていただいています。
疑問なのですが、メガソーラーや、大規模風力発電に将来性が無いのは分りましたが、住宅に太陽光発電を付けるのは、メリットはないのでしょうか?
ビルの壁面を太陽光発電パネルで覆う等の実験も始まっているようです。
ソーラーパネルをつける住宅が増えると、不安定になりデメリットだけになってしまうのでしょうか?
投稿: 埼玉零細 | 2012年5月11日 (金) 17時16分