スペインの事例 光篇 フペインの「成功」には制御センターが不可欠だった! では、わが国では、なにをどうやって?
2011年3月31日、スペインの送電会社REEが、国内の電力供給に占める風力発電の割合が、前年度被%象の21%に達したと発表しました。
これは季節やその他の諸条件が揃っての瞬間風速ですが、いずれにせよ太陽光を合わせて40.2%に達しています。
スペイン全体の電源比率大きい順(11年3月現在)
・風力 ・・・・21%
・原子力・・・19
・水力 ・・・17.3
・ガス ・・・17.2
・石炭 ・・・12.9
・太陽光・・2.6
これはベストシーズンの3月であるために、年間にすると自然エネルギー総体のシェアはやや下がり33%です。それでも非常に高いシェアであり、ベース電力と言ってさしつかえないでしょう。
ちなみに、スペイン全体の年間発電量は、2881億kWhで、東京電力の発電量とほぼ同じです。
スペインは、自然エネルギーを導入するにあたって、マドリッド郊外にある「再生可能エネルギー中央制御センター」で、天気予報に基づいて、各地域や電源による自然エネルギーの予測と制御を行っています。
これにより、約1時間のレスポンスで、不足の場合は火力発電所に増産を指示して、安定的な電力供給をしています。これが、スペインで自然エネルギーが「成功」した大きな原因のひとつです。
これと似た仕組みは米国にもあり、わが国が自然エネルギーを導入するには不可欠なものとなるでしょう。
飯田哲也氏(環境エネルギー政策研究所所長)は、わが国においても、東西の周波数の壁を超えて貫くスーパーグリッドを提唱しています。(欄外資料参照)
飯田氏によれば、これは1本の電線で送れる電力を、3000kWから、120万kWに400倍に伸ばす技術で、既に技術的には完成しているそうです。
飯田氏はスマートグリッドが、電力会社が自然エネルギーを拒む理由になっていると批判的で、それに替わるものとしてスーパーグリッドを提唱しているようです。
気象条件で大きく左右される自然エネホルギーを、短時間で適正に切り換えることが必須条件である以上、送電網の技術革新は必須条件でしょう。
いずれにしても、スーパーグリッドにせよ、スマートグリッドにせよ、建設に巨額な投資とかなりの時間を要することは必然なことはいうまでもないことです。
となると、このような疑問が生れてきます。
まず、新たな革新的グリッド(送電網)を、電力会社ごとのブロックごとに建設して、順次自然エネルギー導入を伸ばしていくのか、あるいは全国一斉に建設していくのでしょうか。
少なくとも飯田氏の考えるスーパーグリッドは、東西の周波数の壁を貫通して、大量電力の電力融通を可能にするのが目的ですから、本州レベルの東西貫通は前提だと思われます。
また、かんじんな資金ですが、国が負担するのか、電力会社独力で調達するのか、あるいは発送電分離した上で、送電会社が負担するのでしょうか。
飯田氏は、国に期待できない以上、地方自治体がやれ、と言っていますが、そのような力がある自治体は全国で片手の指の数もないでしょう。
氏は、電気会社の悪徳や、国の制度のおかしさを鋭く批判しているのですが、ではそこからどうやって新たな自然エネルギーの仕組みを作り出すのかの具体性となると、急に不透明になってしまいます。
発送電分離となると、そのメリット、デメリットがあり、現行の電気事業法の抜本改訂となることである上、東電処理と複雑にからまってきますので、短期では結論がでないと思われます。
となると、すでに始まろうとしているFIT制による、自然エネルギーはどのように調整されて系統電力網にながされるのか、よくわかりません。
今後、私は日本でも太陽光バブルが発生する可能性が高いと思っています。その場合、いきなり大量の不安定な電源が、ある地域で発生したかと思うと、あちらにでも出る、そして突然消えたり、減ったり増えたりする、そんな事態になることが予想されます。
その場合、スペインの「再生可能エネルギー中央制御センター」のようなシステムがなければ、どのような近未来になるのか容易に想像がつきます。
そしてもう一点。電力料金ですが、現行の電力コストの算定方式は、悪名高い総括原価方式ですが、これを廃止しない限り、新規のグリッド建設の負担は、すべて末端ユーザーに転化される仕組みです。
となると、相当額の電力料金の値上げにつながることでしょう。原発停止による電気料金値上げに加えて、FIT制による補助金投入、新グリッドの建設などが重なり、日本の電気料金がどこまでハネ上がるのか、私には皆目見当がつきません。
このように、、自然エネルギーはただ発電量を増やせばいいという問題ではなく、今までの電力供給を支えていたシステムと、電気事業法のトータルな変革がなくてはダメな問題のようです。
■写真 初春の花、クロッカスです。彼女は気温が低い朝には花弁を閉じて、気温があがると美しく花弁を伸ばします。これはチューリップなども同じです。
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■資料 全国基幹連系統系統図 (飯田哲也「原発がなくとも電力は足りる」より)
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コメント
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太陽光2.3%…
数年前に太陽光バブルが起きて巨大な雇用創出だとか言ってて、現在は財政危機と若者の失業率50%の国でそんなもんだとは…。
おいおい、日本はこれから大丈夫なのかと言いたくなりますね。
スマートグリッドやスマートメーター導入についても、誰が費用を負担するのやら。
また、今年は原発無しで乗りきれたとしても、燃料費の負担(東電はすでに値上げ申請してますね)の上昇と、昨年も頻発した老朽火力発電所の信頼性の問題もありますね。
また、環境保護と地球温暖化を唱える方々は、どうされるのでしょう?
これは何年も後の話ではなく、今年の目の前に迫ったことなのですが。
投稿: 山形 | 2012年5月14日 (月) 09時02分
再生可能エネルギー中央制御センターの必要性や、高圧直流送電網など、スーパーグリッドは、必要でしょうね。
大体、新幹線だって、直流モーターを使っている訳ですし、ロスの少ない送電網とコントロールしやすい変電所や、電力管理システムは、必要だと思います。
また、揚水発電のように、地熱発電も、現状の蒸気発電から、バイナリ発電に改良するだけで、現在、稼動中の17の地熱発電の発電量は、増えるはずだと思います。
よく、国立公園内だから、開発できないなどの発言がありますが、高圧高温自噴地熱発電所を、自噴蒸気発電から、バイナリー発電に、切り替えるだけで、温泉が、枯れるとか、大気中に、過剰な水蒸気を放出することもなく、地下の地熱貯留溜りを、安定させながら、長期に発電が続けられるのではと、思ってます。地熱発電は、全体で、0.2%しか、開発されてませんが、地熱発電に使える高圧水蒸気エネルギーの埋蔵量は、世界3位と言われるくらいの日本ですから、開発するメリットは、あると思います。
電気のことは、正直、解らないことが多いので、ご指導願いたいのですが、多用な小規模発電を、同期させ、送電網に組み込んだり、交流、直流を、同時にうまく取り込んで、ロスの少ない、配電をして、コントロールしてほしいと思ってます。
すでに、2010年から、1時間ごとの発電量と消費量をコントロールする実証実験(スマートグリッドの小規模版)は、愛知県でも、行われていて、データーは、集まっているのですが、非公開という状況のようです。
http://www.nikkan.co.jp/toku/smartglid/sg0531-15n-49ps.html
投稿: りぼん。 | 2012年5月14日 (月) 21時35分
まず、間違い訂正
×2.3%
〇2.6%
でした。
りぼん。さん。
国立公園などの制約を避けるための地熱の斜め掘りなどは、すでに事業化に向かって進んでいます。
いざどうにかなると温泉地などは死活問題ですから、根強い反対もありますが、確実に前進しています。
あとは、いかに慎重かつ大胆に進めるかです。
私も地熱は極めて有力なエネルギーだと思います。
問題はやはりコストと、温泉成分によるプラントの腐食や劣化ですね。まあそれは、技術で解決できないことではないと考えています。
投稿: 山形 | 2012年5月15日 (火) 06時29分
温泉地などは死活問題>>>>
これは、バイナリー地熱発電になると、地熱蒸気発電と異なり、出てきた蒸気で、タービンを回したあと、その蒸気を取り出した深さまで、今まで大気中に放出していた水を、リターンしますので、その井戸の温度や水脈の量がある程度あれば、温泉水の減少というか、枯れることは、システム的には、ないのです。つまり、原発の復水器同様に、地下に、水を戻して、再度、地熱により高温にして、
高温水蒸気を取り出す形になるからです。
そこら辺のことも、含めて、再生可能エネルギーとして、考えて開発してもらわないと、温泉が枯れるということに、なりますから、タービンを回したあと、水は、地中に返すと言う説明が、大事です。ただし、地熱発電に無関係で、温泉が枯れるケースは、ありますので、しっかりとした、事前調査を望みます。
投稿: りぼん。 | 2012年5月15日 (火) 17時12分