茨城県は霞ヶ浦の放射能汚染を隠蔽せずに、徹底した測定をしろ!
霞ヶ浦に放射能が蓄積されつつあるというのは事実です。これは地上と異なって徐々に拡散・消滅していくのとことなり、一定期間増加し続けると見られています。
それは湖沼が、河川のデッドエンドである場合が多いからです。陸上の汚染は下水道を通じて河川に入り、そして湖や海に達し底泥に沈殿します。
霞ヶ浦の場合、大小56本もの流入河川がありますが、それを調べて見ると放射性物質が徐々に河川から湖に移動してきていることがわかってきました。
これは被曝した湖沼、河川すべてに共通する現象で、京都大学の調査チームによれば、年間数キロの速度(*この移動速度は河川の高低差や流量により異なります)で海や湖に移動しています。
つまり、2年から5年のスパンで、河川の放射能汚染は湖沼や湾、あるいは沿岸に流入を続け、放射性物質は湖底に蓄積され続けることになります。
このような動向は残念ながら、政府、自治体の不作為によって放置され続けています。環境省は56河川のうち24河川と半分ていどの調査しか行わず、それも各河川1ヶ所のみの調査でお茶を濁しています。
茨城県に至っては、あろうことか調査すらしない方針でしたが、環境モニタリング指標に入ったために渋々重い腰を上げざるをえませんでした。
多分、茨城県はおざなりの調査で済ませようと考えているはずです。
「もう茨城には放射能汚染はないですよ。安全ですよ」と、安全宣言を早く出したい茨城県にとって2年先にピークが来るような霞ヶ浦の放射能汚染は「見たくない現実」なのです。
しかしこれでは悪しき隠蔽体質と批判されてもしかたがありません。
「安全・安心」は、測定せずに隠すことからは生れません。臭いものに蓋というお役人的発想ではなにも解決しないばかりか、それが露顕した場合の不信感は増大します。
仮に2年後に高濃度の線量が霞ヶ浦の湖底の泥から検出され、底魚にも高濃度被曝が発見され、それをNHKあたりが報道したらどうしますか。
まちがいなく風評被害は再度爆発します。そして情報を隠蔽したことが消費者の印象を決定的に悪くするでしょう。
茨城県は大変な勘違いをしています。県は霞ヶ浦の内水面漁業の風評被害を恐れています。
茨城県では既に沿岸魚が風評によって壊滅的被害を受けました。
そして県は対策として、政府基準値100bq/㎏を半分にした独自基準値で安全を訴えようとしています。私はこの方針も間違っていると思っています。
基準値など軽々しくいじるべきではありません。100bqは国が安全を保証している数値なのですから、堂々と守ればいいのです。
売れないからといって自主基準を作って切り下げても、量販などの流通はそれをあざ笑うかのようにゼロベクレル宣言を発しています。
流通が5bqだ、いやゼロだと付加価値競合をしている時期に、県がたかだか50bqごときにしてみてもなんの意味もないばかりか、自分で自分の首を締めているだけです。まったくバッカじゃないかと思います。
茨城県は、福島第1原発事故における政府の情報隠しがどれほど大きな失敗であったのか、まったく学んでんいません。
菅内閣は初動の遅れにより、事故を人為的に拡大させたばかりか、放射性物質の拡散情報を隠蔽するという犯罪的な行為により後世まで悪名を語り継がれることになりました。
政府中枢が首都圏全域の危険を知り得ていたことは、それが漏洩したことが原因と思われる小沢一郎氏の放射能逃避行で明らかです。
小沢氏は、岡田、枝野両氏が現地視察時に放射能防護服とマスク、ゴム手袋といった重装備で赴いたことの裏面情報を知り得ていたのです。だから、洗濯さえミネラルウオーターでさせるという徹底ぶりだったわけです。
自分だけ助かればいいという小沢氏は論外として、行政が測定すべきをサボタージュするならば、霞ヶ浦の真の放射能汚染の実態が分からなくなり、「正しく恐れる」ことができなくなります。
私自身、茨城の農業者として丸々数か月の売り上げが半減するという被害に合いました。
だからこそ、風評被害は、情報隠蔽によって起こることを肌身に染みています。正しい情報提供が去年の3月から5月にかけてあれば、私たち生産者がこれほどまでに苦しめられることはなかったのです。
まずは茨城県は計測を56河川のすべてで、水源地及びその周辺森林の放射線量を明らかにし、さらに中流域、河口付近と分けて、今後最低5年間にわたって測定すべきです。
同時にそこから取水する農業用水路の測定もせねばなりません。特に霞ヶ浦、北浦の湖底の泥の計測は、採取作業が困難なために行政が主体で行わねばなりません。(*)
現在NPO法人「アサザ基金」や濱田篤信氏などによって市民が自主的に計測作業をしています。
「SAVE霞ヶ浦!霞ヶ浦を放射能汚染から救え」http://www.kasumigaura.net/asaza/03activity/01lake/save/index.html
環境省や茨城県は、このような行政より先行する市民の動きに対して支援を行い、自らも徹底した計測をするべきです。
リスク・コニュニケーションにおいて、情報の隠蔽とみられることは避けるべきが鉄則なのですから。
■*環境省・霞ヶ浦に流入する河川の底泥の汚染調査データ
場所 2011.09~011.10セシウム合計 2012.02セシウム合計
西浦湖心 221Bq 900Bq
北浦釜谷沖 130Bq 1000Bq
玉造沖 330Bq 1300Bq
外浪逆浦 184Bq 91Bq
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コメント
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「2年から5年のスパンで蓄積され続ける」というのはどなたの見解でしょうか。
(上流域が森林の場合は、もっと長くダラダラと出てきそうな気がしているのですが。)
投稿: コンタン | 2012年6月25日 (月) 10時39分
隠蔽体質、いつになったら無くなるのでしょうか?
色んな事例があるのに、役人の隠蔽体質は、相も変わらず続いています。官尊民卑の思想が脈々と受け継がれているとしか言いようがありません。
自分の知り合いの獣医師が、ある地区の状況をかなりのボリュームで調査し、統計的にも有意な結果を得ました。その結果を踏まえて、その調査地域を広げようと、総本山に直談判に行った所、「そんは結果が出たら、風評被害で誰も来なくなる」と言われたそうです。今現在、実害で農家が苦しんでいるのに、風評被害を持ち出す、その思考回路、言い方が悪いですが、自分達の保身の為に情報を隠しているとしか言いようがありません。全部の行政マンがそうだとは言いませんが、ある程度決定権をもつ人達に、その傾向が強い気がします。
投稿: 一宮崎人 | 2012年6月25日 (月) 12時52分
一宮崎人さん、おひさしぶりです。ほんとうに私も層思います。隠蔽してどうなるものでもない気がしますが。
コンタンさん。こんにちは。2年目をピークとして湖底に蓄積する説は、茨大の研究者、あるいは先日記事にしました濱田篤信先生も含めて湖関係の研究者の共通の認識です。
ただし、現時点では河川底泥のほうが高い数値がでています。これの河口への移動がなされるという考え方です。
投稿: 管理人 | 2012年6月25日 (月) 13時21分
>2年目をピークとして湖底に蓄積する説は、茨大の研究者、
>あるいは先日記事にしました濱田篤信先生も含めて湖関係の研究者の共通の認識
そうなのですか。
その研究は見たことがありませんが、霞ヶ浦から
「セシウムが湖外に出る量」は小さそうなので、
何となく、まだ何年も増えそうな気がしています。
また情報があったら教えてください。
投稿: コンタン | 2012年6月25日 (月) 18時16分
流れ込む河川すべてで、セシウム吸着沈殿槽を作って、2~5年目が、本当にピークなら、その5年間での吸着粘土層を、適切な埋却施設で、保管するなどは、出来ないのでしょうか?
日本は、水源の高低差が、ある方なので、山間部の汚染表土のセシウムも、思ったより、短期間で、回収できるかもしれないと思えます。
いづれにせよ。長期に、河川ごとに、監視測定するだけでも、手の打ち方が、見えてくるように思えますが。。
政府の言う除染方法だけでなく、だんだん有効な手段が、研究されやすいデーターが、公開されることを、希望します。
汚染山間部のすべての除染は、チェルノブイリでも、お手上げ状態のようですが、日本は、ある意味、土質や水が、違う分、これらを使って、汚染レベルを低くしたり、吸着させたり、有機物への移行を減らす研究は、出来そうに思えるのですが。。
何か前を向いて、データーを採れば、方法が、考えられるようには、思えるのですが。。
投稿: りぼん。 | 2012年6月25日 (月) 21時01分
霞ヶ浦の直接の管理者は、どちら様なんでしょうか?
霞ヶ浦全体に、もっと大きな数字の汚染が広がれば、イタリアのコモ湖のように、一時立ち入り禁止状態になりかねません。
水質管理責任者、湖の管理者、測定責任者など、日本は、縦割りで、一括責任者は、居ないように思えますが、一応、文書で、相手の受領印をもらっての、要望書なのか、陳情、請願書なのか、解りませんが、効果がすぐ出なくても、提出しておいた方が、後日、裁判とかになりえる状況なら、第至急必要ではないかと思いますが、
(行政は、とぼけて、問題が、マスコミに引っ張られて表面化したときに、初めて知ったこと、などと、逃げの手を打つことは、間違いないと想像しますから。。)
霞ヶ浦の湖底の泥を、浄化するのは、とても、無理でしょうし、それこそ、問題ない数字でも、風評被害で、そこから、水を得ている農家さんは、今後、苦しむことは、明白でしょうし。。
先日、東北現地を、駆け足で、おじゃましましたが、全く、手が付けられていなくて、神戸は、復興したのに、東北はやらないのは、政治の問題なのか、都会から遠い田舎であるからなのか、事情は、解らなかったのですが、ひとまず、最低、満潮時に、海水がこない程度には、応急措置が必要とは思ったのですが、それすら、地盤沈下地区の工事は、都市計画法違反とのことで、県、国が、未だ認めないというのは、理解に苦しみます。
それなら、高台に、最低限の用地を用意しながら、漁業などが出来るような、住み分けを、1年以上経ったので、実施すべきなのに、国の許可が出ないの1点ばりでした。
投稿: りぼん。 | 2012年6月26日 (火) 19時12分