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2012年6月12日 (火)

霞ヶ浦放射能・湖底に封じ込めて監視するのが賢明

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ものには両面があります。ひとつの側からだけ見ていたら、分からないことが沢山あります。

先日、霞ヶ浦の放射線量定点調査をしながら、湖の研究者と逆水門の話をしてそのことに気づかされました。

逆水門とは利根川河口の水門のことを言いますが、これが閉ざされているために霞ヶ浦が外洋と繋がらない「水溜め」と化してしまいました。

その逃げ場がない水溜めに、周囲の市町村から生活排水や農業排水、工業排水が流れ込むわけですから汚濁して当然です。

ひと頃はひどいもので、アオコの発生で湖周辺の家は夏など窓を開けられない時期もありました。

とうとう内水面赤潮まで発生し、コイヘルペスで養殖していた鯉がバタバタ死んだのはこんな時でした。一時期、日本一の鯉の産地だった霞ヶ浦は、鯉養殖が不可能になりました。

現在は国と市民の浄化運動が実り、見違えるようにきれいになりつつあります。そこに放射能が降ったのです。

海や湖、あるいは河川は、放射能が溜まりやすい地形的位置にあります。地上の汚染が最終的に流れ込む場所がここだからです

都市部においていまだに高い線量を示すのが下水処理場や河川であるのと同じ理屈で、湖も地上の放射性物質のデッドエンドなのでどうしても溜め込みやすいのです。

流れ込んだ放射能は沈殿し、やがて湖底に蓄積されていきます。

水面表層、中層で生きる魚は影響は少ないのですが、湖底の泥の中に半ば埋まるようにして生きるギンブナ、ウナギ、ナマズ類には基準値を超える放射能が検出されてしまいました。(欄外資料1参照)

では、どうしたらいいのかということになります。方法はとりあえず三つ考えられます。

●一つ目。放射能が沈殿している湖底泥をなにかしらの方法で汲み出して廃棄する方法です。

一見よさそうな方法ですが不可能です。やるとすれば震災前までやっていた国交省の俊傑船でバキュームをかけて吸い上げる方法しかありませんが、これをやると湖底の放射性物質を含んだ泥はどうなるでしょうか。

無理に放射性物質を回収しようとすると、底泥が巻き上げられて、現在は線量が低い中層、表層域まで汚染を拡散して、そこに棲む魚類にまで汚染拡大してしまうでしょう

また、吸い上げた放射性泥の捨て場がありません。

●二つ目。利根川河口水門(逆水門)を開放して、外洋に汚染物質を流し出す。

これは湖の環境保護団体が主張している方法ですが、現実にやるとどうなるでしょうか。

湖底の泥は外洋への対流に乗って非常にゆっくりとした速度で(年に数キロと言われる)、外洋に向かって移動していきます。

比較的強い放射性降下があった東京都東葛地域の河川である江戸川河口や東京湾の底に、ホットスポットができたことを覚えていますか。

これと同じ放射性物質の移動現象が、利根川河口やその外洋の海底で間違いなく起きます

茨城県南部から千葉県にかけての沿岸は、親潮と黒潮が交差する「犬吠埼の壁」によって福島第1原発から南下する汚染水の被害から免れました。(資料2)

ここに霞ヶ浦の底土からの放射性物質が流れ込めばどうなるかは、残念ながら火をみるより明らかです。

銚子漁協は絶対に反対するでしょう。今まで、漁港が壊れていて水揚げできなかった茨城県の魚の水揚げに協力してきたのに、その返礼がこれか、となるでしょう。

悪くすれば 、逆水門をあけてほしい湖の漁師と、冗談じゃないとする銚子の漁師の争いになりかねません。

●三つ目。なにもしないことです。なにもできないのですから、このままそっとしておくことです。

無力感が漂いますが、幸いなことに水には原子炉の燃料プールで使われるほど放射能に対する放射線遮蔽効果があります

福島第1原発20㎞圏沖におけるNHKの測定では、海面近くの線量は0.06μSv(マイクロシーベルト)ですが、底にいくに従って汚染濃度は高くなり、海底付近では2.5μSv(マイクロシーベルト)を突破しました。

海底の線量は、海面の40倍です。逆に言えば、水は放射線を40分の1までブロックしているともいえるわけです。

ですから、いかに湖底や海底に放射性物質が蓄積しようと、気持ち悪いですが、一部の魚には影響が出ますが、人間の営みにはほとんど影響を及ぼしません

チェルノブイリ事故故のキエフの湖のデータでは、湖底に棲む捕食魚には相当の長期に渡る汚染が残ります。(資料3参照)

降下した線量自体に大きな差がありますから単純な比較は出来ませんが、減少していくには、おそらく5年か10年単位になる可能性があります。

ただし、検出されている湖の魚の線量は決して高くないので、思いの外短期に食品基準値を下回るかもしれません。(資料4・5参照)

となると、放射能禍を限定して封じ込めて、それを監視し続けるほうが賢明と言うことになります。(資料4参照)

これが現時点で私が逆水門を開放しないほうがいいと思う理由です。

水質汚濁の元凶のように言われていた逆水門は、皮肉にも霞ヶ浦の放射能汚染を封じ込める役割を果たしてしまっていたのでした。

禍福はあざなえる縄の如し、とはよく言ったもんです。

■関連過去ログ
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/post-c683.html http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-cc65.html 
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/post-ae8f.html 

■写真 霞ヶ浦の風景。私が大好きな風景です。こういう風景を眺めていると、魂が湖の上空にさまよい出てしまいそうです。

         ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

■資料1 茨城県漁政課HP 
霞ヶ浦北浦等湖沼及び河川の出荷・販売等の規制一覧(平成24年6月8日現在)
http://www.pref.ibaraki.jp/nourin/gyosei/pdf_housyanou_kisei/02_kahoku_naisui20120608.pdf

100Bq/kg 超
●霞ヶ浦北浦及び外浪逆浦並びに常陸
利根川(常陸川水門上流)
アメリカナマズ(天然),
ギンブナ(天然),
ウナギ(天然),
ゲンゴロウブナ(天然)

●那珂川,涸沼
ウナギ(天然)

●花園川
(水沼ダム上流)
ヤマメ,イワナ

■資料2 セシウム137の海洋拡散シミュレーション図
●「犬吠埼の壁」・・・福島から沿岸沿いに南下した海流は、ここで外洋に押し流されて、拡散されていくのがわかる。
(「勝川俊雄 「日本の魚は大丈夫か」より)
Photo_4

■資料3 キエフ湖野放射能汚染が及ぼした魚への影響の推移

Photo

■資料4 茨城県漁政課HP 霞ヶ浦・北浦のセシウム濃度の遷移http://www.pref.ibaraki.jp/20110311eq/marine-products/

■資料5 同 霞ヶ浦・北浦の魚類の放射線量測定結果
http://www.pref.ibaraki.jp/20110311eq/marine-products/files/0323_suisanbutu_chousa7.pdf

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コメント

これは難しいですね。
福島でも内陸部での湖底での蓄積や淡水魚の汚染も計測されていますし。
群馬や栃木の湖も同様です。
海の場合は海底のゴカイ類が蓄積していると分かりつつあり、底魚以外なら極めて汚染が少ないわけですが、湖沼となると…なかなか放出されませんし、長いこと留まるかもしれません。

ニホンナマズを放流して、捕獲・処理しても永いことかかるでしょう。

チェルノブイリのデータは参考にしつつ専門学者さんの研究待ちですね。
実に歯痒いことですが。


霞ヶ浦の漁師さん、極めて厳しい状況でしょうが、負けないで下さい。貴方達には何の瑕疵もありません。皆さんが被害者です。


今日の写真、いいなあ!

管理人様
昨年よりこちらでいろいろ勉強させてもらっております。
以前よりこちらで取り上げられているゼオライトは水質改善にも利用されているとの事でしたので霞ヶ浦でも有効であればいいなと思っています。
拡散がゆっくりとしているもしくは集積するということは、薄くならない反面限られた範囲に対しての対処が大きな効果を発揮するという側面もありますよね。

ar様。コメントありがとうございます。
ゼオライト投入も考えられてはいたのですが、日本第2位の大湖ですから、どれだけ入れたらいいのかも分からないし、効果がどれだけかも予想もつかないということのようです。

こんな記事を見つけました。
http://www.minyu-net.com/news/topic/0607/topic3.html
http://www.minpo.jp/news/detail/201206131906
リンクを貼るのは失礼と思いますが、百聞は一見に如かず、かと思いまして。

前者は、農作業の被曝を気にするなら農業するなって言ってるようなものじゃ?。
後者に至っては・・・、タイベックス着て農業って?
これで風評被害云々言われた日には、何と言えば良い物でしょうか?(実証実験だとはわかっていますが)

希望の未来に水を差すなと怒らるかもしれませんが、我が地元ながら疑問に思います。
疑問とは、
1、被曝を気にする土地での農作業(農作物の汚染ではない)
2、7~8マイクロシーベルトを計測する土地での農業(仮に高汚染土壌でも作物への汚染が基準値以下なら、問題無いといって作付けする方針?)

昨年は自分で作った米を食べず、2010年度産の保管米を食べました。
今年度は迷っていますが、小学校でも地元産米を全数検査して食べていますので、食べようかと思ってます。
子供達が食べていて、親が食べないなんて不合理だと思いますしね。

この記事のコメントではない、管理人さんの意に添わないかとも思いますが、書き込まさせて頂きました。
ただこちらでは、原発事故による影響は過去の物って感じで進めよう的な雰囲気に疑問を感じます。

福島の方でしょうか?(せめてHNつけて下さい)
民友と民報の記事ですね。
まあ、高線量地域やホットスポットでの実験ですね。
逆に作物の放射線が怖い怖いという方々より、実地で農業をする農家さんのほうが遥かに危機感が強いという意味ではないでしょうか?
作っても売れるかどうかも分からないのですから。

自分や家族の食べ物に敏感になることは良いことでしょう。

私は、昔から言われる食品添加物や重金属残留農薬と違って、「放射能」という言葉には異常なほどの拒否反応を示す方々に強い違和感を感じています。

例えば、散々言われながらも、タラコは真っ赤に着色したものが圧倒的に出回り売れてます。
40年前から変わらない。不思議ですね。

管理人さま
コメントありがとう御座います。
私には想像出来ない大きさです。
つりが趣味なのでどうしても気になってしまいました。

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