米国は果たして自由貿易体制で得をしたのか?
小沢一郎氏が、奥さんから離縁状を叩きつけられてその内容が、「岩手に震災以来一度も行かなかったのは、放射能が怖かったからだ」とバラされてしまいました。(欄外参照)
思わず笑ってしまいました。これは相当に恥ずかしい。お遍路にでも行ったほうがいい。
小沢氏が震災以後かなりの期間行方不明だったのは政界の謎だったのですが、要は「放射能が怖くて秘書と一緒に逃げ出していた」(同)ということのようです。
こんなまさに明日明後日に政局という時期に奥さんからの離縁状が出てくるのも、なかなか政界の闇ですが、小沢神話の終末を見るのも近いようです。
さて、本題に入ります。
TPPは米国にとって、どんな影響を与えるのでしょうか。米国にとって利益ばかりでしょうか。
現在、米国議会で日本にTPP入場券を出すべきかどうかでもめています。(資料2参照)
米国議会の様子を見ると、米国でゴーゴーTPPと叫んでいるのは、保険、金融、建設、、医薬品、化学工業などの分野だけで、他の自動車は後ろ向き、農業も尻込みといった状況に見えます。
私たち日本側から見れば、米国はガーンとそびえ立つ一枚岩のように見えても内実は複雑なようです。
自動車業界は本心は反対、それも大反対です。やっと巨額の政府支援で復活の芽が出た時期に、米韓FTAで勢いをつけた韓国自動車にやられっぱなしになったからです。(資料1参照)
韓国KBSによれば、3月15日に発効して以来、瞬く間に米国の韓国への貿易赤字は急増しました。
特に自動車と部品の輸入が2億1000万ドルも伸びたのが大きかったようです。これは自動車関連の2.5%の関税が消滅したのが響いたのでしょう。
一方、アメリカの韓国への商品輸出はトータルで37億ドルで、3月より12%減りました。
これを見て、米国議会筋に強力なロビーを持つ自動車業界や農業界は一斉にびびったようです。
「冗談じゃない、FTAでいい思いをしているのは、ウォールストリートのハゲタカだけじゃないか」、というわけです。
ちょっと前までは米国は日本に対して、交渉の席上で、米国車が日本で売れんのは関税外障壁だとかなんとか、自分自身も信じていないようなことをブツブツ言っていたようですが、今はもっぱらGM関連と医薬品関連、保険関連の交渉に移っているようです。
実の話、なにを話ているのかまったく秘密なので、衆参農水委員会は外務省に交渉内容を開示しろと迫っています。(「日本農業新聞6月13日)
ところで、NAFTA(北米貿易協定)の折りに、米国内の自由貿易推進派の連中は農業界に対して、「大丈夫、大丈夫、他国とは生産時期が違うからバッティツグしないよ」と言って宥めていました。
ところが蓋を開けるととんでもない展開となったのです。下図をご覧ください。(同上・以下データは同じ)
米国農業が伝統的に得意としていたブドウなどは、チリなどからの輸入量が81%増、消費市場で6割弱の支配を許し、トマトなども156%増、今まで輸出さえしていたブロッコリーもペルーからの安値攻勢をかけられて480%増などということになってしまいました。
米国野菜果実市場の輸入品の占める割合は、07年にはそれぞれ24%、22%に達してしまいました。
また、日本においても同じ傾向がありますが、業務用農産物や農産物加工品は、生鮮品より増加率が高くNAFTA締結以前の3倍に登りました。
一方、米国の農産物輸出は、今や逆転し、とうとう米国は農産物輸入国に転落してしまいました。
米国農務省(USDA)によれば、作付け面積も1998年から2010年まで13%の減少しました。まさにNAFTAによって、大農業国である米国の衰退が始まっているのです。
家電製品を作っているメーカーがひとつもなくなり、自動車産業は息も絶え絶えといった製造業と軌を一にするように、もう一方の生産部門の車輪である農業までもが危なくなってしまいました。
利益を上げたのは、安ければ国産だろうがなんだろうが知ったこっちゃない、農家とコーンオイルは絞れば絞るほどいいがモットーのウォールマートでした。(ちなみにウォールマートの日本の提携先はセイユー。まさに似た者同士。)
ウォールマートはNAFTA移行、米国食品市場の実に3分の1を占めるまでに肥大しました。
残るは、モンサントのような化学会社とウォールマーケットに巣くうハゲタカたちだけとなって、どうしてオバマ大統領の唱える200万人雇用創出ができるでしょうか。
生産部門こそが最大の雇用創出源です。生産が振るわなければ消費も伸びず失業者は増大し続け、個人消費も伸びず、商業も沈滞します。
オバマ大統領は内心しまったと思っているのではないでしょうか。FTAやTPPは米国にとっても自殺行為だからです。
自由貿易体制は、ごく一握りの者しか富ませません。これは韓国でも、日本でも、メキシコでも、そして米国でも共通の教訓のはずです。
オバマ氏は、就任前まで自由貿易体制に批判的でした。それが選挙戦でウォールストリートにごやっかいになって転向してしまいました。
今からでも遅くはありません。米国にとってもTPPは死への途行です。
■写真 霞ヶ浦で釣りをする近所のおじさん。
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■小沢一郎氏が奥さんからもらった離縁状 (小沢和子さんが支援者に宛てた文書)
週刊文春今週号 松田賢弥
「このような未曾有の大災害にあって本来、政治家が真っ先に立ち上がらなければならない筈ですが、実は小沢は放射能が怖くて秘書と一緒に逃げ出しました。岩手で長年お世話になった方々が一番苦しい時に見捨てて逃げだした小沢を見て、岩手や日本のためになる人間ではないとわかり離婚いたしました。」
■資料1 アメリカの対韓国貿易 FTA発効で赤字増加
韓国KBS 2012-06-09
韓国とアメリカの間のFTA=自由貿易協定が、ことし3月15日に発効して以来、アメリカの韓国に対する貿易赤字が急増していることがわかりました。
アメリカ商務省が発表したところによりますと、アメリカの韓国からの商品輸入額は、4月は3月より14.6%増えておよそ55億ドルとなり、史上最高となりました。
中でも自動車と部品の輸入が2億1000万ドルも増えていました。
一方、アメリカの韓国への商品輸出は37億ドルで、3月より12%減りました。
これによって4月1か月間のアメリカの韓国に対する貿易赤字は18億ドルとなり、赤字額は3月のおよそ3倍になりました。
韓国とアメリカの間のFTAは、いまのところ韓国側にとって利益が大きいものとみられています。
■資料2 山田としおメールマガジン 12年6月13日
1週間後のメキシコでのG20サミットで、日米首脳会談があるとすれば、野田総理が前
回の4月30日の首脳会談でオバマ大統領から要求された米国の自動車の輸出に関する「いくつかのアイデア」(野田総理の特別委員会での答弁)について、一定の回答を持っていくことが懸念されると話しました。
これでは、何の国内論議もなく、いわゆる入場料を日本側が支払うことになる訳で、米国側が、それを日本側の交渉参加の意思として受けとめ、米国議会に通知することになれば、大変なことにってしまいます。
議会通知後、様々な要求が議会から突き付けられる度、日本側はそれに答えることが求められることになります。「聖域なき関税撤廃」の要求や、医薬品や医療機器の扱いGMOの表示や残留農薬基準の緩和、農協共済等日本型ともいうべき各種共済の扱い等、枚挙にいとまの無い要求に翻弄されることになります。
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