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2012年6月 2日 (土)

放射能の海洋汚染は「犬吠埼の壁」で食い止められた

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先日、霞ヶ浦湖畔の水田や湖岸を歩き回りました。いやなに、放射能測定でです。われながら野暮なことではあると苦笑します。

私は霞ヶ浦の環境保全運動に、微力ですが関わってきました。それが一変したのは、やはりあの悪夢のような3.11からです。

あそこから、すべてが変わってしまったような気さえします。放射能に較べれば、富栄養やブラックバスなど可愛いものです。

さて、今回の原発事故は、3月12日から16日の間に大量の放射性物質を放出しました。それはかなりの部分が東への風に乗り、海洋に拡散していったとされています。

またその後に4月1日から5月11日にかけて3回にわたり、計1万2千トンもの汚染水が放出されました。
(*関連過去ログ http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/post-9a31.html

これによって、陸地の汚染は減少した反面、海洋汚染を拡げました。欄外図は5月31日時点の海洋拡散シミュレーションです。(「勝川俊雄 「日本の魚は大丈夫か」より) 

これは海洋開発機構が、5月1日から31日までに、セシウム137がどのように拡散していったのかを、当時の潮流に乗せて予想したものです。これを見ると

●上段図・5月1日の時点では、事故後約1か月弱にもかかわらず拡散は福島沖に限定されていて、沿岸部にとどまっています。

●中央図・5月15日を見ると、福島県沖は減少し、茨城県沖、千葉県沖方向に向かっているのがわかります。

●下段図・5月31日には汚染水の南下は犬吠埼付近で止まり、東方向の概要へと更に拡散し希釈されて検出限界以下になっています。

当時の検出限界はたぶん30ベクレルていどでしょうが、汚染面積が拡がり、線量は低下しています。どうも「犬吠埼の壁」のような境界があるようです。

これは事故当初いったん福島沖に流れだした汚染水の流れが、北から来る寒流の親潮に乗って南下し、逆に三陸沖まで北上する暖流の黒潮に阻まれる形で南下をブロックされます。

そして汚染水はそれ以上南下できずに、犬吠埼手前で外洋方向に押し流されていきました。したがって、犬吠埼以南の海域では汚染は皆無ではないものの、非常リスクが少ないことになったのです。

この外洋型拡散は短期的であり、いいか悪いかは別にして、広域の海洋に薄く広く拡散されるために環境への影響は比較的少ないと考えられています。

もっとも、未だ外洋の放射能汚染の調査は不十分であり、今後どのようなことが起きるかは未知数ではあります。

一方、外洋に出ずに、沿岸に対流する汚染水は、ゆるやかな沿岸流に乗って、海岸沿いに進みました。

沿岸流は地形によって複雑で入り組んだ流れをしているために、決定的な情報が不足しています。しかし、水深が浅いために海底の泥に放射性物質が吸着されやすいために、長期間残留する可能性があります。(下図参照 同)

Photo_2

1980年代に、長期間放射能を垂れ流し続けた英国・セラフィールド核燃料再処理施設沖の例では、投棄が終了した90年代以降もなお放射性物質が検出され続けています。

また、陸上の汚染が河川から流れ込む河口付近の海底では、放射性物質が長期に渡って残留する可能性があります。結論的には

外洋に流れ出した汚染水は、当座のリスクは少ないでしょう。そして千葉県犬吠埼以南もまた、比較的リスクは少ないと思われます。昨日の私のカテゴリーでは2の減少タイプになります。

●一方、外洋に出ずに沿岸流に取り込まれた汚染水は、沿岸に沿って南北にゆっくりと拡散し、海底の泥や砂に吸着されて残留します。この影響は中長期的に続くと考えられています。これはカテゴリー4の漸増タイプです。

では、この放射能汚染が、どのように海洋生物に影響するのかが次の問題になるのですが、それは長くなりましたので次回に見ることにします。

■写真 霞ヶ浦の夕焼け。放射能のことなど考えずに、この風景に包み込まれたいですね。

             ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

■ セシウム137の海洋拡散シミュレーション図
(「勝川俊雄 「日本の魚は大丈夫か」より)

Photo

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コメント

少し前の記事でのコメントで「山形さんの言うようなことにはなっていない」との批判を受けましたが、私は別に何の予言もしていません。測定を徹底して、リスクを極力減らすべきだというだけです。

ゼロベクレルを叫ぶ一部の方々には原理主義的に堪えられないことかもしれませんが、現実に国内産であろうと輸入品であろうとリスクは伴います。それが現実です。
バナナのカリウム40等は典型です。

自然放射線と人工放射線は違うことを曲解して、「そんなことも知らんのか(笑)」などと罵倒もされました。
私は冷笑するしかありません。
現実社会で生きるしかないのですから。

京都在住の方からは「移住してきませんか」との問いかけがありましたが、現実に可能ですか?
仕事や生活も世話した上で、故郷を想う心のフォローができますか?
さらに福島県や周辺から全員が京都に移り住んだら…当然に地方自治で主流になりかねませんが、受け取れますか?


数日前に、宮城県の沿岸エリアをクルマで走ってきました。
将来計画が纏まらない状態で、大変なまま。かつての田畑や町が壊滅したままです。
地盤沈下のせいか、未だに広い水溜まりになっているところも多数あります。私は実際に水を舐めてみましたが、海水より薄めの塩水でした。
昨年秋からほとんど変わっていません。

瓦礫批判される方は是非とも現実を、自分で体感してみて下さい。

批判行動で騒いで、マスコミに取り上げられた一部の連中が異端の極みだということが解るでしょう。

ちょっと今日のお題から外れてしまいましたが、現場からの叫びです。

回游魚、アメリカでも微量のセシウムが検出されましたが…まあ、無視できるレベルですね。
むしろ「底魚」が心配です。

犬吠埼以南では八丈島近海で捕られた鰹が、小名浜に水揚げされたら…キロ100円なんてことが、昨年にありました。
心が痛いです。

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