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2012年6月16日 (土)

ウリズンの季節

   

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私はこのウリズンの季節になると猛烈に沖縄が恋しくなります。理屈じゃありません。心の底で静かに、しかし、あらがいがたく醸されるような熱です。こちらに来い、ここにくればいいと呼ぶような声です。

この季節は沖縄ではキビ刈りが終わってコシユックイの頃でしょうか。コシユックイ、腰ゆっくり、ああご苦労さんだったね、サキグワ(酒)のひとつでも酌み交わして曲がった腰を伸ばそうかね。

昔は秋の田んぼの終わりの時でしたが、今は田んぼを沖縄はほとんど作らないので、キビ刈りの終わりなのかな。キビ刈りはそれは重労働なのです。

まず、キビ、サトウキビ、ウチナーグチでウージーがすっくとまっすぐ立ていると思ったら大間違いです。そのような性格のいいキビは半分程度しかありません。特に海岸に近いところで作ったら最後、Sの字です。

台風が東海岸を北上すれば、時計回りに暴風雨が吹きつけます。これでキビはひねて曲がります。そして今度は西海岸から来ようもんなら逆に曲がります。台風が一回で済むならいいのですが、まずない。往復ピンタのように何回も別方向から風速30mで煽られると、キビはなんとSの字になるのです。

これを切り倒すとなるとちょっとコツがいります。傾いだ逆から斧を入れていくのです。斧?そうオノ。キビは何で刈るのかと言えば、斧なのです。ちいさな手斧です。これで地面すれすれにガツっとかっとばします。

そして同じ方向に並べて、あとは頭の部分を切り、茎の部分の葉を落としていきます。これは男衆もしますが、主力は女衆です。炎天下に黙々とした作業です。

これを大きく一抱えほど束ねて約50キロ、いやもっとあるかな、道端に並べねばなりません。夕方に来る砂糖会社のトラックの荷台に一気にこのキビの束を背負って運びます。

荷台まで渡してある細い戸板にしっかりと足を踏ん張って、食い込むキビの束をヨッコラショと積み重ねていきます。ヤッとか、ソラッ、ヨッコラショ、ドッコイショという労働の掛け声がただあるのではなく、力を一点に振り絞る時に必要な声だとわかりました。

道から遠い畑の束は、えんえんと肩で背負って数十メートル運ばねばなりません。肩に濡れ手拭いをあてても、日没の頃には肩が真っ赤に腫れ上がってしまいます。初めの頃は痛くて夜眠れないほどです。それが面白いことには、キビ刈りの季節の終わりにはしっかりとした筋肉が張り、痛くもなんともなくなるのですから人体とはすごいものです。

夕方5時に村のサイレンが鳴って、こんな一日のキビ刈りを終えると、一風呂浴びたシマ(村)の誰ともなしに皆んなが集まってきます。いつもはアサブシ、ヨルブシ(朝星夜星)でも、なぜかキビ刈りの時だけは勤め人のように5時でお終いです。だって第一製糖のトラックはもう行ちゃいましたしね。ひとりで張り切ってもしかたありませんからね。

そして、もうひとつはキビ刈りというのは、本土の田んぼように村の共同体で揃ってやる仕事だからです。ユイマールといって労働の貸し借りを今でもひんぱんにします。

今日はシロタさんの畑、明日はウエバルのオジィのだ、来週月曜日はうちらが助けてもらう番だというように。

また、キビをひとりで刈ってみても、製糖会社のトラックは来ません。工場を動かすに足る量があって、運びに来るに足る量があって来るわけです。となると、とうぜんキビ刈りは村の共同体の仕事になってしまうのです。

さて、長い南洋特有の夕焼けパープルの陽が暮れ、男衆はゆるゆると集まります。手持ちの夕飯の余りのようなゴチソーを持ち寄り、シマザキ(泡盛)を飲みます。やがてほろ酔いともなると、誰かが得意のサンシンを奏で始めます。

恐ろしいことに、沖縄で男がサンシンひとつ弾けないのはブチョホー(不調法)といって死に優る屈辱なのです。男全員が唄えるのはともかくとして、楽器を弾けて踊れるというとんでもない芸能の島なのです、ここは。

負けずともうひとりが奏でて、やがてカチャーシーを踊って、ひとりふたりとへばって泥のように深く眠るのです。そしてまた翌朝からキビとティダ(太陽)との格闘が始まります。

これが私の初めての百姓の場でした。沖縄のヤンバルといいます。赤土と赤瓦の屋根、紺碧の空、風に揺れる芭蕉の葉、顔中を口にして笑う人たち、風に乗ってくるサンシンの音・・・。

ヤンバル、ヤンバル、いいとこな。

■写真 本部半島の八重岳を望むパイナップル畑。おいしいパインを齧りに来る鼠を採りにハブさんもいっぱいいますよ(笑)。

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コメント

「コシユックイ」、いい言葉ですね。
こちらは、そう呼びませんが、意味は通じると思います。
「ユックイ」は、「休む」という意味で十分通じますから。
こちらでは、田植えが終わった後に、皆が集まっ焼酎を酌み交わし、お互いの労をねぎらう風習を、「さのぼい」と言います。まぁ、「早昇り(さのぼり)」の方言でしょうが。

ところで、ウリズンとは、単に季節そのものを指すのでしょうか、それとも、四角豆の採れる季節という意味なんでしょうか。
いずれにしても、梅雨前線が北上した後の、一番良い季節なんでしょうね。

沖縄には3回しか行ってませんが、抜けるような青空、白い砂浜、北海道とは違う空気の匂い・・
国内は概ね行きましたが、何度も訪れたい・・と思ったのは沖縄です。
北海道からだと、千歳から直行便出ていますが、地方空港からは、羽田経由になりますので、「チョット行ってくるか?」と簡単ではありません。
定年も近いので、ノンビリ行きたいと今から計画して楽しみにしています。

現在十勝は一番草の収穫最盛期です。以前は「乾草」でしたが、今は「グラスサイレージ」がほとんどで、ハーベスターで刈り取り・裁断、大型ダンプカーでバンカーサイロに詰め込みます。
一番草の出来方次第で出荷乳量や繁殖が左右されますから、皆真剣です。事故なく終了して欲しいと願っています。

あー、毎年この時期になるとまだ見ぬ沖縄に憧れます。
でも冬の雪国同様に、台風被害で大変だろうなぁとも…。

贅沢を言えば夏場は北海道で真冬は沖縄が理想か…なんて思いますが、そうはいかないので…トータルで実は東海~房総半島~茨城あたりが最も住みやすいんじゃないかとも感じます。
はい、雪国在住の僻みです。

cowboyさま、おひさしぶりです!北海道様、今が北海道のいちばん大事な時期ですね!

うりずんは、むりやり「若夏」と共通語訳しています。昔「若夏国体」なんてあったでしょう。「若い夏」か、まぁ言い得て妙ですが、私はうりずん国体のほうがカッコよかったと思いますが。

私が沖縄に住んでいたときは、季節で使っていました。沖縄にはミーニシの季節など、独特の呼び方が沢山あります。

沖縄がいつまでも「沖縄」であってほしいと願っています。

Cowboyさん、お元気でしたか?久し振りです。

北海道さん。あちらのサイロはデカイんでしょうねえ。
私が昔実習した農場では、鎌で牧草を刈って集めて束ねて、手作業で上から投入。下の人間がぎっしり敷き詰めながら登っていくという、実に原始的な重労働でした。手の皮は剥けるし、草であちこち切れるし、たまに上から投げ込むヤツが思い切りぶつけてくるし(笑)
まあ、たいへんな作業でした。すべては牛さんのために!

簡易ビニール巻きの失敗作は、一部見事に酪酸発酵してしまい、臭いが「おえーっ!」
サイロは苦労のかいと技官さんたちのご指導で、みごとに乳酸発酵に成功して、ヨーグルトの香り!

懐かしいです。

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