霞ヶ浦放射能汚染の実態その2 既に小河川からの流入は相当に進行してしまっている
霞ヶ浦などの放射能汚染が複雑なのは、その原因がいくつもあるからです。原因を川上からあげてみましょう。
➊水源地である森林地帯の放射能汚染の移動・・・・茨城県の場合3000bq(去年9月県北の測定値)
❷流域市町村の地上部放射性物質の下水への移動・・・最大検出地・那珂久慈浄化センター 2号炉焼却灰・13,365bq/㎏(今年5月測定)
*ただし、この数値は下水汚泥の焼却後の数値であって、これがそのまま水系に移動するわけではない。
・茨城県環境放射線監視センターhttp://www.pref.ibaraki.jp/important/20110311eq/20110620_03/index.html
❸流域の里山から水田を経由して農業用水からの移動・・・未計測
これらは、いったん河川に流入した後に、デッドエンド(終末点)である湖に入っていきます。これが湖の底泥に蓄積されていくわけです。
霞ヶ浦固有の条件としては、元来が陸地内部に封入された湾であったために外洋とのつながりがあったにもかかわらず、近年、逆水門で遮られてしまったために巨大な水ガメ状態となり、湖内の汚染が外洋へと拡散することができなくなりました。
つまり、汚染物質は逃げ場がなく、溜まる一方なのです。
では、具体的に現在の河川の放射能汚染の度合いを見てみましょう。
この流入河川の測定で高い数値が出たのは以下です。(NPO法人「アサザ基金」測定)
http://www.kasumigaura.net/asaza/03activity/01lake/save/bizengawa%20kekka.pdf
・土浦市備前川・小松橋付近(河口まで1.65㎞)・・・9550bq/㎏
・美浦村勝橋・清明川(河口まで3㎞) ・・・6250
一方、去年10月の環境省の測定で5500bqあった土浦・神天橋の新川では1260ベクレルと低くなっていることが分かりました。
この汚染濃度の低下の原因はなんでしょうか。それは小河川では川の流れる速度が早いために速やかに河口から湖へ放射性物質が移動してしまうからです。
たとえば、もっとも高い測定値を出した土浦市備前川(欄外資料参照*表の下から3番目)は、流域面積が3.7平方キロと狭く、流入河川としては3番目に短い川です。そのために流速が速く、速やかに放射性物質は湖まで到達したと思われます。
セシウム合計の変化をみて下さい。資料表の第1回目セシウム合計と、第2回目の合計を比較してみると顕著に低下しています。
去年の環境省第1回モニタリング調査では備前川は2600bqあったものが、第2回では10分の1の221bqにと一桁急落しているのです。この差が霞ヶ浦へ移動した分だと考えられています。
2番目に高かった新川(*表の下から7番目)も同じく流域面積は15.6平方キロで短い河川に属し、第1回目が5500bqから、2回目は4400bqへと低減しています。
このような小河川では濃度が低下する、つまりは既にかなりの量の放射性物質が河口から湖へと流入してしまったということになります。(*例外の小野川、清明川については固有の河川構造があるのではないかとみられている。)
現在、短い河川は既にかなりの量の放射性物質を湖に移動してしまっており、今後さらに流域面積の大きい河川の移動が進行するということになります。
これを防ぐには、河口付近になんらかの放射性物質除去装置を作ることです。予想以上の速度で、河川からの流入が続いている現在、手を打つなら今です。
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■「SAVE霞ヶ浦!霞ヶ浦を放射能汚染から救え」http://www.kasumigaura.net/asaza/03activity/01lake/save/index.html
■写真 朝もやの中の霞ヶ浦大橋から霞ヶ浦タワー方向を見る。震災と原発事故前の一枚ですが、ああ、なんか遠い昔のような気がします(涙)。
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■資料 環境省モニタリングからの濃度倍加増率(濱田篤信氏「霞ヶ浦の放射線汚染」よる)
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コメント
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文字の色を黒にしてください。緑色は好きな色ですが、パソコンのモニター画面が、とても読みにくく眼が疲れてしまい最後まで読めません。どうかご一考を。 さて、先日の柏市民文化センターでの京都大学原子力研究所助教さんの講演を聞きに行き、放射能汚染に関心を持ち、それからこの『ありんくりん』さんがある事を知りました。霞ヶ浦の水を【霞ヶ浦用水】として、茨城県西部では飲料水や農業用水(お米を作る為)として使っている私は、とても将来を心配しています。せめて取水口の位置を変えてほしいです。
投稿: | 2013年2月 1日 (金) 00時37分