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2012年7月25日 (水)

政府事故調が指摘する東電の不都合な解析歪曲と初動ミス

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政府事故調報告書には新味がないと書きましたが、ちょっと気の毒な表現だったかもしれません。

いくつか今まで出た調査報告書とは異なったことが記述されています。

原子炉の震災による損壊について
これについては今までの民間事故調、東電事故調共に「損傷したとは考えがたい」と否定しています。

それに対して国会事故調は「地震による損傷がなかったとはいえない」とかなり黒に近いグレイの表現をしています。

そして今回の政府事故調は、「閉じ込め機能を大きく損なう損傷は今まで認められていない」という表現で、要するに分からないので今後の調査を待てという言い方をしています。

まぁ、これが公平なところかなと思わないことはありません。現在、事故を起こした原子炉付近は高濃度の放射能に覆われており、圧力容器や格納容器、細管などの損傷の実測はまだできない状況だからです。

東電は不都合な実測値を隠蔽したと批判

事故原因は取り付けられた圧力計や水位計のデータで解析しているわけですが、政府事故調は東電が事故原因の解析において意図的歪曲があるのではないか、と批判しています

政府事故調報告書はこう述べています。
「(東電は事故原因のコンピュータ解析において)不都合な実測値を考慮に入れず解析結果を導いた。」

「(東電は)原因究明への熱意が不足している。」

この問題は、事故原因で決定的な意味をもつ「炉心融解がどの時点で起きたのか」ということを東電が、原子炉の水位計と圧力計の数値を基に1号機で11時間後としていることについての部分で指摘されています。

政府事故調は、これらの計測機器を調査した結果,、真っ向から疑問を投げかけています。水位計は原子炉圧力容器外部についているのですが、事故後の急激な温度上昇のために基準となる水位を示す水が蒸発していました。

このために原子炉内との水位差が実際より縮まってしまい、現実より高い数値を出した可能性があると、政府事故調は指摘します。

このようなことは現場を預かる東電は当然知り得ていたはずであって、「容易に入手できるデータで、より真相に近づけるはずだ。自ら考えて事態に望む姿勢が充分ではなく、積極的な思考に欠ける。」(政府事故調報告書より)

現場作業員の初動対応について

現場における初動対応について東電事故調は、「中央制御室の表示灯が消え、対応が現実的に困難、代替注水への切り換えも可能と判断した」としています。

国会事故調は、「マニュアルもなく、運転員は充分な訓練もされていなかった。運転員の判断や操作の非を問うことはできない」と同情的です。

これに対して民間事故調は、「IC(非常用復水器)作動状況の誤認は、もっとも大きなヒューマン・エラー」だとしています。

これに並んで政府事故調もまた、「非常用冷却装置の稼働状況の誤認や、代替注水手段を確保する前に(IC)装置を停止する誤った操作をした」と述べています。

おそらくは国会、政府事故調が指摘するように、非常用復水器(IC)の意味を現場操作員が正しく把握していなかったヒューマンエラーがあったと考えられます。

一歩も逃げることなく、我が身の安全を省みることなく現場で闘いぬいた作業員の人々の勇気には称賛を惜しみませんが、冷厳な事故原因調査はこれと別次元にあります。

同じような状況にあった福島第2原発では、このICによる非常冷却を続けながら、代替冷却装置の準備をしました。外部交流電源が完全喪失しなかったこともあるとはいえ、第2の経験は重視せねばなりません。

福島第1ではICが初動で停止させられてしまっために、一挙に炉心温度の急激な上昇を招いていきます。

政府事故調はこう言います。
「事態の進捗を的確に予測し、事前に必要な対応を取るというものになっていなかった」。

現場作業員の被曝について

先日も作業員がつける線量計にあろうことか鉛のカバーをかけて作業させた下請け会社が摘発されました。

これと似たことを東電がしていたことが政府事故調で明らかになっています。

東電は、事故現場の作業用線量計が不足していたために全国の原発から950個もの線量計をかき集めたのですが、これらは充電器がなかったために作業員に届けられることなく虚しく放置されました。

これについて政府事故調は
現場作業員の被曝防止に対する東電社員の意識は低い」。

このような作業被曝や事故による被曝の補償などに東電が往々にして見せるやりきれない鈍感さを、今後も私たちは批判していかねばならないでしょう。

炉心融解の情報隠匿と、SPEEDI問題については、長くなりましたので次回といたします。

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コメント

先ほどのNHK報道によりますと、保安院報告では「福島・女川原発において、地震そのものによる最重要機器の損傷は無かった」とのことです。

すでに信頼の失墜した原子力安全保安院の報告であり、『最重要機器の』というのは引っ掛かるところですが、
現在、福島以上に揺れた女川にIAEAが査察に入っていますので、報告が待たれますね。

ICに関しては、すでに正確性に疑問のあった圧力計に基づいてON・OFFを繰り返していたようですが、よりによってOFFのタイミングで津波襲来で切ったままになってしまったとのこと。
アメリカではスリーマイルの教訓で、事故発生時にはICはとにかく回し続けろと訓練されているそうです。
福島では、電源喪失後に手動でやろうとしたものの、暗闇と身体が入らないような場所にバルブがあったとか、ドライベントバルブ同様にプラント設計そのものにに問題があったようですが、こちらも今後の解析・報告を待ちたいですね。

下請け会社の悪質で安易な鉛カバー付き携帯積算線量計は、効果が無かったとか。

東電社員の件は、明らかに労働基準法違反ですが、あの非常事態では、現場の社員の責任として命懸けで線量計無しでも突入した意欲は、私は高く評価します。
推定被曝量は、ある程度計算できますし。

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