日本生協連レポート・11検体から出たが、それを1年間摂取し続けても中央値で基準の2.3%にすぎない
再稼働に反対して首相官邸を取り巻いた万余の人の波に、心動かされぬ人はいなかったのではないでしょうか。あの日をひとつの頂きとして、今後いくつかの方向に運動は向かっていくと思います。
ひとつは、日本の「緑の党」を創ることです。ドイツが原発廃止を現実的政治プロセスに乗せることができたのは、既製の左翼政党とは一線を画したこの党があり、議会で有力な勢力となりえたからです。
日本において、今までその試みはことごとく失敗に終わりました。今、その原因は問いませんが、あえてひとつだけ指摘すればリアリズムの欠落によると私は考えています。
3.11から1年たって、各地に降下した放射能の現状はどうなっているのか、まずそれを定点観測的に捉えることです。それは今、私たちは始めたところです。
(●関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/06/post-c07b.html )
自分の生きる地域の放射線量の推移をデータバンク化することで、福島第1原発事故がいかなる影響を与えたのかを記録し、保管します。
そのような地道な計測活動が、5年、10年に渡って続けられなければ、原発事故がいかなるものであったのかを問えないはずです。政治的バイアスがかからない客観的数値が必要なのです。
ドイツではチェルノブイリ事故以後10数年に渡って放射能の影響が残り続けました。それを測る人々がいて、データが蓄積されました。その中で脱原発運動は力をつけていったのです。
特に原発周辺の農民たちがこの測定運動や建設反対のキャンプ作りに参加したことで、運動が都市の市民、学生から農民層へと拡がっていきました。農民層を敵とするような言動が多くみられるわが国は、ドイツの実践に学ぶべきでしょう。
さて、昨日に続き、日本生協連が今年5月に出した「家庭の食事からの放射性物質摂取調査結果」と題するレポート紹介します。
これはコープふくしまが始めたもので、福島県内の食材を100軒の家庭で料理してもらい、2日間分(6食+間食)を1サンプルとして、すべてを混合し、均一化した後に測定するという方法をとりました。
ご先祖に捧げる「陰膳」のように一食多く作るので、別名「「陰膳運動」。これによって、当時週刊誌がヒステリックに騒ぎ立てたように、「広島の原爆500発分だから、ガンで何万人も死ぬ」、「奇形児が生れる」というようなレベルの放射線量が食事に含まれているかどうかがわかってきました。
結論を言えば、週刊誌のご期待に相違して福島県産農産物で作られた食事は、11家庭で検出こそされたものの、きわめて低い線量であることが分かりました。(欄外資料参照)
日本生協連はレポートの結論部でこう述べています。
「今回放射性セシウムを検出した11家庭のサンプルと同じ食事を1年間食べたとしてと仮定すると、食事からの内部被爆線量は、0.019mSv~0.136mSvと推定され、これは新基準値の根拠である年間許容線量1mSvに足して1.9%~13.6%にあたります。」
またこうも述べています。
「放射性セシウムを検出した11サンプルの中央値は1.40bq/㎏でこの食事で求めた1年間の内部被曝線量は0.023mSv、年間許容線量1mSvに対して2.3%でした。」
考えるまでもありません。年間許容線量の1.9~13.6%、中央値において2.3%の内部被曝線量でガンを発症することは絶対にありえません。
この「陰膳運動」はいったん終了したものの、今後もなんらかの形で継続されることでしょう。これが内部被曝を恐れる消費者をなだめるだけではなんの意味もありません。
これを先に繋げていき、現状の食からのリスクはどのていどか、それはどう推移するのか、そのためには社会がどの方向に向かって行くべきなのかを考えていかねばなりません。
■予告どおり明日土日はお休みといたします。ああ、ちょっと朝寝ができるかなぁ~。
゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。
« 日本生協連レポートの食事から摂取された放射線量のリアルな数字 | トップページ | 放射能問題についての私の立場について »
「原子力事故」カテゴリの記事
- 福島にはもう住めない、行くなと言った人々は自然の浄化力を知らなかった(2019.03.11)
- トリチウムは国際条約に沿って海洋放出するべきです(2018.09.04)
- 広島高裁判決に従えばすべての科学文明は全否定されてしまう(2017.12.15)
- 日本学術会議 「9.1報告」の画期的意義(2017.09.23)
- 福島事故後1年目 大震災に耐えた東日本の社会は崩壊しかかっていた(2017.03.16)
コメント
« 日本生協連レポートの食事から摂取された放射線量のリアルな数字 | トップページ | 放射能問題についての私の立場について »
こんにちは。
有機農業、手間もかかり大変だと、思います……
今まで、安全なものを作ってくれて、ありがとうございました。
ただ……いま、どうしても、
関東、東北のものを食べたくはないのです……
もともと、日本で売られている野菜などは、日本が安全だと言っている基準を満たしたものです。
そのなかで、あえて減農薬や添加物を避ける層がターゲットだったと思います。なので余計に売れにくくなってしまうのだと、思いました。
他のものがなければ、測ってないものより優先度は高いのですが、買う順番として、どうしても、
今までの蓄積データのある、農薬ありで放射性物質汚染なし、の方が、優先されてしまいます。
一生懸命良いものをつくろうとしてくれている方が、いままでお世話になってきた方が、困ってほしくはないのは本音です。
食べる、以外で、何かできる事があれば……
投稿: | 2012年7月21日 (土) 11時18分
どうしても、
関東、東北のものを食べたくはないのです>>>>
この発想は、意味がないように思います。
放射性物質が多く含まれているものは、食べたくない。と、おっしゃるなら、理解できますが。。
西日本の産地表示がしてあっても、加工食品や、惣菜類になると、ホットスポットで育てられた食品も、混入しているかもしれませんよね。特に、冷凍食品何かは、当時の基準の500ベクレル以下の食材混入は、OKなんです。
そうなると、相対的に、しっかり測定して、100ベクレル以下と証明された東北産の方が、未測定で、産地不明の西日本産より、安全であると言えます。
未測定=放射性物質がゼロではないのですし。
外食産業なんかは、基本、企業としての営利追求ですから、今、うなぎなんかで言えば、中国産が、ほとんどだし、値段も中国産が、安価に設定されているでしょうね。
ただ、中国産養殖うなぎは、メチレンブルーなど、駆虫剤が、どれだけ使われているかは、よく解らない輸入食材も多いと思われます。
つまり、東北=危険な食材という発想は、政府が、原発から半径20km以内は、危険で、その外は、安全と言った、当初のうそと同じ意味ですよね。
県名や原発からの距離で、一元的に、危険とか安全とかの判断をするのは、皮膚の色で、人種差別するのと、同じ発想で、目に見えるもので、無理やり区別する行為ですから、結果的に、差別になってしまうと思います。
投稿: りぼん。 | 2012年7月21日 (土) 12時58分
私たちが何を選んで何を食べるか
それは誰に強制されることでもない
何を持って安心するかはその人によって違う
たとえどんなに微量でも不安だと言っている人に無理強いなどできない
何を選択しようと自由であっていい。
けれども 想像してみよう
あなたの言葉がどんなに深く人を傷つけているかってこと
私たちは人の痛みを想像することができる動物です
私は安全について冷静に科学的に勉強しなくちゃいけないと考えています。
投稿: ニーニャ | 2012年7月21日 (土) 13時51分
そうですね、加工食品には何が入っているのか、わかりませんね。
より、安全そうにおもわれるものを選んています。なるべく、加工されていなぃのを。いままで、まっとうな販売をさてきたと思われる会社のものを。
相手を傷つけるから、何も言わずに、買わないようになるのですか?
農家さんがいる状態は、傷つくではなく、生活がたちゆかなくなる、では?
会社員でいえば、会社が今日いきなり倒産した、と。
このままで先細りになって、こまるのは、誰です?
農薬が安全だと言われているなかで、
農薬の少ない農作物を、苦労して作ってくれていた方が悲しんで、うれしいはずは、ありません。そういう農家のかたがいてくれたから、より安全なものを食べられていたんです。
それでも、このままで先があるのか、と。
ターゲットを変えて安く生産できるものをつくるか、他の地域に行くか……って、書くのも心がいたんで、書きにくかったんですが。
そんなに簡単にかえられるものでもないだろうと、想像できるだけに。
消費者からの、一意見です。
傷つくので聞きたくないということであれば、もう、かきこみません…
投稿: | 2012年7月21日 (土) 15時43分
消費者は、選ぶ権利も自由も、有しています。
しかし、その土地に、根付いた農産、畜産、水産物で、しかも、冷凍物や加工物でない、新鮮ななま物を、扱っている生産農家さんは、大変です。(基本、消費者より選択幅が狭い職業です)
その収入で、家族全員、生活してみえる訳で、生活が掛かっています。ですから、現実に、自殺に追い込まれた農家さんも、みえる訳ですし、ここは、農家さん個人のブログですので、管理人さんの日記のような位置付けのものです。
大手の掲示板とか、質問Q%Aのようなサイトでもなければ、アクセスしたら、料金が掛かる訳でもありません。
見たり、読んだりしたくないなら、ブログを読む必要もないと思いますし、放射能問題は、主原因は、農家さんではないのですから、農家さんを、攻撃したいなら、そのエネルギーを、原発関係者や東電に、まず、振り向けるのが、まっとうだと、個人的に、思ってます。
特に、茨城の場合、隣県の福島の原発事故で、苦しんでおられるのですから、サラリーマンで言えば、自分に、ミスがないのに、顧客の手前、解雇になるような事態ですから、もともと、放射性物質を含んだものを、売りたいと思っておられる農家さんは、ゼロなんです。
農家さんは、普通、農協の共選規格に合わないものは、自分達、家族で食べたりするわけですから、当然、自分のこどもに、放射性物質を食べさせたいなんて、思っている農家さんは、ゼロですし、空間放射線量が、高い地域で、農業すれば、自分が最大の被曝者になるわけで、好きこのんで、やってる訳ではありません。
すなわち、転勤がない代わりに、生涯、その土地とともに、生きていくしかないのです。定年もありませんから、生涯365日、その地域で、生きていくことになってしまうのです。自分も、転勤も定年もない仕事ですが、人間、生涯、モチベーションを保って、仕事が出来るほど、精神的に頑丈強固な人は、まれな人です。
定年まで、40年から45年くらいでしょうけど、その後も、死ぬまで、最先端で、やり続けるのは、結構、大変なことですね。
自分も、従業員から、あなたは、死ぬまで、この仕事なんだから、適時、リラックスして、頑張り過ぎないことが、大事ですよ。と、言われたものです。その従業員は、私よりかなり年配の方でしたが。。
本来は、都会で、消費者が、放射線量を測定できて、納得いくものが、購入できるというのが、ベラルーシ風ですけど、良いのではないでしょうか?
そういう測定場所を提供すべきは、東電であり、個人農家さんでは、ないように、思います。
管理人さんほど、この問題に、正直に、対応されておられる方は、少数派でしょうし、その少数派の農家さんを支援しなければ、蓄積型慢性被曝問題には、対処できなくなりますね。
今の政府は、そうなることを望んでいるようにも、思えてますが。。(拡散させて、証明しにくい、長期慢性被曝状況を作って、政府の責任、官僚や法整備の責任を逃れたいと思っているふしがあるように、思ってます。)
投稿: りぼん。 | 2012年7月22日 (日) 13時18分
もし……、攻撃になっていたのなら、ごめんなさい。
一生懸命なのが伝わってきて、でも、
いままでの有機の購入者では、いままでどおり買わないのではないかと。
努力がみのって欲しいと思いつつ、買おうと思えないジレンマがありました。
なら、移動出来ないならば、
もともと基準より厳しいものを欲しがっている人でなければ、有機農業でなければ、安く労力をかけずに沢山できる野菜なら、と、素人の考えで思いました…
ただ、私は仕事が好きです。
有機農業をやっている人も、きっと、普通の農業より良いものを作っている誇りもあるだろうというのがあって。それが力のもとになっているなら、ひどい提案だという気持ちも、確かにありました……
申し訳ありません。
投稿: | 2012年7月22日 (日) 16時16分
2012年7月22日 (日) 16時16分に投稿された方へ
まず、ハンドルネームをお使い下さい。紛らわしくなければ、何でも良いですよ。
さて、内容ですけど、言い方は穏やかですが、結構、辛辣な内容ですね。
何が何でも、関東・東北のものは、食べたくないと仰っているわけですよね。放射線量など関係なく。
農業者は、そう簡単に、土地を離れることなど出来ないと思いますよ。
特に、畜産農家は、設備・家畜ごと、移動ですからね。ビニールハウスを移転するのとは、訳が違います。
管理人さんは、採卵鶏の飼養ですから、移転は、困難と言わざるを得ませんし、飼養管理方法(平飼い)を変えるおつもりは無いと思いますよ。ですよね?
どう考えても、関東・東北の農産物を全て拒否するというご主張は、不条理であると思います。
私などは、進んで、三陸沖のわかめを探したり、福島の桃も、進んで食べていますよ。
あ~、暮れに送られてくる笹かまぼこが待ち遠しいです。
投稿: Cowboy@ebino | 2012年7月22日 (日) 17時24分
ハンドルネームをつけてみました。
たとえば、口座を開いて、
10年後から10年間、市場で年2万円相当の作物を提供する代わりに、今から10年間、毎月2千円の資金提供をお願いするとか(会社員は月給なので、年単位は、辛いです)。
何十人かが何口かのってくれれば、少しは足しになるのではないかと思ったりします。
本当は、寄付でも、ちゃんと良いものを作ろうとしている人を応援したいひとは、いっぱいいると、思うのです。全農家は、無理だけれど……
10年後なら、いろんなこともわかってきていると、思います。被曝している私たちが、生きているかは、わからないのですが。
10年後には、上の子は、無事なら、成人して、自分で生きていけるようになっているはずです。
(生きて、幸せになって欲しいと願っていますが……)
10年後からの作物を売買するのは、どうだろう、と思いました。
投稿: りんご | 2012年7月22日 (日) 18時15分
名無しさん、りんごさん。
福島県と茨城県だとか、東日本産だからとステレオタイプな見方が、違うと思うんですよ。
もちろん自分で信用できる会社の食品を選ぶのは、私も含め消費者の自由ですが、福島や茨城でも地域や水系で降下量や測定・計測の対策が違う訳です。
こちらのブログ主は、震災直後から先頭に立って動いてきた方です。
東日本で福島県の隣県であるこちらには、沢山の母子避難者の方がおります。
が、こちらに来てからは安心して子供を外で遊ばせられる、安心して買い物が出来ると皆さんが仰います。
例えば福島県飯舘村などからのリポート番組などは昨夜のNNNドキュメント「分断された村」のように全国報道されますが、どこもそのようなイメージに捉えられてるのではないかと危惧を持っています。
実際にはそんなものではなく、福島県でも中通りや内陸部の人間、東北のほとんどの住民は普通に地物野菜を食べて生活しています。
投稿: 山形 | 2012年7月23日 (月) 08時19分