終わらない米国熱波
米国の熱波は治まる気配がありません。上図を見ると、軒並みに穀倉地帯は華氏100度(摂氏37.8度)前後を記録しています。
7月末に待ちに待った雨が少し降りましたが、降雨量はおしめり程度で慈雨とはならなかったようです。
米国「ナショナルジオグラフィック」誌によれば熱波はこのような影響を与えています。
「アメリカのトウモロコシ生産地帯「コーンベルト」全体が大打撃を受けており、価格が高騰している。収穫量が30%も減少した1988年以来、最悪の作物被害となる可能性が高いという。専門家の予測では、トウモロコシ、大豆、小麦などの主要穀物の供給不足により、間もなく食料の流通価格が上がり、その状況が2014年ごろまで続く。家畜の餌でもある穀物の価格が上昇すると、やがては食肉や乳製品の値段にも転嫁されるはずだ。」
森林火災や、激しいハブーブ(砂嵐)も起きており、、過去50年で最悪の状況になりつつあります。
「干ばつの時期には山火事の頻度が増える。コロラド州で6月に発生した複数の山火事は、州最悪の火災の記録を2度にわたって塗り替えた。」(同)
また、残留農薬が高温のために濃縮してしまい、来期の作付けの悪影響が心配されています。
「深刻化する干ばつは、農場の雑草除去にも大きな影響を与える可能性がある。乾燥した条件下では、除草剤の分解スピードが非常に遅くなる場合が多い。次の作付け時期まで残留し、輪作作物に害を及ぼす恐れがある。残留農薬のリスクを背負って雑草対策を進めるべきか、水不足と猛暑で苦しむアメリカの農家に新たな難問が突きつけられている。」(同)
また、穀倉地帯からの輸送にも影響が出始めています。
「トラック輸送がほとんどと思われがちなアメリカだが、水運は今も大きな比重を担っている。艀(はしけ)は毎年1800億ドル(約14兆円)相当の農作物や石炭、鉄鋼などを運んでいるが、水位の下がったミシシッピ川などでは、積載量の削減を余儀なくされている。その結果、輸送回数が増え、コストの上昇を招くという。
干ばつと水位低下は経済にとってダブルパンチだ。農業への直接的な影響だけでなく、農作物など必需品の水上輸送も滞っていると、アメリカ水上輸送業者協会(American Waterways Operators)の代表兼CEO、トム・アレグレッティ(Tom Allegretti)氏は声明で述べている。」(同)
特にコーンベルトの被害は大きく、7月30日に発表された作柄報告では、G/E率(グッド・エクセレント率)は、平年並みの40%を大きく下回り24%という危機的数値となっています。
7月の農務省需給見通しでは単収146ブッシェル/エーカー(1ブッシェル=約23㎏・1エーカー=約40㌃)でしたが、民間調査会社のインフォーマー社によれば、それを下回る134ブッシェル/エーカーとなっています。
これに伴いFOBプレミアム(*フィー・オン・ボード・積み出し港までの陸送賃)は天井知らずの上昇を続けています。
上図はトウモロコシのFOBプレミアムですが、現在値は、7ドル92セントの高値を示しています。
シカゴ市場での穀物相場は欄外図のとおりです。
これに伴いトウモロコシの期末在庫は去年同期の10%を切り、6.7%にまで下落しており、輸出市場が逼迫しています。
米国の輸出穀物に全面的にたよるわが国は、アルゼンチンなどと交渉を急いでいるようですが、船賃などの不利は免れないようです。
一方の南米穀物大国ブラジルは輸出余力はあるものの、積み出し港が大西洋側にしかないために、パナマ運河経由での輸出というネックを抱えているために難航しています。
既に今期は飼料代のトンあたり5千円の値上げが通告されており(JA東日本飼料調べ)、むしろこれで収まるのかという不安すら漂う情勢です。
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もうすぐ北半球の収穫時期を迎えますが、熱波(干ばつ)の被害は相当なものです。
先日のテレビで、小麦の政府売り渡し価格の値上げが報道されていました。
小麦・大豆・トウモロコシが上がれば、食料用は勿論飼料用も当然上がります。
輸入穀物価格は、穀物価格(相場)・輸送費・為替で決まります。円高基調ですから影響を若干でも小さくしているようですが、為替相場は短期間に乱高下しますから、いつまでも・・・とは言い切れません。
さらに、先物取引市場への資金流入もありますので、どこまで上がるか想像できません。
4~5年前の食料危機の再燃を懸念しています。
投稿: 北海道 | 2012年8月23日 (木) 11時39分
昨日のエントリーにも重なりますが、やっと落ち着いてきていたガソリン価格が2週連続で上昇していまし。
シリア情勢の不安定が原因だとNHKでは解説してましたが、穀物価格上昇とパラレルな関係にある原油価格とも関わっているのでは…。
投稿: 山形 | 2012年8月23日 (木) 13時21分
おばんでございます。
一関市の半農半X何でも屋のあみです。
毎日興味深く読ませていただいております。
我が家は牛の干し草が放射能汚染の為に、アメリカ・カナダ・オーストラリア産など輸入に頼っています。
もう干し草は供給が難しくなるのではと心配しております。まだ牧野の除染も済んでいませんので、こんなに
沢山干し草が出来るのに、食べさせられません(悲しい)
速く牧野を除染して自給で牛のエサを確保したいです。
TPPで協力をなんて言いますが、自国の作物が無くなったら誰が諸外国に売ってくれるもんですか、自分の口を賄うのは自分です。よね!
投稿: あみ | 2012年8月24日 (金) 01時02分