沖縄の「政治的資産」としての米軍基地
沖縄の基地に対する誤解は、政治的立場を問わず、「沖縄の米軍基地群がこのままあるのは当然だ」という理解です。
保守の人たちは「現状維持をすることが日米安保の基盤となる」と考えていますし、それは現実主義的判断としてはそう外れているわけではありません。
しかし、現状維持の見返りとして巨額の沖縄振興予算を、大部分の国民が知らないところで長年にわたって沖縄に注ぎ込んできたのは他ならぬ自民党です。
自民党は 旧竹下派が振興資金や基地利権を一手に握っており、普天間基地移転も言い出したのは橋本龍太郎首相時で、その実働部隊は野中広務幹事長代理が指揮していました。
結果、沖縄の自治体は軒並み基地依存体質という基地頼みの宿痾をかかえることになってしまいました。
一方、いわゆる護憲反安保の人たちは、「基地のない平和な沖縄を」と主張し続けてきました。その実、太田革新県政時にもっとも基地見返りとしての振興予算が増えたように、理想論と現実は激しく乖離しています。
上図のように、本土から「ぶんとった」振興予算がもっとも多いのは1998年当時「琉球王」とまで言われた太田昌秀知事でした。
太田氏は沖縄革新のシンボルであり、反戦・反基地闘争の輝けるリーダーでありながら、この時期もっとも多くの資金が本土政府から流れ込んでいるのです。これを見ると、反基地闘争と振興資金はメダルの表裏の存在なのだとあらためて考えさせられます。
沖縄における反安保陣営は沖教祖と自治労で支えられており、県職員の平均賃金は722万円(04年度)で、県内平均賃金の340万円の倍以上です。沖縄の革新はエリート階級だと言えます。
沖縄では民間労組の力は弱く、労働条件も非常に悪いにもかかわらず、労組はエリート階級で占められていることが、いっそう沖縄を「住みにくい島」にしてしまっています。
沖縄エリートの公務員は基地がもたらす振興資金こそが沖縄経済のほんとうの財源だと熟知していますから、本気で沖縄の基地がなくなることを望んでいません。
むしろ振興資金が減ることこそが、他県と同様の公務員削減をもたらすと思っています。
このようにみると、「基地の現状維持」という点に関して左右の対立はありません。かつて沖縄社会大衆党というローカル革新政党の書記長をしていた比嘉良彦氏がこう語った事があります。
「本来、沖縄の保守と革新の間でイデオロギー対立はありません。なにが違うかというと、革新は理想論を主張し、保守は現実論を言う。そして沖縄全体で政府から振興資金を人出す役割分担か続いてきました。
1972年の本土復帰も、運動を主導したのは教員と官公労です。本土並を目指して公務員はほぼ本土並になりました。復帰で一番恵まれたのは公務員だったのです。公務員は県内の勝ち組となり、同時に革新勢力の担い手でもありました」。
富裕層の沖縄の公務員が反戦・反基地闘争を担い、本土政府の贖罪意識を刺激し続けることでその見返りとして振興資金を引き出す、これで島ぐるみ潤う、これが沖縄の基地を巡る構図でした。
この構図がある限り沖縄の基地問題が解決されることはないでしょう。なぜなら、それは沖縄の「政治的資産」として基地を考える限り、基地は現状維持とならざるをえないからてす。
おおかたのお怒りを覚悟で言えば、沖縄県民は本心のどこかで基地がなくなることを望んでいないないように私は感じます。
これが普天間問題が14年間の歳月を浪費し続けたあげく座礁した原因であり、今またオスプレイ問題に現れた「島ぐるみ」反対のもうひとつの顔なのです。
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理想と現実、維持(推進)派と反対派、なんか原発と似た構造な気がします。
基地に対する「飴」の方法を、原発を次から次と建設していかなければ自治体財政を維持する事が難しくなるように仕向けているように感じます。
そこへ官僚や公務員、利権を貪る人(企業)の存在がより複雑化させていますし、それを糧に生活している人も大勢いる事も事実です。
これと言って解決策は持ち合わせていませんが、現代の豊かで便利な生活から、貧しく不便な生活に戻る事を国民全体が覚悟しなければ、この構造の根幹は無くならないと思います。
何らかの事情で沖縄に移り住んだ「元○○人」のように、根拠のない話を声高に叫ぶ人も存在するのが現実ですから、意思統一する事なんて無理な事でしょう。
投稿: 北海道 | 2012年8月22日 (水) 11時27分
沖縄の基地問題はNIMBY運動によって国から過大な予算を分捕る狙いがあるって考えは鋭いですね。確かにその通りだと思います。
NIMBY運動と言えば原発のそれも同じですので、北海道さんのご意見もその通りだと思います。
沖縄基地問題に関しては民主党の宇宙人さんが総理になってから米軍が悪者にされてしまった印象が大きいのですが、米軍は本当に悪者なのでしょうか?
米軍をすべて国外に撤退させたとして、常識的に国防を考えたら自国の軍隊を増強するしか方法がありません。
永世中立国のスイスが国民皆兵を国是とし、徴兵制度を採用していることは自明だし、北朝鮮は勿論、お隣の韓国も徴兵制度が存在します。日本に徴兵制度が無いのはアメリカ軍の存在の恩恵だと考えるのが普通ではないでしょうか。
このあたりの矛盾を誤魔化しながら、「木を見て森を見ず」の議論で集票活動を行う政治家を信用してはいけませんね。
沖縄基地問題も脱原発問題も、木を見て森を見ずのニワカ便乗議員が多過ぎだと辟易してしまう今日この頃ですね。
投稿: ぱっく | 2012年8月23日 (木) 00時08分