ハブという可愛い奴がいる
ハブという可愛い奴がいる。
チャーミングな目は輝く金色。体型はあくまでスリム(←あたり前だ)。頭は優美なデルタ。くわっと開いた顎からはふたつに割れた舌がピラピラとのぞく。
嫌いな方にはたまらないだろうが、私のような蛇がキレイだと思う人間にもたまらない。
第一、噛まれたら死ぬ。死なないまでも噛まれた場所が腐っていく。シャレにならない。
初対面は今から30年前のことだ。所は沖縄の農場の納屋だった。
仕事をしていた私の横に天井の梁からボテッと落下した奴がいる。なにか雑巾でも落ちて来たのかと初めは思った。
それがハブだった。私の数メートル横にいた鼠を襲ったのである。瞬く間にくるくると鼠を頭を残して巻き上げ、おもむろに最後に残った頭をカッと顎がはずれんばかりにしてカプッ。
哀れ鼠は凍りついたままクイクイとばかりに呑み込まれていく。最後にシッポが今生の名残を残すようにひらひらとうち振られて往生。
それまでに数分とかからなかった。唯一の観客たる私もまたネズ公のように凍りついたままだった。
だってあなた、もう数メートルハブがハズれていたら私の首筋にカプッですぜ。そうしたら私は享年32歳でたいして惜しまれずにナンマンダブだった。
腕や指を噛まれるのとは違って、首筋の動脈にハブの神経毒をもらったら命はない。
何回か登場しているクチョーのオジィの右手の小指は曲がったままだが、オジィに言わせると手首だったらアウトだったそうだ。
この時は幼体のハブを放してやろうとしてやられたそうだ。仏心がアダになったさぁとはオジィ。
クチョーは調査には職業農業などと書いているが、ほんとうはハブ採りで金を稼いでいる。一日3匹もつかまえればウン万円で名護の保健所が買い込んでくれるのだそうだ。
狙い目は早朝と夕方。蛇は涼しいうちにしか仕事をしない。涼しい水際か、森の淵でハンティングをする。
私が遭遇したようなまっ昼間は例外である。あの時ハブは梁の上でうたた寝をしていたのであろう。そして人の気配で目覚め、眺めるともなく見ていると、マヌケな人間(←私だ)の横にご馳走がある。
ハブはやや迷いながらも、人間がボケてそうなのでついご馳走を食べる衝動に勝てなかったというわけだ。
クチョーにその話をするとかなり珍しいケースだそうで、ハブは人がいるとじっとしているそうである。人がチョカイを出すして危険を察知すると、ようやく反撃に出るのだとか。
後に私は、牛舎でハブと一対一のガチンコ勝負をすることになる。
それにしても、私がカエルやヘビが好きだというと信じられないというような目で見る人が多いのは、残念である。
あんな見事な生き物をと私は思う。私には美しい花のように見えるのだが。
■写真 まだ青いホオズキ。わが農場は自生して群落になっています。
« 金沢市内で黄砂から放射性物質を検出 未だ続く中国核実験の長い影 | トップページ | ストロンチウム検出を騒ぎすぎてはいけない »
「沖縄での暮らし」カテゴリの記事
- ハブ様には出会わないのが一番、もし遭遇してしまったら・・・(2012.08.06)
- ハブという可愛い奴がいる(2012.08.04)
- ヤンバルの共同売店(2012.07.17)
- 年の瀬になると思い出す一杯。ヤンバルのオジィの沖縄そば(2011.12.31)
- 私が入ったヤンバルの村 おまけ・チキンのばらし方マニュアル(2011.12.25)
コメント
« 金沢市内で黄砂から放射性物質を検出 未だ続く中国核実験の長い影 | トップページ | ストロンチウム検出を騒ぎすぎてはいけない »
>あんな優美な生き物を。私には美しい花のように見えるのだが。
あ・・・・・--;ダメです。こればっかりは同意できません(笑;;;;
うなぎも、どじょうもダメです。
写真の青いほうずきのような色をしたホースもいけません。
青大将に見間違えます。
投稿: 会津 | 2012年8月 4日 (土) 07時27分
うーん私もニョロニョロは好きになれません。
北海道には道南(函館など)日本海側にはマムシがいるようですが、十勝には「青大将」くらいです。
夜景で有名な函館山は、戦争時基地があった為、敵の侵入を防ぐため「マムシ」を放したという事を聞いた事がありますので、今も生息していると思います。
あと苦手は「クモ」ですね。
以前沖縄に行った時、北海道では見た事がないくらい大きなクモを見ました。名前は分かりませんが、黄色と黒いやつです。
そうそう都府県では普通にいると聞いている「ゴキブリ」も十勝では聞いたことありません。
住宅の断熱が進んでいるマンションなどでは見ないだけで、実はいるのかも知れませんが・・・
今日の記事の「ヘビ」類は、見ないで済むなら見たくないですね・・
投稿: 北海道 | 2012年8月 4日 (土) 09時09分
どーもハブの評判は悪いようですね。
私もハブは美しいと思います。黒っぽいのから茶色・金色と色々いますが、私が綺麗だと思うのは模様が鮮やかなやつです。大袈裟に言うと玉虫のような色彩に感じられるのがいます。三角形の頭が濱田様ご指摘の通り存在感を引き立たせています。でも、出会ったことがないと、この感じは伝わらないだろうなあ。
初対面の農家さんと飲んだ時など、ハブ談義をすると必ず盛り上がります。
ハブは牛の飼料用の草地畑に昼間は隠れているのですが、トラクターのモア(草刈機)で畑の外周から刈っていくと、内側に追い詰められていくので、注意しながら見ていると最後に飛び出してくることがよくあります。それを生け捕りして役場で買い上げてもらい、牛農家の男たちは内緒の小遣いにするわけです。近年は買い上げ価格が下がってきており、今は1匹4000円なのが少々悲しいです。
瑣末なことですが、ハブは出血毒ですよ。どちらにせよ恐ろしさには変わりありません。
投稿: 南の島 | 2012年8月 4日 (土) 13時44分
ヘビはなあ…
子供の頃に公園で木登りしてたら目の前にアオダイショウの顔が!とか、写真撮りに行った空港のエンドで飛行機来るまで草むらで昼寝してたら…変な気配に目覚めたら、顔の上にシマヘビとか(笑)いろいろありました。それよりもガキんちょどもに「あっ、死体だー!」と騒がれて一騒動になったなんてことが…。
正直ヘビは苦手ですが、なんとも言えない生物進化の『機能美』には感心せざるをえません。
ハブはマムシよりヤバいでしょう。ご無事でなにより。
マムシは天日干しでミイラ状態のをハサミで切って食べると、なかなか美味いです。鮭とばみたいな感じ。
一度親戚に騙されて、蒲焼き食いましたが、皮面の模様を見るまでは、ちょっと骨が多いウナギって感じで美味でしたよ。
北海道さん。
十勝には未だにゴキブリいませんか。羨ましいです。
巨大都市化して断熱が進み、飲食店など暖かい場所が増えた札幌では、20年以上前から普通に越冬して繁殖してるそうですよ…。
投稿: 山形 | 2012年8月 5日 (日) 07時11分