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米国農地の砂漠化の進行 穀倉の水源オガララ帯水層の危険な水位低下

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      図版 Wikipediaより危険な水位低下 低下は赤とオレンジ、増加は水色と紫)

昔、ヒューストンからの帰りの飛行機から地上を眺めたことがあります。行けども行けども土漠が続く乾燥しきった大地に、真円の巨大な染みが沢山あることに気がつきました。

後でわかったのですが、あれがセンター・ピボット灌水という奴です。「米国のパンかご」と言われるグレートプレーンズ(大平原)では一般的な灌水方法だそうです。

下の写真を見て頂くとその巨大さが分かります。大きなもので半径1㎞もあるような巨大な自走式散水管に化学肥料入りの汲み上げた水を高圧をかけて注入し、ザーッと散布していきます。(写真 アイダホのジャガイモ畑 出典同)

ですから真ん丸の農場という異形のシロモノが出来上がるというわけです。アメリカ人はやることがなんにつけてもゴツイですな(笑)。私たち日本人には考えもつかないですよ。

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この方法で地下のオガララ帯水層から地下水を大量に汲み上げ、日本のような土づくりなんてまだるっこいことはいっさい省略。

巨大トラクターで耕耘してから飛行機で種をぶん播き、後はピボット灌水で汲み上げた水に化学農薬と肥料を入れてブッかけて、成長したら巨大コンバインで収穫して一丁上がりです。最初から最後まで農場主は土に触りもしません。

典型的な収奪農法です。自然環境から奪うだけ奪って与えない。与えることをせず、土を生産にだけ隷属させ、絞り尽くせば使い捨てにして去っていくという農法です。

しかしやがて、強引な灌水は農地を地中から塩を噴かせるアルカリ土壌に変えていきます。

また等高線に沿って計画的に土留めをしないために、いったんアルカリ化した砂を大量に含んだ土砂は崩れて、低い土地をも呑み込んで拡がっていくことになります。

これが砂漠化です。米国農地では今静かに砂漠化が進行していると考えるべきです。近年毎年のように続く熱波はこれと何かの相関関係があるかもしれません

このような収奪農法は米国やブラジル、あるいはロシアなどでしか可能な農法ではありません。狭隘なわが国でこんな農法をとれば十年たたずしてすべての農地は消滅してしまいます。

私はこのような持続することをハナから捨てているような農法を、「農業」とは呼びたくありません。これは水と土という貴重な人類が共有するべき地下資源の私的略奪です。

作物にとって水は欠くことのできないもので、特に主要作物のトウモロコシは大量に水を必要とします。

この水をグレートプレーンズではこのオガララ帯水層から汲み上げています。ですからこのオガララ帯水層とグレートプレーンズは完全に重なっています。(グレートプレーンズは緑色部分・下図参照 出典同)

このオガララ帯水層と五大湖によって潤う湖周辺地域を合わせて、米国の穀倉地帯は作られています。言い換えれば、「米国のパンかご」の過半はこのオガララ帯水層なくしては成立しないのです。

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オガララ帯水層は、ロッキー山脈東側の大平原の地下に存在する文句なしに世界最大級の地下水層です。総面積は450,000km²で日本の国土の約1.2倍という馬鹿げた広さです。わが愛する霞ヶ浦などここにくると針穴ていどになってしまいますな(笑)。

オガララ帯水層は氷河期の地球が遺してくれた恵みとも言うべきものですが、年間降雨量が500mmに満たないこの地域では、増えることは期待できません。

むしろ、人間の乱開発がないとしても、大草原特有の乾燥した強風によって地表水や降水の蒸発が促されているために蒸散し続けています。

しかも、オガララ帯水層は地下水の蒸散を早め、降雨を浸透させない働きのある炭酸カルシウムの不透水層によって覆われているために、降雨は地下浸透しません。わずかに降った雨水は地表を滑るようにして川に流れ込んでいってしまいます。

つまり、いくら巨大な地下水帯だろうと、新たな増水が期待できず、むしろ減る一方なのにもかかわらず、それを戦後本格的にジャカジャカ乱費する潅漑農業が盛んになったのですから結果は見えています。

1980年の統計の時点で既にオガララ帯水層からの揚水量は地下水涵養量の3倍に達していました。実に年間1.5mにもおよぶ水位低下の地域すらあり、枯れた井戸が続出しました

冒頭に掲げた地図は、オガララ帯水層の1980年から1995年の地下水位の変化を示しています。水位が著しい低下を示している赤とオレンジ色のゾーンに注目してください。

テキサス州北西部、カンザス州南西部では危険なまでに水位が低下しています。わずかに水位が上昇している地域は水色と紫色ですが、比較するまでもなくオガララ帯水層は水位低下が顕著になっています。

そもそも限りある水資源を収奪農法によって1911年から延々一世紀以上にわたって収奪し続ければ水源の枯渇が起きて当然でしょう。近年になって一定の計画下に置いたとしても既に手遅れであり、一時しのぎにすぎません。

米国の輸出を前提とする過剰な穀物生産を見直さない限り、米国の農地の砂漠化は不可避だと思われます

念のために申し添えますが、この問題とわが国畜産や食品加工の米国依存は別次元の問題です。それぞれの国で解決を見いだしていくべきで、グローバリズムは解決にならないと私は思っています。

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コメント

一旦崩壊に向かった土地や水を元に戻すには、膨大な時間とエネルギーが必要になります。
昨日の記事へアメリカの地下水枯渇についてコメントしようか?と思いましたが、うまく文章が纏まらず、書いては削除を繰り返していました。
本日の記事のように詳細なデーターは持ち合わせていませんでしたが、かなり以前にテレビで放送していた事を思い出していました。
昨日の記事の補助金でも受益者が少ない事に驚かせられました。
超巨大アグリビジネス社数社で生産を左右する危うさは、需給バランスと価格に大きな影響を受け、一般国民の「命の危機」に直結します。
日本の様に、多種多様な農業者がいて、多種多様な考え方で土づくりを行い、多種多様な作物を栽培生産する。この様な素晴らしい国の国土(風土・文化)に「経済」優先を持ち込む事こそナンセンスだと考えています。
(農業経営が維持できる程度の経済は必要ですが・・)

投稿: 北海道 | 2012年8月 1日 (水) 10時31分

私も北海道さんと同じテレビ番組を観てたのだと思います。
全く危機的ですよ。

氷河期の地球の遺産とも言うべき帯水層をみさかいなく浪費する農業。破綻は目に見えてますね。

投稿: 山形 | 2012年8月 1日 (水) 12時56分

本当に農業は重要です。アメリカでも本格的有機無農薬あきたこまちはカリフォニアで作られています。セシウムやストロンチウム、プルトニウムのない安全なコメです。セシウムはそれほど怖くないが、公表されていない、放射性物質が本当は危険で、セシウムと異なり、死ぬまで体外に出ず、体を痛め続けます。
もし、次の原発事故が若狭湾で起きれば日本の農業は壊滅的です。一行も早く、安全な場所に使用済み燃料を移し、原発の稼働は停止させましょう。

投稿: 白熊 | 2012年8月 6日 (月) 10時32分

白熊さん。

カリフォルニアが安全?
日本向け増産は十分に可能だと加州米輸入組合は言っておりますが、この記事のテーマ以上にカリフォルニアは水が不足しておりますが…。

せめて安全である根拠と、価格以外での輸入すべき根拠の、データをお示し下さい。
あと、原発再稼働以前に大量の放射性廃棄物は何処に持って行くのか?
当然ながら対案を示さずにノーテンキな反対論は、全く意味を成していません。

投稿: 山形 | 2012年8月 9日 (木) 08時18分

大変そうやねえ

投稿: | 2014年8月26日 (火) 11時02分

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