ドイツ「シュピーゲル」誌 電力網の不安定が企業に重い負担を強いています
再生可能エネルギーは大規模に全国的エネルギー源に組み込むと多くの問題を起こしてしまいます。
それは再生エネルギーが間欠エネルギーだからです。その本質的性格を無視して一挙に大規模化すると、電力網に多くのひずみが生じてしまいます。
そのひとつが瞬間停電です。瞬間だからいいという人は製造現場の現実を知らない人です。今のすべてコンピータ管理になっている製造工程では、ミリ秒単位の停電で、工程が損傷を受けてしまいます。製品すべてがダメになるケースもドイツではありました。
家庭用PCですら、瞬間停電したら今していた仕事が瞬時で消えた経験をお持ちでしょう。あれを数百倍したようなものです。
その原因は、再生可能エネルギーが、昨日の発電量グラフの4番目のように慌ただしく変化する場合、バックアップ電源とのリレーがうまくいかずミリ秒(千分の1秒)単位の停電を引き起こしてしまうからです。
ドイツの「シュピーゲル」誌はこう述べています。
「ドイツ産業エネルギー企業 (VIK) の調査では、過去3年間にドイツの電力網の短い中断の回数は 29 %です」。
ドイツ「シュピーゲル」誌によれば、ドイツではメルケル首相の脱原発路線により、昨年から7基の原子炉を止めて以来、送電網が不安定な状態が続いています。
この3年間で、電圧や周波数の変動、瞬間停電などが30%ほど増加しました。安定した電力供給の質が低下したために製造業は混乱しています。
企業の大部分は緊急用蓄電池や発動機を準備しており、その費用も多額に昇ります。
その緊急対策をとっても、ミリ秒といった瞬間停電は避けられず、コンピュータ制御の機械が工程の途中で停止したために製品をオシャカにすることもたびたび起こっています。
ドイツからは既に企業の海外逃避が始まっており、この状況が改善されないとこの傾向には歯止めがかからない状況です。
ドイツ商工会議所のアンケートでは、60%の企業が瞬間停電や電圧変動などを恐れていると回答し、電力供給の不安定さからドイツ国外へ工場移転した企業がすでに9%、さらに移転計画中が6%ほどあるということです。
瞬間停電など、放射能禍と較べたらという暴論があるようですが、違います。もし、脱原発をしたいのなら、このような具体的問題をひとつひとつあらかじめ検討して、解決案を作っておく必要があります。
それを見ないでムード的に 再生可能エネルギーを増加させるとドイツのように産業全体ののベースが揺らぐということです。
再生可能エネルギーは小規模なスマート・コミュニティの中で、あらかじめバックアップ電源を決めて、どのような組み合わせがいいのか、どんな電源連携があるのかを実験してから、徐々にそのようなスマートコミュニティを増やして、互いに連結させていくようにするのが無理がないのではないでしょうか。
以下、私の超訳的抄訳ですがお読みください。
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本文はこちらからInstability in Power Grid Comes at High Cost for German Industry (電力網の不安定さがドイツの産業に重い負担を強いる)
From DER SPIEGEL
電力網の不安定さがドイツの産業に重い負担を強いる
突然、アルミの圧延機が突然引っかかると生産を停止しました。引っかかった部品は、製造機械を壊し、工場の一部までも破壊しました。これは、電力網がほんの一秒の何千分の1の間停電したためです。
「もしこのような事故が再度生産中にしれば、火災につながった」と工場長アクセル・ブランドは言います。
「それは本当に高価な代償だ」。他の産業の企業の最高幹部は、再生可能エネルギーへの国の移行の結果の電力網の不安定から開放されることを真剣に考えています。
「電力供給について心配ではない会社ほとんど見つけることができません」とヨアヒム ・ ファイファー(国会議員、経済政策スポークスマン)は言います。
ドイツ産業エネルギー企業 (VIK) の調査では、過去3年間にドイツの電力網の短い中断の回数は 29 %です。
同じ期間にサービス障害の数は 31 % に達しました。それらの障害のほぼ半分で生産停止になっています。そして損害賠償額は1万 ~ 数十万ユーロです。
電池および他の緊急エネルギー源の生産者はこの電力網の混乱から最も恩恵を受けています。
APC は、世界の主要メーカーの緊急電源技術の販売をしてがけていますが、この 3 年間で年に 10 パーセント成長しています。
バイエルンでは、多くの繊維企業が停電を恐れて予防措置を取っています。生産停止は彼にとって致命的だからです。
「我々の工場は染色メーカーです。電源が切れた場合は、商品のすべてが失われてしまい、巨額の損失を受けます」と工場長は言っています。
主要な銅生産者では、電力の緊急事態に対応するために200 万ユーロも費やしています。「電力網の安定性が著しく改善されない場合は、私たちは緊急電源装置だけでこれから来る冬に頼らなければならない」と述べました。
ファイファー議員(キリスト教民主同盟・CDU)はこう言います。
「我々が安定した電力網を保証できない場合は、長期的には、ドイツ企業は国を出て行きます」。「ドイツは産業の中心地ではなくなるのです」。
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コメント
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APCのバッテリーは、自分も使ってます。
現状、インターネット接続機器OIUやCTU、HUBなどと、ビジネスフォン、緊急無線機、110番自動通報システムなどですが、電圧、電流の安定化回路とか、結構、独自で、補強しないと、使えません。
特に、自動充電回路などは、鉛電池やニッケルカドニウム電池などは、電池の電流放出能力がある程度以下になって、初めて充電するような回路や、平常の使用だと、週1回充電で良いと決めたら、タイマーをかけて、そういう充電を出来るように、また、電流の流れる方向を、瞬時に変えたり、防御しないと駄目なので、雷対策も含め、結構、面倒な回路を作らないと動きません。
わずかな機器のバックアップだけでも、そうなりますし、そこまでの、商品は、まだまだ、開発されてないようですので、残念です。
家庭で、使う60A程度まで、きちんとバックアップできるなら、不安定な再生可能エネルギーも、OKかもしれませんが、既存の変電所で、対応が、可能なのか、変電ネットワークについては、私は、無知ですので、そういう情報も、電力会社に公表してもらいながら、地域ごとでの小さなネットワーク内で、受給が完結できるなら、ありがたいと思ってます。
一応、家電が、車同様、燃費というか、エコモードになる商品が、増えることは、当面は、私は、賛成です。
1億3千万人が、節電することは、化石燃料の消費を減らす意味では、賛成です。
正直、FIT制が無ければ、自分は投資は、しないで、現状のままでしょうね。発電効率が、悪くても、10KW以上発電能力があれば、買取してくれるというのは、1個人のお財布状況で考えると、魅力はあります。後日、消費税のように、FITの国の金が無くなったら、税金を上げるっていう状態に、法改正されるとするなら、投資の意味がないかもしれませんが。。。
当面、節電できるなら、それを選ぶのが、自分の考えですが、産業用は、難しいですよね。
投稿: りぼん。 | 2012年9月21日 (金) 14時00分