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2012年9月28日 (金)

ドイツ電力小売り事情 発送電・小売りの細分化と過当競争

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「脱原発を決めたドイツの挑戦」(熊谷徹)によると、ドイツには電気料金の乗り換えのための専門サイトまであるそうです。 

ベリボックスというそのサイトは、自分の郵便番号と年間電気消費量を入力するだけで電気料金の比較が即できてしまうそうです。 

便利というか、考えようによってはそこまでしないと電気を買えないのは不便というか、なんともドイツ人らしい民族性を感じてしまいます。 

脱原発はしたいが電気代値上がりはイヤダという方々にお勧めなのが、プリオシュトローム社の電気です。(下図)ここはこの数年、格安の自然エネルギーを販売して業績を伸ばしている会社です。

Photo_2                  (「脱原発を決めたドイツの挑戦」 熊谷徹)

ご覧のように1キロワット時あたりのCO2排出はゼロ、同じく核廃棄物排出ゼロとなっていますから、100%自然エネルギーということになります。

電力価格も前に出てきた「イエロー」が化石燃料も原子力も利用しているのに年間電力料金が776.21ユーロですから、安全な上にぐっと割安感があります。

なんでこんなに安いのでしょう?もちろんこれには種も仕掛けもあります。 電源の内訳まではおおざっぱな表示義務しかないため「排出ゼロ」電力=自然エネルギーの表記だけでは再生可能エネルギーとはかぎりません。この会社は北欧の水力発電からの電気を輸入しているのです。

大型ダム発電が自然エネルギーだと言うのはウソではありませんが、環境破壊を伴うために厳密には再生可能エネルギーの範疇には入りません。 ドイツの場合、そこは一括りにして「排出ゼロ」で済ましてしまっています。

また国産エネルギーの表示義務はないので、格安販売会社は外国からの買電が頼みの綱で、原子力はフランス、水力はノルウェイやスウェーデンなどに頼っています。

まぁいずれにせよ、日本の場合、外国との系統送電網自体がありませんからこのテは使えませんし、脱原発エネルギーに水力発電を入れてもいいことになると日本は電源比率23%の水力発電太国でもありますから、少々事情は違ってくるでしょう。

一方、多少高くても再生可能エネルギー、しかも国産じゃなければダメというこだわり脱原発派の皆さんには、マルクト・リヒテナウ社はいかがでしょうか。

先のプリオシュトローム社の倍の863.3ユーロ(約8万6千円)していますが、マルクト社はドイツ国内の再生可能エネルギーを優先して使用しているためどうしても高めになるようです。

このようなエコ電源のお墨付きは、「技術監視協会」(TUG)が与えており、ドイツ人はこの保証があると安心して購入しています。

もちろんすべての会社がつけているわけではありませんので、電気の素性を調べるのは実際はその会社を信用するしかないということになります。

というわけで、このように同じ自然エネルギーといっても2倍も価格差があるのですから、一口にドイツの自然エネルギーの価格はいくらと言い切れないのがお分かりでしょう。 

それはさておき、この会社もそうですが1000社超あるといわれる電力販売会社は文字通り「販売」だけで、発電所はおろかなと送電網すら持っておらず、大手電力会社から電気を卸してもらって小売りしている会社だそうです。 

私は送電会社が販売までしているのかと思っていましたが、ここまで発送電・小売りまでが徹底して細分化されているとは意外でした。 

まさに野菜や魚の代わりに「電気」という商品を売る小売り店ということになるわけです。このような電気小売り会社が、電力販売会社の大半を占めます。 

これらの店は全国展開しているわけではなく、「シュタットベェルケ」という地域売電専門会社だそうです。ちなみに発電会社も州ごと、送電会社も電力販売会社すら州ごとという場合が多いそうです。 

ということは、ドイツでは非常に狭い消費市場に電力販売会社がひしめきあっているということになり、こりゃあ過当競争になるであろうなという想像がつきます。 

ですから、安い電気への乗り換えも頻繁に行われているようです。連邦ネットワーク庁(BNA)によれば、電力を乗り換えた市民の比率は電力の自由化がはじまってから2年目の2000年には5%だったものが、2010年には3倍弱の14%に増えてました。

電力会社は替えていないものの同じ会社の安い料金体系に乗り換えた人は41%と半数近くに登りました 日本で電力自由化をした場合も、ドイツのように安さを売り物にする販売会社と、安全=脱原発エネルギーを看板にする会社に二分化されていくことが予想されます。

これでもメルケル政権は電力の競争が不足していると考えており、今までの解約通告期間を4週間からその半分の2週間に短縮する法律を通しています。 

これは、電気料金が再生可能エネルギー促進政策のための賦課金が原因で高騰してしまったことを、業者間競争を加速することで抑えていこうとするものです。

このように再生可能エネルギーの促進政策により高騰を続ける電気料金を、市場の自由化を加速することで乗り切ろうとしているようです。

日本のような旧態依然たる地域独占は批判の矢面に立たされていますが、その反面、東電などの電力会社は丹念な送電網の保守作業を徹底してきました。これが世界でもっとも安定して高品質な電力供給を生んだのも事実です。

一方ドイツのように、これほどまでに価格競争が激化すると、業者は必ず電力のクォリティを落としたり、儲からない新規の技術投資やメンテナンスを避けるようになってきます

米国では電力自由化の後に、元々送電網インフラが脆弱だったところに過当競争が加わって頻繁に停電が起きるようになりました。歴史的大停電もやらかしています。

ドイツで頻発する瞬間停電などのトラブルは、このような過当競争の副作用なのかもしれません。

■明日あさっては定休日です。月曜日にお会いしましょう。

■写真 盛夏の蓮田。秋風が吹くよにうになると花が枯れて実だけになり、それもやがて姿を消すと、収穫の季節に入ります。霞ヶ浦湖畔は日本一の蓮の産地です。

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コメント

大型ダム発電が自然エネルギーだと言うのはウソではありませんが、環境破壊を伴うために厳密には再生可能エネルギーの範疇には入りません。 ドイツの場合、そこは一括りにして「自然エネルギー」で済ましてしまっています
>>>>無知なので、教えていただきたいのですが、「自然エネルギー」や「再生可能エネルギー」の定義は、世界共通ではないということでしょうか?
日本においても、水力発電、揚力発電は、再生可能エネルギーの範囲で、計算しているように思ってましたが、今回の記事によると、違うのですよね。

その反面、東電などの電力会社は丹念な送電網の保守作業を徹底してきました。>>>この理屈ですと、西日本の方が、東日本より、離島など、安価なメンテナンスが難しい地域ですから、当然、地域、地形によって、メンテナンスの経費が異なると思いますが、現実は、高値安定的に、メンテナンス料金を電気料金に、上乗せしてきたのが、東電の実態だと思ってました。
理由は、NTT東西の保守点検経費は、ダントツに、西日本の方が多かったからですが、言いたいことは、電気の質以上に、東電は、今まで、儲けていたと言う事です。

下水網も電気網も、以前からの管理人さまのご指摘どおり、地域ごとで、経費が全く異なってくるのですが、実際に掛かった経費と電気代との因果関係が、なぞのままですよね。

正直、ある程度のボリュームで、発電して、都市部で使う電気と、地産地消的にローカルで、完結した方が、良い地域と両方あるというのが、日本のような複雑な地形の国では、適正な電気の消費が出来るのだと思います。

都市計画で、比較してみれば、やはり土地の利用制限と消費電力量は、比例しているように、感じますから、発電や送電も、ローカルが良い地域とメガタイプが良い地域とあるのではないでしょうか?

国土交通省の無駄使いの指摘の中に、都市計画や開発プランのない地域に、優先して、下水道整備をして、結果、使ってない施設が、ごろごろと出てきたというのが、ありました。

私の地域は、都市計画法上、市街化調整区域ですから、大きな下水道システムは、不要な地域ですが、ごみ焼却灰最終処分場が、町内にありますので、山の中なのに、浄化槽でなく、分流型完全下水地域です。
単純に、迷惑施設の設置町内への設置同意への飴なんですが。。(ただし、市街化調整区域ですので、下水があっても住宅開発が出来ないために、あまり意味は、ないのですけど)宅地として、自由に販売できないから、値段が、付きません。

ドイツと日本で「自然エネルギー」や「再生可能エネルギー」の定義上の差異は分かりませんし、さほど有意義な議論だともおもいません。
「排出ゼロ・エネルギー」と表記されていても再生可能エネルギーとはかぎらないということにすぎません。

誤解を招くと困るので当該部分を単に「排出ゼロ」と修正しました。

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