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「脱原発」を精神論で終わらせてはならない

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今や「脱原発」は踏み絵となっています。たぶん今度の秋と言われる総選挙にはどの党も、どの候補者も口を揃えて「脱原発」を叫ぶことでしょう。

ところがどうしたらほんとうに原子力と縁を切れるのか、まともな議論を聞いたことがありません。こう言っては悪いですが、ムードなのです。

「脱原発=原発即時ゼロ」、「脱原発=再生可能エネルギーで代替」などという単純な構図で一国のエネルギー政策が転換するのだろうかと首を傾げてしまいます。

猪瀬直樹さんが書いているのですが、太平洋戦争突入前夜の昭和16年、日本が米国との総力戦になった場合どのようなシナリオになるのかを内部研究させた事がありました。

いうまでもなく答えは完全敗北。このシナリオは時の陸相の東條英機にも上げられましたが、彼はこれを読んでこう言ったそうです。意味このようなことです。

「日露戦争も勝つかどうか分からなかったが勝った。それは勝つという必勝の精神があったからだ。」

日本人の悪癖は国の進路を決定する時に当たって、複合的でリアリティのある手だてを考えずに、このような東条秀樹ばりの「必勝の精神」に傾くことです。理念さえ正しければ、天は我に味方する、というわけです。

ちょっと考えればわかるように、いくら正しかろうと手配りや手順が誤っていれば負けます。負けないためには、これがコケたら、次の手段を用意しておくという賢さというか、ズルさが必要なのです。

それが複合的なリアリズムです。複合的というのは、この脱原発という国家的選択に当たって、それを実行した場合どのようなシナリオがあるのかを頭を冷やしてあらかじめ考えておくことです。

ドイツは脱原発方針を決定するにあたって、ドイツ産業界と膝づめで議論をしました。それは当面脱原発のエースと位置づけられた再生可能エネルギーがほんのヒヨコでしかないからです。

再生可能エネルギーは未だ成熟した技術ではなく、フロンティア技術なのです。

それが定常的な電力を生み出すまでにはそうとうに長い期間かかるのはわかりきったことで、原子力が減少するペースに再生可能エネルギーが追いつくのは現時点では不可能です。

ドイツが脱原発で取った方法は、かつてのエネルギー構造に「戻す」ことでした。かつてのというのは原子力以前のエネルギー構成にということです。

2010年のドイツのエネルギー構成をみてみましょう。
・石炭          ・・・46%
・再生可能エネルギー・・・16%
・原子力        ・・・・26%

ドイツのエネルギー比率は、原子力が減るほど石炭火力発電が伸びるという基本構造だということが分かります。

またドイツがあれほど力を入れて普及に務めた再生可能エネルギーも、10年間かかって20%に届かない現実も分かります。

ドイツは原子力がなくなる目標の2020年あたりで、石炭や石油の化石燃料火力発電が60%近くに達するだろうといわれます。

ドイツは戦後一貫して炭鉱部門を保護してきました。それに過大な補助金を支出したために国内からの批判を浴び、国際的にも近年では地球温暖化に逆行するのかという批判を浴び続けてきました。

ドイツはこのような批判に対して、「脱原発」という新しい旗印の下にエネルギーの旧構造を復活させたのです。実にしたたかなものだと感心します。

だれも反対できない3.11以後の「脱原発」という世界の空気の中で、石炭火力を全面復活させるというシナリオは単純な環境正義ではなくつ政治戦略だったのです。

ドイツは温室効果ガスの排出権バトルから離脱することを念頭に置いていると思います。地球温暖化対策と脱原発は絶対に両立しないことが明白になったからです。

今、わが国の「脱原発」は誕生の熱気の中にあります。それが故に、この熱気をどのように持続していくのか、それを現実の政策にどう落とし込んでいくのかという思考が欠落したままです。

かつて原子力が、その地位を占めるまでに研究、実験、設備投資、燃料確保に至るまで数十年をかけていったと同じ途が「脱原発」に待ち受けていることを忘れてはなりません。

脱原発を「必勝の精神」で語ってはなりません。

■写真 どんよりとした雲の下にそよぐ稲穂

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原発を真面目に終りにする方法」カテゴリの記事

コメント

見事に実った黄金色の稲ですね!
こちら東北では、まだまだ田んぼは緑です。(水たりねぇー)

脱原発ですが、全くその通りで、ただ「無くせ!廃止しろ!」と叫ぶのは安易で簡単なことです。
しかしちょっと振り返れば、脱原発と代替エネルギー確保の道程は長いものになるでしょう。
方向性はいいのですが、「今すぐヤメロ!ヤメロ!」とばかり騒ぐ連中にはどうしても同意できません。

私の中でも葛藤があるのですが、現実問題です。


民主も自民も国民不在の凄まじい内ゲバモードに突入してしまいましたが、「大阪維新の会」を含め、安易な選択をしないように、我ら国民はしっかりと未来を見つめていく必要があると思います。

投稿: 山形 | 2012年9月 4日 (火) 11時14分

http://kokumingiron.jp/giji/1.pdf

意見聴取会でのポ-トフォリオは、3つの選択肢のうち、すべての選択肢で、再生可能エネルギーが、18年後の2030年に30%を超えているとの仮定にそっての意見聴取会です。現行の水力発電が、約10%ですから、わずか18年で、例えば、太陽光発電で集約すれば、20%以上、太陽光発電が、実用化されていないと、成り立たないと言う事なんですが、今のところ、発電効率の非常に悪い太陽光発電で、最低、原発10器分の1000万KWの発電が必要で、1200万戸の住宅に10kw以上の発電能力の太陽光パネルが、最低限必要であって、しかも、365日、晴天で、発電できているとの仮説での話なんですが、再生可能エネルギが伸び悩み、火力発電に頼ったとして、2010年実績が火力63%とという比率からすれば
火力比率を2%アップして、65%にすれば、やっていけるのが、日本の実態と思います。
もともと現在50基ある原発で、2030年時点で、新たな再生可能エネルギーが、発電、給電できなくても、もともと、原発10基分以上は、不要なのです。必要量の5倍の原発が、存在している。つまり、原発への過剰投資が、進んでしまったと言う現状ですね。

後は、石炭発電は、今の発電技術ですと、火力発電のうち、もっとも、CO2の排出量が少ないプラントであることも、事実です。

廃炉技術の達成と、使用済み核燃料の最終処理技術が完成するまで、発電産業としての原発でなく、核や放射性物質の処理技術の獲得には、当然、当面の原発は、最低限動かしながら、処理技術を、研究しないといけないので、何基かの原発は、うごかさざるを得ないと思います。
実験室で、成功しても、プラントレベルで、成功するには、やはり、原発プラント自体で、実験しないと、わからないことが、多いからです。

現状も、未来(2030年時点)も、化石燃料依存率は、60%代のままというのが、大方の推計値だと思います。
再生可能エネルギーが、どんなに伸びても、原発を全部止めても、発電量のコントロールができるのが、化石燃料発電以外に、現時点では、存在していませんから、当面、選挙前に、夢を語る政治家の発言は、夢とか、希望とかとしての発言でしか、ありえないと思ってます。

1箇所で、100万KW以上、24時間発電できて、輸入化石燃料に頼らない、発電技術が、成功することを願うばかりです。メタンハイドレードも化石燃料の1種でしょうが、日本の領海内で採掘できれば、太陽光発電の普及より、発電量の優位性からみれば、太陽光発電より、マシだと思うのですが。。結局、大型発電タービンでの発電が、今のところ、効率が良い訳で、SL機関車時代と、基本原理は、変わってないのですね。

日露戦争に勝てたのは、運が良かっただけです。
当時、対欧州戦争と対東アジア戦争との2方面同時戦争に、旧ソ連に自身が無かっただけです。

現代の米国も、同時2方面戦争は、国費がもたないので、1方面のみの戦略に、変えてしまいました。

戦争は、人の命だけでなく、経済的リスクも非常に大きいから、辞めた方が、よいのですがね。ある意味、原発の廃炉も、同じくらい、経済に影響を与えるのでしょうね。廃炉費用は、生産性向上には、なりませんから。

投稿: りぼん。 | 2012年9月 4日 (火) 11時24分

りぼん。さん。

以前から気になる所もあり、実に尊敬できる知識もありましたが…

失礼ながらハッキリ言わせていただきますが、
貴方はただのインテリバカですか?
ご年配の方とのことですので、かなり遠慮させていただきましたが、福島や東北では残念ながらすでにマーク対象になりつつありますよ。
私は貴方が嫌いではないですし、名古屋という立地から率直な意見をあちこちに提示されてますから。


全く的外れな、先日の北方領土へのわたしのコメントへの返しなど…ああ、エリツィン時代から見て20年遅れの後出しですよね。


管理人さんに起こられそうですが…スマンです

『お前はバカか!!』


理系で頭も良くて、ご年配なのでしょう?

いちいちコメントに粘着するのなら、未来思考で行きコメントできませんか?

むしろ私達がワイワイやってるところに、
『その背景はコレなんだよ』という重鎮の立場だとおもわれますが…


もちろん、先日のような「間違いの指摘」は大歓迎です。

投稿: 山形 | 2012年9月 4日 (火) 12時40分

いつも拝読しております。
つまらないミスの指摘ですみませんが、
部分の間違いを、全体の間違いかのように言い立てる輩が居ないとも限りません。

名前
「東条秀樹」ではなく「東條英機」です。

時期
総力戦研究所の報告は8月であり、
この時点の肩書は東條「首」相ではなく「陸」相です
(首相になったのは直後の10月)。

それ以外の内容は、完全同意です。
応援しております。

投稿: SW83A | 2012年9月 4日 (火) 14時27分

素敵な写真ですね。
鹿島台か藤沢あたりで撮ったものでしょうか?

今年は台風が驚くほど来なかったので、
稲穂が倒れないので綺麗に見える田んぼが多いですね。

それにしても昨日は午後からすごい雨でしたね。
今週末か来週末にでも稲刈りしようと思ったのですが・・・
週末まで雨降って欲しくないなぁ・・

投稿: ぱっく | 2012年9月 4日 (火) 14時40分

SW83A さん。ありがとうございました。修正しました。山形さん、言い過ぎです。

投稿: 管理人 | 2012年9月 5日 (水) 04時30分

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