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2012年10月

原子力規制庁早くも馬脚を露す・拡散シミュレーション間違いだらけ

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つい先日出したばかりの原子力規制委員会の放射性物質拡散図が、はやくも間違いだらけであることが分かりました。実にみっともない。

規制委員会の事務機関の原力規制庁は、フランス原子力安全院(ANS)のようになることを期待されている国家機関なはずです。いくらなんでも馬脚を露すのが早すぎます。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-7217.html

        http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-7217.html       
       
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-6.html

原子力規制委員会は29日、24日に公表した各原発の事故時の放射性物質の
拡散予測結果について、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)など6原発で方位などが間違っていたと訂正した
。」(時事通信10月29日)

私は初めこのニュースを見た時に、公表した予想図とSPEEDIシミュレーションとの大きな差に規制庁が気がついたのかと思いましたが、もちろんそんなはずもなく信じられないような単純ミスです。

間違いであることを指摘されたのは以下です。(欄外「東京新聞」切り抜き参照)

①志賀原発(石川県)・・・予想地点が時計回りに22.5度ずれていた。

②敦賀原発(福井県)・・・予想地点が反時計回りに22.5度ずれていた。

③柏崎・刈羽(新潟県)・・・予想地点が時計回りに22.5度ずれていた
(下図参照 TBS朝6時ニュースより・青線が公表時。赤線が修正後・魚沼市が圏外に)

④玄海原発(福岡県)・・・予想地点が時計回りに22.5度ずれていた。距離もほとんどの地点で間違っていた。

⑤川内原発(鹿児島県)・・・予想地点が時計回りに22.5度ずれていた。距離もほとんどの地点で間違っていた。

⑥東海第2原発(茨城県)・・・予想地点が反時計回りに22.5度ずれていた。

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間違いが分ったのは、26日に北陸電力の担当者が、実際の計算を担当した(独法)原子力安全基盤機構(JNES)に間違いを指摘したからだそうで、自分ではわからなかったようです。いかに内部チェックができない官庁か分かりますね。

原子力規制庁の森本次長は「緊張感をもった取り組みができていなかった。関心が高く、自治体が防災計画の参考にする資料だ。ミスをお詫びする。」とのコメントをしました。

まぁ、私もニュースで見ましたが、非常に恥ずかしい記者会見でしたのでお気の毒なことです。発足当初の初仕事で「緊張感がなくてすいません」と謝罪するとは森本氏も思わなかった。

こんな程度の計算は規制庁内部でしていたと思ったのですが、原子力安全基盤機構に丸投げしていたのですね。このようなデータ作りや避難計画といった事務局機能を果たすために規制庁があるんでしょうに。まぁ原子力の素人集団だから仕方がないのか。

規制庁は、原子力安全・監視のための国家機関です。そのための安全監視計画を策定するシンクタンクの役割も果たさねばなりません。その自覚も、能力もないからこのような簡単なミスを連発するのです。

そういえば、森本次長の出身母体の環境省は大変に研究の丸投げが好きな省庁でした。

その森本次長も認めるように、このような自治体の避難計画を決定づける基礎の基礎のデータで、方角を22.5度ずらして取るという中坊並の凡ミスをやらかしては、今後自治体は規制庁のいう安全基準や避難計画などもうのみにしなくなることでしょう。

こんな原子力規制庁などというくだらない機関は穀潰しです。さっさとつぶしてほんとうに「内閣からの独立を保証された」新組織に作り直すべきです

この修正で圏外になったと胸をなで下ろす自治体もあるかと思いますが、先日の記事でも書きましたように、規制庁シミュレーションはそもそもあまりあてにできるシロモノではありませんので妙に安心しないで下さいね。

■関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-f9a6.html

■写真 秋の早朝の朝の湖。風がさわやかです。

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■東京新聞10月30日

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■拡散予測、6原発で誤り=要避難の最遠地点は長岡市―計算結果の方位にミス・規制庁
時事通信10月29日(月)20時32分配信

 原子力規制委員会は29日、24日に公表した各原発の事故時の放射性物質の拡散予測結果について、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)など6原発で方位などが間違っていたと訂正した。当初の公表では、柏崎刈羽原発から東南東に40.2キロ離れた新潟県魚沼市が避難が必要な最遠地点だったが、正しくは東側で、同県長岡市内だった。
 規制委の事務局機能を担う原子力規制庁の森本英香次長は「科学的な見地から防災対策に資するシミュレーションをつくるという委員会の事務局として、このようなミスをしたのは大変申し訳ない」と謝罪。関係する自治体には連絡と謝罪を終えたという。

ミスがあったのは、柏崎刈羽原発のほか、日本原電東海第2(茨城県東海村)、北陸電力志賀(石川県志賀町)、日本原電敦賀(福井県敦賀市)、九州電力玄海(佐賀県玄海町)、川内(鹿児島県薩摩川内市)の計6原発。

 いずれも、処理を担当した原子力安全基盤機構(JNES)が、各原発の風向データを入力する際、方位を表すコード番号が原発ごとに違うことに気付かずに入力。計算結果の方位が、南南西が南に、東が東北東にずれるような形で誤っていた。
 また、玄海、川内両原発では、気象データの中で欠落した部分についての処理を誤ったため、一部の地点で拡散距離が最大300メートル長くなったり、短くなったりした。

 

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原発輸出にまで復興予算を不正流用!もう言い訳は許されない

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もはや致命的とも言える復興予算の流用が発覚しました。

経済産業省が復興予算で海外インフラ輸出の調査に85億円流用し、うち5億円はベトナムへの原発輸出の調査費でした。(欄外資料1 東京新聞切り抜き参照)

経済産業省が不正流用していたのは、2010年10月の日越首脳会談で、他ならぬ「脱原発宰相」の菅直人首相が決めたベトナムのニントゥファン第2原発輸出に向けた現地調査に対してです。

このニントゥファン第2原発は2基で、電力9社と、原発メーカー2社が共同出資した「国際原子力開発」という国策会社が輸出事業を行っています。

この調査は、敦賀原発を運用している日本原子力発電に対して発注され、経産省の「インフラ・システム輸出促進調査等委託事業費」として使われました。

この予算を復興特別会計から流用した経済産業省の言い分は、「東日本大震災の復興・復旧に繋がる貿易促進」だからだそうです。また、「インフラの海外輸出をすることが被災地の関連企業に経済効果をもたらすから」だそうです。

一方、政府民主党は、復興予算不正流用について、今までこのような言い訳をしてきました。

「政府の事業仕分けで無駄な事業にメスを入れ”仕分けの女王”と呼ばれた蓮ホウ氏は、質問の際、復興予算を被災地以外でも使える「全国防災対策費」が設けられた経緯を説明。「政府は当初、復興予算は被災地に限定する方針だった。しかし自民、公明両党の要請で全国で使えるようにした」と流用の責任は自公側にあるとした。」(資料2参照 東京新聞)

つまりは蓮ホウ氏によれば、自民党が国土強靱化などと言って被災地以外の使途に押し込んだので、悪いのはみんな野党自民党だ、というわけです。

まさに居直りです。子供の言い訳です。もう脱力感すら感じます。政権党としての矜持はないのでしょうか。

たしかに自民党は国土強靱化政策を主張していますが、それは一般財源から支出するべきもので、目的税である復興財源から流用する性格でないことは明白です。

仮に自民党がそのようなものを押しつけてきたとしても、政府がきちんと「仕分け」ればいいだけの話です。そのために鳴り物入りで「行政刷新会議」を作ったのでしょう。

彼らは自分たちが事業仕分けしたはずの「不要な」予算が、「ゾンビのように」(東京新聞)よみがえってきていることに対して、国民にしっかりとした説明をする必要があります。

なにかあるとすぐに自民党が悪いという言い方を好んで民主党政権はしますが、政権をとって3年有余、もういいかげんに野党体質から抜け出したらいかがでしょうか。と言っても、先はあまりないようですが。

しかし、今回は他ならぬ事業仕分けの責任者だった枝野氏率いる経済産業省が国外の、しかも原発輸出絡みの不正流用ですから、もう言い訳のしようがいのではないかと思いますが。

「全国防災」という文言が、この被災地以外の流用の「法的根拠」になっているようですが、原発輸出の国外調査まで「全国防災」になるというのですから開いた口が塞がりません。

何度か書いてきていますが、被災地では瓦礫が山積みになっていたり、未だ所有権がわからなくなっていたりしているために復興計画が滞っている自治体がたくさんあります。

このような復興の遅れために基礎的復旧計画が整わず、住民の合意形成ができないために既に次年度に繰り越しになる復興予算が39%の5兆7千万円、「不要額」として国庫に返納された予算が1兆1132億円にものぼることが会計検査院よって指摘されました。

これでわかるように復興庁とやらは少しも機能していません。出来たのも阪神淡路大震災より1年遅れ、なにをしているのかさっぱり分からない名ばかりの幽霊官庁です。

「全921事業ごとの執行状況を分析した結果、予算額に対する支出率が8割以上の事業が347事業あった一方、337事業が2割未満にとどまり、ばらつきがみられた。 12年度への繰越額は38.3%にあたる5兆7203億円。繰り越した理由では、被災地の住民同士の合意形成の遅れなど事業計画を策定するうえで時間を要したケースが77%と大半を占めた。予算設計時よりも実績が下回るなどして国庫に返納された「不用額」は7.4%の1兆1132億円だった。」
(欄外資料3 日
経新聞参照)

被災地の仮説住宅では、凍結防止用の工事すら予算配分がないために待たされており、老人がひとりまたひとりと亡くなっていきます。故郷に帰れずに亡くなる高齢者を尻目に、政府と官僚は彼らの手に渡るべき国民の血税をシロアリのように流用し続けています。

避難区域の人々も大勢いる被災地への復興資金を、こともあろうに原発輸出に横流しするとは!もはや人のやることではありません。彼らは芯から腐っています。

■関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-016b.html              http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-81a0.html  

■写真 湖の船着場跡。強烈な朝日の中で。

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■資料1 東京新聞10月29日Photo_4

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■資料2 東京新聞
【核心】「復興予算参院委審議 被災地不在 責任も転嫁」2012/10/19(東京新聞)

<書き起こし開始→

東日本大震災の復興予算が被災地とは関係ないところに流用されている実態が日々明らかになる中、予算をチェックするのが仕事の国会が、やっと動いた。十八日、参院は決算委員会を開き、この問題を審議。しかし、政府側の答弁は建前論を繰り返すのみ。民主、自民両党は責任の押し付け合いをするなど、被災地無視と言われかねない場面が続いた。(城島建治・岩崎健太朗・中根政人記者)

◆建て前 ~流用に反論「必要な事業」

「被災地に必要な予算が回っていない。誰のための予算か。復興増税を甘んじて受けた国民の理解を得られない」。みどりの風の谷岡郁子氏が切り込んだ。谷岡氏がやり玉に挙げたのは、被災地向けに部品を供給する企業などに出す「国内立地推進事業費補助金」だ。谷岡氏によると、政府が採択した五百十件の事業のうち、補助対象の工場が被災三県にあるのは、わずか三十一件。総事業費二千九百五十億円のうち、被災三県に工場のある企業には二百三十二億円しか支出されておらず「被災地優先になっていない」と批判した。

谷岡氏は「被災地に住む人が他県で過ごす家族に会うために使う高速道路料金の無料化支援は打ち切り、(沖縄など)全国の国道整備に復興予算を使うのはおかしい」と訴えた。

一方、公明党の加藤修一氏は「民主党は各省から上がってきた事業を、復興事業としてまとめているだけ」と指摘。民主党は野党の時、自公政権の予算編成を「各省が出してきたものをホチキスで留めているだけ」と批判してきたが、復興予算は「まさにそういう形になっている」と痛烈に皮肉った。

枝野幸男経済産業相は国内立地補助金について「被災地以外の企業を支えることで、被災地の産業の復興に資する」と説明。羽田雄一郎国土交通相は「被災地も重要だが、未来の子どもたちのための投資も必要」と理解を求めた。

この他にも質問者からは、必要な予算が被災地で使われていないとの指摘が続いたが、政府側は「復興予算が使われている事業は必要」との建て前論に終始。答弁は被災者たちには冷たく響いたことだろう。

◆ゾンビ ~「自公が要請」「執行は民主」

民主、自民両党は復興予算の流用の責任を押し付け合った。
かつて、政府の事業仕分けで無駄な事業にメスを入れ”仕分けの女王”と呼ばれた蓮ホウ氏は、質問の際、復興予算を被災地以外でも使える「全国防災対策費」が設けられた経緯を説明。「政府は当初、復興予算は被災地に限定する方針だった。しかし自民、公明両党の要請で全国で使えるようにした」と流用の責任は自公側にあるとした。

これに対し、自民党の森雅子氏は真っ向から反論。「民主党政権が事業仕分けで無駄として削減した予算が、次々と復興予算としてゾンビのように復活している。執行の責任は民主党にある。自公の責任にするなら、政権の座を返上すべきだ」とやり返した。

岡田克也副総理兼行政刷新相は来年度予算について、行政刷新会議で不適切な使用がないか調査する意向を示した。しかし、森氏は「政府は国民からまったく信用されていない。国会できちんとチェックすべきだ。民主党は他の委員会でも審議に応じるべきだ」として、国会審議に消極的だった民主党の姿勢をなじった。

■資料3 復興予算消化54%、事業でばらつき 検査院指摘
日本経済新聞2012/10/25 
 

会計検査院は25日、東日本大震災で政府が2011年度に計上した復興経費14兆9243億円のうち、支出されたのは54.2%の8兆906億円とする集計をまとめ、参議院に報告した。 

全921事業ごとの執行状況を分析した結果、予算額に対する支出率が8割以上の事業が347事業あった一方、337事業が2割未満にとどまり、ばらつきがみられた。 12年度への繰越額は38.3%にあたる5兆7203億円。繰り越した理由では、被災地の住民同士の合意形成の遅れなど事業計画を策定するうえで時間を要したケースが77%と大半を占めた。予算設計時よりも実績が下回るなどして国庫に返納された「不用額」は7.4%の1兆1132億円だった。 

 予算額1000億円以上の大型事業のうち、支出率が10%未満だったのは7事業。海岸や港湾の復旧事業は2143億円を計上したが、工事が必要な被災地域の特定が遅れて11年度には全く使われず、1381億円を繰り越した。農地や農業用施設の復旧費用2061億円も、農地所有者との調整に手間取るなどして支出率は2.6%と低かった。 

 全く使われないまま全額を不用額とした事業も5件あり、被災地の新卒者の就職支援のため集団面接会場を借り上げる厚生労働省の事業(972万円)は被災地で賃貸物件が逼迫したため断念。農協の倉庫などの復旧事業(14億円)は補助対象が原状回復費用にとどまり、設備を更新して再建を図りたい被災者とニーズにズレが生じて使われなかったという。

 復興経費を巡っては、復興庁が6月に公表した集計で、11年度の一般会計の執行率を60.6%とした。検査院は今回、特別会計も含めて実際にどれだけ支出されたかを調べた。事業内容について評価しておらず、検査院は「各事業が復興基本方針や復興計画に沿っているかどうか、引き続き検証する」としている。

 

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原子力規制委員会はきめの細かい予測図を作れ!

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10月24日、原子力規制委員会が福島第1原発事故レベルの過酷事故が起きた場合にどのような放射性物質の拡散状況になるのかのシミュレーション・マップを公表しました。 

まずは初仕事というわけですし、言いたいことは山ほどありますが、一歩前進と評価します。 

というのは、今までこのようなものは「事故ゼロ」幻想のためにまったく作成されておらず、地元住民の避難訓練はおろか、避難計画も安定ヨウ素剤の配布もなかったからです。犯罪的なまでの無為無策ぶりでした。 

さて、今回の規制委員会のシミュレーション・マップはこのような条件を設定して作られています。
※「毎日新聞10月24日欄外資料1参照
ここには全国の原発のシミュレーション・マップが掲載されています。http://mainichi.jp/graph/2012/10/24/20121024mog00m040020000c/001.html
 

①福島第1原発1~3号機と同量の放射性物質が放出された場合
②すべての原子炉で炉心溶融が起きた場合−−の2種類を試算
③気象条件は一部原発を除き、昨年1年分のデータを使用
④各原発の16方位で、国際原子力機関(IAEA)が定めている避難の判断基準(事故後1週間の内部・外部被ばくの積算線量が計100ミリシーベルト)に達する最も遠い地点を地図に表した。
⑤極端な気象条件を排除するため、上位3%のデータは除外した
 

④のIAEA1週間の積算線量100msVについては文句を言いたい人も沢山いるでしょうが、ここではコメントを控えます。

ます、規制委員会は②の「すべての原子炉で炉心融解が起きるかどうかは、議論が分かれる」としていますが、二種類の試算を出したのは賢明でした。

というのは、福島1原発事故では、1号機から4号機まで隣り合わせの原子炉で事故が連鎖したからで、もし1~4号機の隣に5、6号機があればどのようなことになったのか想像しただけでゾっとします。 

それはわが国ではひとつの原発において、複数の原子炉があることが多く福島第1原発にしても6基ある原子炉が2基ごとにコントロールルームが設けられていました。 

このコントロールルームでは、主任以下8~10名で2基を制御しているわけで、福島事故のように事故が連鎖して長期化するにつれて作業員の重荷が大きくなりました。

結果、事故報告書を読むと、要求される対応力、対応速度やその精度が日を追って鈍化しました。あの日本を救った「鉄の男」・吉田昌郎所長ですら判断ミスをしています。 

わずかの判断ミスが壊滅的破壊につながる原子力事故においては、このような複数プラントの同時事故対策はきわめて重要です。 

ですから、このシミュレーション・マップで世界最大級の柏崎・刈羽原発(7基820万キロワット)で拡散面積がもっとも大きく見積もられたのは当然で、事故を起こした福島第1原発1号機~4号機の3倍近くの出力があります。 (資料3参照)

危機管理においては、「最大限の事故が起こりうる」という前提に立たねばなりません。これが鉄則です。柏崎刈羽原発のように7基あれば、7基すべてが連鎖的に水素爆発を起こしたとして前提を立てねばなりません。 

私は規制委員会が最大限危機の立場にたったことは、素直に評価したいと思います。規制委員会が、従来あった半径30キロ圏のUPZ(緊急防護措置区域)を超えて放射性物質の拡散が伸びるのは、あたりまえすぎるほどあたりまえであり、そのことで私たちは取り乱すべきではありません。 

むしろ、自分の住む地域がUPZをはずれているから安全だろうと思っていて、現実に事故が起きて放射能雲が頭上に現れるのを見るよりはるかにましではありませんか。

私は去年その経験をしたひとりとしてそう思います。 それを見た時は遅いのです。(現実には見えませんが)。

さて次に問題点も指摘しておきます。最大の問題点は実際に放射性物質の拡散パターンがこのシミュレーション・マップのようにコンパスで丸を描きいたようになるか、という点です。 

福島事故の経験から見れば、絶対になりません。福島事故の放射性物質放出時(3月12日、15日、21日)の場合、風向きと地形により複雑な拡散パターンを見せました。(欄外資料2参照) 

浜岡原発を例にとれば、規制委員会が出したシミュレーション・マップのようにはならないはずです。(下図左 TBS「ひるおび」より)) 

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上図を一目すれば、左の規制委員会シミュレーション・マップと右のSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測)のシミュレーション・マップとは大きく異なるのがわかります。

規制委員会の公表した予測図は米国NRC(原子力規制委員会)のコンピュータを使って作成したために、現実の山や河川などはないものとして単純に描かれています。 

そのためか、ここでは原発立地地点のみの風向頻度を年間平均で出して決定しています。(下図参照) 

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ところが現実の福島事故ではどうだったでしょうか?

原発から放出された放射性物質は、初期のヨウ素、セシウムが揮発性のために風に乗って拡散し、山で阻まれてその麓に降下したり、川面に落ちて流されていき湖で溜まったり、森林の樹冠に落ちてから雨で滴り落ちて森林を汚染したり、あるいは雨で落下して遠く離れた街にホットスポットを作ったりする複雑な動きをしました。

3月12日の福島事故第1回の水素爆発によって排出された放射性物質は、発生地点周辺をなめ尽くした後、東側方向の風に乗り海に出て、その後に北上して一関方向に達しています。

私たち関東まで拡散したのは第4回目の3月21日の拡散で、茨城を経て私の住む霞ヶ浦周辺を通過し、松戸・柏・東葛周辺で降雨に合ってホットスポットを作りながら東京湾に抜けています。(資料3 拡散ルート参照)
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/post-d5ba.html

このように発生地点の風向き出現確率だけで拡散方向を決するのは、福島第1原発事故の現実に学ばない非現実的な姿勢です。

地形、天候の考慮がまったくないなら、なぜ福島事故の時の同心円的避難地域設定が無意味であったのかの反省をしていないことになります。 

どうして規制委員会がこのような仕事をするのか理解に苦しみます。

日本には世界に誇るスーパーコンピュータ「京」があるでしょう。なぜあれを使わないのでしょうか? 「京」を使って各原発の月毎の放射性物質シミュレーション・マップを作るべきです。

そうすれば下図の浜岡原発のSPEEDIマップのように、40キロ圏をはるかに超えて飛散が拡大する地域が点在するのが分かるはずです。

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この浜岡原発におけるSPEEDIの予測図を見ると、30~40キロはおろか80キロを超えて拡散する場合があり得ることを示しています。この「最大限の危険」を基に避難計画を立てなければ意味がありません。 

この規制委員会の予測図では、この「最大限の危険」地域の人や自治体に誤って過剰な安心感を与えてしまう可能性があります。

人というのはおかしなもので、UPZスレスレでも、「あ、オレの所には放射能は来ないのか」と思ってしまうものなのです。規制委員会はそのあたりの「被曝地」心理まで踏み込んで考えたことがあるのでしょうか。

規制委員会自身が「精度に限界がある」と認めながら、田中俊一委員長が「再稼働の条件ではないが、(避難計画を作ってもらわないと)再稼働はなかなか難しくなる」と言うとなると、この「不正確な」マップを基にして避難計画を立てろと言うに等しいことになります。 

これは矛盾ではありませんか。より肌理の細かいものを作ってから、こういうシミュレーションがあるので、ここの地域にはこういう避難計画を立てなさいという丁寧さが規制委員会には必要なはずです。 

いいかげんな30~40キロの円を描いて、はいこの地域の人は避難計画を作りなさい、というのではあまりにずさんに過ぎます。シミュレーションマップは避難計画の大本になるものなのです。

ただ作ればいいのではなく、実際に原子力事故が起きたらいかなる被害を与えるのか予測し、それに対しての避難計画を策定する基礎となるものです。

今回公表された予測図では、従来の30キロ圏UPZ(緊急時避難準備区域)を超えた地域が柏崎・刈羽や大飯などで全国で4カ所出ました。(資料3参照)

規制委員会はこれらの自治体に来年3月までに新たな避難計画を作ることを求めています。

つまりは、このシミュレーション・マップこそが避難計画の基礎中の基礎なのです。規制委員会は可能な限り早くSPEEDIマップを提出し、より現実的な避難計画を立てるべきです 

避難計画とは周辺住民に不確実な「希望」は与えず、原発と共存することのリスクを共有することです。 

「事故ゼロ」幻想は金と引き換えに安易な安心感を与えたにすぎませんでした。「福島以後」の原子力政策はそこから出直すべきです。

 

写真 月光の下の湖の漁港。ではなくて強烈な朝日です。

私事ですが、眼の網膜が出血しているようで、眼科医にかかっています。頑張って更新を続けるつもりですか、今週から来週にかけては休載日が出るかもしれません。皆さまも季節き変わり目です。ご自愛ください。

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■資料1 全国16原発の放射性物質拡散予測地図:原子力規制委が公表
毎日新聞10月24日

原子力規制委員会は24日、東京電力福島第1原発事故のような過酷事故が発生した場合、全国の16原発について、どの程度の距離まで避難範囲が広がるかを試算した放射性物質の拡散予測地図を公表した。 

 福島第1原発を除く16原発で、(1)福島第1原発1~3号機と同量の放射性物質が放出された場合(2)すべての原子炉で炉心溶融が起きた場合−−の2種類を試算。気象条件は一部原発を除き、昨年1年分のデータを使用。各原発の16方位で、国際原子力機関(IAEA)が定めている避難の判断基準(事故後1週間の内部・外部被ばくの積算線量が計100ミリシーベルト)に達する最も遠い地点を地図に表した。極端な気象条件を排除するため、上位3%のデータは除外した。 

 規制委事務局の原子力規制庁は「架空の前提条件を基にした試算であり、精度や信頼性には限界がある」としている。地図は、地元自治体が来年3月までにまとめる地域防災計画の資料にするため、規制庁と独立行政法人・原子力安全基盤機構が作製した。 

 ◇地形考慮せず試算 

 放射性物質が最も多く出た東京電力福島第1原発2号機と同様、約10時間にわたって放出が続いたと設定。風向、風速、降雨量などについて、1年分の気象データ8760パターン(365日×24時間)を地図上に積み重ねた(一部原発を除き、気象データは昨年1年分を使用)。ただし、極端な気象を除外するため、拡散分布地点の遠い上位3%に入るデータは除いた。計算システムの制約上、山間部や河川、湖沼などの地形を考慮しておらず、それに伴う風向などのデータも加味されていない欠点がある。放出源は地表面に設定しているため、実際の飛散状況とは異なるとみられる。試算では、米国の原子力規制委員会(NRC)が使用しているコンピューターシステムを使用した。 

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■資料3 福島第1原発事故拡散ルート

●第1ルート/3月12日夜から・・・・・南相馬⇒太平洋⇒太平洋を北上⇒西旋回して女川から内陸に侵入⇒一関、平泉に到達

●第2ルート/3月15日午前中から・・・・太平洋を南下⇒いわきをかすめて、水戸から内陸へ侵入⇒3方向に分裂
・2-1ルート・・・宇都宮方向ルート
・2-2ルート・・・群馬方向ルート
・2-3ルート・・・首都圏に南下ルート

●第3ルート/3月15日夕方から・・・・北西に進み飯館⇒西旋回して内陸部へ⇒福島、二本松、郡山、那須⇒日光

●第4ルート/3月21日午前から・・・太平洋を南下⇒鉾田から内陸部へ⇒柏、松戸⇒東葛地区⇒東京湾⇒太平洋を南下⇒足柄⇒一部が静岡 

■資料4 産経新聞10月24日 より

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原発事故緊急即応チームを作れ!

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フランスをモデルとして国による原子力安全監視はどのようにあるべきなのかを考えてきました。

このようなことを書いていると、必ずある種の誤解を受けます。それは私が原発が存続することを前提にして、つまり原発肯定の立場で考えているのだろうというものです。

正直にお答えすれば、半分イエスで半分ノーです。私はそのような二分法ではなく、あえて言えばリアリズムの立ち場に立ちます。

心情的にはいうまでもなく「被曝」地の私は心の底から原子力を憎んでいます。原子力と人類は共存できないと考えています。その意味では脱原発です。それもかなり強固なそれです。

しかし同時に、私はこの数年で地上から消え失せるわけでもないことも承知しています。福島事故を経験したわが国では消滅のテンポは早まるでしょうが、世界の国では新興国を中心として大増設の時代に突入しようとしているからです。

そしてそれらの国の一部が核保有国であることは、核兵器と原発問題が実は同じであることを教えています。彼らは核兵器を手放さないように、原発も手放すことはありえないでしょう。

わが国おいては、建設中の2基を除いて新規の増設はありえず、耐久限界の30年~40年に達したものから順次廃炉になるわけですから、わが国が脱原発路線をとろうととるまいと、2030年代にはほとんどの原発が姿を消すはずです。

仮に脱原発路線を選択したとしても、「南の島」さんがおっしゃるように廃炉と高濃度放射性廃棄物の最終処分場問題が解決しないかぎり(その見込みはないと思われますが)、原発内の使用済み燃料プールは温存されたままになることになります。

したがって、かなり長期に渡って原子力の安全監視活動の手を緩めることはできないのです。一度目覚めた原子力は簡単に眠りにつくことはありません。ここに原子力の本質的難しさがあります

さて本題に入ります。昨年3月の福島事故直後、フランス原子力安全院(ASN※)は全土の原発の緊急監査を行い、900頁に及ぶ報告書にiまとめ、それに基づいて9つの柱からなる原発補強対策をシフランス電力会社(EDF)に指示しました。
※関連記事
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-5.html

そのひとつの柱に、原子力事故に即応する緊急展開部隊があります。

ANSは2012年までにフランス電力会社に対して(EDF)は「核緊急展開部隊」(FARN)を設置し2014年には展開完了することを命じています。

ここで聞き慣れない言葉が出ました。「核緊急展開部隊」です。

実はこのような核事故に対応する専門チームを持っている国は、核保有国の一部に限られています。非核保有国で原発専門の核事故緊急展開部隊を持つ国は存在しません。

構想内容は不明ですが、フランスASNが再来年の2014年までと期間を切ってその建設を開始した理由はよく理解できます。

福島事故の折りに、私たちは政府が自衛隊ヘリを使って水を投下したり、消防の高圧放水で冷却している光景を目撃しました。

残念ながらそれらの作業は高線量下の英雄的なまでの危険を伴いながら、あまり有効ではなかったと後に判定されました。

国民はその時に、原発の危機対応が一義的には私企業である東電に任されてしまっており、国には原子力事故に対応する危機管理部署がないことを知りました。

原子力安全・保安院があるといっても、あれは福島事故で正体がバレてしまいましたが、経産省の役人がローテーションで詰めているだけの素人集団にすぎません。

スポークスマンをしていた西山秀彦報道官などは、前職が貿易関係で、ただ英語が達者が取り柄というだけでスポークスマンをしていたというだけの話です。そんな人が国民にトンチンカンな情報をもっともらしく伝えていたのですからぞっとします。

それははもかく、原子力事故に即応できるセクションが政府部内にはない以上、作らねばなりません。ないままに再び福島事故と同様の原発事故が起きれば、悲劇が再生されることになります。

今回の福島事故でも明らかなように、原発事故は数時間以内の初動にすべてがかかっています。全電源喪失から冷却系喪失までは数時間の出来事です

そしていったん冷却系が失われれば、炉心融解までは坂をころげ落ちるようなものです。

冷却系に電気に頼らない物理的なものも併設したり、小型発電機を大量に常備するなどのするなどの改善はもちろん必要ですが、全電源喪失の段階で国が強力な支援をしなければなりません

これを私企業の電力会社に担わせること自体に問題がありすぎます。ここに原発の国有化の理由のひとつがあります。

また原発を核テロから守るためにも今のような民間警備会社ではなくSAT警察部隊の常駐が必要ですし、すべての原発とは言わないもののせめて電力会社の管区ごとにひとつの原子力事故緊急即応チームが要ります。、

そのモデルとなるのが、実働こそしなかったものの福島事故でも日本にも派遣された米海兵隊放射能等対処専門部隊(CBIRF・Chemical Biological Incident Response Force・シーバーフ)です。(欄外資料参照)

シーバーフは地下鉄サリン事件を契機にして誕生し、「隊員は特別訓練を受けたことがあり、化学物質の識別、放射線レベルの検査、放射線汚染を受けた人たちの洗浄を行う」(読売新聞 欄外参照)能力があるとされています。

また、原子力空母などの海軍艦艇にも派遣されており、去年の福島事故では原子炉そのものの冷却作業には直接参加しませんでしたが、下の資料によれば「技術的支援も可能」とありますので、本来はその能力も付与されているのではないかと思われます。

汚染地域の検知や偵察観測、除染作業や死傷者の搬出や救護の他、搬路確保のための障害物除去や建設、物資輸送などの広報支援なども担当する。また技術的な救援活動も可能としており、各任務に対して以下の小隊が組織されている

・医療支援班
・除染班
・技術救助班
・捜索搬出班
・爆発物処理班
・検知識別班
(以上Wikipediaより)http://ja.wikipedia.org/wiki/CBIRF

この核事故緊急即応チームの動きは、ちょうど口蹄疫の英国DEFLA(農務省)初動制圧チームのようなものを想像していただければいいのではないでしょうか。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/post-8e54.html
     

命令が下れば、即時に大型ヘリやトラックなどで器材を持って現場ないしはオフサイトセンターまで緊急展開します。

そして、現場対策本部と協力しながら、無人観測機や観測ロボットなどを使って状況観測をし、必要があれば冷却作業を行います。

また、シーバーフの任務と同じ除染、救助、建設、物資輸送、搬入路確保、避難広報、医療、除染などの後方支援も行うことになるでしょう。

下のシーパーフの組織図(欄外資料参照)をみると、「初動対応部隊」がふたつに分かれています。これは、スクランブル対応可能な初動チームと、訓練や休養をしているチームに分かれるからだと思われます。

まず、スクランブルチームが出動し、やや遅れて招集のかかった本隊が合流するという段取りではないでしょうか。ちなみにシーバーフは450人規模です。

このように独自に作るとなると相当な費用と、専門スタッフの養成まで長期の期間が必要になりますので、今ある陸上自衛隊か、警視庁の化学防護隊を拡大して作ることもできるかもしれません。ただ、部隊の完結性(※)からみれば自衛隊のほうがふさわしいかもしれません。

いずれにせよ、このような緊急時を想定した即応チームの建設が一顧だにされないわが国の状況がうすら寒くなります。

仏原子力安全院(Autorité de sûreté nucléaire)には原子力安全機関、原子力安全局という訳もあります。

部隊の完結性・軍隊はそれ自体の内部に、施設建設、補給、医療など自立して活動するためのすべての機能を持っています。ですから一定期間補給なしでも活動することが可能です。それに対して警察、消防はそのようなすべての分野を保有していません。

■写真 真夏の霞ヶ浦。画面右に突き出しているのは内水面試験場の突堤です。もっとも昨日今日はいきなり関東は晩秋です。朝晩はしっかり寒い(笑)。

■明日明後日は定休日です。月曜のお越しをお待ちしています。

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■不測の事態」にも対応、米の放射能専門部隊
読売新聞2011年4月2日

東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、米政府が日本に派遣した「米海兵隊放射能等対処専門部隊」(CBIRF、シーバーフ)の初動対応部隊第1陣が2日午前、来日した。

放射能被害管理に精通した同部隊は、自衛隊による住民の除染や医療活動を情報提供などの形で支援すると同時に、大規模な放射能漏れなど原発の「不測の事態」に備える。

第1陣の10人余りは、米メリーランド州から米軍輸送機で東京・米空軍横田基地に到着した。第2陣は3日、第3陣は4日に来日する見込みで、派遣規模は総勢155人に上る予定だ。<br /> 来日しているのは、命令から24~48時間以内に展開して緊急事態に対処する、

CBIRFの二つの初動対応部隊の一つだ。極めて危険なレベルの放射能の「検知識別」、汚染地域からの被災者の「捜索搬出」、被曝者らの「除染」など6班を持つ。横田基地の「統合支援部隊(JSF)」の指揮下で関東地方の在日米軍基地を拠点に活動する。

福島第1原発の放射能漏れの状況は悪化の一途を辿っている。香港「星島日報」によると、米国の官員は、福島の原発危機の処理に協力するため、米軍が海兵隊の管轄下にある放射能被害管理の専門部隊を日本に派遣することを明らかにした。中国網日本語版(チャイナネット)が報じた。

今回派遣されるのは約155人の海兵隊隊員からなる化学・生物兵器事態対応部隊(CBIRF)で、3月31日に米国を発ち、4月1日に日本に到着する予定。隊員は特別訓練を受けたことがあり、化学物質の識別、放射線レベルの検査、放射線汚染を受けた人たちの洗浄を行うが、福島原発の原子炉の冷却作業には直接参加しないという。

■米軍、日本での原発危機対応で貴重な教訓得る
ウォールストリートジャーナル2011年 6月 21日

在日米軍海兵隊基地キャンプ・バトラー】<br />日本は、米国が近代戦を研究する上で思いも寄らない実験場となった。今年3月11日に発生した東日本大震災に伴う原発事故により、テロ・グループがダーティボム(核汚染を引き起こす爆弾)を爆発させた場合に直面する可能性があるような状況が生まれたためだ。
(略)

北日本の地上任務に就く海兵隊員の第一団には、軽量の放射線防護服・フード、安定ヨウ素剤、携帯用放射線検出器が支給された。海兵隊によると、救援物資輸送の終了ごとに乗組員と航空機は放射線量の検査を受けた。また特別チームは毎日、日本周辺の放射線量を計測し、軍司令官や関係者に最新の情報を提供していた。

第3海兵遠征軍の核事故即応チームが準備した説明スライドによると、航空機37機300以上の車両や主要装備類のほか、数百人の隊員の放射線量検査が実施された。
(略)

米軍による対応がすべて成功したわけではない。145人の隊員で構成される海兵隊の核・生物・化学兵器対応専門部隊(CBIRF)は4月上旬に日本に到着し、初の海外派遣となった。予防措置として送られた同部隊は日本側と訓練はしたが、実際に展開することはなく、駐屯基地のメリーランド州に帰った。

海兵隊の報告によると、同部隊の日本派遣で「学んだ教訓」は、政治的な意味はあったものの、実際的な効果はほとんどなかったとしている。 日本での震災救援任務で得られた他の教訓は、機密情報と監視情報を共有できた点だいう。第3海兵遠征軍司令官のケネス・グラック中将は、無人機と偵察機が収集した重要な映像などを共有する<br />決定は今回の救援活動で重要な役割を果たした、と指摘した。

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原子力危機管理 言霊信仰の日本・リアリズムのフランス 日本にも原子力危機管理機関を作れ!

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どうして日本は世界屈指の優秀な原子力技術を持ちながら、事故予防対策がどうしてかくも不備だったのか、フランスとの比較の中でたびたびそう感じました。

その象徴的な事例は、安定ヨウ素剤を原発周辺住民に備蓄がありながら配布しなかったこと、そして避難計画がまったく存在していていなかったことに象徴されています。

安定ヨウ素剤の配布は、チェルノブイリの教訓から世界で一般化している被曝対策です。事故初期に大量に排出される放射性ヨウ素131が人体の甲状腺に溜まりやすいために(※)、あらかじめヨウ素剤を飲んでおいて新たな侵入を防ぐという方法です。※http://legacy.kek.jp/quake/radmonitor/GeMonitor2.html

チェルノブイリではこれを当局が大量に配布して、最悪の事態を免れることが出来ました。これを知らない原子力関係者は世界でいないはずです。というか、いてはならないはずです。

ところがわが国では安定ヨウ素剤は一粒も避難民に配布されませんでした。なぜでしょうか。それはほとんどの場合、かんじん地元自治体になく、県の倉庫に備蓄されていたために忘れ去られた存在になっていたからです。

つまり、ヨウ素剤は準備していたが、いつどのような状況で使うのかという手順書も事前の打ち合わせも、まして訓練などまったくなかったのです。このようなことを死蔵といいます。いや、あるというだけを官僚の言い訳にしているだけ始末が悪い。

まして広域の避難訓練や、避難経路などは初めから考えられてはいませんでした。だからSPEEDI情報の隠匿もあって、いったん避難した地域のほうが線量が高いというありえないことが起きてしまったのです。

見直し始まったのは、福島事故1年半後のことです。このようなことを行政の恥ずべき不作為と呼びます。

ところで、実はフランスもちょくちょく事故を起こしています。おおよそはレベル1ですが、年間100件近く起きているそうです。

80年代、フランスはこの多発する事故を受けて原子力安全院(ASN・当時はその前身)傘下に危機技術センター(CTC)を創設しました。

ここは周辺住民や国民に事故対処の方法を教える住民防御システムとマニュアルを作る機関です。マニュアルは毎年改定されています。安定ヨウ素剤の配布もこの一環です。

また、避難訓練に関しても自治体-警察-軍まで含んだ一体化されたものが定期的に行われ、住民の参加も多いようです。

ひるがえってわが国において、福島事故はいうに及ばず、それ以前の大事故だった1999年9月30日の茨城県東海村JOCの臨界事故においてはどうだったでしょうか。

このJOC事故は死亡者2名、重症者1名を出す大事故であり、工場が住宅地の中にあったにもかかわらず安定ヨウ素剤の配布は行われませんでした。

後に来日したフランスの原子力関係者が、わが国の関係者にこのことを問うと、このように答えたそうです。

「とんでもない。日本で(事故の可能性を少しでも示すような)そんなことをしたら原発は一基もできません。事故ゼロと言って周辺住民を説得し、納得してもらっているのだから」。(ソース・産経新聞山口昌子パリ支局局長)

このフランス人原子力技術者がのけぞったのは言うまでもありません。これで分るのは、わが国には原子力の危機管理そのものが完全に意識もろともなかったという衝撃的事実です。たぶん「キキカンリ」と書かれたペーパーが後生大事に経済産業省の金庫に眠っているだけなのでしょう。

日本原子力技術協会の前最高顧問石川迪夫氏がこんな話を述べています。

1992年、IAEA(国際原子力機関)で原子力事故に備えて指針を改定し避難経路を策定すべきという提案があった時、それを持ち帰った石川氏に対して日本の原子力関係者の反応はこうでした。

そんな弱気でどうする。原子力屋なら絶対に放射能が出ない原子炉を作れ。」

とりようによっては強い安全への決意と取れないではありませんが、石川氏自身も認めるようにここには「安全」という言葉の影に隠れて「万が一に備える」という視点がすっぽりと抜け落ちています。(ソース「産経新聞10月8日)

これが日本の原子力村の「空気」でした。これは「事故を想定するだけでも事故になる」というある種の言霊(ことだま)信仰につながっていきます。庶民ならともかく、原子力を預かる科学者がこれでは困ります。

コメントで山形さんも仰せのように、確かに反対派に対して弱みを見せられない、避難訓練をすれば、それみたことかと言われる、というのも事実です。

実際、やればやったでそのような反対運動が起きる可能性を考えねばならないのが昨今の風潮です。

しかし、反対運動があろうとなかろうとなかろうと、いったん事故があれば地元自治体がマニュアルに従って一定圏内の住民には安定ヨウ素剤を配布し、所定の場所に避難させるするような仕組みが要ります。

それを想定した避難訓練を繰り返す中から、現実に福島事故レベルが起きたらどうするのかを実地に各方面に叩き込んでおかねばなりません。現実にやってみれば、この避難ルートは使えないとか、老人や障害者はどうするのかなど問題は山積しているはずです。

このようなしんどいことを素通りして、「原発事故はありえない」はないでしょう。それは逆です。原子力事故が起きたらどうするか綿密に積み重ねて初めてその先に「安全」があるのです。

このような避難計画には大変な金がかかるでしょう。そのための電源立地対策交付金なはずです。原子力の危険を与えた地域に与えるのは、無駄な大型体育館ではなく、ほんとうの意味の「安全」なはずです

事故が起きるなどという縁起でもないことを言うから悪しきことが起きる、では「福島以後」は通用しません。必要なのは原子力災害に対するリアリズムです。

そして福島事故のような原子力災害に対しては、避難を指示する住民防護のためのフランスの危機技術センターのような国家機関の創設が必要でしょう。

これは原子力規制庁を環境省から独立させた上で、その傘下に独立した危機管理機関として作る必要があります。

これと合わせて事故対処の緊急対応部隊も必要ですが、それはまた明日ということに。

■写真 湖畔の豊穣の田に立つ水神様の鳥居。湖周辺でも大分震災で倒れましたが、復旧が始まっています。

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福島事故直後の仏原子力安全院と日本政府の悲喜劇

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福島第1原発事故直後の3月30日、フランス国民会議下院(国会)において原子力安全院(ASN※)のラコスト院長は日本人の震災に対しての驚異的団結と忍耐を称賛しつつ、こう述べています。彼の怒りを行間から読み取って下さい。 

われわれはオブザーバーである。決めるのは日本政府当局だ。われわれには日本政府や東電に対して情報提供は強制できない。」 

ラコスト院長のこの「行間」を市民語に超訳してみましょう。たぶんこうなります。事実を下敷きにしてありますが、ラコスト翁はこんなに下品ではありません、念のため。 

「われわれはしょせん他人である。しかし他人のわれわれから見ると、日本政府はどう見てもイッパイイッパイに見える。そのくせわれわれが助言したり、ヨウ素剤などの救援物資を送ったりしようかと提案してもいらないと言う。その理由がなんと日本の係官はフランス語ができないからだと言われた。(※ホント)

おまけにわれわれがいちばん欲しい事故の推移についてはさっぱりだ。日本政府はなにも教えてくれない。
クローデル駐日フランス大使からは、われわれに毎日のように在日公民を脱出させたほうがいいかと聞いてくるが、判断材料がない。思わず、そんなことは米国大使館に聞けと怒鳴りたくなった。
腹が立つことには、日本政府は米国の専門家しか招待しなかったからだ。だから米国だけが福島の真実を知っているわけだ。
犬に食われろと怒鳴りたいところが、われわれは紳士なのでしないだけだ。」
 

さて、フランス原子力安全院(ASN)は、福島事故直後から一貫して3つのことを言っています。
第1に「日本の原子力事故の今後の推移を最優先で監視し」、第2に「原子力事故の原因を総括し」、第3に「東京電力への情報の直接情報の開示を要求」しました。
 

おそらくANSにとって、国の原子力安全機関が事故に際してやるべきことはふたつ。すなわち、事故対処を第一義としながら、同時に淡々と事故の現況について一切の政治的脚色なしに透明性を確保していくことが大原則としてあったはずです。 

しかし、この福島事故においてはフィヨン仏首相が、「このような状況の中では、ガラス貼りの情報を得るためにIAEAが相互扶助的役割を果たすことを願う」という表現で、もはや情報開示のために国際機関が介入して欲しい、という要請すらしているほどです。

事故情報を欲していたのは、米国NRC(米国原子力規制委員会)も同様でした。ただ米国NRCとフランスASNが大きく異なったのは、米国は独自に福島第1原発上空にグローバルホーク無人偵察機機を飛ばすことが可能だったことです。 

そしてこの無人偵察機情報は即時に米国政府中枢に送り届けられ、やや遅れてわが国政府にも提供されました。 

しかし、残念なことにこの貴重な情報を役に立てるだけの能力がわが国政府と安全・保安院にはありませんでした。 私たち国民はこの無人偵察機情報を政府からではなく、米国NRCのネット上で見つけることになります。

また米国はこの情報をIAEA(国際原子力機関)、カナダ、英国にも伝えており、そこを経由してフランスANCはようやく一次情報にありつけました。 

ついでながら、日本外務省は在日米軍の要請に従って、SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測)のデータを手渡しており、この情報は放射能雲が通過する自国民には一切知らされないまま、米国から諸外国へと流れていきます。

さらにSPEEDI情報は官邸にFAXされたものの誰ひとり読まなかったそうです。無能もここまで来るともはや笑うしかありません。 

というわけで、この後に来るメルトダウン・メルトスルーの隠蔽などは、わが国国民だけが知らなかっただけであり、諸外国は米国を通じてある一定の真相をいち早く把握していたようです。

だだし、それは日本政府と原子力安全・保安院によっての正式ルートではなく、米国を通じてでしたが。

こうして眺めてくると、国の原子力安全機関が持たねばならない性格は、国民に対する情報のガラス張りと、それを常に国際的に提供し、国際的な知見にかけることだとわかります。

一見平凡なことのようですが、福島事故において最も欠落していたのがこの情報の透明性なのです。

仏原子力安全院(Autorité de sûreté nucléaire)には原子力安全機関、原子力安全局という訳もあります。院長は総裁という別訳もあります。

■写真 真夏の台風一過の霞ヶ浦。霞ヶ浦管理事務所にハッカーが入って「脱原発」の書き込みをしていったそうです。ハッカーさん、それは霞が関のほうですぜ(笑)。

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「想定外」の日本、「事故を排除しない」フランス

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もう少しフランスの「原子力の番人」である原子力安全院(ASN※)と、わが国の比較から国の原子力の安全管理のことについて考えていきます。

ラコスト院長というひとりの人物がいなければと考えると、あんがいフランスも今の日本と変わらなかったかもしれません。

彼は御歳70になる頑固が服をきて歩いているような老人ですが、私は勝手にジャン・ギャバンのような風貌ではないかと想像しています。なんか雰囲気じゃありませんか。

なにせフランスが誇る最新鋭の原発である欧州加圧水型炉(EPR)ですら、建設中にラコスト院長によって再三不備を指摘され工事停止にさせられています。

ラコスト翁には「フランスの原発はオレが守ってみせる」という気概が溢れています。彼のモットーを物語るこんな言葉があります。

あらゆる警戒を怠らないとしても、原発事故は決して排除できない。これがわれわれのあらゆる行動の基本である」。

フランスと日本は世界の原子力界を二分する国ですが、ここが日本とフランスを分ける分水嶺でしょう。

わが国は、「事故が起きるなどと考えだけで、ほんとうに起きると思われてしまう。事故は起きないものとして縁起の悪いことは考えない」という発想をとりました。

ですから、口では安全対策の徹底などと言いながら、近年米国から核テロにおける全電源停止のシナリオを提示された時にすら、そのようなことは起こり得ないとして検討することすらしませんでした。

結果、ある原子力技術者が悔恨を込めて語るように、「ただ福島第1原発の予備電源を屋上に上げておくだけで済んだ」ような改修作業すらしませんでした。

地震による大津波の可能性はかねてより指摘されており、福島第1原発のような第1世代原発が、事故において致命的な脆弱性(※)を持っていることを知りながら、あらかじめできる改修作業すら怠ってきたのです。※http://www.mobara.jp/nisimori/newpage100.index.html

その結果が「想定外」の連鎖です。思い出して下さい。

想定外」の地震と大津波のために外部電源がすべて切断され、予備電源までが流されたために全電源喪失が起き、冷却系が失われた結果、「想定外」のメルトダウンとメルトスルーまでが起き、「想定外」に4ツの原子炉が連鎖的に爆発し、そして「想定外」に広範囲に放射性物質が拡散した・・・。

書きながら怒りで震えてきます。ここまで「想定外」が続くなら、「想定外」とは一体なんなのですか。まさに人災です。日本人は地獄の釜の扉に手をかけ、危うくそれを全開にするところでした。

ラコスト氏率いる原子力安全院(ASN)は、福島事故直後からフランス全土の原発についての監査を行いました。

それはわが国のようなコンピュータを使ってのストレステストなどという生易しいものではなく、徹底したASN専門官の現場立ち入りを繰り返す査察で、9月11日までと提出期限が限られていました。

この報告書は、米英からの専門家も含めた数百人規模の調査団の「バカンス返上し、浸食を忘れた」作業によって7千頁にものぼる膨大なものにまとめられました。この報告書はネットで閲覧可能です。

特に査察項目に4つに重点が置かれました。
①洪水の危険
②地震
③電気系及び冷却系の喪失
④事故発生時の作業管理

これはまさにラコスト氏がフランス原発が「事故の可能性を排除できない」ことを熟知しているからです。

フランスの原発は1970年代から80年代にかけて作られた第1世代が多く、、したがって平均稼働年数も35年となります

フランス原発の稼働年数分布
・稼働年数28年・・・34基
・      22年・・・20
・       2年 ・・・4

この稼働年数分布を見ると、フランスでもわが国の福島第1原発といい勝負の古いのがゴロゴロしているということです。古い原発が多いのは「原子力大国」の宿命でもあるのでしょう。

フランスでは稼働年数上限野30年から40年といわれる廃炉時期に差しかかった原発が過半数を占め、したがって第1世代特有の冷却系の脆弱さという致命的欠陥を抱えていることになります。

この報告書を基にASNが下した原発補強措置
①原子炉が従来型の冷却装置の使用不能な場合の「究極の救済方法」としての冷却水の確保
②電源の究極的確保
③地震、洪水などへの堤防、土台の強靱化
④事故発生の場合の施設内の放射能除去・濾過対策
⑤地球物理学的障壁と揚水方法を2012年までに決定して設置
⑥使用済み燃料プールが漏水した場合の給水方法
➆炉心と人員救助のための原発付近の掩蔽された危機管理センターの設置
⑧2012年までにフランス電力会社は(EDF)は「核緊急展開部隊」(FARN)を設置し2014年には展開完了すること。
⑨原発周辺の工場施設の連鎖事故防止

このような報告書と対策が去年9月中旬の時点で提出されたことに私は感嘆します。

この時点ではわが国は原因解明のための公式事故報告書すらできておらず、政府事故調査報告書が完成したのは、実に事故後1年半たった2012年7月30日のことです。

この事故原因調査と対策の遅れはわが国が、あの愚か者が再可能エネルギー法を辞任の条件としてしまったために政局化してしまったためです。

私にはこのような原子力事故処理を政局化する神経自体が理解できません。本当にあの男は災厄以外なにものでもありませんでした。

原子力は政治の域外に置くべきだというのが、私の今回の福島事故に対しての教訓です。その意味でも、フランスASNのあり方は参考になります。

フランスの原子力安全管理は、「内閣から独立した地位」を保障され、強い権限を持たされています。故に、狭い意味での「政治」から自由です。だからこそ政治家の思いつきなど相手にしないタフな監視かできるのです。

これは常に政治の強い影響下にあり、時の政権により方針のブレが大きく出てしまうドイツより、ある意味で優れた原子力のコントロール方法ではないでしょうか。

事故を想定しない国の過酷事故は起きるべくして起き、起きた場合は誰ひとり責任をとることなく、原因解明は遅れに遅れ、立てるべき対策もおざなりになったまま、180度真逆の「脱原発」へとムード的になだれ込んでいくのでしょうか。

※仏原子力安全院(Autorité de sûreté nucléaire)には原子力安全機関、原子力安全局という訳もあります。院長は総裁という別訳もあります。

■写真 収穫前の黄金の稲穂。雲がピースサインを作っています(笑)。

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「原発の番人」・日仏の本質的違い 独立性が保障されねば安全監視機関とは言えない

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フランスには「原子力の番人」と呼ばれる組織があります。それがフランス原子力安全院(別訳/原子力安全機関/原子力安全局・Autorité de sûreté nucléaire・ASN)です。
Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E5%AE%89%E5%85%A8%E5%B1%80

日本にも似たような役割の「原子力規制庁」がありますが、私はこのふたつは本質的に異なった組織だと考えています。

今日は日仏の原子力安全監視組織を比較する中から、国による原子力の安全監視とはどのような性格の組織によるべきなのかを考えてみたいと思います。

わが国のスタートを切ったばかりの原子力規制庁がいかなる組織なのかは、スタッフ官僚たちがどこの省庁から来ているのかをみれば一目でわかります。

原子力規制庁の官僚出身内訳
・経済産業省・・・312名
・文科省   ・・・ 84
・警察庁   ・・・ 16
・環境省   ・・・ 10

7割を超える圧倒的人数を送り込んで来た経済産業省からの出向組は、原子力安全・保安院、資源エネルギー庁出身者です。なんのことはない資源エネルギー庁とは、政-財-官-学にまたがる「原子力村」の司令塔のような所ではないですか。

他は、文科省、環境省、内閣府原子力安全委員会の出身ですが、とくに環境省は原子力規制庁を組織系列下にした上で、ナンバー2の次長ポストに森本氏を押し込んでいます。

これらの原子力規制庁官僚たちは完全移籍ではなく、数年間の出向で来ていますから、背中には出身省の紐がしっかり付いているとみるべきでしょう。

出向者数こそ地味ですが、原子力規制庁を組織系列化においた環境省はCO2削減を旗印にして、「地球にやさしいクリーン電源・原子力」(笑)をエネルギー比率50%まで増やすという今思えばトンデモの政策を作った役所です。

また環境省は、放射性物質を環境基本法や土壌汚染防止法で「特定有害物質」に指定しなかったために、福島事故で大量に排出された放射性物質を除染する根拠法がなくなってしまいました。

福島事故に際してもその動きは鈍く、空間線量や土壌放射線量などの測定も文科省に遅れをとり続けてきました。当時私は、環境省に悪意のサボタージュを感じたほどです。経済産業省が「原子力村」の村長なら、環境省は助役です。

そして原子力規制庁の初代長官には前警視総監の池田克彦氏、原子力地域安全総括官には元警視庁警備部長の黒木慶英氏が任命されました。

この2トップは揃って警備・公安畑出身で、治安のプロであっても、原子力に対してはズブの素人にすぎず、警察官僚が得意な上意下達の組織統制力を見込まれて就任したといわれています。

つまり原子力規制庁は、原子力安全対策を風当たりが強い経済産業省から、環境省という裏の司令塔の下に系統をすげ替えただけの問題を多く含んだ組織だといえるでしょう。

どうして完全にすべての省庁から独立させなかったのでしょうか。私は会計検査院のような政府から独立した地位を保障されている原子力監視機関を作るのだと思っていました。

ちなみに会計検査院は、このような独立機関です。
「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。(日本国憲法第90条)。また、内閣に対し独立の地位を有する。(会計検査院法1条)」。Wikipediaによる

この「国の収入収支」の部分を原子力発電に読み替えて下さい。原子力の規制・監視もこの「内閣からの独立の地位」こそが肝だったはずです。

しかし多くの脱原発派の人たちは、規制委員会の委員長が原子力村出身であるかどうかとか、国会承認があったかどうかなどに目を奪われて、肝心の原子力規制庁の「独立性」の部分が骨抜きになったことを見逃してしまいました。

一方、日本の原子力規制庁とあらゆる意味で対照的なのがフランスです。

フランスの原子力安全院(ASN)は、どの省庁の下にも属さない完全に独立した国家機関で、院長以下4名のコレージュ(委員)による官房があります。いわばこれ自体一種の内閣のような組織構造になっています。

政府にはASN長官と委員の任命権すらなく、唯一それを持つのは元首の大統領のみです。ASNは国会への報告義務を負う完全に独立した国家機関です。

ASNは外部に「放射線防護原子力安全研究所」(IRSN)という専門家による補佐機関をもっています。 

ASNの職員数の77%、IRSNで85%が博士号を持つ専門家集団で、どこぞの国のようにボス警官がその部下の警官たちを引き連れてやって来ましたというようなことはありません。

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                    (BSフジ「プライムニュース」より)

フランス原子力委員院長(別訳・総裁)はラコスト氏ですが、彼は「フランスでもっとも怖い男」と言われているそうです。首相に対してもまったく物おじせずに正論を吐くので、脱原発派からも一目置かれている人物です。

ラコスト氏はフランスの理系の最高学府である国立理工科学院(ポリテクニック)を卒業後一貫して原子力畑を歩み、原子力安全施設(DSIN)や独立機関になる前のASNの責任者を努めました。

ラコスト氏は原子力の専門家としてフランス原子力庁や、原発所有者のフランス電力公社からの独立を訴え続け、2006年に法令によって独立を勝ち得た後は初代院長に就任しました。

ASNは福島事故直後の3月12日に仏政府より早く声明を出し、同月23日には早くも「仏全土の全原発の安全性に対する監査」を実施しています。

同時期に日本の原子力安全委員会の斑目春樹委員長が、菅首相から連日子供のように叱り飛ばされてうろたえていたのとは対照的です。

おそらくフランスで福島事故と同様の事故が起きた場合、ASNは政府とはまったく独立した判断をしたうえで、即時に事故対策を「命令」したことでしょう。

もちろん政府にです。ASNは政府からあごで使われる組織ではなく、政府に命令できる権限を持つ独立機関だからです。

ですから、菅首相のように外部者からの意見に左右されて、事故現場の指揮に直接介入するなどということは、フランスでは考えられもしません。

もし首相がそのようなまねをしたら、ラコスト院長から「閣下、素人は引っ込んでいて下さい。誰か閣下を部屋の外にお連れ申せ」と一喝されるに決まっています。というか、そもそも首相には原発事故の指揮権などありません。

わが国の福島事故の悲劇は、ASNのような独立した原子力規制機関がなかったこともさることながら、ひとりのラコスト院長もいなかったことでしょうか。

このように「監視機関の独立性」ということをキイワードにしてフランスと日本の原子力規制行政を比較すると、わが国はまったく福島事故を学んでおらず、おざなりの改革でお茶を濁したことがはっきりと分かります。

わが国は脱原発の検討の前に、抜本的な原子力安全行政の見直しに着手すべきでした。

福島事故の直後の1年間しか「原子力村」の徹底解体と、新たな原子力安全行政の再構築のチャンスはなかったはずです。この時期を逃しては、また強固な原子力村のもたれ合い構造が復活してしまいます。

この時期にこそ、あらゆる政府機関から独立した規制・監視機関を作り、そのスタッフも資源エネルギー庁や環境省からの出向を仰ぐのでははなく、民間の有為な人材も含めて大胆な人材の起用をすべきでした。

その場合、むしろドイツよりもフランスの厳しい原子力安全行政のあり方の方がより参考になったはずだと私は思います。

私たち日本人がフランスに原子力で学ぶことはただひとつ、原子力安全機関の「独立」です。

■※関連記事 http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2011/10/post-add7.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-4.html

■写真 彼岸花が野辺に咲き誇っています。

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原子力大国フランスの現実

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フランスは隠れもしない原子力大国です。エネルギー源の実に76%までが原子力によっています。これは欧州平均の25%の3倍近い率で、文句なく世界一です。(下図参照)

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ちなみに各国のエネルギー源に対する原子力の比率は
・日本・・・24%
・米国・・・19
・イタリア・・0
・ドイツ・・・23
・韓国・・・34
・中国・・・2
・スロバキア・・54
・ウクライナ・・47

わが国のことを原子力大国という人がいますが、それは誤りで欧州平均だと分るでしょう。わが国は原子力の是非を無視すれば、バランスのいいエネルギーミックスをしています。

ウクライナなどの旧東欧諸国の原子力依存率が高いのは、ロシアに石油、天然ガスを依存しているために、独立を守るため原子力が必須だからです。

この事情は、今原発の是非を巡る国民投票で揺れるエストニアなども同じで、いったんロシアと外交的に緊張すれば、即座にパイプラインを切断されて干上がってしまいます。

現実に、反露政権がウクライナで政権についた時には、ロシアにエネルギー供給ストップをされたことがあります。

フランスが原子力という「自給エネルギー」に固執するのは、エネルギー問題がまさに国の自主独立と不可分だと考えているからです

さて、フランスは全土に19カ所、58基の原発を有しています。また現在、第3世代の欧州加圧水炉(EPR)を建造中です。(欄外図表1参照)

フランスの原発は、日本が沿岸部にあるのに対して、地図でお分かりのように内陸各地に点在しています。日本にとって海がその役割を果たしているように、冷却水の取水と、排水のために大きな河川に沿って展開しています。

フランスは地震が南部を除いてほとんどなく安定した地層に恵まれています。これは原発立地にとって非常に有利な条件で、日本のような大型地震と津波という二大脅威を考えることなく建設できます。

ただし、フランスは大部分が平野であるために、いったん放射性物質が排出されるとたちまちのうちに広範に拡散します。

わが国では、福島事故の時には安達太良山系が壁となって内陸部への拡散を防いでくれましたが、フランスで福島事故レベルの原発事故が起きた場合、西はピレネー山脈、南はアルプスでストップするまで全土を覆い尽くすことでしょう。

そしてヨーロッパの河川は長大で流量も豊富です。それは明治期に日本を訪れたヨーロッパ人が日本の川を「まるで滝だ」と評したことでも分かります。

欄外図表2は富山和子「川は生きている」に載せられたグラフですが、日本の河川を代表する信濃川と較べて、フランスを代表する河川のロアール川は、2倍近い高度から3倍近く長大に流れていることが分かります。

日本の場合、河川に放射性物質が排出された場合かなりの速度で海に達します。しかし、フランスの場合河底に長く滞留し続け、河川沿いに各国を汚染をバラ撒きます。

地図のフェッサンエーム原発(地図➆)はライン川沿いにあるフランス最古の第1世代原発ですが、ここで福島事故レベルの原子力事故が起きた場合、風による拡散を度外視しても、ライン川に沿った地域すべてに拡大する巨大被害をもたらすでしょう。

フェッサンエーム原発はその危険のために、ドイツの緑の党まで乗り出して脱原発運動の象徴と見なされるようになりました。

次回も、フランスの原発事情について見ていきたいと思います。

■明日明後日は定休日です。月曜日にお会いしましょう。

       ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

図表1           Photo

              「原発大国フランスからの警鐘」山口昌子より

図表2 日本と欧州の河川の長さと勾配の比較  「川は生きている」富山和子より

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復興税流用・財務省が「精査」する喜劇 泥棒が縄を編むとはこのことだ!

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復興予算の被災地外の目的外流用を続けていた政府はようやく見直しをするそうです。そして当初は平野復興大臣が言うように、「来年度分から」と言っていたことを撤回し、今年度分の残も凍結することにしたそうです。あたりまえです。

「今年度予算で(1)執行率の低い事業(2)緊急性の低い被災地外の事業(3)震災前からの継続事業-を抽出し、25年度予算の概算要求とともに見直しを進める。」
(資料1 産経新聞10月17日)

11月16日から18日まで非公開で行政刷新会議を開くそうです。非公開とは一体いかなる理由でしょうか。常識を疑います。国民の懐を狙った詐欺師のようなマネをしておきながら、国民には公開しないとは。

いままで行政刷新会議は完全公開制でした。今やどこにかに消えてしまった仕分けの女王こと蓮舫さんや、原発事故A級戦犯の枝野さんらが凛々しく官僚共を吊るし挙げていたものです。

いい時は見せるが、悪い時は見せないという訳でしょうが、情けないほど分かりやすい人たちです。

いや枝野さんはやはり今回はダメかもしれませんね。今や経済産業大臣で、被災地以外の工業立地に2960億円も既に使ってしまった当事者ですからね。

民間企業なら業務上背任で訴えられてクビでしょうが、官僚にはその道理は通じません。彼らには不正流用した税金を返す気などないし、第一使ったものを返却なんかできません。

だから、枝野経産相のように記者会見で「国内立地推進事業費補助金について、使途に問題がない」と居直るしかないではありませんか。

ところで岡田副総理は、「政府の能力には余る」ということを述べていますが、その弱気は流用しまくった「復興特別会計」だけで1兆円を優に超え、しかもすべての省庁が絡む事案だからです。

しかしその心配はご無用です。かつて山中教授のiPS細胞やJAXAの「はやぶさ」、あるいはスパコン「京」などの予算を、まったく門外漢の「識者」を連れてきてバサバサ切りまくっていた蓮舫さんが残っています。

「iPS細胞の実用化はいつですか」という基礎研究の重要性をまったく認識していない初歩的発言が、今回のノーベル賞報道で繰り返し放映されていましたっけね(笑)。

思えば、私たち有機農業についた歴史上初めの助成金すら容赦なく廃止されました。この時も農業の「の」の字も知らない蓮舫さんたちがやったのです。

私はこの人ほど賢しらげなバカを知りません。自分が愚かだと自覚していないから困る。そんな人に絶大な権力を与えてしまった私たち国民も悪いのです。

だからなんの専門知識も要りません。経験、知見すら要らない。あの時と同じように財務省にアンチョコを書いてもらって、廃止か縮減にすればいいだけです。

おっといけない。今回はその財務省自らが首都圏12庁舎の改修工事に12億円使っていたんでしたっけね。

平野復興大臣も「精査は財務省との共同作業」と言うように、現実には財務省が自分のお手盛り予算を自分で「精査」するというのですから、爆笑コントのようです。

まさに泥棒に縄を編ませるというやつです。このような「精査」を国民の誰が信じるというのでしょうか。

ただ、実質的に復興予算の実態を精査できる態勢や能力を持つのは、予算の査定を担当した財務省だけ。平野氏も「精査は財務省との共同作業」と認めている。その財務省は、各府省の予算要求に対し、被災地と無関係な事業に復興予算が使えるよう甘い査定をした当事者だ。」(資料3 東京新聞10月13日)

また、その「精査」とやらをやる前にから城島財務大臣は、来年度予算の「積み増し」を言い出しています。タフな人だ。

「城島光力財務相は、一三年度予算については「必要なものに厳しく限定する」と平野氏に協力する姿勢はみせている。その一方で、五年間で十九兆円という復興予算の大枠は「精査して足りなければ、その段階で判断する」と上積みの容認も示唆。査定の厳しさには、あいまいな部分を残している。」(同上)

まずは、被災地でいかに復興予算が使われているのか、そしてなにが足りないのか、足りないとすればどうしたらいいのかを踏まえ、その上でいかにハイエナ官僚たちが意地汚いまねをしたのかをすべて明らかにしてから、国民に「積み増し」をお願いするべきではないですか

そしてその時には城島さん、平野さん、野田首相と一緒に国民に陳謝して辞任しなさい。

それにしても事業仕分けで始まった民主党政権が、事業仕分けされて終わるというのもなにかの因縁でしょうか。

■関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-016b.html

■写真 湖の朝。雲間から朝日が射しています。私はこの写真がけっこう気に入っています。

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■資料1 復興予算 今年度分の一部も執行停止の方針 被災地事業絞り込み
産経新聞2012.10.17

政府・民主党は16日、東日本大震災の復興予算が被災地以外に「転用」されている問題で、編成作業中の平成25年度予算に加え、24年度予算の一部も執行停止する方針を固めた。11月下旬までに党行政改革調査会(中野寛成会長)が対象を選定。調査会の提言を受けて政府が最終決定する。

 野田佳彦首相は16日の復興推進会議で「被災地の復旧・復興が最優先との方針で、真に必要な事業に絞り込む」と述べ、復興予算を被災地事業に絞り込むよう関係閣僚に指示。これを受け、岡田克也副総理が党行革調査会幹部と協議し、今年度予算にも切り込む方針を確認した。

 協議では、「大幅見直しを政府側で行うのは限界がある」とし、17日の総会を皮切りに調査会が主体となって対象事業の選定に着手することで一致。見直し作業の基本方針も確認した。今年度予算で(1)執行率の低い事業(2)緊急性の低い被災地外の事業(3)震災前からの継続事業-を抽出し、25年度予算の概算要求とともに見直しを進める。

 今年度の復興予算の一部を執行停止にする場合、減額補正予算の編成が必要となる公算が大きい。自民党は減額補正を特例公債法案に協力する条件としており、政府・民主党には見直しを与野党協力の呼び水にする思惑もある。

 これに関連、岡田氏は16日の記者会見で、行政刷新会議の「新仕分け」を11月16~18日に行い、復興予算を検証すると発表した。従来の事業仕分けと異なり、一般傍聴は認められない。

■資料2 予算見直し 政府・民主、自公に責任転嫁
産経新聞2012.10.17

税金のムダづかいを根絶する」-。民主党が平成21年の衆院選で掲げた政権公約(マニフェスト)の基本理念だ。しかし、政権交代から3年余りが経過した今、復興予算の「転用」が問題視されている。政府は16日の復興推進会議で、復興予算の見直しに着手したが、会議では「転用」を反省するどころか、野党に責任を「転嫁」する姿勢が目立った。

 「全国防災の必要性については、(23年度)3次補正予算のときに国会でも十分に議論した。各党と調整し、しっかり詰めた上での予算措置だった」

 前原誠司国家戦略担当相は復興推進会議でこう主張した。「全国防災」に名を借りた復興予算の転用で政権に向けられる批判の矛先を、3次補正に賛成した自民、公明両党にも向けようとする思惑は明らかだ。

 同じ会議で平野達男復興相や城島光力財務相が野田佳彦首相の見直し指示に従い、「被災地の復旧・復興に真に直結するものを最優先する」などと、予算の精査に取り組むと表明しただけに、前原氏の「開き直り」は際立っていた。

 推進会議では、閣僚が「省益」の確保に躍起になる場面もあった。

 被災地に特定しない形で国立病院機構での次世代型医療情報システムの構築を予算要求している厚生労働省。三井辨雄厚労相は「地域包括ケアに対してのさまざまな取り組み、医療、福祉サービスの確保に取り組んでいきたい」と訴えた。

田中真紀子文部科学相もスクールカウンセラー派遣事業の要求を踏まえ、「子供の心の調査にしっかり取り組む」と強調。枝野幸男経済産業相も記者会見で、「国内立地推進事業費補助金」について、使途に問題がないと強調した。

 復興予算を審議するため、参院では18日に決算委員会、19日に行政監視委員会が開かれるが、「復興事業」の売り込み合戦の場となる可能性もある。

 民主党は3年前のマニフェストの「政権構想5原則」のトップに「官僚丸投げの政治から、政権党が責任を持つ政治家主導の政治へ」とうたった。この理想とは正反対の姿勢が、今の民主党政権の体質になっている。

■資料3 復興予算の使途改善 4閣僚 意見ばらばら
東京新聞2012年10月13日

東日本大震災の復興予算が被災地と無関係な事業に使われている問題で、平野達男復興相ら予算の精査や編成に関係する4閣僚が見直しに意欲を示している。ただ、先導する閣僚が増えるほど調整は難しくなり、見直しが徹底できなくなる懸念も出てくる。(宇田薫)

 いち早く予算見直しの必要性に言及したのは、被災地復興を担当する平野氏。十二日の記者会見でも、二〇一二年度の復興関連事業について「復興財源を使って良かったのか疑義が生じるものもある」と明言した。

 平野氏は一二年度予算に関し、本来の目的で復興予算が使われているか精査を進めた上で、一三年度予算編成では(1)被災地の復興を最優先(2)被災地と無関係の事業は復興予算の特別会計から一般会計に回す-といった方向性を示している。

 岡田克也副総理兼行政刷新担当相は、復興予算について政府の行政刷新会議で「二本柱、三本柱の一つとして集中的に取り上げる」と表明。刷新会議で取り組んできた「事業仕分け」とは別の形で、有識者らに復興予算を公開の場で議論してもらう考えも示した。

 前原誠司国家戦略担当相は、予算全体の編成の基本方針を国家戦略室で策定する方針を強調。その上で、復興予算については「復興以外に予算が使われていることは由々しきこと」と見直しの必要性を説いている。

 ただ、実質的に復興予算の実態を精査できる態勢や能力を持つのは、予算の査定を担当した財務省だけ。平野氏も「精査は財務省との共同作業」と認めている。その財務省は、各府省の予算要求に対し、被災地と無関係な事業に復興予算が使えるよう甘い査定をした当事者だ。

城島光力財務相は、一三年度予算については「必要なものに厳しく限定する」と平野氏に協力する姿勢はみせている。その一方で、五年間で十九兆円という復興予算の大枠は「精査して足りなければ、その段階で判断する」と上積みの容認も示唆。査定の厳しさには、あいまいな部分を残している。

 今後、四閣僚らがそれぞれの立場から主張を強めれば、個別の復興予算をめぐり衝突が起こる可能性もある。

■追加 “仕分けコンビ”、復興予算で開き直り連発 自公に責任転嫁
産経新聞 10月18日

東日本大震災の復興予算の「流用」問題を審議した18日の参院決算委員会で、かつての「仕分けコンビ」が開き直りとも取れる発言を連発した。平成21年の政権交代直後の「事業仕分け」では、歯切れ良く予算のムダ削減を訴えていた枝野幸男経済産業相と蓮舫元行政刷新担当相。3年余りの与党暮らしの末、「言い訳」を余儀なくされる場面が目立った。

 「あのー、ミソもクソも一緒にした議論はやめていただきたい」

 普段は理路整然と答弁することが多い枝野氏の冷静さを欠いた答弁に、委員会室は騒然となった。自民党の森雅子氏が、流用問題で地元・福島の企業向け立地補助金が不足していることを厳しく指摘したときのことだ。

 山本順三委員長(自民)はすかさず、「言葉は慎重に選んでください」と注意したが、枝野氏は「間違ったことを言っているとは思わない」と収まらず、「被災地以外に予算が使われていることは、理由も原因も全然別の話だ」とまくし立てた。自民、公明両党にも責任があるといわんばかりだった。

枝野氏は自ら発した「ミソもクソも」という発言だけは、「あまり上品でなかったので、おわびして撤回する」と謝罪したが、復興予算に計上された立地補助金の大部分が被災地以外の企業を対象としているのは事実。激高したことで、かえって所管する「省益」を堅持しようという姿勢を印象づける結果となった。

 民主党委員として質問の先陣を切った蓮舫氏は、より露骨な形で自公両党に流用問題の責任を転嫁した。

 「一言言わせていただきたい。もともと内閣が出した復興基本法案は対象を被災地に限定していたが、自民党さん、公明党さんからの建設的な意見も踏まえ、対象は日本全国になった」

 蓮舫氏は、被災地以外の全国防災事業に復興予算が充てられた経緯に関し、こう強調した。

 初の本格的復旧・復興予算となった23年度第3次補正予算の編成をめぐる自民党の行状について「さらに7・1兆円上積みしろといわれた」「立地補助金が足りないから5千億円上乗せしろと指摘された」-などと“暴露”したが、逆に政権与党としての責任を棚上しようとする姿勢が浮き彫りに。

 

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脱原発・スローガンの夏は終わり、現実化の秋が始まった

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何度か書いてきていますが、現時点ですら原発をゼロにすることは可能です。問題は唯一夏場の冷房によるピーク時電力だけであり、それが現実問題としてクリアされた以上、もはや「次」の問題に移るべきです。 

スローガンの夏は終わり、現実化の秋が始まったのです。言い換えれば、原子力をできるだけ速やかにゼロにし、原子力なきベストミックスを展望する時期に入ったのです。  

この夏、8月9日のピーク時電力需給の実態はこうです。(大阪府市エネルギー戦略会議資料による)  

・8月6日現在のピーク時供給電力・・・3000万kW(大飯原発分含む)
・同        ピーク時電力需要・・・2600万kW
・同              剰余電力・・・400万kW
 

このように大飯原発3、4号機を停止したままでも今年は乗り切れました。ただし、これは別な危惧を生みます。それは火力発電が原子力に替わって増加することです。  

現に、ドイツを例に取ると原発を削減していくに従って、その代替としての火力発電が占める率が急激に増えていったのがわかります。Photo_2

上図は各国のエネルギー源の割合を見たものですが、脱原発政策以後のドイツは飛び抜けて火力、なかでも石炭火力の割合が49%、すなわち半分にも登ったことが分かります。  

それに伴いドイツは大気中のCO2、チッソ酸化物、硫黄酸化物による汚染が増えてしまいました。今やドイツは日本の3倍以上の大気汚染物質排出量となっています。(下図参照) 

これでは放射能の危険を別の危険で置き換えただけになってしまいます。脱原発はかつてのエネルギー構造への逆流であってはならないのです。

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発想を変えていかねばなりません。代替エネルギー問題がイコール脱原発ではありません 

この議論に引き込まれると、原子力護持派がよく言う、「ほら見ろ、原子力に替わる代替エネルギーなんかないじゃないか」という話になって先に進みません。 

しかし、現実には脱原発派の論調は、「ドイツのように原子力を止めて太陽光発電に」といった非現実的な所で止まっている場合が多いようです。 

そしてその文脈で、メガソーラーが突出して再生可能エネルギーのシンボルのようにもてはやされています。そして太陽光発電のみに偏ったFIT(固定全量買い取り制度)までできました。 

私はこれは脱原発にとって明らかなミスリードだと考えています。 

残念ながら、このレベルにいる限り脱原発は机上の空論に終わるでしょう。私はその危惧から脱原発の先行例であるドイツの現実をかなり丹念に見てきました。 

問題は、新エネルギーの技術論ではなく(それも不要ではありませんが)、社会の新しいエネルギーのあり方の問題なのです。 

さて、脱原発を長年に渡って唱えてきた藤田佑幸氏はこう述べています。
脱原発はむしろたやすい選択肢であるが、更に脱石油へ向かう道は、いくつもの困難を伴う。放射能による環境汚染を避けると同時に、石油大量消費による環境破壊を避ける道をわれわれは目指さねばならない。」
(藤田佑幸「脱原発のエネルギー計画」)

私は脱原発をリアルに考えるためには、代替エネルギーの問題だけ考えていれば済むということではないと思っています。 

放射能が怖いということから始まるのは当然のことです。しかし、それで止まらないでいただきたいのです。 

わが国が脱原発の道を歩むことになったとしても、中国では数百基の原発を作る計画が着々と進んでいます。そして13億もの人間が欧米や日本のようなエネルギーを湯水のように使うような生活に向けて一斉に走り出しています。 

そのような時、この世界は間違いなく環境破壊とエネルギー枯渇に直面します。 

福島第1原発の事故を知った私たち日本人が、どのような新しいエネルギー文明を創っていけるのか、どのような新しい社会のイメージを描けるのかを世界が問うているのです。 

「福島以後」のエネルギー社会モデルを描けることができるのは、ドイツ人ではなく私たち日本人なのです。日本が何を「福島以後」に創造するのかを世界は見ているのです。 

私は、食べ物や飲み水、下水処理と同じようにエネルギーを考えたらいいのではないかと思っています。食べ物は地場のものを食べるのが一番です。そして旬のものを食卓に並べるのが一番の幸福です。 

それと同じように、エネルギーもまた地元で消費できるだけのものを地場で作って作っていく仕組みができないだろうかと思います。 

自分の地域の中で、風土を活かしたエネルギー源は必ずあるはずです。 

林業が盛んな地域には木材チップが豊富にあります。今は焼却されるか、家畜の敷料にしか使われていないかもしれません。あるいは、温泉が豊富な日本の山間部には地熱がたくさん眠っています。

海岸の風が強い地域には風力発電に適しています。潮の満ち引きからも電気を作ることが実験されています。 

畜産の盛んな地域は家畜糞尿のメタンガスがあります。これを使えば困りもののの糞尿が大化けしてエネルギー源の一角になるかもしれません。 

川が豊富にある農村もすごい可能性があります。小型水力タービンはぶんぶんと気持ちよく回って電気を作ってくれるでしょう。 

工業が盛んな地域では、工場の自家発電機で発電し終わった熱を活かしたコジェネレーション発電が盛んになるでしょう。コジェネはおそらく21世紀日本の主要電源のひとつに大きく成長するはずです。 

このような地域に適した再生可能エネルギーの組み合わせ、すなわちベストミックスで地場エネルギーを作り出し、それで足りないものは他の地域から融通してもらえばどうでしょうか。 

私は福島事故の教訓を次の新しい社会のエネルギー・スタイルに成長させていきたいと願っています。 

■関連記事 本日アップしたデータの詳細な解説は以下の過去記事をご覧ください。
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/post-0a6c.html

http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-e850.htmlhttp://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-1825.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-c7a2.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-922a.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-cc56.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-fda2-1.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/post-5189.html
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-f3dc.html

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福島県 全量検査で合格しても国が出荷足止め

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福島米は今年、大変な試練に挑戦しています。

それは去年の大風評被害を受けて、すべての福島産の米に放射能検査を実施するという、未だ国産農産物がやったことのない徹底的な検査システムを実行したことです。

福島県下304市町村で約1200万袋(1袋15キロ)という膨大な量の米をすべて計測します。そのためにベルトコンベアの乗せて通過するだけで計測できる新鋭の器械を大量に購入しました。

たとえば、JA郡山市の新米倉庫には2台の検査装置が設置され、土日もなく連日稼働させ1日平均約4000袋(60トン)もの検査を続けたそうです。

いままで入庫した5万7千袋の約6割を検査を終了したそうです。この大変な作業をやり抜いた職員のみなさんに敬意を表します。(「日本農業新聞」(10月12日欄外切り抜き参照)

そして現在の時点では、国の定めた基準値の100ベクレルを超えた米は見つかっていません。これは他県においてもそうで、明らかに1年たって土壌放射線量は大きく低下し、農作物への移行もほとんどないことが実証されつつあります。

ですから、当然のこととして検査済みのものは出荷可能なはずです。そのための福島県を挙げての全量計測だったはずです。

しかし、現実にはこのJA郡山市の倉庫には出荷できない米袋がうず高く積み上げられて、このままでは遠からず倉庫には入りきれない状態になります。

なぜなら、今までに出荷できた米はゼロだからです。あろうことか、福島を最も支援せねばならない国が止めているからです。

国は今年、県に抽出検査(モニタリング)を命じました。これは県下の旧市町村ごとに抽出された約2万6千検体を測定し、その結果が「合格」しないと出荷させない仕組みだからです。

そして万が一基準超えを出した場合、その市町村すべての袋を測定してから出荷を認めることになっています。

一見すると、基準超えをした場合だけ全量検査すればいいので合理的な印象を受けます。ところが、この国のモニタリング数値とはなんのことはない先ほどの現場で取り組んでいる全量自主検査と同じ機器を使ってやっているのです。

つまり馬鹿げたことには、農業現場が土日祝日返上でやっている検査を、同じ器械を使ってもう一回測り直しているだけのことです。

当然同じ計測結果が出ます。このような冗長な検査をタラタラやった挙げ句、未だ結果がでないので出荷は待ったというわけです。

この10月は一年で最も米が売れる新米シーズンです。どこのスーパーにも新米が並べられ、この時期に一年の米の相場が決定します。早場米を除いて、すべての米の産地はこの時期に照準を絞って売り込みに必死です。

ですからこの10月に新米が出せないということは、致命的に新米商戦から脱落したと見なされます。しかも、去年あれほどの風評バッシングを浴びた福島県産米ならなおさらのことです。

多くのバイヤーは、「やっぱりそうか、去年の事故当時、郡山あたりは線量が高かっので、今年もなにかトラブルが出て出荷できないんだな。仕方ない今年も買い控えるか」と思うはずです。

これではなんのために福島県の農業現場が歯を食いしばって全量検査をしてきたのかまったく意味がないではないですか。農水官僚は被災地支援どころか、逆に福島県産米か危険だとデマ宣伝しているに等しいのです。

JA郡山市は自民党農林部会に陳情し、今月11日になって、現場に省の役人を派遣して調整に当たり「早めに検査されるように改善する」そうです。(与党ではなく自民党へというのも興味深いですね。)

遅い!こんな状況が始まって1カ月を超えるというのにそれも分からなかったのですか。

去年の福島事故の時も、野天にある牧草に警告を発しなかったために、全国の肉牛に放射性物質入り飼料をバラ撒いてしまった失敗に何も学んでいないじゃないですか。

農水省は放射能絡みの事案は、一にスピード、二にスピードだと言うことを早くも忘れましたか。現に現場の保管倉庫はパンク寸前、そして新米商戦は終盤になりかかっているのです。

全量検査という福島県の方針は、国のモニタリング検査指針が出た後に決まったものですが、その段階で国と県は方針の違いを協議して折り合いをつけるべきでした。全量検査に県が踏み切った以上、政府の抽出検査は無意味になるからです

農業現場の自主検査では信頼できない、ゲルマニウム半導体測定器のような精密検査機器でやるというのならまだ分かります。しかし同一の機器でやる以上、国の検査は屋上屋を架すものでまったく意味がありません

福島県の全量検査体制を知っていながら、今まで県と協議してこなかった政府の罪は重いと思います。

私は農水省に一片の期待も持っていません。去年の放射能禍において農水官僚は一貫してまさに無能・無為無策・無定見そのものだったことは記憶にこびりついています。

だから彼らには何も望みませんが、被災地の復興の妨害だけはしてくれるなとだけ頼んでおきます。

■写真 新米の時期から少し遅れて秋そばの出荷が始まります。           

                ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

               日本農業新聞10月12日

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復興税流用・これは国の振り込め詐欺だ!

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復興税の使途流用事件は大きく拡大し、ほぼすべての官庁にまで蔓延していることが分かりました。(欄外資料1、5、6参照) 

復興税は東日本大震災被災地の「復興資金」として、昨年度は15兆円もの予算が組まれ、今年度はさらに4兆円が予算計上されて、合わせて19兆円という巨額の予算となっています。 

「復興基本方針では「五年で少なくとも十九兆円」が被災地の復旧・復興に必要な予算と見積もられた。その財源を捻出するため、政府は所得税や住民税などを臨時増税し、10兆5千億円をまかなうことにした。
だが、政府が示した予算の大枠は11年度からの3年間だけで天井を突破する見通し。11年度と12年度の復興予算は計約18兆円。13年度は4兆円超の概算要求が各府省庁から出されている。」(東京新聞10月12日)

 そして復興特別税は、25年にわたる所得税の2.1%増税、10年間にわたる住民税の増税です。 http://allabout.co.jp/gm/gc/396644/

これを天から降って湧いた甘い汁とばかりに食い散らしたのが、霞が関に巣くうシロアリ官僚たちです。彼らシロアリ官僚共のやり口はこうです。 

まず被災地には難くせをつけて復興予算を使わせません。たとえば、気仙沼市や陸前髙田市といった被災地に行けばすぐにわかることですが、商店街の復興がまるでできていません。 

あいかわらずの仮設のバラックで肩を寄せ合って励まし合って毎日を乗り切っています。このような地元商店街の復興は最優先で行うべきもので、津波に強い新たな街づくりにはまとまった予算が必要です。

地元の瓦礫処理もピークは超えたとはいえ、いまだうず高く積み上げられて感染症の原因になるのではないかと、今年の夏は市が足りない予算から消毒をしていました。 

仮設住宅には今も27万人が暮らしています。着工された復興住宅は計画の1.1%にすぎず、わずか229戸にとどまっています。いつまでも続く流浪の生活にご老人が櫛の歯がかけるようにひとりふたりと亡くなっていっています。 

農業者は津波による潮をかぶって使い物にならなくなった田んぼが多く出ました。その後の放射能禍も加わり、その多くはいまだ苦闘の中にあります。

被災地の製造業者には機械を丸ごと津波で流された工場も多く、ひとつの会社で数億円規模の被害を出しています。機械がないために会社を再建できず、そのまま倒産した会社も数しれません。 

このような被災地に対して、政府は何をしてきたのでしょうか。たしかに国民の善意を集めて20兆という巨額の「復興」予算枠を作りました。 

増税には常に文句を言う国民も、被災地を思い特に反対することもなくこころよく応じました。それが被災地に直接に届く目的税だと思ったからです。

しかし、政府は被災地現地の声に耳を傾けようとはせずに、遠く霞が関の蛍光灯の下で40に使途を限定した制約と縛りだらけの「復興」予算を作っただけでした。 

そしてこれに合わせ片っ端から被災地の切実な要求を却下しまくったのです。 

ある被災地零細の社長の話があります。彼は丸ごと機械を流されその復興を県に要請したところ、県には「個人には援助できない。グループを作れ」と断られました。

ならばと同業者と復興組合を作ってみれば、今度はあれもだめこれもダメと要望をズタズタにされたあげくに認められた復興資金は、「年度末に清算してやるから、まずは自分で立て替えろ」と言われました。 

そもそも数億の余剰資金などあるくらいなら初めから自分で再建しています。できないからお百度を踏んで陳情しているのです。お願いだから早期に支払ってもらえないかと頼んでも、これが政府予算の清算方法だと頑として譲りません。 

社長は親戚や知人から、「年度末には返すから」と借金を重ねてなんとか自分でかき集めました。そして待望の年度末。使途報告書を読んでお上はなんと言ったのか。 

「このようなものは認められない。これでは新規の機械による投資と見なされる。新規投資には復興予算は使えない。」 

驚く社長に対して「復興」担当役人は、「ならば元の状態の機械とまったく同じものを集めなさい。そうすれば認めてやってもいい」。 

この社長の小さな会社で使ってきたような稼働20年、30年といった中古の製造機械と同じようなものを揃えない限り、「復興」予算は出さないと言うのです。ここまでくれば、もはやヤクザの言いがかりも同然です。(ソースTBS「ひるおび」) 

このようなケースは決して例外ではなく、被災地にありふれた話だそうです。

国の予算は自分の気に入った者に、気に入った額を恩を着せてくれてやる。そして自分の決済権限を強化し、省益を太らせ、あわよくばその功績で天下り先も確保しておく、それが霞が関の本音です。 

そして挙げ句は、「復興」予算は使い切れないとして5.9兆円が「あまり」とみなされ、そのうち4.8兆円は翌年に繰り越され、約1.1兆円は「被災地がいらないと言った」として「復興特別会計」なるドラエモンの袋に紛れ込ませたのです。 

そしてその「復興特別会計」とやらは、文科省のある課長がこう言った台詞によく説明されています。「マイナスシーリングだったものは、みんなこの復興特別会計につっこんで計上しておけ!」(ソース河野太郎衆議院議員談) 

国が財政支出の縮減を続ける中、ある官僚は「復興予算は別枠で、いくらでも要求できるので、各省とも予算獲得に知恵を絞っている」と明かす。政府は「被災地の復興が最優先」との方針を掲げており、復興予算の査定が甘かったことも背景にある。」
(資料2 東京新聞10月12日)
 

たとえば、この手で文科省は被災地以外の国立大学の耐震工事や、熱核融合実験炉にポンっと気前よく48億円を使っています。

農水省はシーシェパード対策と調査捕鯨で23億。そして経産省は長野のコンタクトレンズ工場。法務省は刑務所のユンボ購入、そして国交省は沖縄の道路改修に34億、官舎改修。(資料1参照) 

「国道整備事業は一一年度第三次補正で約十二億円、一二年度の復興特別会計で二十一億九千万円が盛り込まれた。県内七十四カ所で工事が進められ、財源はいずれも復興予算だ。」(資料3 東京新聞10月11日) 

そして極めつけは予算のお目付役だったはずの財務省までもがお手盛りでこの「復興」予算から分け前を切り取っていたのですから、もはや開いた口がふさがりません。 

「2011年の三次補正の復興予算で、12億円を使って、12の税務署の耐震改修をやっている。大阪、福島、姫路、荒川、龍ヶ崎、古河、富岡、向島、藤沢、館山、武蔵野、柏原、舞鶴。
2012年当初予算の復興予算に、大阪福島、姫路、荒川の3税務署の改修予算5億6000万円が計上され、2013年度の概算要求に大阪福島、姫路の2税務署の改修予算3億2200万円が含まれている。
その一方で、壊れた横浜税関仙台コンテナ検査センターの検査機器の更新については、ようやく2013年の概算要求に12億円が計上された。」(資料5 河野太郎議員ブログ)
 

河野議員によれば、これらの「復興」税流用疑惑にはすべての国家官庁が関わっており、常態化していました

これらは、長野のコンタクトレンズ工場の補助金のように、福島から材料を使っていたからとか、石巻は捕鯨の街だったから、刑務所のユンボは被災地雇用があるかもしれないから、税務署改築は来る人の安全のため、などという子供だましとも言えない屁理屈をつけています。 

国交省の官舎改築も免震対策だそうで、官僚のスポーツジム利用という福利厚生もこのデンでいくなら、「帰宅困難になった公務員の体力強化」とでも言うのでしょうか、ぜひ答えを聞きたいものです。 

これらの予算が全部いらないと言っているわけではありません。「復興」予算から使わすに正しく予算目的にあった予算から使え、と言っているのです

このように国民をだまして「復興」を名目に税金を22兆円も収奪しておきながら、安住財務相は「復興予算が足りない可能性がある。積み増しのため財源確保を」と言い出す始末です。 

冗談ではない。復興とは何の関係もない所に流用しておきながら、かんじんの被災地復興は遅れに遅れているのです。どの口で「復興予算が足りない」などと言えるのでしょうか。 

そのまま財務大臣をしていれば糾弾の矢表に立たねばならなかったのでしょうが、このような品性下劣な男が今や与党の副幹事長です。 

そして野党の監査要求に対して民主党は、行政監視委員会すら「党の決定だ」として全員欠席を決め込みました。

「今日現在、復興予算の流用問題をきちんと審議しようという衆議院の決算行政監視委員会の小委員会幹事会に、民主党は「党の方針」で出てこない。」(資料5 河野太郎ブログ)

衆院決算行政監視委員会の小委員会は11日、東日本大震災の復興とはかけ離れた事業に復興予算を流用したとされる問題を審査する会合を開く予定だったが、委員14人のうち8人を占める民主党委員が欠席したため流会となった。」(資料4 東京新聞10月11日) 

行政監視委員会は国会閉会中でも開催が可能です。平野復興大臣は、「来年度から被災地に特化した予算を組む」などととぼけたことを言っていますが、まだ10月です。執行されていない横流し予算がたくさんあるはずです。 

今ただちに行政監査にかけて会計検査をして、被災地の復興使途以外の予算は即時に凍結するべきです 

政府は「復興に使います。みんなで被災地を助けましょう」と騙って国民から巨額の税金をむしり取り、それをまったく関係のないお手盛りに使っていました。 

はっきり言います。これは国による「復興」予算流用という振り込め詐欺です。

■写真 霞ヶ浦の水門から灯台型標識を望む。

                    ~~~~~~~~~

■資料1 東京新聞10月12日

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■資料2 膨張続ける復興予算 概算要求3年で22兆円
東京新聞10月12日
 

復興予算の膨張に歯止めがかからない。政府は二○一一年度からの「五年間で十九兆円」との大枠を示したが、一三年度予算の概算要求を含めると、三年間で二十二兆円に達する見込みだ。しかも、概算要求には不適切使用と指摘される予算が多く含まれる。国民に臨時増税を課しておきながら、復興を名目に予算獲得に走る霞が関の実態が浮かび上がる。(石川智規、清水俊介) 

 11年夏に政府が決定した復興基本方針では「五年で少なくとも十九兆円」が被災地の復旧・復興に必要な予算と見積もられた。その財源を捻出するため、政府は所得税や住民税などを臨時増税し、十兆五千億円をまかなうことにした。 

 だが、政府が示した予算の大枠は一一年度からの三年間だけで天井を突破する見通し。一一年度と一二年度の復興予算は計約十八兆円。一三年度は四兆円超の概算要求が各府省庁から出されている。 

 一方、衆院決算行政監視委員会で野党理事が関係省庁から聞き取り調査した結果、復興予算に対して「不適切使用」との指摘が相次いだ。さらに、こうした事業の多くが来年度予算でも概算要求されていることが本紙の取材で明らかになった。 

 国が財政支出の縮減を続ける中、ある官僚は「復興予算は別枠で、いくらでも要求できるので、各省とも予算獲得に知恵を絞っている」と明かす。政府は「被災地の復興が最優先」との方針を掲げており、復興予算の査定が甘かったことも背景にある。 

 しかし、一一年度分の復興予算は今夏の決算段階で約一兆円が「不用」と判断された。さらに五兆円は使われておらず、翌年度に繰り越しされた。 

 復興に直接関係しない事業に予算を付けながら、使い切れないケースが出ているのは事実だ。それにもかかわらず来年度予算でも四兆円を要求するとは、霞が関の姿勢は到底許されない。

■資料3 復興予算 沖縄国道に総額34億円
東京新聞10月11日
 

東日本大震災の復興予算が被災地の再建と無関係な事業に使われている問題で、沖縄県内の国道整備事業に総額約三十三億九千万円が復興予算から支出されていたことが本紙の取材で分かった。事業箇所は七十四カ所に上り、内閣府は二〇一三年度予算でも約七億六千万円を概算要求している。復興と直接関係ない沖縄の道路整備に多額の予算がつぎ込まれた実態が明らかになった。 

 沖縄振興を担う内閣府は国土交通省や文部科学省などに代わって、沖縄県内の国道整備や学校の耐震化事業などの予算要求をまとめている。国道整備事業は一一年度第三次補正で約十二億円、一二年度の復興特別会計で二十一億九千万円が盛り込まれた。県内七十四カ所で工事が進められ、財源はいずれも復興予算だ。 

 一一年度事業は衆院決算行政監視委員会に提出された資料によると、沖縄県国頭村(くにがみそん)の一カ所で行われ、総事業費は六千万円とされていた。しかし、本紙の取材で国道整備事業は国頭村を含む六十二カ所で行われていたことが判明。予算規模は約十二億円まで膨らんだ。 

 内閣府の担当者は「国土の防災・減災を進める政府の基本方針に沿った」と説明。「ほかの都道府県でも同じような防災事業を復興予算で計画している」と述べた。 

 岡田克也副総理兼行政刷新担当相は、復興予算を使うのに適切でないと判断した事業は政府の行政刷新会議で取り上げ、各府省に見直しを求めていく考えを示しているが、現時点で沖縄の国道整備事業に見直し指示は出ていない。 (中根政人、清水俊介)

■資料4 復興予算検証小委員会流会 衆院 民主不参加で
(東京新聞10月11日)
 

衆院決算行政監視委員会の小委員会は11日、東日本大震災の復興とはかけ離れた事業に復興予算を流用したとされる問題を審査する会合を開く予定だったが、委員14人のうち8人を占める民主党委員が欠席したため流会となった。 

 民主党は、内閣改造で空席となった同委員会の筆頭理事の後任が決まっていないことを理由としているが、野党の追及への警戒感も消極姿勢の背景にあるとみられる。 

 新藤義孝小委員長(自民党)は「責任ある与党が参加せず極めて遺憾だ。一刻も早く復興予算の適正化を図りたい」と記者団に述べた。

資料5 河野太郎ブログ
http://www.taro.org/2012/09/post-1264.php 

週刊現代とNHKが調べた復興予算の流用問題を、衆議院の決算行政監視委員会で取り上げるべく、平将明代議士が交渉を続けてくれている。

しかし、本家本元の財務省までが、かなりの流用をしている。

例えば2011年の三次補正の復興予算で、12億円を使って、12の税務署の耐震改修をやっている。

大阪福島、姫路、荒川、龍ヶ崎、古河、富岡、向島、藤沢、館山、武蔵野、柏原、舞鶴。

2012年当初予算の復興予算に、大阪福島、姫路、荒川の3税務署の改修予算5億6000万円が計上され、2013年度の概算要求に大阪福島、姫路の2税務署の改修予算3億2200万円が含まれている。

その一方で、壊れた横浜税関仙台コンテナ検査センターの検査機器の更新については、ようやく2013年の概算要求に12億円が計上された。

財務省の来年度の概算要求の資料をみると、「大型X線検査装置の復旧等」という項目がある。ああ、これが仙台のコンテナ検査センターの機器だなと思うと、要求金額が24億8100万円とある。
 

復興予算の流用にはほとんど全ての役所がかかわっている。復興予算の流用にはほとんど全ての役所がかかわっている。 

外務省による復興予算の流用

外務省も例外ではない。

ODAに必要な機材等の調達を被災地から行うというのが言い訳だが、調達先のリストを見てみると、トヨタ、コマツ、日本製紙、富士フイルム、オリンパス、日立工機、住友建機、日立建機、凸版印刷などの名前がずらり。

いや、調達先の企業を直接、助けるだけではなく、サプライチェーンの問題や風評被害の問題の解決に役に立つはず、というのが外務省の答えだが、トヨタから自動車を五台購入しました、というのがサプライチェーンや風評被害の問題解決になるのだろうか。

それでも何か我々にできることはないかと考えたのです、とさかんに外務省は訴えるが、それならば復興予算には手を出さず、来年度のODA予算の調達を被災地限定でやればいい。

インドネシアやエルサルバドル等の国々へ地震計などを供与するというのも復興予算に入っているのだが、これらはまだ予算が執行されていない。ぜひ、復興予算ではなく、来年度のODA予算でやってもらいたいものだ。

外務省の課長クラスは、それは政治の判断というが、復興予算でトヨタを五台買って途上国に送るというのを聞いたときに、外務省内でそのお金の使い方はおかしいと声をあげたスタッフは1人もいなかったのだろうか。

外務省がODA予算で被災地から物を買って途上国に送るよりも、被災地にきちんとその分の金が回るようにしたほうが復興の役に立つと考えた人が外務省内にはいなかったのだろうか。

外務省が復興予算を流用してODAで出そうとしているこれらの機材がきちんと止まるか、それを止めるのが反省した外務省の官僚のレベルなのか外務大臣レベルの判断まで持ち上がってしまうのか、きちんと見極めよう。

今日現在、復興予算の流用問題をきちんと審議しようという衆議院の決算行政監視委員会の小委員会幹事会に、民主党は「党の方針」で出てこない。

資料6 <復興予算>自殺対策に37億円交付 防災対策費で
毎日新聞10月14日

東日本大震災の復興予算が復興と関係の薄い事業に使われている問題で、復興予算とそのうちの全国防災対策費(全国防災)から、内閣府が全国の自殺対策事業として計67億円を既に交付したり、要求したりしていることが分かった。全国防災は首都直下や南海トラフの地震など切迫する大災害への備えが本来の目的。内閣府自殺対策推進室は「震災による心の被害を未然に防ぐという意味では防災に当たる」と釈明している。【池田知広、樋岡徹也】
 「地域自殺対策緊急強化事業」として、47都道府県を通じて自治体の電話相談や相談窓口担当者の養成などを支援するもの。11年度3次補正予算で計37億円を交付し、来年度予算でも全国防災から30億円を要求している。

 同事業は09年度から一般会計を財源に基金を積み増ししながら実施されてきた。下地幹郎防災担当相は12日の記者会見で「緊急性や即効性という基準からすると、震災前から一般会計で予算要求していた事業を全国防災で要求するのは、いかがかと思う」との見解を示しており、来年度予算の要求分は見直し対象になる可能性がある。

 また、内閣府(防災担当)は全国防災の支出要件について、復興増税を財源とすることから「効果の発現が直接的であること」などとしている。

 内閣府自殺対策推進室の担当者は「大震災後は自殺者が増加した。南海トラフ巨大地震などによる震災関連自殺を未然に防ぐことも目的だが、少し分かりにくいかもしれない」と述べた。

 ◇全国防災費分かりにくく


 
「全国防災」は東日本大震災を教訓に巨大災害に備える目的で設けられたが、既に起きた災害の復興予算で今後の防災を図るという趣旨が理解されにくい。これに加え、緊急・即効性の高くない事業への支出が相次いで判明。疑問の声が強まっており、羽田雄一郎国土交通相は「全国防災と復興予算を分けるとか、いろんな工夫も必要だと思う」との見解を示している。

 約19兆円に上る復興予算のうち、全国防災に充てられるのは約1兆円の予定。内閣府は昨年12月、対象となる災害について▽東日本大震災の大規模余震▽南海トラフ巨大地震▽首都直下地震▽日本海溝・千島海溝地震--などを例示した。

 各省庁は沖縄県の国道ののり面工事をはじめ、官庁施設の耐震改修や津波対策など被災地以外にも支出。今年度までに既に約1兆円が計上され、13年度予算の概算要求も約9400億円に達している。予定の1兆円枠を超えるのが確実な一方で、被災地への予算執行が遅れていることへの批判が高まっている。

 南海トラフの地震で被害が予想される沿岸県は財政が厳しく、全国防災の増額を要求。本来の使途とズレが生じていることに、各地で「こちらは全国防災で避難路の整備など直接的な対策だけやっているのに、なぜ防災と関係ない事業に支出するのか」(和歌山県の防災担当者)と国への不満が聞こえる。

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自民党安倍新総裁TPPに慎重姿勢鮮明に

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ひさしぶりにドイツから帰って参りました。あ~我ながら長かった(笑)。

さて、「日本農業新聞」(10月10日)によれば、安倍自民党新総裁と経団連会長の米倉氏、JA全中の萬歳会長がそれぞれ会談を持ったそうです。(欄外切り抜き参照)

米倉氏は例によってTPPの早期参加要請です。この人、国民の生活に降りかかってくる電気料金の値上げなどはすぐに容認するくせに、経済界の一部の儲けにならないTPPにはひたすらご執心のようです。
※関連過去記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/youtu-1.html

原発再稼働問題でも、安全性についての配慮より目先の利害ばかりの発言を繰り返していました。まったく困った人です。

この席で米倉氏は、「TPP交渉は早く参加しないとルール作りが進んでしまう。自民党も充分に考えてほしい」などと言っています。

この人、なにをとぼけたことを言っているのでしょうか。もうとっくに「交渉」とやらは始まっていますよ。

昨年11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)前に、野田佳彦総理が「(交渉参加のための)関係各国との協議を開始する」と言っていましたが、これは国内の風当たりから我が身を守る方便だというのは誰もが知っています。

既に外務省を主管とする「事前交渉」を事実上米国との間で始めて1年以上立ちます。

外務省はTPPを外交案件として処理しているために、相手国との関係に配慮して一切の情報を外に出さないという姿勢をとっているために、政府部内でも極めて限られた人間しか交渉内容が分からない状況です。

しかもこれにはご丁寧にも、4年間の守秘義務までついている徹底ぶりです。
※関連過去記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/post-cd51.html

日本の農業が壊滅する可能性がある交渉経過が、国民はおろか与党のTPPワーキングチームにも一切伝えられないのですからあきれたものです。

これでは国民は、なにを決められても結論だけを伝えられることになってしまいます。このような馬鹿げた交渉など聞いたことがありません。

年内に予想されていた米議会での承認は見送られましたが、それは米国内の(特に自動車産業)の反対が予想以上に強く、日本がもっと貢ぎ物を積み上げないと進展しない状況だからです。

ですから、この段階で「交渉参加を早くしろ」ということは、米国の要求を丸呑みしろと言っているに等しいのです。

アジア太平洋地域における経済連携については、さまざまなオプションがあります。例えば、ASEANプラス3、あるいはプラス6などは自民党政権時代から長い時間かけて交渉が進められてきた経緯があり、内容も透明化されています。

多国間協議にもっとも遅れて参加するという不利なTPPから始めねばならない理由はないはずです。

私は日米FTAにも反対ですが、しかしTPPに較べればはるかに個別交渉の余地が多く残っていました。TPPでは既に発効している先行議定国の決定内容に支配され、丸呑みするか否かしか選択肢がないのです。

そもそもTPP交渉「参加協議」の開始のやり方から異常でした。あの憲政史上最も愚かな男が、独断で始めてしまう神経が私の理解を超えます。

安倍新総裁は別の席でこう述べています。

民主党はTPPについての交渉力も経験もなく、通常は、相手の要求に対して当方の考えを多様な形できちんとぶつけて、そのうえで交渉になるのかどうかを見極めてかかるが、民主党には全くそれが無くて、交渉参加を約束してしまうことになっている。」
(山田としおメールマガジン)

まったくそのとおりです。このような多くの国内法や制度、関税を改変することになる外交交渉は、始めるにあたって交渉に入ることが利益になるのか、ならないのか、なるとしたらなにを原則にして交渉に臨むのかをあらかじめ明確にしておく必要がありました。

そのような事前の知見の積み上げによる交渉原則を確立しないでいきなり「平成の開国」というムード的スローガンだけで始めてしまうのですから、なんとも勇ましい。

安倍総裁は、JA全中萬歳会長が、「聖域なき関税撤廃がある限り反対する」と申し入れたことに対してこう答えています。

日米は同盟関係を結んでいるにも関わらず、聖域なき関税撤廃を提示される状況に問題がある。国益が守れない交渉参加は話にならない。」
(日本農業新聞」)

同席した高村副総裁も、「(TPP交渉は)複雑な問題をはらんでおり、ただ交渉を進めれば日本にとってよいと言いきれない面が多々ある」と述べました。(同)

この新自民党執行部の見解は、農業新聞は「慎重姿勢」と表現していますが、明確に反対を意味しています

自民党はかねてからTPP交渉原則を掲げています。これはTPP絶対反対の私ですらこれでやってくれるのならいいじゃないかと思うような事柄が列記されています。

自民党TPP交渉原則は以下です。

(1)政府が「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り交渉参加に反対する。
(2)自由貿易の理念に反する自動車などの工業製品の数値目標は受け入れない。
(3)国民皆保険制度を守る。
(4)食の安全安心の基準を守る。
(5)国の主権を損なうような投資家・国家訴訟(ISD)条項は合意しない。
(6)政府調達・金融サービスなどは、わが国の特性を踏まえる。

もはやTPPになにひとつ国民の利益がないことがわかっています。一刻も早く「参加交渉」から離脱すべきです。

もっとも困るのは、野田政権か選挙をやれば負けるというただそれだけの理由で来年7月の任期いっぱいまで政権にしがみつく場合です。

するとそれまでにはTPPは国民がなにひとつ知らない場で決まってしまう可能性があります。TPPにおいても民主党政権を一刻も早く退場させねば大変なことになります。

■TPPについてはカテゴリーTPPに沢山過去ログがありますので、お暇ならご覧ください。
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/cat22955329/index.html

■写真 早朝の霞ヶ浦。昔使った渡し場が浪に洗われています。今はこの脇を大橋が架かって便利になりました。

■明日あさっては定休日です。月曜日にまたお会いしましょう。

           ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

日本農業新聞10月10日

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EUはドイツを「電力自由化の後進国」と名指しした

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ドイツは2002年に第1次脱原発政策を開始します。去年のメルケル首相の第2次脱原発政策に遡ること10年前です。
※関連記事
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-fdbd.html

にもかかわらず、第1次脱原発政策の評価は高いとは言えませんでした。それは「稼働30年間」とした原発規制が実は抜け穴だらけだったということもありますが、もうひとつ大きな失敗の原因があります。 

それが昨日見た「電力自由化」の失敗です。電力会社の地域独占は、この中途半端な「改革」によりかえって強化されてしまいました。
※関連記事
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-7b3e.html 

新規参入した発電会社が1998年の「改革」開始から7年間で100社からわずか6社にまで減ってしまったことがそれを裏付けています。託送料のつり上げのために新エネルギーの会社はたった6%しか生き残らなかったのです! 

シュレイダー政権は2000年に再生可能エネルギーの優先権を与えるFIT(固定全量買い上げ制)や、電気料金にエコ電源に対して12.7%もの助成金を与えるなどのテコ入れを始めていますが、新規参入電力会社が枕を並べて討ち死にしては仕方がありません。

競争メカニズムが健全に働いているかどうかのもうひとつの目安に、大口需要者(企業向け)の電気購入の切り換えがありますが、英国、ノルウエイなどの諸国の平均は50%以上なのに対して、ドイツはわずか6%にすぎません。 

またもうひとつの競争指標である電力料金は、大口需要者料金が2004年調べでEU平均がメガワット当たり58ユーロなのに対して、ドイツは69ユーロ(6900円)で、ヨーロッパ一高い料金です。 

ドイツの電力の戦時独占体制はいささかも揺らいでおらず、再生可能エネルギーは拡大せず、大手電力会社はあいも変わらずコスト安のために既存電力源に依存し続けたことが分かります。 

これでは緑の党までが加わった政府がいかに口酸っぱく脱原発を叫んでもかんじんの電力会社が馬耳東風では、原発からの脱却など進むはずがありません。 

脱原発ウンヌンというより、電力事業という経済の根幹の独占状態を少しも改善しようとしないドイツに対して、「ブリュセル官僚」こと欧州委員会が本気で怒り出しました。 

欧州委員会はドイツに対して、「自由化後進国国」という恥ずかしいレッテルまで貼り、EUの要のドイツがそのていたらくでは示しがつかないだろうと攻撃したのです。 

欧州委員会は全ヨーロッパの統合送電網を目指しており、そのためには発電と送電を分離させねば、ヨーロッパのエネルギー市場の活性化はありえない」(バローゾ欧州委員)と考えていました

そして発電会社に完全に送電網の所有権を切り離すように要請してきました。これは持ち株子会社への所有移転も許さないという徹底した内容でした。 

欧州委員会は電力会社の裏技であった託送料つり上げをできなくするためにドイツに対して規制官庁を作ることを命じました。これを受けて出来たのが連邦ネットワーク庁(BNA)です。 

次いで、とうとう2004年にはドイツが発送電分離をこれ以上遅れさせるならば 欧州委員会は命令してでも実行させるという強い申し入れをしました。 

しかし、ドイツが本気で発電と送電分離を開始したのは2011年のメルケル政権による第2次脱原発政策まで待たねばなりませんでした。いかに業界の抵抗が強かったかお分かりになるだろうと思います。 

電力業界は、ドイツ最大手の電力会社であるE・ON社長ベルノタート氏が言うように、「送電網は株主の所有物送電部門の切り離しは、所有権の剥奪に等しい。EUの介入は電気料金の引き下げにつながらず、電力の不安定化を招く」と反論しました。

冗談しゃねぇ、ゼッタイに送電網を売るもんか、というわけです。この強硬な電力業界の反対にメルケル政権もたじろいだのですが、なんとさっきまで息巻いていたE・ON社は2008年2月にあっさりと送電網をオランダの送電会社に売り飛ばしてしまいます。

これには裏話がありました。実は「ブリュセル官僚」は、ドイツ連邦カルテル防止庁と共同でE・ON社が他の大手電力会社とカルテル行為をしていると見て捜査を行っていたのです。

カルテル行為だと認定されれば(たぶんそうだったのでしょうが)電力会社は売り上げの10%もの罰金を課せられます。E・ON社だけで数億ユーロの罰金を支払うはめになったでしょう。

それがわかった瞬間E・ON社は豹変して、捜査の打ち切りを条件に送電網を売却します。もちろんそんな裏取引があったことなど双方は認めませんが、ドイツ人は皆そう信じているようです。

そしてこの後に福島事故が起きて、それが決定打となります。ドイツで最も長い送電線を誇っていた業界2位のRWE社は銀行と保険会社の共同出資体に13億ユーロ(1300億円)で売却するなど発送電分離が急激に進みました。 

このようなドイツの例をみると、いったん強固な電力会社の地域独占を認めてしまうと簡単にそれは修正が効かないと分かります。

またドイツの電力会社だけが悪者のようにみえますが、必ずしもそうではありません。

実際にその後ドイツ電力会社が予言した電力の不安定は起き続けましたし、外国に送電網を握られるのはエネルギーの安全保障上気持ちがいいものではありません。送電網のメンテナンス面も不安です。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-19d4.html

第一、送電網を大枚の金を出して作った所有者は発電会社なのですから、その所有権を時の政権が売れと命令するのは自由主義経済の建前の上からは筋違いであることも事実です。 

ドイツの場合、なんと言っても国家主権を超越するEUが存在していましたからなんとかなったわけですが、それが期待できないわが国では相当な難航が予想されます。

東電のような巨額の借金で首が回らなくなっている所ならなんとかなるかもしれませんが、他の電力会社が簡単に同意するとは思えません。

脱原発政策を進めるためには、原発の国有化とワッセットで送電網買い上げをすることになると思われますが、ドイツ以上の困難が待ち受けていると覚悟したほうがいいでしょう。

それにしてもこういう具体的な道のりを考えないで、何年後には何%削減だなどとどうして言えるのか不思議でなりません。

■写真 霞ヶ浦の朝です。曇天の空が重く垂れ込め、遠くに朝日がかすかに見えます。

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大手電力会社が新規参入をさせない裏技、「託送料」つり上げ

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ドイツの脱原発の道はまさに失敗の山でした。その失敗はFIT(固定全量買い取り制度)に集約されますが、その前段の電力自由化でも大きな失敗をしています。

ドイツは1998年に電力自由化のEUから「命令」されてイヤイヤ電力自由化をしました。 しかし、それはあくまでも上っ面だけのものでしかありませんでした。

長年やってきたシステムというのはなかなか使い勝手がいいもので、競争がなかろうと、市場メカニズムがなかろうと、のほほんと電力会社がその上にあぐらをかいていようと、毎日キチンと安定した電気は来たわけです。 

それがEU指令で消し飛んでしまってドイツの電力会社は一時はパニくりました。しかしドイツの電力会社はしぶとく合併して、かえっ独占強化という焼け太りになりました。 

これを苦々しく見ていたのが「ブリュセルの官僚」です。フリュッセルにはEUの本部があり、そこには鬼より怖いと評判のEUの中央政府にあたる欧州委員会がありました。 

欧州委員会は、時には各国政府を超越するほど権限が強く、EUに加盟している以上泣いても笑ってもその「指令」には従うしかないのです。 

欧州委員会は、通貨を手始めに既に保険業、銀行業などの分野で自由化を押し進めてきました。残るはガス、電気などのエネルギー部門です。 

欧州委員会には各部門に「欧州委員」がいて、それは中央政府の閣僚の役割をしています。いや、各国政府の閣僚なんぞより権限は強いでしょう。 

というのは、「欧州委員」は絶えずヨーロッパの市場に眼を光らせて、カルテルがないか、談合がないかを監視しており、必要ならば企業に立ち入り、帳簿を押収し、関係者を取り調べできるという国税のマルサのような警察権すら有しているのです。 

このマルサもびっくりの「欧州委員」は、ドイツの電力自由化に疑問を持ちました。「なぜドイツは電力自由化で独占が強化されたのだ」、当然そこに欧州委員は疑問を持ちました 

そしてドイツはナチス時代からの電力会社の地域独占を温存する何か裏技を使っているに違いないと目星をつけて調査を開始しました。

あったのです。その裏技とは、独占電力会社の自社所有(あるいはその子会社所有)の送電網を新たなライバルとなった参入電力会社に使わせないことです。

今になるとかえって驚くのですが、この時点ではドイツは発電と送電の分離をしていなかったのです。

ドイツ政府は個人消費者に発電会社の選択の自由を保証する代わりに、電力会社の送電網の独占を許すという妥協をしてしまいました。(下図はドイツのエネルギー源メニュー)

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これによって発電会社は新しい発電会社の市場参入を認めた代わりに、送電網を握りしめたままでよくなったのです。この構図は今の日本の改正電気事業法の「電力自由化」とまったく同じです。

もちろん電力会社とて、新規参入会社に面と向かって「あんたら新参者には使わせないよ」などと言ったらたちまちブリュセル官僚にお縄になってしまいますから、ある手を使いました。それが「託送料」です。 

新規参入者は発電は出来ても、自分の発電所から家庭までの送電網を持っていません。そんなものを作っていたら建設地の買収だけで膨大な金がかかって起業できません。

ですから、大手電気会社に「送電網を貸して下さい」とお願いするしかないわけです。 この送電線借用料を「託送料」と言います。ここが新規参入のネックとなっていたのです。 

もちろん他のEU各国も「託送料」制度をもっています。しかし、ドイツを除く国々は、EUが推奨する政府が託送料を規制する監督官庁を持っていました。 

それに対してドイツは、この監督官庁を設置せずにズルズルと7年間も無規制のままに、大手電力会社と新規参入者との間の相対取引を認めていたのです

新規参入発電会社にとってそれは「審判のいないサッカーのようなものだ」と言われていたそうです。いかに大手電力会社の無理無体があったのか想像がつきます。

このために、1998年の電力自由化以降約100社の新規参入電力会社が誕生し、7年後の2005年にはわずか6社しか残っていなかったそうです。 

このドイツは私たちにとっていい反面教師になります。つまり、発電と送電を完全に分離しないと、既存の電力会社はみずからの送電網から新規参入企業を拒絶できるということがひとつ。 

つまり、今の日本の電力システムのままでは、絶対にダメだということです。電力会社は新規参入発電会社に不当に高い託送料をかけて独占を維持しようとするからです。

そしてふたつめに、託送料を既存電力会社と相対取引で決める方式では圧倒的に送電業者が有利になるために、それを公正なものかどうかを監督する官庁が必要だということです。 日本でもこの監督官庁が機能していません。

このふたつの条件が揃って初めて電力市場が開放されたと言えるのであり、消費者は電気の購入先を自由に選択できることができるのです。 

まことにドイツは「いい手本」になります。絶対にドイツのようないいかげんな「電力自由化」をしてはいけません。

このような中途半端な「電気自由化」をすれば、新たに誕生した新規発電事業者はドイツのようにことごとく潰れてしまうことでしょう。

■写真 もう稲刈りも終わりです。黄金の穂波も脱穀されて米袋に。

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ドイツ・電力自由化の逆走 電力自由化が独占強化に結びついてしまった

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しつこくドイツのことばかりで申し訳ありません。

どうしてこうドイツにこだわるのかと言えば、たしかにひとつは何かにつけてわが国と比較されるので少々辟易としているという私の気分もあるのですが、やはりドイツの脱原発問題、つまりはエネルギー問題が日本と似ている部分が多いからでしょう。

まず、歴史が似ています。ドイツでは戦前の地域ごとに別れて多数あった電力会社が、ナチス政権による1939年の「エネルギー経済法」によって地域独占に統合されました。 

そしてこれはどこの国も似たようなものですが、第2次大戦前夜に総力戦に備えていっそう電力会社の独占が保護されました。軍需工場をフル生産させるためには、電力の安定供給が必須だからです。 

戦争中はいたしかたがないとして、問題は平和になった戦後も自由体制に戻らずにそのまま電力の戦時独占体制が続いてしまったことです。

ドイツの場合、戦後の西ドイツにも受け継がれて、片や東ドイツは共産体制ですから自由化など話の外です。ちなみに現首相のメルケルさんは旧東ドイツの出身です。 

西ドイツは1957年に電力会社の地域独占とカルテルを守るために「競争制限禁止法」という法律を作って、以後39年間も護持し続けてきました。 

このあたりまでは日本の戦前自由市場-戦時電力会社統合-戦後9電力会社支配という流れとそっくりです。

特に戦時中にそれまでの自由な電力市場が解体されて、地域独占ができたまま戦後になだれ込み現在に至る、という歴史はまるでわが国の歴史をみるようです。 

このドイツの地域独占が壊れたのが1996年12月の「ブリュセル官僚からの命令」といわれるEU指令96/92号「電力単一市場に関する共通規則」でした。 

このEU指令でドイツはそれまでの巨大電力会社10社による地域独占体制を廃止せざるをえなくなりました。 

これは価格カルテルや地域棲み分けをなくすだけではなく、「よそ者」に自分の会社の送電網を使わせねばならないという電力会社からすれば「屈辱的」な内容を含んでいました。

そして2年後の1998年に早くもライプチヒで電力自由市場が生まれています。これにより電力取引は自由化されるはずですが、そうは問屋が卸しませんでした。 

というのは、大手電力会社9社は、それまでの地域独占を取り消されたことを逆手に取って買収と合併に走ったからです。理由のひとつは国際競争力をつけるということです。 

ここで決定的にわが国と異なる条件がひとつ出てきました。ヨーロッパは電力網が国境を超えて統合されているのです。 

これはわが国が友好的とは言い難い近隣諸国に包囲されているために、燐国との電力統合をすることが出来ず、国内だけの電力網だということと対象的です。 

まぁ、もしわが国が中国や韓国あるいはロシアと送電網を共有していたら、竹島や尖閣、はたまた北方領土問題が熱くなるたびに送電網を遮断されてしまいますけどね(苦笑)。 

さてドイツは電力市場解禁をしたとたん、外国の電気会社との競争にさらされることになりました。

バッテンフォール・ヨーロッパのように北欧の電力大国スウェーデンの電力会社に買収される会社まで現れたりとすったもんだの挙げ句、10電力会社体制が4社体制に整理統合されてしまいました。 

結局、2011年段階で国内発電量の83%がこの4社の寡占というていたらくで、これでは電力自由化だか電力の独占強化だか分からないということになってしまいました。 

このドイツのように電力自由化がかえって電力会社の危機感を募らせて買収・統合に走らせ、かえって独占か強化されてしまう逆走事例もあることを私たちは頭に置いておいたほうがいいと思います。 

というのは、わが国では大いにこのケースは想定できるからです。現在わが国の9電力会社は、半分国営化されたも同然の東電を別格にしてどこも原発の維持費がのしかかって青息吐息です。 

この経営状況の中で安易に電力市場の開放をすると、今まで禁じられてきたブロック管区を乗り越えて送電することが可能になります。

経営体力がある電力会社はこの際とばかりに、弱小電力会社のシェアを奪いにかかります。これは現実に1996年以後のドイツで頻繁に起きたことです。 

電力自由化に伴って、とうぜん雨後の竹の子のように再生可能エネルギーを中心としたエコ発電会社や、企業の剰余電力の売電も盛んに行われるようになるでしょうが、それは総発電量の一部でしかありません。 

おそらくはドイツのように2割を超えるのは難しいはずです。すると結局は、ドイツと同じように電力の自由化が9社体制から4、5社体制に独占強化されてお終いとなってしまうかもしれません。 

なぜ、そうなるのでしょうか。それは送電網を握ってさえいれば、そこに自由にかけられる託送料で有象無象のミニ発電会社の首根っこを押えられるからです。 

ドイツはまさにこの託送料を使って、4社に独占強化した巨大電力会社が国を巻き込んで最後の抵抗を試みます。
それについては次回に。

■写真 彼岸花が散る前に咲き誇っています。 

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ドイツのFIT離脱方法とは、消費者負担増による「ボーナス制度」だった

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電力自由化は脱原発の切り札と言われています。しかしその一方で、電力を英国のように本気で自由化するとまだまだ幼児段階の再生可能エネルギーが大苦戦することもわかってきました。

理由は、元々再生可能エネルギーのコストが高い上に、天気任せの気ままな電力なので送電網に組み入れるのが難しいからです。

電力自由化と は電気料金の自由化でもありますから、高コスト電源である再生可能エネルギーはたちまち吹き飛ばされてしまいます。

ドイツは再生可能エネルギーが20%近くにまで増えてきました。これは膨大な助成金と電気料への賦課金の上乗せがあったからです。 

これが悪名高いFIT(固定全量買い取り制・ドイツ名EEG)によるベタベタに甘ったるい保護政策でした。

この過保護政策が仇となってドイツの再生可能エネルギーは、保護なしでは生きられないプー的体質になってしまいました。
※関連記事
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-cb78.html

 これでは計画どおり将来80%(!)まで再生可能エネルギーを増やした暁には天文学的補助金を支出せねばなりません。早くこの脛ッかじりを自立させないと「親方ドイツ」は大変なことになります。 

そこで徐々にFITの買い取り価格を2016年までに半分にしていく大鉈をふるいました。(下図参照)Photoこの時、太陽光パネル工場の労働者がパネルをぶっ壊すデモような反対デモをしましたが、連邦政府はFITからの段階的撤退の道を進んでいます。 

一方、ドイツ政府は2011年1月にFITに代わる新たな再生可能エネルギーの買い取り方式を打ち出しました。「市場ボーナス制度」といいます。 

これは再生可能エネルギーの発電業者が電力市場に売る場合、電気の市場価格とFIT価格との差額を「市場ボーナス」として需要者側に補填してもらえる制度です。 

つまり、電力市場では通常価格で売っても、需要者から差額を支払ってもらえるというわけです。再生可能エネルギー価格が高い分を国ではなく需要者が払うというものです。 

つまりは金の出所が、政府から一般需要家の企業や消費者になっただけと言っていいでしょう。 

またもうひとつの「改革」は、再生可能エネルギーが今まで電力市場に対しておこなってきた供給量予測と供給時期がズレた場合、市場規則に従って発電業者は罰則を受けねばならなかったのですが、これを変えました。 

罰則はそのままですが、発電業者に対して「管理ボーナス」を1キロワットあたり1.2ユーロセント(約.2円)を与えることにしました。 

この「管理ボーナス」制度を使えば、仮に1.5メガワットの風車やメガソーラーを持つ発電業者が2500時間運転すると約6800万円のボーナスを受け取ることができます。 

この発電業者側に圧倒的に有利な制度のおかげで2011年1月には前月比で6倍に売り上げが伸びたそうですから笑いが止まりません。 

この「市場ボーナス」と「管理ボーナス」制度によって、FITを止めてこちらの制度を使う業者が増えると見られています。 

このような「ボーナス制度」を市場メカニズム導入と言えるのかはなはだ怪しいもので、事実このボーナス制度によって需要側は年間約2億ユーロ(約200億円)もの負担増になったそうです。

このFITはいったん始めると一種の麻薬のようなもので、メルケル政権の経済相のレスラー氏は「甘い毒」とまで呼んでいます。

切るに切れないズブズブの補助金漬け体質になってしまうからで、止めようとしても止められなくなるのが分かります。 

結局のところ最後には、企業や消費者が泣く泣く肩代わりしていくことになります。日本は自らの進退をFITの導入条件とするという首相の奇策でなんの国民的議論もないままに開始されてしまいました。 

マスコミには「ドイツを手本にしろ」と叫ぶ人が大勢いますが、まさにそのとおりです。日本はドイツのこの苦い経験を大いに「手本」にすべき時です。

日本でも、再生可能エネルギーはなんらかの政府補助金を支出すべきだと私は考えています。初期補助金のブースターなくては再生可能エネルギーは離陸できないからです。

しかし、それをドイツのように電気料金に賦課金のように上乗せしていつまでも消費者の肩に背負わせるべきではありません。

むしろ徹底した電力自由化により配電まで分離し、再生可能エネルギーを消費者が自由に選択できる仕組みを作るべきです。

だまって作れば全量高く売れるなどという「甘い毒」のFITではなく、経営努力をして電気料金引き下げに努め、技術革新で発電の効率化と平準化を図り、エコ電力の価値を啓蒙していくことで消費拡大していくという普通の企業ならどこでもやっている自助努力が必要です。

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英国に見る電力自由化

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原発をゼロにすることだけなら、そんなに難しいことではありません。現に今、動いているのは大飯原発3、4号機のみです。

これでなんとか夏を乗り切ったのですからこのままなんとか、と思わないわけではありませんが、ドイツの先行事例を知るにつけ、もっと長い眼で考えなければならないと思うようになりました。

特に長期にわたって、原子力なき後の化石燃料に過度に頼らないエネルギー態勢を作り出すのは簡単なことではありません。

というのは、ただ供給源としての代替エネルギーだけあってもだめで、それをどのように供給していくのかという「制度」が不可欠だからです。

そこで3.11移行、東電処分問題と絡めて電力自由化が叫ばれ始めました。しかし議論が進んでいるとは到底言えない状況です。

しかし、それは東電処分と一緒にするからかえって解りにくくなるのです。巨額の負債や、原子炉の扱い、国からの支援で成り立っている原賠法、除染問題まで絡んでまるでもつれた糸球のようです。

ですからいったんは東電処分問題と電力自由化問題を切り離して考えないと、本筋の電力改革が見えなくなります。電力改革の大筋は思いのほかシンプルです。

第1に、地域独占型の9電力会社体制を解体して、市場メカニズムを導入することです。そのために発電会社と送電会社、そして配電会社までに3分割します。

第2に、地域ごとにもっと市場メカニズムが働くように47都道府県単位にまで細分化します。

この二つが誰しもが納得する電力自由化の共通原則ではないでしょうか。それを考えるためにヨーロッパの英国とドイツの事例を見てみたいと思います。この両国は対照的な電力自由化の道を辿りました。

ドイツ、英国の発電-配電網の歴史は日本とかなり異なっています。それは各国それぞれの歴史の中で発電-送電をしてきたために一概に「電力の自由化」と言ってもお家の事情はそうとうに違います。

簡単に電力自由化以前の送電網のタイプを整理するとこんなかんじです。

・英国 ・・・第2次大戦後一貫して国営管理
・ドイツ ・・・市町村電力会社(シュタットヴェルケ)+電力会社
・日本 ・・・戦後から9電力会社の地域独占

まず英国ですが、英国はサッチャー改革で肥大化した国営企業を解体する一環として発送電を民営化することを考えました。

発電所は国営だったものを、7割をナショナル・パワー社に、3割をパワージェン社に民営移管しましたが、お気の毒なことに原発だけは引き取り手がいませんでした(苦笑)。

産業界は原発のようなものを丸投げされてはたまったものではない、原発は国策ではないと算盤に合わないと判断したのです。当然ですな。

苦肉の策で国が100%出資で前2社以外に原発専用のブリティシュ・エナジー社を作ってそこが原発を所有し、逐次民営化をしようと思っていたのですが、奮闘努力のかいもなく見事失敗。

1995年2月に新規原発建設を断念し、現在稼働中の2基も停止する予定となっています。かくて英国の原発は事実上の終焉を迎えたわけです。

これを見ると洋の東西を問わず、いかに原子力というシロモノが国策なくしては出来ないものかとしみじみ思います。はっきり言って、米英仏露中の原発は原爆作りの副産物のようなものでしたからね。

日本の場合、これを国策民営といういかにも日本的な方法で解決しました。官僚が民間会社に地域独占の御朱印状を与える代わりに、因果を含ませて原発を作らせたのです。

福島事故後は、英国流の原子力を他の電源から切り離して一元的に国営化してゼロ化していくというのは現実的な方法で、日本でも使えると思います。

さて英国の送電網もナショナル・グリッド社に民営化された上で、地域別に12のブロックに分割して地域独占を与える代わりに供給義務を負う方式にしました。

そして興味深いのは「電力プール制」を作ったことです。これは卸売り電力市場のことです。これは一見日本の1996年1月の改正電気事業法の卸供給事業者(PPS)も認めるのと似ているように見えます。

ところがよく見るとかなり違います。英国版「電力プール制」は、先ほど述べた全国の送電網の卸元のナショナル・グリッド社が勧進元になって開く卸電力市場なのです。

ここに一定の基準を満たす発電会社がすべてが参加して、入札により電力価格を決定します。

大は国営発電業を引き継いだナショナル・パワー社から、小は再生可能エネルギーのミニ発電会社まで同じ入札に参加せねばなりません。

この「電力プール制」は、その日の午前10時までに翌日正午までの希望売電価格を入れておきます。

これは1日を48の時間帯に分けられていて、発電会社は30分ごとに自分の発電能力と発電所を入札提示していくわけです。一方、買い手の配電会社もまったく同様に午前10時から翌日の正午までの希望落札価格を提示します。

再生可能エネルギーだとこのあたりがかなり大変で、明日の天気予報とにらめっこしながらの入札額提示となるのでよくハズすそうです。

胴元の「電気プール」は、それぞれ0分間のタイムゾーンでもっとも安いものから落札していき、必要量に達すれば入札終了となります。逆に買い入れ価格は、落札された発電所の提示額でもっとも高い価格に統一されます

折り合えばハンマープライスというわけですが、いかにもサザビーズなどのような入札が大好きなイギリス人らしい制度ではあります。

ここで気をつけて頂きたいのは、あくまでも売り買いの単位は「発電所単位」なのことです。決して「発電会社単位」ではありません。ですから、落札されるのはもっとも安い売電をした発電所であり、もっとも高く買う配電会社だということです。

これは発電-送電-買電の三つがそれぞれに独立していなければ成り立たないことですが、非常に合理的なシステムです。電力自由化の極北と言ってもいいんじゃないでしょうか。

現在この英国型「電気プール制」は試行錯誤の過程にあるようで、いくつか不備も見つかっているようです。なんといっても国営を引き継いだナショナル・パワー社のような巨大会社と、再生可能エネルギー中心のミニ会社がコスト面で競争するのは難しいことが分かりました。

それなら、再生可能エネルギーなど止めりゃいいんじゃないか、というと次世代の新エネルギーは現在の段階では量産が効かないので絶対的に不利です。これではイノベーションが進まずに未来の芽が摘まれてしまうことになります。

このようにヨーロッパには、一方でドイツ型FIT(固定全量買い取り制度)のように再生可能エネルギーを甘やかして世間の荒波に当てなかった結果、税金と高い電気料金のぬるま湯から出られなくなったような国がある一方、逆に英国のように「皆んな平場で競争だぁ、負けたら潰れろぉ」というスパルタ型の国もあるということです。

いずれにせよ、現在は真摯に外国の事例、知見に学ぶ時期で、拙速な政治判断は厳に慎まねばなりません。

しかし拙速に成立したわが国の再生可能エネルギー法などは、このような電力自由化、発送電分離、原子力の国営化などの電力改革のごく一部にすぎない「部品」から開始してしまいました。

先行事例に学ばず、全体的構想を持たずに自らの目先の利害に飛びついた結果です。まったく醜悪そのものです。

このようなやり方ではかえって電力改革を遅らせ、その結果原発ゼロの道をさらに遠くしてしまうことでしょう。

わが国も遠からず電力の自由化の道を歩むことになります。いかなる形であれ、それは不可避です。その場合ドイツ型を取るか、イギリス型を取るか、はたまた日本独自の型にしていくのかが問われています。

今は広い知見を蓄積すること、そして議論する時期です!

■写真 今にも降り出しそうな空の湖畔。まるで日本海のようですが、水深7mです(笑)。

■明日明後日は定休日です。月曜のお越しをお待ちしております。

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ドイツ送電事情 ドイツ送電網責任者の薄氷を踏むような経験

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ドイツの電力供給はまるで薄氷の上を歩くようだと評されています。

2001年から11年間も連邦ネットワーク庁(BNA)長官をしてきたマティス・クルト氏は、メルケル政権の脱原発政策のいわば大道具監督だったような人ですが、彼は原子炉が一挙に7基止まった時のことをこう言っています。

送電網の状態が不安定になり、大規模停電の危険性が以前に較べて高まりました」。

この時は一気に約7ギガワットも消滅したのですからハンパではありません。ちなみにネットワーク庁(BNA)とは、インターネットとは関係なく送電網のコントロールをしている官庁です。

このBNAは非常に強い権限をもっており、送電系統にトラブルが起きそうな場合、地方政府の許可なしで発電所を再稼働したり、逆に止めたりすることができます。

これは再生可能エネルギーに対しても同等に強く権限を持っており、たとえば強風により風力発電量が異常に多い場合、その送電をカットすることもできます。過剰な電流をそのまま流すとケーブルに負荷がかかりすぎて故障の原因になるからです。

2011年にBNAがこのような送電網への強制介入をした回数は、実に308日間で1000回に登ります

これは脱原発政策以前の2003年にはたった3回にすぎなかったことを考えると、FIT(固定全量買い取制度)で激増した再生可能エネルギーと、停止した7基の原子炉がいかに大きな負担を送電網にかけているのかお分かりになると思います。

さて当時、経済活動の中心地のひとつであったドイツ南部のバイエルン市とバーデン・ヴュルテンベルク州は、原子炉が電力需要の半分を供給していましたから、これが一気にゼロとなるとその分をよそから引っ張ってこなければならなくなったわけです。

この時には両州の電力が枯渇して、ドイツ南部の送電網は大混乱をきたしました。日本で言えば、京浜工業地帯への送電が混乱したようなものです。

停電でも起きようものなら莫大な損害が出るわけですので、その責任者であるクルト氏は毎日生きた心地がしなかったでしょう。

そしてこの「原子炉一気止め」の後に来たのが、再生可能エネルギーの不安定さでした。今まで淡々と供給されてきた電気が、毎日、いや毎時刻みに刻々と変化をするのですから送電網管理者の側はたまったものではありません

この恐怖を味わったBNAは対策を考えざるをえなくなりました。それは日本の夏場対策と対照的に、厳しいドイツの冬場対策でした。

2011年8月、冬を前にしてBNAはコールド・リザーブ(予備発電所)を用意したことを発表しました。これは今までCO2問題で稼働を止めていた老朽石炭火力発電所を8基稼働させることにしたのです

ドイツ南部とオーストリアで再稼働させることで、なんとか厳しい冬を乗り切ろうとしたわけです。

クルト元長官は、もっとも厳しいシミュレーションに基づいて供給を予測したと述べています。つまり、毎日曇天が続き、おまけに風も吹かないという天気です。このような最悪シナリオを描かずに、原発をゼロにすることは自殺行為だからです。

このバックアップ用コールド・リザーブは作っておいてよかったのがすぐに証明されました。12月8日には送電業者のテネット社がオーストリアの火力発電所からさっそく電気を購入して穴埋めをしています。

実はこの時、ドイツ北部では電気はやや余っており、おまけに強風で風車はブンブン回っていました。

しかし、かんじんのドイツ南部工業地帯への送電網の拡充が遅れていたために余っているのに送れないという悲喜劇のようなことが起きたのです。

翌年2012年は記録的な大寒波がヨーロッパ全域を襲いました。まさにBNAが予想していた「最悪シナリオ」です。

寒波により電力需要は毎日ピークを更新する反面、太陽光パネルは曇天と雨でまったく電気を作らず、風車も回らないという事態が現実のものとなったのでした。

↑ Matthias Kurt氏

この時のことをクルト元長官はこう述べています。
一部の地域で電力需要が予測を上回ったためにコールド・リザーブを投入しました。この時に送電網のどこかが故障していたら停電が発生していたでしょう。」

結局この2012年の大寒波は、在来型の石炭、褐炭、原子力が電力供給を支えきり、再生可能エネルギーの不安定さが改めて再認識された結果になりました

よく太陽光発電の転換効率が高いという論者の中には、米国エネルギー省エネルギー情報局((DOE・EIA)の数値を引き合いに出す人がいます。

しかし、これは一年中雨の降らないネバダ州の砂漠地帯での数値だったりします。現実にはこのドイツBNAのように「最悪シナリオ」を想定して現実の脱原発施策を考える必要があります。

現在、北ドイツから南ドイツへ巨額の投資をして送電網を増設している最中ですが、なかなか建設用地が確保できず苦労しているようです。

現在ドイツは送電業者が電力停止をした場合に、損害を受けた企業は送電業者から年に最高6万ユーロ(600万円)の補償を受けられる制度を作っています。

これにより送電業者は年間1億ユーロ(100億円)ていどの追加資金が必要となり、これも電気料金に上乗せされていくことになります。

このような「脱原発大国ドイツ」の裏側を知り尽くしているクルト氏がやや皮肉に、「早すぎる喝采」と言うのはなんとなく分る気がします。

■関連過去ログhttp://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-6147.html

■写真 早朝の霞ヶ浦漁港。曇天の下、ひっきりなしに漁船が行き交います。

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BNA元長官マティス・クルト氏インタビュー

「エネルギーシフトにのぞむにあたり、ドイツはここまでとてもよく対処しています。しかし、だから大丈夫と考えるのは早計です。厳しい冬を乗り越えた今だからこそ油断大敵で、気を引き締めてかからなければなければなりません。

エネルギーシフトの成功を喜ぶのは少し早すぎます。まだドイツの電力のおよそ6分の1は原発によるものです。エネルギーシフトの本当の試練は、これらの原発を稼働停止しはじめてから始まるのです。われわれは、今後10年かけて大変な問題に取り組んでいかなくてはなりません

自然エネルギー施設の拡充方針に反対する人はいません。しかし問題は建設地の確保で、特に南ドイツでは不足しています。現在建設中の発電所では不十分なのです。すべての関係者には、この冬の経験を通じて新規建設の必要性を認識して欲しいと思います。

今多くの人は、ドイツが数週間フランスに電力を輸出したと喜んでいます。しかし2011年全体でみれば、ドイツはフランスに対してかつての電力輸出国から輸入国へと転落しています。都合のいい数字ばかりではなく、事実を見つめるべきです

極度の寒波とガス輸送の停滞により、予想を超えた困難に直面しました。…非常に逼迫した状況で、数日間は予備電力に頼らねばなりませんでした。万が一の場合もう後がないわけで、極めて異例な措置でした。」
(フランクフルター・アルゲマイネ紙)

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ドイツ環境相の太陽光発電「敗北宣言」

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私は太陽光発電ともうかれこれ15年近くつきあってきましたが、正直に言ってあまり出来のいい電源には思えません。 

「電気を愛おしい」と思う節電スピリットは叩き込まれましたが、実のところ、さてこの15年で元がとれたのかどうなのかはなはだ怪しいと思っています。 

これは私の個人的な感想ではないとみえて、ドイツのメルケル政権のレットゲン環境相は2012年2月に公式文書の中でこう述べています。 

「太陽光発電の助成コストに歯止めをかけるシステムはうまく機能している。太陽光発電の買い取り価格は2008年に較べてほぼ半分になった。」 

この環境相の「うまくいった」発言は、決して太陽光発電が「うまくいった」のではなく、逃げ出すことが「うまくいった」のです。誤解なきように。(欄外資料1参照) 

ドイツはFIT(ドイツ名EEG)の買い取り額を20~30%切り下げ、太陽光発電に見切りをつけました。このレットゲン発言には続きがあります。 

今後、われわれは、コストが比較的安い再生可能エネルギーの電源を集中的に拡大していかねばならない。それは陸上風力と洋上風力である。」

このレットゲン環境相は、与党CDU(キリスト教民主同盟)の中で「隠れ緑の党」と呼ばれてきたゴリゴリの環境派です。その彼をして、はっきりと太陽光発電には未来はない、と宣告されてしまったことになります。 

レットゲンも認めているのは、いままで太陽光に最も高い買い取り価格を与え、それに20年間固定といったボーナスをつけてきたFIT(固定・全量買い取り制度)は過ちだったという「敗北宣言」でした。
※関連過去記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-e850.html

 http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/post-ceb6.html 

しかしドイツの消費者からしてみれば、いままでさんざん高い電気を買わされ、太陽光助成のために税金を払わされてきた挙げ句、それはないでしょうという心境でしょう。

いままで、再生可能エネルギーは、EU域内は税金による助成を自由競争の建前で禁じ手きたために「賦課金」という形で消費者の電気料金に上乗せされてきました。(下図参照) 

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 (「脱原発を決めたドイツの挑戦」 熊谷徹)

実に36.3%もの賦課金が課せられています。これらの金はどこに行ったのかと言えば、太陽光発電に投資できたリッチな投資家と中国製パネルメーカーの懐に転がり込んだのです。 (欄外資料2参照)

ドイツではかつて世界一を誇ったQセルズが再建申請をし、外国からの投機資金が大量に流入しました。儲かったのは初期の投資家だけです。

2011年1月には、再生可能エネルギーのための助成金の急増がたたって、700社の電気会社が6~7%の値上げをしました。 

このレットゲン環境相の「太陽光撤退発言」には緑の党などが反対したのですが、結局この方向でドイツは舵を切り直しましました。あまりにも財政支出が大きすぎて、バランスを欠いているのは明白だったからです。 

同じメルケル政権のレスラー経済大臣は、太陽光発電に与えてきた助成金を「甘い毒」とまで呼んで厳しく批判しています。これはお金をもらう業者は一時的に潤っても、それにやがて頼る麻薬中毒患者のようになってしまうからです 

2012年4月1日から、ドイツ政府は太陽光発電の買い取り価格を20~26%に一挙に下げるだけでなく、毎月0.15ユーロセント下げていく決断をしました。 

これは、たとえば10キロワット未満の屋上設置型太陽光発電の場合、2016年までにほぼ半分にまで買い取り価格が下がることを意味しています。(下図参照)

Photo                         (同上)

このようにドイツは、スペインに継いで太陽光発電からの事実上の離脱を表明しました。そしてもう少し現実味のある再生可能エネルギーであるオフショア(洋上)風力発電にシフトを開始しました。

しかし、ドイツがこの太陽光からの決別を開始した1年後に、日本は野心満々の大富豪某と無能首相のハーメルンの笛に導かれるようにして、ドイツの後を追ってしまいました。

ヨーロッパ型FITは理論上は素晴らしいものでした。全量固定買い切りで初期投資を呼び込み、一挙に再生可能エネルギーを普及させて原子力の代替エネルギーに育てていくという構想でした。

しかし破綻の淵に苦しむEUと同様に、FITも理論と現実の間に隠れていたクレパスに転落しようとしています。

            ゜。°。°。°。°。°。°。°。゜。°。°。°。

資料1

「ドイツ連邦議会(下院)は29日、太陽光発電の買い取り価格を大幅に引き下げることを柱とした「再生可能エネルギー法」改正案を賛成多数で可決した。4月1日以降に導入した太陽光発電は原則として、規模に応じて価格を約20~30%引き下げる。

ドイツは再生エネルギーの普及を図るため、送電事業者に買い取りを義務づける「固定価格買い取り制度」を採用。これにより太陽光発電は急速に拡大し、設備容量で世界一になった。しかし価格は電気料金に上乗せされるため消費者負担が膨らんでおり、太陽光発電の普及を事実上抑制する形に方針転換する。

法案によると、屋根に取り付けるなどの小規模発電は1キロワット時当たり24.43セント(約27円)から19.50セントに引き下げられる。規模が大きくなると引き下げ幅も拡大、5月以降も毎月価格を下げる。

太陽光発電は風力などに比べ、価格が高く設定されている。価格の見直しは定期的に行われていたが、これまでは10%前後の下げ幅だった。」(日経新聞3月30日)

資料2

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再生可能エネルギーの自立のためにも電力自由化と発送電分離は必要だ

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あまり知られていないことですが、戦前まで日本の電力市場は自由市場でした。昭和初期には実に800社超の電気事業者が全国にあったほどです。
 

ところがこれが戦時体制への突入と共に昭和17年(1942年)に政府の指導で統一されて2ツになります。つまり
・発電・送電・・・日本発送電(日発)
・配電    ・・・9ツのブロックごとの配電会社の地域独占

戦後にGHQはこれを解体せずに、そのままの形で温存しました。これが今の9電力体制です。(※沖縄を入れれば10) 

この時、GHQが財閥解体でしたような自由競争を取り入れていたら、その後の日本のエネルギー事情は大分ちがったものになっていたでしょう。 

さて福島事故以来、いくつもの原子力に替わる新たな電源が語られつつも常にぶつかるのがこの9電力体制、別名「電力幕藩体制」(飯田哲也氏命名)という地域独占制度でした。

原子力に替わる新たな電源を取り入れようにも、現実には9電力会社の地域独占のために電力会社が認める電源以外には発電しても、事実上送電できませんでした。 

それが1996年1月の改正電気事業法で、さまざまな方法で「卸供給電気事業者」(※新規の電力供給者のこと)が発電した電力を入札により「一般電気事業者」(※9電力会社のこと)に販売できるようになりました。

そして、他地域の電力会社にも託送料を払えば配電網を借りて送電できるようになりました。これで非常に限定的ですが、9電力会社の地域独占がわずかに崩れて、新しい電源が登場する機会ができたと言えます。

しかし、現実には配電網を握る電力会社の託送料が不当に高い上に、大口需要者にしか使えないなどといった弊害も指摘されています。

福島事故以後、原子力に替わる新たな電源を日本社会が取り入れるためには、電気事業法の抜本改正による発電と送電の完全分離が求められる時代になっています

ところで再生可能エネルギーは、そのお天気任せの気ままな性格が禍してか、9電力会社が仕切る系統送電網には嫌われっぱなしでした。これはあながち電力会社のエゴというだけではなく、下図のような発電量の大きなブレがあったからです。

長島風力発電所2012年8月30日.gif

これは九州電力長島風力発電所の一日の発電量推移ですが赤線が発電量、青線が風速です。ご覧のとおり、一日でも細かな出力の上下動を繰り返し、青線の風速が落ちるとてきめんに出力が落ちるのが分かります。 

いいときは昼前後の時間帯で4万キロワットと定格出力の80%程度を発電していますが朝夕はがた落ちです。まさに風任せ。 

もう一枚のグラフはベタ凪の一日の発電量です。たぶんプロペラはピクリともしなかったとみえて発電ゼロです。

長島風力発電所_2012年9月3日.gif

このふたつのグラフでわかることは、風力発電は定格出力の0%から80%まで変化してそのつど電圧と周波数の変動がある間欠性電源だということです。このような電源を系統電源に組み込むためには手段は三つしかありません。 

一番目は、風力発電に蓄電器を取り付けて一定の余剰電力が生まれたら蓄えておくことです。余剰電力を貯めて、発電が少ない時に送電し平準化して送電できるようにします。 

この蓄電方式は実際に試されましたが、現在の技術ではバッテリーにコストがかかりすぎてペイしません。そのうち安価で優秀なバッテリーが出来るようになるまで実用化にはなりそうもないのが現状です。 

二番目は、バックアップの発電所がいつも待機していることです。風車が止まったら代わりにその分を肩代わりして発電し、風車がブンブン回り始めたら止めるという具合です。 

これに対応できるのは、出力の上げ下げが自在にできる火力発電所しかありません。

ですから、ドイツでは再生可能エネルギーが伸びれば伸びるほど火力発電がバックアップで伸びて、今や約半分の電源は化石燃料、特に石炭火力が占めることになって大気汚染すら心配されるようなってしまいました。

一方電力会社としては、自宅の屋根発電程度ならなんとか紛れ込ませられますが、ある程度の量の予測発電量が期待されている場合、常に変動に備えてバックアップ発電所をスタンバイさせねばなりませんでした。 

また風力発電所の場合、オフショア(洋上)発電所が有力ですが、水中送電ケーブルの敷設から始まって、いったん故障でもすれば船で修理にいかねばならず、台風の通り道の日本では管理コストがかさむことがわかってきました。 

三番目は、ある地域の天候がダメなら、別の地域で補完できるような素早い電力融通ができるスマートグリッドです。

ドイツなどはこの再生可能エネルギーの送電網に26兆円が新たに必要だと言われています。スマートグリッドや超伝導送電線などの新技術を投入すればいっそうかさみます。 

去年、ドイツにある4ツの地域高圧送電網の1ツを管理しているテネット社のフォルカー・ヴァインライヒ氏はこう語っています。(英フィナンシャルタイズ 2012年3月27日)
http://megalodon.jp/2012-0428-1257-37/www.nikkei.com/news/latest/article/g=96958A9C9381959FE0E5E2E6E78DE0E5E2E1E0E2E3E0E2E2E2E2E2E2

 「冬は何とか乗り切った。だが我々は幸運だったし、次第にできることの限界に近づいている」。
ハノーバー郊外にある何の変哲もない低層ビルに拠点を構えるヴァインライヒ氏と同僚たちは、北海とアルプス山脈を結ぶテネットのケーブルの電圧を維持し障害を回避するために、2011年に合計1024回も出動しなければならなかった。前年実績の4倍近くの回数だ。」

 このようなドイツの窮状を見ると私は、風力発電は電力会社管理の系統送電網の中に入れて運用することは悪平等ではないかと思うようになってきています。
※関連過去記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-f3dc.html

現状では発送電が分離していないために、泣いても笑っても電力会社の送電網を使うしかないわけです。

結果、電力会社はコストをかけて風力発電のバックアップをせねばなりません。そのコストもまた電気料金に上乗せされて消費者がかぶることになります

私はこのような外部に負担をかけてしまうエネルギー源は、自立のための方途を考えるべきだと思っています。このままでは出来たら出来たきり、出来なければごめんなさいも言わないというだだっ児的電源から抜け出せません。

電力会社に依存しておきながら、発電基地までの送電網は作ってもらい、価格的にはFIT(固定額全量買い取り制)で過剰に守られ、出来ただけの優先送電権まで持ってしまう甘ったれた仕組みは、かえって再生可能エネルギーの自立を阻害します

自立の方法としてはこのようなものはいかがでしょうか。
①あらかじめ発電コストにその分を組み込んで蓄電池を高かろうと取り付けることを義務化する。
②あらかじめペアとなる自社所有の小規模火力発電所を近隣に作っておく。
③送電網と配電網まで含めて自社私有として「再生エネルギー産直」をする。

おそらくはどの案もかなりのコストかかるでしょうし、それで尻込みする事業家も多いはずです。しかしそれが再生可能エネルギーの真のコストなのですからしかたがないではありませんか。

そして、再生可能えエネルギーは高いは百も承知だが脱原発のために買うという消費者は、その専門配電会社から購入すればいいのです。018_4

上図はドイツのものですが、このように仮に高い電源であっても、脱原発由来の電源であるかどうかの選択権を消費者に持たせることで納得していく仕組みが必要です。高いから買いたくない消費者は買わねばいい、ただそれだけです。 

経済外的支援を減らしていき、経済原理の中に再生可能エネルギーを置かねばなりません。 

このままでは、税金で膨れ上がった肥満児のようなものに再生可能エネルギーは成り下がり、国民から疎まれるのは必至です。そのためにも電力自由化と発送電分離は必要です。

■写真 蘭の花です。筑波熱帯植物園で撮りました。

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ドイツの脱原発のふたつの資産・地方政府と緑の党 それを融合させたひとりの男

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脱原発を考える時、ドイツにあって日本にないものが二つあります。決意と覚悟ではありませんよ、念のため(笑)。 

それは、地方政府と緑の党です。ドイツの脱原発の流れや今の再生可能エネルギーの拡大には、地方政府と緑の党(同盟90/緑の党)が大きく関わっています。 

おそらくこのふたつの存在がなければ、ドイツはあれほど急激な脱原発の方向に舵を切ることはできなかったと思います。  

さて、ドイツで脱原発を決めたのはメルケル政権が初めてではありません。初めにその路線を敷いたのは、1998年に成立したドイツ社会民主党(SPD)と緑の党の連立政権でした。

これが打ち出したのが、2002年の「原子炉の稼働年数を最長32年に限る」とした脱原発政策でした。 メルケル政権から10年早い第1次脱原発政策でした。

この時反対にまわったのが、皮肉にも今や脱原発の旗手となっているアンゲラ・メルケル率いるキリスト教民主同盟(CDU)でした。 

彼女はこの時点ではかなりハッキリした原発擁護派で、後に政権を奪還してから財界の意見を取り入れてシュレイダー政権の原発稼働年数を12年延長することをしています。  

そのメルケルが180度の改心をしたのは、言うまでもなくあの「フクシマ」でした。「フクシマ」はドイツにおいてキリスト教的「最後の審判」のイメージと重なってくりかえし報道されました。そのあまりの事実誤認ぶりに、当時私は記事で批判したほどです。 

そしてそれがドイツ人の政治選択に明瞭に現されたのが福島事故のわずか16日後の2011年3月27日のドイツ南部のバーデン・ヴェルテンベルク州議会選挙でした。

それまで州の電源の半分を原子力にするという原発推進政策をとってきたCDUの現役州首相が敗北し、緑の党が圧勝したのです。 

この州はドイツ南部は工業地帯に属し、政治的にも保守王国だっただけにメルケルのショックは大きいものでした。これが脱原発への曲がり角になります。  

この緑の党という脱原発政党を勝利させた「フクシマ効果」は、保守陣営まで含めて挙国一致的脱原発の流れを作り出しました。 この後ドイツでは原発推進を言うことは政治的自殺だとまで言われたようです。

ちなみに2012年の公共放送ARDの世論調査による政党支持率はこのようなものです。
・キリスト教民主同盟(CDU)・・・35%
・ドイツ社会民主党(SPD) ・・・30%
・緑の党             ・・・16%
  

完全に国政の三局に入っています緑の党なくしては野党SPDは政権を狙えず、与党CDUも緑の党の動き次第で政権与党から滑り落ちる、そのようなキャスティングボードを握っているわけです。

ですから、緑の党の脱原発政策をCDUもSPDも無視して政権構想を作れないのです。実際、メルケルの脱原発政策への転換は、与党から滑り落ちることへの危機感があったと言われています。野党転落をくい止めるために、緑の党の政策を丸呑みしたのです。

先進工業国の中で環境政党がこれほど強い支持率を持つ国はドイツだけです。国民政党にまで成長したこの緑の党がなければ、2度にわたる脱原発政策はなかったのがお分かりでしょう。 

わが国は福島事故の当事国でありながらこの緑の党にあたる政党が存在しません。政党として脱原発を掲げるのは革新イデオロギーから抜けきらない社会党と共産党のみです。

残念ですが、彼らには今の盛り上がる脱原発の力をまとめきってりアルな脱原発へ向けたエネルギー政策を練り上げて、現実の国政に反映することは無理だと思われます。

「維新の会」は地方分権を掲げて三局になる可能性があり、脱原発運動家の飯田哲也氏も大阪市特別顧問だったのですから大化けすればと思わないではありませんが、橋下氏の個人的人気に頼りすぎており、先行きまったく不透明です。

一方、お隣のフランスは7割を超える原発大国であり、緑の党フランス版もあります。しかしドイツとは比較にならないほど脱原発の力はひ弱です。その理由のひとつは、これから述べる地方政府の存在にもあるようです。

緑の党と並んで脱原発の一翼を担ったのは地方政府でした。 

ドイツはビスマルクが統一ドイツを創るまで、「領邦国家」と言われるようなパッチワーク国家でした。プロイセン、バイエルン、ザクセン・ヴェルテンベルク、バーデンなどはかつては王国、大公国、都市国家でした。日本の江戸時代から徳川幕府がなくなったようなものだと思えば近いのではないでしょうか。 

このような歴史を持つドイツにおいて、州政府の力は日本の地方自治体とは比較になりません。地方政府の首長はゲーテの時代と変わらず「首相」と呼ばれ、「内閣」を組織します。国会には州政府代表を集めた連邦参議院があるほどです。 

当然のこととして、独自の財源と州法を持っており、国は大枠の政策と外交、軍事を委ねられている「だけ」といえるほどです。ドイツ連邦共和国は、国名どおり文字通り 地方政府の連合体なのです。

日本の原発政策において特徴的なのは、国策民営の方針のもとに国が電源3法を作りジャブジャブと立地自治体に交付金というアメを配りまくりました。 

このために立地自治体は財政の大半を国に依存してしまった結果、真綿で首を締められるように身動きがとれなくなりました。 

それに対してドイツの場合、中央政府と州政府との関係ではそんなことはやりたくてもできなかったわけです。だから、いったん原発に問題が生じると、州政府は稼働の停止を命じたり、建設中の原発の工事を凍結したりできるわけです。

すべてのドイツの州は独自に規制官庁を持ち、原子炉の運転許可を握っています。そのため、よしんば中央政府が推進派であっても、州政府段階でストップをかけられてしまいます

このような州政府の権限はわが国も学ぶべきでしょう。今のように立地自治体が原子力安全行政から遠ざけられていると、県は今回の事故のように非常時に独自の政策を立てて行動する思考習慣がなくなってしまっています。

わが茨城県のように「被曝」地でありながら、県独自では土壌や湖の放射線量すら計らないでは話にならないのです。

県は立地県独自の安全基準や稼働許認可権を持ち、自治体の力で県民の安全を守る政策と気概、そしてそれを支える財源が必要です

1985年、有力州のヘッセン州政府に緑の党が連立入閣します。この時、州政府の環境大臣になったのが、後に連邦副首相となるヨシュカ・フィッシャーです。彼はスニーカーを履いて大臣になったのでスニーカー大臣と言われました。

緑の党のイニシャチブを握ったフィッシャーは、それまで「反戦・反核」を掲げて左翼反体制色が強かった緑の党を現実主義的な路線にリニューアルします。彼がドイツの脱原発の資産であるふたつの要素、すなわち緑の党と地方政府を融合させたのでした。

私はフイッシャーこそがドイツ脱原発の最大の功労者だと思っています。彼の理想を持ったリアリズムは私に響くものがあります。もし、緑の党がなければドイツの脱原発政策はなく、緑の党に彼がいなかったら、緑の党は未だに地方の小さな環境政党でしかなかったでしょう。 

彼により反戦・反核のスローガンは消えて、これが緑の党が国民政党として躍進していくきっかけとなっていきます。

フィッシャーは後に1998年、連邦政権にSPDと連立して政権入りし、すご腕の外務大臣、副首相まで務めるので名前をお聞きになったことがおありでしょう。この時の環境大臣のポストも緑の党が押さえています。

フランスはわが国以上に強力な中央集権国家なために、地方自治体での歯止めが効きません。そのためにドイツのように原発立地地域の草の根的な脱原発運動が現実の国全体の脱原発政策に結びつくのが難しいようです。

ドイツは40年にも渡る長い脱原発運動の流れがあり、地方政府の政権入りから中央政府入閣を経て第1次脱原発政策を作り出し、そしてそれが今の国を挙げた脱原発へとつながってきます。

日本とフランスにはそのような地方分権的歴史も運動的蓄積も、ひとりのフィシャーもいません。だからダメだと言っているわけではなく、一朝一夕にいかない、と言っているのです。

わが国も「決意と覚悟」論から脱して、日本独自の脱原発の道筋を作っていかねばなりません

電力自由化の加速化-発送電分離-立地県の原子力規制行政参入-分散型エネルギー構造への転換などの個別の具体論をひとつひとつ深めていく必要があります。

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 ドイツ緑の党の党旗・党名は「緑の人々」ていどの意味です。

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