原発輸出にまで復興予算を不正流用!もう言い訳は許されない
もはや致命的とも言える復興予算の流用が発覚しました。
経済産業省が復興予算で海外インフラ輸出の調査に85億円流用し、うち5億円はベトナムへの原発輸出の調査費でした。(欄外資料1 東京新聞切り抜き参照)
経済産業省が不正流用していたのは、2010年10月の日越首脳会談で、他ならぬ「脱原発宰相」の菅直人首相が決めたベトナムのニントゥファン第2原発輸出に向けた現地調査に対してです。
このニントゥファン第2原発は2基で、電力9社と、原発メーカー2社が共同出資した「国際原子力開発」という国策会社が輸出事業を行っています。
この調査は、敦賀原発を運用している日本原子力発電に対して発注され、経産省の「インフラ・システム輸出促進調査等委託事業費」として使われました。
この予算を復興特別会計から流用した経済産業省の言い分は、「東日本大震災の復興・復旧に繋がる貿易促進」だからだそうです。また、「インフラの海外輸出をすることが被災地の関連企業に経済効果をもたらすから」だそうです。
一方、政府民主党は、復興予算不正流用について、今までこのような言い訳をしてきました。
「政府の事業仕分けで無駄な事業にメスを入れ”仕分けの女王”と呼ばれた蓮ホウ氏は、質問の際、復興予算を被災地以外でも使える「全国防災対策費」が設けられた経緯を説明。「政府は当初、復興予算は被災地に限定する方針だった。しかし自民、公明両党の要請で全国で使えるようにした」と流用の責任は自公側にあるとした。」(資料2参照 東京新聞)
つまりは蓮ホウ氏によれば、自民党が国土強靱化などと言って被災地以外の使途に押し込んだので、悪いのはみんな野党自民党だ、というわけです。
まさに居直りです。子供の言い訳です。もう脱力感すら感じます。政権党としての矜持はないのでしょうか。
たしかに自民党は国土強靱化政策を主張していますが、それは一般財源から支出するべきもので、目的税である復興財源から流用する性格でないことは明白です。
仮に自民党がそのようなものを押しつけてきたとしても、政府がきちんと「仕分け」ればいいだけの話です。そのために鳴り物入りで「行政刷新会議」を作ったのでしょう。
彼らは自分たちが事業仕分けしたはずの「不要な」予算が、「ゾンビのように」(東京新聞)よみがえってきていることに対して、国民にしっかりとした説明をする必要があります。
なにかあるとすぐに自民党が悪いという言い方を好んで民主党政権はしますが、政権をとって3年有余、もういいかげんに野党体質から抜け出したらいかがでしょうか。と言っても、先はあまりないようですが。
しかし、今回は他ならぬ事業仕分けの責任者だった枝野氏率いる経済産業省が国外の、しかも原発輸出絡みの不正流用ですから、もう言い訳のしようがいのではないかと思いますが。
「全国防災」という文言が、この被災地以外の流用の「法的根拠」になっているようですが、原発輸出の国外調査まで「全国防災」になるというのですから開いた口が塞がりません。
何度か書いてきていますが、被災地では瓦礫が山積みになっていたり、未だ所有権がわからなくなっていたりしているために復興計画が滞っている自治体がたくさんあります。
このような復興の遅れために基礎的復旧計画が整わず、住民の合意形成ができないために既に次年度に繰り越しになる復興予算が39%の5兆7千万円、「不要額」として国庫に返納された予算が1兆1132億円にものぼることが会計検査院よって指摘されました。
これでわかるように復興庁とやらは少しも機能していません。出来たのも阪神淡路大震災より1年遅れ、なにをしているのかさっぱり分からない名ばかりの幽霊官庁です。
「全921事業ごとの執行状況を分析した結果、予算額に対する支出率が8割以上の事業が347事業あった一方、337事業が2割未満にとどまり、ばらつきがみられた。 12年度への繰越額は38.3%にあたる5兆7203億円。繰り越した理由では、被災地の住民同士の合意形成の遅れなど事業計画を策定するうえで時間を要したケースが77%と大半を占めた。予算設計時よりも実績が下回るなどして国庫に返納された「不用額」は7.4%の1兆1132億円だった。」
(欄外資料3 日経新聞参照)
被災地の仮説住宅では、凍結防止用の工事すら予算配分がないために待たされており、老人がひとりまたひとりと亡くなっていきます。故郷に帰れずに亡くなる高齢者を尻目に、政府と官僚は彼らの手に渡るべき国民の血税をシロアリのように流用し続けています。
避難区域の人々も大勢いる被災地への復興資金を、こともあろうに原発輸出に横流しするとは!もはや人のやることではありません。彼らは芯から腐っています。
■関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-016b.html http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-81a0.html
■写真 湖の船着場跡。強烈な朝日の中で。
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■資料1 東京新聞10月29日
■資料2 東京新聞
【核心】「復興予算参院委審議 被災地不在 責任も転嫁」2012/10/19(東京新聞)
<書き起こし開始→
東日本大震災の復興予算が被災地とは関係ないところに流用されている実態が日々明らかになる中、予算をチェックするのが仕事の国会が、やっと動いた。十八日、参院は決算委員会を開き、この問題を審議。しかし、政府側の答弁は建前論を繰り返すのみ。民主、自民両党は責任の押し付け合いをするなど、被災地無視と言われかねない場面が続いた。(城島建治・岩崎健太朗・中根政人記者)
◆建て前 ~流用に反論「必要な事業」
「被災地に必要な予算が回っていない。誰のための予算か。復興増税を甘んじて受けた国民の理解を得られない」。みどりの風の谷岡郁子氏が切り込んだ。谷岡氏がやり玉に挙げたのは、被災地向けに部品を供給する企業などに出す「国内立地推進事業費補助金」だ。谷岡氏によると、政府が採択した五百十件の事業のうち、補助対象の工場が被災三県にあるのは、わずか三十一件。総事業費二千九百五十億円のうち、被災三県に工場のある企業には二百三十二億円しか支出されておらず「被災地優先になっていない」と批判した。
谷岡氏は「被災地に住む人が他県で過ごす家族に会うために使う高速道路料金の無料化支援は打ち切り、(沖縄など)全国の国道整備に復興予算を使うのはおかしい」と訴えた。
一方、公明党の加藤修一氏は「民主党は各省から上がってきた事業を、復興事業としてまとめているだけ」と指摘。民主党は野党の時、自公政権の予算編成を「各省が出してきたものをホチキスで留めているだけ」と批判してきたが、復興予算は「まさにそういう形になっている」と痛烈に皮肉った。
枝野幸男経済産業相は国内立地補助金について「被災地以外の企業を支えることで、被災地の産業の復興に資する」と説明。羽田雄一郎国土交通相は「被災地も重要だが、未来の子どもたちのための投資も必要」と理解を求めた。
この他にも質問者からは、必要な予算が被災地で使われていないとの指摘が続いたが、政府側は「復興予算が使われている事業は必要」との建て前論に終始。答弁は被災者たちには冷たく響いたことだろう。
◆ゾンビ ~「自公が要請」「執行は民主」
民主、自民両党は復興予算の流用の責任を押し付け合った。
かつて、政府の事業仕分けで無駄な事業にメスを入れ”仕分けの女王”と呼ばれた蓮ホウ氏は、質問の際、復興予算を被災地以外でも使える「全国防災対策費」が設けられた経緯を説明。「政府は当初、復興予算は被災地に限定する方針だった。しかし自民、公明両党の要請で全国で使えるようにした」と流用の責任は自公側にあるとした。
これに対し、自民党の森雅子氏は真っ向から反論。「民主党政権が事業仕分けで無駄として削減した予算が、次々と復興予算としてゾンビのように復活している。執行の責任は民主党にある。自公の責任にするなら、政権の座を返上すべきだ」とやり返した。
岡田克也副総理兼行政刷新相は来年度予算について、行政刷新会議で不適切な使用がないか調査する意向を示した。しかし、森氏は「政府は国民からまったく信用されていない。国会できちんとチェックすべきだ。民主党は他の委員会でも審議に応じるべきだ」として、国会審議に消極的だった民主党の姿勢をなじった。
■資料3 復興予算消化54%、事業でばらつき 検査院指摘
日本経済新聞2012/10/25
会計検査院は25日、東日本大震災で政府が2011年度に計上した復興経費14兆9243億円のうち、支出されたのは54.2%の8兆906億円とする集計をまとめ、参議院に報告した。
全921事業ごとの執行状況を分析した結果、予算額に対する支出率が8割以上の事業が347事業あった一方、337事業が2割未満にとどまり、ばらつきがみられた。 12年度への繰越額は38.3%にあたる5兆7203億円。繰り越した理由では、被災地の住民同士の合意形成の遅れなど事業計画を策定するうえで時間を要したケースが77%と大半を占めた。予算設計時よりも実績が下回るなどして国庫に返納された「不用額」は7.4%の1兆1132億円だった。
予算額1000億円以上の大型事業のうち、支出率が10%未満だったのは7事業。海岸や港湾の復旧事業は2143億円を計上したが、工事が必要な被災地域の特定が遅れて11年度には全く使われず、1381億円を繰り越した。農地や農業用施設の復旧費用2061億円も、農地所有者との調整に手間取るなどして支出率は2.6%と低かった。
全く使われないまま全額を不用額とした事業も5件あり、被災地の新卒者の就職支援のため集団面接会場を借り上げる厚生労働省の事業(972万円)は被災地で賃貸物件が逼迫したため断念。農協の倉庫などの復旧事業(14億円)は補助対象が原状回復費用にとどまり、設備を更新して再建を図りたい被災者とニーズにズレが生じて使われなかったという。
復興経費を巡っては、復興庁が6月に公表した集計で、11年度の一般会計の執行率を60.6%とした。検査院は今回、特別会計も含めて実際にどれだけ支出されたかを調べた。事業内容について評価しておらず、検査院は「各事業が復興基本方針や復興計画に沿っているかどうか、引き続き検証する」としている。
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コメント
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これはいくらなんでも酷いですね。
しかも野党のせいだとか(苦笑)
レンホウ。仕分けで熱弁奮っていたように、不満なら突っぱねればよかっただけでは?
さらに前原さんまで事務所費疑惑で「全く問題無い」と居直る始末。
この政権、もうダメだろ。
投稿: 山形 | 2012年10月30日 (火) 08時17分
目的税たる所以を拡大解釈しての流用!!
聞くにつけ、知るにつけ呆れてしまいます。元の自民党政権が良い・・と言うものではありませんが、結局のところ現政権自体「政権担当能力」の不足と言うより欠如でしょう。
ハトポッポの時は沖縄の基地移転問題で、「副案ある」発言、だめ管時代は「原発事故含む震災対応」
後を継いだノダさんは今の体たらく・・・・
かと言って東京都知事を辞職した方に期待するのも、いまいち具体的な考えが見えないし・・・・
出口の見えないトンネル状態を想像しています。
国会議員って国民の常識が通じない人々の集まり??
投稿: 北海道 | 2012年10月30日 (火) 13時46分
官僚の前例至上主義は長い自民党政権時代に作り上げられたものだと思います。また、その時代の国会議員も政策作成能力はなく、官僚に丸投げし、出来あがった作文を読むだけでのものだったのではないでしょうか?今の民主党との違いは、実質、官僚の作文でも、表に出てくるのは大臣であり、大臣が形なりにも官僚の上に立っていたことでしょうか?今は、何の為の大臣か判りません。てか、こんなにコロコロ大臣が変われば、官僚が勝手にしたくなる気が起きるのもアリかな。その意味では、官僚が如何に自分らの省益を最優先に物事を考えているかと言うことを白日の下に晒してくれた反面教師でしょうか。
いずれにしても、自国の国民を欺くような行為を平気で行える官僚がいるこの国は、本当にどうなるのでしょうか?
投稿: 一宮崎人 | 2012年10月30日 (火) 14時38分
一宮崎人様のコメントに納得です!!
閉塞感と脱力感が漂う現状ですが、生きて行かなければならない訳で、何とか現状を打破しなければなりません。
ガチガチのコンクリートの様な官僚体制ですが、官僚を使う(指示する)役目は政治家です。次期選挙時には、官僚を使いこなす技量をもった政治家を選ばなければなりませんね。
立候補時に見抜くのは中々に大変ですが、仮に当選したとして、一期間の動きを見て判断する事が必要す。
名前が知られているから・・・と言う世襲議員はもう止めにしたいです。
世論を動かすにはマスコミの活用も必要だし、ネットの活用も手段ではあります。
でも、当ブログの管理人様の様に、多岐にわたる情報を整理し、記事にまとめて下さる(しかも信頼出来得る情報)人ばかりとは限りませんので、真贋を見極める能力も我々に必要だと思っています。
投稿: 北海道 | 2012年10月30日 (火) 15時42分