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「想定外」の日本、「事故を排除しない」フランス

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もう少しフランスの「原子力の番人」である原子力安全院(ASN※)と、わが国の比較から国の原子力の安全管理のことについて考えていきます。

ラコスト院長というひとりの人物がいなければと考えると、あんがいフランスも今の日本と変わらなかったかもしれません。

彼は御歳70になる頑固が服をきて歩いているような老人ですが、私は勝手にジャン・ギャバンのような風貌ではないかと想像しています。なんか雰囲気じゃありませんか。

なにせフランスが誇る最新鋭の原発である欧州加圧水型炉(EPR)ですら、建設中にラコスト院長によって再三不備を指摘され工事停止にさせられています。

ラコスト翁には「フランスの原発はオレが守ってみせる」という気概が溢れています。彼のモットーを物語るこんな言葉があります。

あらゆる警戒を怠らないとしても、原発事故は決して排除できない。これがわれわれのあらゆる行動の基本である」。

フランスと日本は世界の原子力界を二分する国ですが、ここが日本とフランスを分ける分水嶺でしょう。

わが国は、「事故が起きるなどと考えだけで、ほんとうに起きると思われてしまう。事故は起きないものとして縁起の悪いことは考えない」という発想をとりました。

ですから、口では安全対策の徹底などと言いながら、近年米国から核テロにおける全電源停止のシナリオを提示された時にすら、そのようなことは起こり得ないとして検討することすらしませんでした。

結果、ある原子力技術者が悔恨を込めて語るように、「ただ福島第1原発の予備電源を屋上に上げておくだけで済んだ」ような改修作業すらしませんでした。

地震による大津波の可能性はかねてより指摘されており、福島第1原発のような第1世代原発が、事故において致命的な脆弱性(※)を持っていることを知りながら、あらかじめできる改修作業すら怠ってきたのです。※http://www.mobara.jp/nisimori/newpage100.index.html

その結果が「想定外」の連鎖です。思い出して下さい。

想定外」の地震と大津波のために外部電源がすべて切断され、予備電源までが流されたために全電源喪失が起き、冷却系が失われた結果、「想定外」のメルトダウンとメルトスルーまでが起き、「想定外」に4ツの原子炉が連鎖的に爆発し、そして「想定外」に広範囲に放射性物質が拡散した・・・。

書きながら怒りで震えてきます。ここまで「想定外」が続くなら、「想定外」とは一体なんなのですか。まさに人災です。日本人は地獄の釜の扉に手をかけ、危うくそれを全開にするところでした。

ラコスト氏率いる原子力安全院(ASN)は、福島事故直後からフランス全土の原発についての監査を行いました。

それはわが国のようなコンピュータを使ってのストレステストなどという生易しいものではなく、徹底したASN専門官の現場立ち入りを繰り返す査察で、9月11日までと提出期限が限られていました。

この報告書は、米英からの専門家も含めた数百人規模の調査団の「バカンス返上し、浸食を忘れた」作業によって7千頁にものぼる膨大なものにまとめられました。この報告書はネットで閲覧可能です。

特に査察項目に4つに重点が置かれました。
①洪水の危険
②地震
③電気系及び冷却系の喪失
④事故発生時の作業管理

これはまさにラコスト氏がフランス原発が「事故の可能性を排除できない」ことを熟知しているからです。

フランスの原発は1970年代から80年代にかけて作られた第1世代が多く、、したがって平均稼働年数も35年となります

フランス原発の稼働年数分布
・稼働年数28年・・・34基
・      22年・・・20
・       2年 ・・・4

この稼働年数分布を見ると、フランスでもわが国の福島第1原発といい勝負の古いのがゴロゴロしているということです。古い原発が多いのは「原子力大国」の宿命でもあるのでしょう。

フランスでは稼働年数上限野30年から40年といわれる廃炉時期に差しかかった原発が過半数を占め、したがって第1世代特有の冷却系の脆弱さという致命的欠陥を抱えていることになります。

この報告書を基にASNが下した原発補強措置
①原子炉が従来型の冷却装置の使用不能な場合の「究極の救済方法」としての冷却水の確保
②電源の究極的確保
③地震、洪水などへの堤防、土台の強靱化
④事故発生の場合の施設内の放射能除去・濾過対策
⑤地球物理学的障壁と揚水方法を2012年までに決定して設置
⑥使用済み燃料プールが漏水した場合の給水方法
➆炉心と人員救助のための原発付近の掩蔽された危機管理センターの設置
⑧2012年までにフランス電力会社は(EDF)は「核緊急展開部隊」(FARN)を設置し2014年には展開完了すること。
⑨原発周辺の工場施設の連鎖事故防止

このような報告書と対策が去年9月中旬の時点で提出されたことに私は感嘆します。

この時点ではわが国は原因解明のための公式事故報告書すらできておらず、政府事故調査報告書が完成したのは、実に事故後1年半たった2012年7月30日のことです。

この事故原因調査と対策の遅れはわが国が、あの愚か者が再可能エネルギー法を辞任の条件としてしまったために政局化してしまったためです。

私にはこのような原子力事故処理を政局化する神経自体が理解できません。本当にあの男は災厄以外なにものでもありませんでした。

原子力は政治の域外に置くべきだというのが、私の今回の福島事故に対しての教訓です。その意味でも、フランスASNのあり方は参考になります。

フランスの原子力安全管理は、「内閣から独立した地位」を保障され、強い権限を持たされています。故に、狭い意味での「政治」から自由です。だからこそ政治家の思いつきなど相手にしないタフな監視かできるのです。

これは常に政治の強い影響下にあり、時の政権により方針のブレが大きく出てしまうドイツより、ある意味で優れた原子力のコントロール方法ではないでしょうか。

事故を想定しない国の過酷事故は起きるべくして起き、起きた場合は誰ひとり責任をとることなく、原因解明は遅れに遅れ、立てるべき対策もおざなりになったまま、180度真逆の「脱原発」へとムード的になだれ込んでいくのでしょうか。

※仏原子力安全院(Autorité de sûreté nucléaire)には原子力安全機関、原子力安全局という訳もあります。院長は総裁という別訳もあります。

■写真 収穫前の黄金の稲穂。雲がピースサインを作っています(笑)。

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原発を真面目に終りにする方法」カテゴリの記事

コメント

これは全く持って私の主観であり批判もあることでしょうが、

「反対派」対策で、少しでも「万一の危険」や「事故対策」などとは発言できなくなったことで『安全神話』が形作られたと思っています。

フランスのような独立した組織が作れなかったことには、バカな「国のやることには何でも反対!」と騒ぐ連中にも責任があるのではないでしょうか?

投稿: 山形 | 2012年10月23日 (火) 08時04分

http://blog.livedoor.jp/amenohimoharenohimo/archives/65828228.html
http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-1689.html
ここをみてもあなたは国を信じますか?
真実を拡散してください。
嘘が公になった時、あなたは復興の妨げをした事になりますよ。
善意のつもりが、嘘の手助け、いい加減に目を覚まして下さい。

投稿: | 2012年10月23日 (火) 21時03分

↑の匿名投稿者様へ

あなたは人様のブログコメントに自分の主張にあったリンクを貼ることしかできないんですか?

どうして自らの手で検証しないのですか?

被災自治体にそれぞれどのくらいの震災がれきが残存しているのか。
被災地域に稼働可能なごみ処理プラントはどのくらいあるのか。
また,それらの処理能力を踏まえ,地域内処理にどのくらいの期間を要すのか。
被災地に新しくごみ処理プラントを建設する場合,どのくらい作ればいいのか。
またその用地取得から完成,稼働開始までの期間は?費用は?

被災地のプラントでは震災がれきだけでなく,生活ごみの処理もしなくちゃならないってことも忘れないでくださいね。

これらを検証するには,ネットと少し考える頭があれば十分なはず。
政府発表は虚偽だと叫び,そのかわり出所もはっきりしない怪情報を拡散希望とは笑止千万です。

ここのブログ主様は,ご自分で情報を収集・分析し,ご自分で考えてらっしゃいます。あなたのように曖昧な恐怖心だけを拡散し,復興の足を引っ張ろうとしている人とは違いますよ。

投稿: 北九州 | 2012年10月23日 (火) 22時11分

名無しさん。
ここはHN無しはダメっすよ。

>>「嘘が公になった時、あなたは復興の妨げをしたことになりますよ」

全く意味不明です。
カルト宗教か悪徳商法の勧誘でしょうか?
だいたい、ブログ主もコメント者も「国を信用しろ」などとは言ってないんですが。政府を厳しく批判している記事すら読まずに、リンク貼り付け拡散希望の書き込みですか?

いったい何と戦ってるんだか。

投稿: 山形 | 2012年10月24日 (水) 07時46分

名無し様。投稿いただいた記事と瓦礫はなんの関係もありませんね。どうして関係ないことを投稿するでしょうか?
ま、それは譲っていいことにしましょう。「国を信じますか」ですか?
すいません。笑ってしまいましたよ。私は3.11以降、私は一回も国を信じていません。ブログを少し読めば、「被曝地」の農民の私ほど行政不信な人間はいないのがわかるはずです。そうしたのは国や県の側です。

失礼だが、抽象的なあなたの「不安」とは違って具体現実によって、もっと言えばわが農場の悲惨によってそう思っています。

だからこそ、どうしたら「信頼できる国による原子力安全監視」ができるか考えているのです。
「信じられる国」を作るためにどうしたらいいのかを今考えています。口で「瓦礫反対」や脱原発を言うのは簡単です。ほんとうにそれを望むのなら、真剣になにを変えていかねばならないのかを具体的に考えなさい。

投稿: 管理人 | 2012年10月24日 (水) 18時04分

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