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福島事故直後の仏原子力安全院と日本政府の悲喜劇

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福島第1原発事故直後の3月30日、フランス国民会議下院(国会)において原子力安全院(ASN※)のラコスト院長は日本人の震災に対しての驚異的団結と忍耐を称賛しつつ、こう述べています。彼の怒りを行間から読み取って下さい。 

われわれはオブザーバーである。決めるのは日本政府当局だ。われわれには日本政府や東電に対して情報提供は強制できない。」 

ラコスト院長のこの「行間」を市民語に超訳してみましょう。たぶんこうなります。事実を下敷きにしてありますが、ラコスト翁はこんなに下品ではありません、念のため。 

「われわれはしょせん他人である。しかし他人のわれわれから見ると、日本政府はどう見てもイッパイイッパイに見える。そのくせわれわれが助言したり、ヨウ素剤などの救援物資を送ったりしようかと提案してもいらないと言う。その理由がなんと日本の係官はフランス語ができないからだと言われた。(※ホント)

おまけにわれわれがいちばん欲しい事故の推移についてはさっぱりだ。日本政府はなにも教えてくれない。
クローデル駐日フランス大使からは、われわれに毎日のように在日公民を脱出させたほうがいいかと聞いてくるが、判断材料がない。思わず、そんなことは米国大使館に聞けと怒鳴りたくなった。
腹が立つことには、日本政府は米国の専門家しか招待しなかったからだ。だから米国だけが福島の真実を知っているわけだ。
犬に食われろと怒鳴りたいところが、われわれは紳士なのでしないだけだ。」
 

さて、フランス原子力安全院(ASN)は、福島事故直後から一貫して3つのことを言っています。
第1に「日本の原子力事故の今後の推移を最優先で監視し」、第2に「原子力事故の原因を総括し」、第3に「東京電力への情報の直接情報の開示を要求」しました。
 

おそらくANSにとって、国の原子力安全機関が事故に際してやるべきことはふたつ。すなわち、事故対処を第一義としながら、同時に淡々と事故の現況について一切の政治的脚色なしに透明性を確保していくことが大原則としてあったはずです。 

しかし、この福島事故においてはフィヨン仏首相が、「このような状況の中では、ガラス貼りの情報を得るためにIAEAが相互扶助的役割を果たすことを願う」という表現で、もはや情報開示のために国際機関が介入して欲しい、という要請すらしているほどです。

事故情報を欲していたのは、米国NRC(米国原子力規制委員会)も同様でした。ただ米国NRCとフランスASNが大きく異なったのは、米国は独自に福島第1原発上空にグローバルホーク無人偵察機機を飛ばすことが可能だったことです。 

そしてこの無人偵察機情報は即時に米国政府中枢に送り届けられ、やや遅れてわが国政府にも提供されました。 

しかし、残念なことにこの貴重な情報を役に立てるだけの能力がわが国政府と安全・保安院にはありませんでした。 私たち国民はこの無人偵察機情報を政府からではなく、米国NRCのネット上で見つけることになります。

また米国はこの情報をIAEA(国際原子力機関)、カナダ、英国にも伝えており、そこを経由してフランスANCはようやく一次情報にありつけました。 

ついでながら、日本外務省は在日米軍の要請に従って、SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測)のデータを手渡しており、この情報は放射能雲が通過する自国民には一切知らされないまま、米国から諸外国へと流れていきます。

さらにSPEEDI情報は官邸にFAXされたものの誰ひとり読まなかったそうです。無能もここまで来るともはや笑うしかありません。 

というわけで、この後に来るメルトダウン・メルトスルーの隠蔽などは、わが国国民だけが知らなかっただけであり、諸外国は米国を通じてある一定の真相をいち早く把握していたようです。

だだし、それは日本政府と原子力安全・保安院によっての正式ルートではなく、米国を通じてでしたが。

こうして眺めてくると、国の原子力安全機関が持たねばならない性格は、国民に対する情報のガラス張りと、それを常に国際的に提供し、国際的な知見にかけることだとわかります。

一見平凡なことのようですが、福島事故において最も欠落していたのがこの情報の透明性なのです。

仏原子力安全院(Autorité de sûreté nucléaire)には原子力安全機関、原子力安全局という訳もあります。院長は総裁という別訳もあります。

■写真 真夏の台風一過の霞ヶ浦。霞ヶ浦管理事務所にハッカーが入って「脱原発」の書き込みをしていったそうです。ハッカーさん、それは霞が関のほうですぜ(笑)。

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コメント

情報の透明性がない。福島の事故以外でも多くの場合で感じられます。一概に全ての情報を公開する事が正しい事かどうかは議論が分かれるところかもしれませんが、その情報を知らずに不利益を被る多数の人達が存在することを知りながら、自分たちの保身の為に情報を秘匿する行為は、決して許されるべきではないと考えます。ただ、今の日本、そんな人達が多い気がします。下々は、黙ってろ。大事な事は俺たちだけが知っていれば良い的な。

投稿: 一宮崎人 | 2012年10月24日 (水) 12時32分

私も、この国・社会の隠蔽体質・透明性の無さは依然として全く変わらないと思います。日本国・日本国民には原発を扱う能力が欠如しているのではないかという絶望感を感じてしまいます。

しかし、原発・核燃料・放射性廃棄物が現実のものとして存在する以上(全ての原発が廃炉となったとしても)、フランス並みの組織が絶対に必要なことも言うまでもないことです。管理人さんも、だからこそ記事にしていると思っています。


でも、(「しかし」や「でも」ばかりですみません。)フランス並みの組織があったとしても
自身・火山列島である日本列島の放射能からの安全は確保できないと、私は思います。

今日のニュースで原子力規制委員会が40万年前より後に動いたものを活断層とみなす考えを示しました。(現行は、国の耐震指針で12万~13万年前以降に活動した断層を活断層としている。)

地盤が安定しているからこそ、フランスの安全指針は成り立ちます。危険性を一つ一つ「想定」していったら、おそらく日本では一箇所も原発は存続できないと思います。

また、どこまでの「想定」をするかという問題も生じるでしょう。
例えば、活断層で40万年を考慮するのであれば、数万年レベルで起きているカルデラ破局噴火も想定すべきではないか。(恐竜時代の末期のような、巨大隕石衝突まで想定しろとは言いませんが・・・。)
社会的影響を考えると、カルデラ破局噴火などは、フランス並みの組織でも想定することはできないと私は思います。阿蘇カルデラ噴火の想定は計り知れません。鬼界カルデラ噴火に巻き込まれたら私の島もおそらくOUTです。


まとまりのない歯切れの悪いコメントですみません。

投稿: 南の島 | 2012年10月24日 (水) 19時44分

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