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2012年10月10日 (水)

大手電力会社が新規参入をさせない裏技、「託送料」つり上げ

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ドイツの脱原発の道はまさに失敗の山でした。その失敗はFIT(固定全量買い取り制度)に集約されますが、その前段の電力自由化でも大きな失敗をしています。

ドイツは1998年に電力自由化のEUから「命令」されてイヤイヤ電力自由化をしました。 しかし、それはあくまでも上っ面だけのものでしかありませんでした。

長年やってきたシステムというのはなかなか使い勝手がいいもので、競争がなかろうと、市場メカニズムがなかろうと、のほほんと電力会社がその上にあぐらをかいていようと、毎日キチンと安定した電気は来たわけです。 

それがEU指令で消し飛んでしまってドイツの電力会社は一時はパニくりました。しかしドイツの電力会社はしぶとく合併して、かえっ独占強化という焼け太りになりました。 

これを苦々しく見ていたのが「ブリュセルの官僚」です。フリュッセルにはEUの本部があり、そこには鬼より怖いと評判のEUの中央政府にあたる欧州委員会がありました。 

欧州委員会は、時には各国政府を超越するほど権限が強く、EUに加盟している以上泣いても笑ってもその「指令」には従うしかないのです。 

欧州委員会は、通貨を手始めに既に保険業、銀行業などの分野で自由化を押し進めてきました。残るはガス、電気などのエネルギー部門です。 

欧州委員会には各部門に「欧州委員」がいて、それは中央政府の閣僚の役割をしています。いや、各国政府の閣僚なんぞより権限は強いでしょう。 

というのは、「欧州委員」は絶えずヨーロッパの市場に眼を光らせて、カルテルがないか、談合がないかを監視しており、必要ならば企業に立ち入り、帳簿を押収し、関係者を取り調べできるという国税のマルサのような警察権すら有しているのです。 

このマルサもびっくりの「欧州委員」は、ドイツの電力自由化に疑問を持ちました。「なぜドイツは電力自由化で独占が強化されたのだ」、当然そこに欧州委員は疑問を持ちました 

そしてドイツはナチス時代からの電力会社の地域独占を温存する何か裏技を使っているに違いないと目星をつけて調査を開始しました。

あったのです。その裏技とは、独占電力会社の自社所有(あるいはその子会社所有)の送電網を新たなライバルとなった参入電力会社に使わせないことです。

今になるとかえって驚くのですが、この時点ではドイツは発電と送電の分離をしていなかったのです。

ドイツ政府は個人消費者に発電会社の選択の自由を保証する代わりに、電力会社の送電網の独占を許すという妥協をしてしまいました。(下図はドイツのエネルギー源メニュー)

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これによって発電会社は新しい発電会社の市場参入を認めた代わりに、送電網を握りしめたままでよくなったのです。この構図は今の日本の改正電気事業法の「電力自由化」とまったく同じです。

もちろん電力会社とて、新規参入会社に面と向かって「あんたら新参者には使わせないよ」などと言ったらたちまちブリュセル官僚にお縄になってしまいますから、ある手を使いました。それが「託送料」です。 

新規参入者は発電は出来ても、自分の発電所から家庭までの送電網を持っていません。そんなものを作っていたら建設地の買収だけで膨大な金がかかって起業できません。

ですから、大手電気会社に「送電網を貸して下さい」とお願いするしかないわけです。 この送電線借用料を「託送料」と言います。ここが新規参入のネックとなっていたのです。 

もちろん他のEU各国も「託送料」制度をもっています。しかし、ドイツを除く国々は、EUが推奨する政府が託送料を規制する監督官庁を持っていました。 

それに対してドイツは、この監督官庁を設置せずにズルズルと7年間も無規制のままに、大手電力会社と新規参入者との間の相対取引を認めていたのです

新規参入発電会社にとってそれは「審判のいないサッカーのようなものだ」と言われていたそうです。いかに大手電力会社の無理無体があったのか想像がつきます。

このために、1998年の電力自由化以降約100社の新規参入電力会社が誕生し、7年後の2005年にはわずか6社しか残っていなかったそうです。 

このドイツは私たちにとっていい反面教師になります。つまり、発電と送電を完全に分離しないと、既存の電力会社はみずからの送電網から新規参入企業を拒絶できるということがひとつ。 

つまり、今の日本の電力システムのままでは、絶対にダメだということです。電力会社は新規参入発電会社に不当に高い託送料をかけて独占を維持しようとするからです。

そしてふたつめに、託送料を既存電力会社と相対取引で決める方式では圧倒的に送電業者が有利になるために、それを公正なものかどうかを監督する官庁が必要だということです。 日本でもこの監督官庁が機能していません。

このふたつの条件が揃って初めて電力市場が開放されたと言えるのであり、消費者は電気の購入先を自由に選択できることができるのです。 

まことにドイツは「いい手本」になります。絶対にドイツのようないいかげんな「電力自由化」をしてはいけません。

このような中途半端な「電気自由化」をすれば、新たに誕生した新規発電事業者はドイツのようにことごとく潰れてしまうことでしょう。

■写真 もう稲刈りも終わりです。黄金の穂波も脱穀されて米袋に。

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原発を真面目に終りにする方法」カテゴリの記事

コメント

これって、90年代にNTT独占の日本で通信業者の新規参入自由化の際に、散々問題になったケースと同じ構図ですね。

まあ、たまたま時代の流れで電話はケータイに移行してうやむやになったような…。

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