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原発事故緊急即応チームを作れ!

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フランスをモデルとして国による原子力安全監視はどのようにあるべきなのかを考えてきました。

このようなことを書いていると、必ずある種の誤解を受けます。それは私が原発が存続することを前提にして、つまり原発肯定の立場で考えているのだろうというものです。

正直にお答えすれば、半分イエスで半分ノーです。私はそのような二分法ではなく、あえて言えばリアリズムの立ち場に立ちます。

心情的にはいうまでもなく「被曝」地の私は心の底から原子力を憎んでいます。原子力と人類は共存できないと考えています。その意味では脱原発です。それもかなり強固なそれです。

しかし同時に、私はこの数年で地上から消え失せるわけでもないことも承知しています。福島事故を経験したわが国では消滅のテンポは早まるでしょうが、世界の国では新興国を中心として大増設の時代に突入しようとしているからです。

そしてそれらの国の一部が核保有国であることは、核兵器と原発問題が実は同じであることを教えています。彼らは核兵器を手放さないように、原発も手放すことはありえないでしょう。

わが国おいては、建設中の2基を除いて新規の増設はありえず、耐久限界の30年~40年に達したものから順次廃炉になるわけですから、わが国が脱原発路線をとろうととるまいと、2030年代にはほとんどの原発が姿を消すはずです。

仮に脱原発路線を選択したとしても、「南の島」さんがおっしゃるように廃炉と高濃度放射性廃棄物の最終処分場問題が解決しないかぎり(その見込みはないと思われますが)、原発内の使用済み燃料プールは温存されたままになることになります。

したがって、かなり長期に渡って原子力の安全監視活動の手を緩めることはできないのです。一度目覚めた原子力は簡単に眠りにつくことはありません。ここに原子力の本質的難しさがあります

さて本題に入ります。昨年3月の福島事故直後、フランス原子力安全院(ASN※)は全土の原発の緊急監査を行い、900頁に及ぶ報告書にiまとめ、それに基づいて9つの柱からなる原発補強対策をシフランス電力会社(EDF)に指示しました。
※関連記事
http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/10/post-5.html

そのひとつの柱に、原子力事故に即応する緊急展開部隊があります。

ANSは2012年までにフランス電力会社に対して(EDF)は「核緊急展開部隊」(FARN)を設置し2014年には展開完了することを命じています。

ここで聞き慣れない言葉が出ました。「核緊急展開部隊」です。

実はこのような核事故に対応する専門チームを持っている国は、核保有国の一部に限られています。非核保有国で原発専門の核事故緊急展開部隊を持つ国は存在しません。

構想内容は不明ですが、フランスASNが再来年の2014年までと期間を切ってその建設を開始した理由はよく理解できます。

福島事故の折りに、私たちは政府が自衛隊ヘリを使って水を投下したり、消防の高圧放水で冷却している光景を目撃しました。

残念ながらそれらの作業は高線量下の英雄的なまでの危険を伴いながら、あまり有効ではなかったと後に判定されました。

国民はその時に、原発の危機対応が一義的には私企業である東電に任されてしまっており、国には原子力事故に対応する危機管理部署がないことを知りました。

原子力安全・保安院があるといっても、あれは福島事故で正体がバレてしまいましたが、経産省の役人がローテーションで詰めているだけの素人集団にすぎません。

スポークスマンをしていた西山秀彦報道官などは、前職が貿易関係で、ただ英語が達者が取り柄というだけでスポークスマンをしていたというだけの話です。そんな人が国民にトンチンカンな情報をもっともらしく伝えていたのですからぞっとします。

それははもかく、原子力事故に即応できるセクションが政府部内にはない以上、作らねばなりません。ないままに再び福島事故と同様の原発事故が起きれば、悲劇が再生されることになります。

今回の福島事故でも明らかなように、原発事故は数時間以内の初動にすべてがかかっています。全電源喪失から冷却系喪失までは数時間の出来事です

そしていったん冷却系が失われれば、炉心融解までは坂をころげ落ちるようなものです。

冷却系に電気に頼らない物理的なものも併設したり、小型発電機を大量に常備するなどのするなどの改善はもちろん必要ですが、全電源喪失の段階で国が強力な支援をしなければなりません

これを私企業の電力会社に担わせること自体に問題がありすぎます。ここに原発の国有化の理由のひとつがあります。

また原発を核テロから守るためにも今のような民間警備会社ではなくSAT警察部隊の常駐が必要ですし、すべての原発とは言わないもののせめて電力会社の管区ごとにひとつの原子力事故緊急即応チームが要ります。、

そのモデルとなるのが、実働こそしなかったものの福島事故でも日本にも派遣された米海兵隊放射能等対処専門部隊(CBIRF・Chemical Biological Incident Response Force・シーバーフ)です。(欄外資料参照)

シーバーフは地下鉄サリン事件を契機にして誕生し、「隊員は特別訓練を受けたことがあり、化学物質の識別、放射線レベルの検査、放射線汚染を受けた人たちの洗浄を行う」(読売新聞 欄外参照)能力があるとされています。

また、原子力空母などの海軍艦艇にも派遣されており、去年の福島事故では原子炉そのものの冷却作業には直接参加しませんでしたが、下の資料によれば「技術的支援も可能」とありますので、本来はその能力も付与されているのではないかと思われます。

汚染地域の検知や偵察観測、除染作業や死傷者の搬出や救護の他、搬路確保のための障害物除去や建設、物資輸送などの広報支援なども担当する。また技術的な救援活動も可能としており、各任務に対して以下の小隊が組織されている

・医療支援班
・除染班
・技術救助班
・捜索搬出班
・爆発物処理班
・検知識別班
(以上Wikipediaより)http://ja.wikipedia.org/wiki/CBIRF

この核事故緊急即応チームの動きは、ちょうど口蹄疫の英国DEFLA(農務省)初動制圧チームのようなものを想像していただければいいのではないでしょうか。
※関連記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/post-8e54.html
     

命令が下れば、即時に大型ヘリやトラックなどで器材を持って現場ないしはオフサイトセンターまで緊急展開します。

そして、現場対策本部と協力しながら、無人観測機や観測ロボットなどを使って状況観測をし、必要があれば冷却作業を行います。

また、シーバーフの任務と同じ除染、救助、建設、物資輸送、搬入路確保、避難広報、医療、除染などの後方支援も行うことになるでしょう。

下のシーパーフの組織図(欄外資料参照)をみると、「初動対応部隊」がふたつに分かれています。これは、スクランブル対応可能な初動チームと、訓練や休養をしているチームに分かれるからだと思われます。

まず、スクランブルチームが出動し、やや遅れて招集のかかった本隊が合流するという段取りではないでしょうか。ちなみにシーバーフは450人規模です。

このように独自に作るとなると相当な費用と、専門スタッフの養成まで長期の期間が必要になりますので、今ある陸上自衛隊か、警視庁の化学防護隊を拡大して作ることもできるかもしれません。ただ、部隊の完結性(※)からみれば自衛隊のほうがふさわしいかもしれません。

いずれにせよ、このような緊急時を想定した即応チームの建設が一顧だにされないわが国の状況がうすら寒くなります。

仏原子力安全院(Autorité de sûreté nucléaire)には原子力安全機関、原子力安全局という訳もあります。

部隊の完結性・軍隊はそれ自体の内部に、施設建設、補給、医療など自立して活動するためのすべての機能を持っています。ですから一定期間補給なしでも活動することが可能です。それに対して警察、消防はそのようなすべての分野を保有していません。

■写真 真夏の霞ヶ浦。画面右に突き出しているのは内水面試験場の突堤です。もっとも昨日今日はいきなり関東は晩秋です。朝晩はしっかり寒い(笑)。

■明日明後日は定休日です。月曜のお越しをお待ちしています。

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■不測の事態」にも対応、米の放射能専門部隊
読売新聞2011年4月2日

東京電力福島第一原子力発電所の事故を受け、米政府が日本に派遣した「米海兵隊放射能等対処専門部隊」(CBIRF、シーバーフ)の初動対応部隊第1陣が2日午前、来日した。

放射能被害管理に精通した同部隊は、自衛隊による住民の除染や医療活動を情報提供などの形で支援すると同時に、大規模な放射能漏れなど原発の「不測の事態」に備える。

第1陣の10人余りは、米メリーランド州から米軍輸送機で東京・米空軍横田基地に到着した。第2陣は3日、第3陣は4日に来日する見込みで、派遣規模は総勢155人に上る予定だ。<br /> 来日しているのは、命令から24~48時間以内に展開して緊急事態に対処する、

CBIRFの二つの初動対応部隊の一つだ。極めて危険なレベルの放射能の「検知識別」、汚染地域からの被災者の「捜索搬出」、被曝者らの「除染」など6班を持つ。横田基地の「統合支援部隊(JSF)」の指揮下で関東地方の在日米軍基地を拠点に活動する。

福島第1原発の放射能漏れの状況は悪化の一途を辿っている。香港「星島日報」によると、米国の官員は、福島の原発危機の処理に協力するため、米軍が海兵隊の管轄下にある放射能被害管理の専門部隊を日本に派遣することを明らかにした。中国網日本語版(チャイナネット)が報じた。

今回派遣されるのは約155人の海兵隊隊員からなる化学・生物兵器事態対応部隊(CBIRF)で、3月31日に米国を発ち、4月1日に日本に到着する予定。隊員は特別訓練を受けたことがあり、化学物質の識別、放射線レベルの検査、放射線汚染を受けた人たちの洗浄を行うが、福島原発の原子炉の冷却作業には直接参加しないという。

■米軍、日本での原発危機対応で貴重な教訓得る
ウォールストリートジャーナル2011年 6月 21日

在日米軍海兵隊基地キャンプ・バトラー】<br />日本は、米国が近代戦を研究する上で思いも寄らない実験場となった。今年3月11日に発生した東日本大震災に伴う原発事故により、テロ・グループがダーティボム(核汚染を引き起こす爆弾)を爆発させた場合に直面する可能性があるような状況が生まれたためだ。
(略)

北日本の地上任務に就く海兵隊員の第一団には、軽量の放射線防護服・フード、安定ヨウ素剤、携帯用放射線検出器が支給された。海兵隊によると、救援物資輸送の終了ごとに乗組員と航空機は放射線量の検査を受けた。また特別チームは毎日、日本周辺の放射線量を計測し、軍司令官や関係者に最新の情報を提供していた。

第3海兵遠征軍の核事故即応チームが準備した説明スライドによると、航空機37機300以上の車両や主要装備類のほか、数百人の隊員の放射線量検査が実施された。
(略)

米軍による対応がすべて成功したわけではない。145人の隊員で構成される海兵隊の核・生物・化学兵器対応専門部隊(CBIRF)は4月上旬に日本に到着し、初の海外派遣となった。予防措置として送られた同部隊は日本側と訓練はしたが、実際に展開することはなく、駐屯基地のメリーランド州に帰った。

海兵隊の報告によると、同部隊の日本派遣で「学んだ教訓」は、政治的な意味はあったものの、実際的な効果はほとんどなかったとしている。 日本での震災救援任務で得られた他の教訓は、機密情報と監視情報を共有できた点だいう。第3海兵遠征軍司令官のケネス・グラック中将は、無人機と偵察機が収集した重要な映像などを共有する<br />決定は今回の救援活動で重要な役割を果たした、と指摘した。

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