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2012年10月 2日 (火)

再生可能エネルギーの自立のためにも電力自由化と発送電分離は必要だ

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あまり知られていないことですが、戦前まで日本の電力市場は自由市場でした。昭和初期には実に800社超の電気事業者が全国にあったほどです。
 

ところがこれが戦時体制への突入と共に昭和17年(1942年)に政府の指導で統一されて2ツになります。つまり
・発電・送電・・・日本発送電(日発)
・配電    ・・・9ツのブロックごとの配電会社の地域独占

戦後にGHQはこれを解体せずに、そのままの形で温存しました。これが今の9電力体制です。(※沖縄を入れれば10) 

この時、GHQが財閥解体でしたような自由競争を取り入れていたら、その後の日本のエネルギー事情は大分ちがったものになっていたでしょう。 

さて福島事故以来、いくつもの原子力に替わる新たな電源が語られつつも常にぶつかるのがこの9電力体制、別名「電力幕藩体制」(飯田哲也氏命名)という地域独占制度でした。

原子力に替わる新たな電源を取り入れようにも、現実には9電力会社の地域独占のために電力会社が認める電源以外には発電しても、事実上送電できませんでした。 

それが1996年1月の改正電気事業法で、さまざまな方法で「卸供給電気事業者」(※新規の電力供給者のこと)が発電した電力を入札により「一般電気事業者」(※9電力会社のこと)に販売できるようになりました。

そして、他地域の電力会社にも託送料を払えば配電網を借りて送電できるようになりました。これで非常に限定的ですが、9電力会社の地域独占がわずかに崩れて、新しい電源が登場する機会ができたと言えます。

しかし、現実には配電網を握る電力会社の託送料が不当に高い上に、大口需要者にしか使えないなどといった弊害も指摘されています。

福島事故以後、原子力に替わる新たな電源を日本社会が取り入れるためには、電気事業法の抜本改正による発電と送電の完全分離が求められる時代になっています

ところで再生可能エネルギーは、そのお天気任せの気ままな性格が禍してか、9電力会社が仕切る系統送電網には嫌われっぱなしでした。これはあながち電力会社のエゴというだけではなく、下図のような発電量の大きなブレがあったからです。

長島風力発電所2012年8月30日.gif

これは九州電力長島風力発電所の一日の発電量推移ですが赤線が発電量、青線が風速です。ご覧のとおり、一日でも細かな出力の上下動を繰り返し、青線の風速が落ちるとてきめんに出力が落ちるのが分かります。 

いいときは昼前後の時間帯で4万キロワットと定格出力の80%程度を発電していますが朝夕はがた落ちです。まさに風任せ。 

もう一枚のグラフはベタ凪の一日の発電量です。たぶんプロペラはピクリともしなかったとみえて発電ゼロです。

長島風力発電所_2012年9月3日.gif

このふたつのグラフでわかることは、風力発電は定格出力の0%から80%まで変化してそのつど電圧と周波数の変動がある間欠性電源だということです。このような電源を系統電源に組み込むためには手段は三つしかありません。 

一番目は、風力発電に蓄電器を取り付けて一定の余剰電力が生まれたら蓄えておくことです。余剰電力を貯めて、発電が少ない時に送電し平準化して送電できるようにします。 

この蓄電方式は実際に試されましたが、現在の技術ではバッテリーにコストがかかりすぎてペイしません。そのうち安価で優秀なバッテリーが出来るようになるまで実用化にはなりそうもないのが現状です。 

二番目は、バックアップの発電所がいつも待機していることです。風車が止まったら代わりにその分を肩代わりして発電し、風車がブンブン回り始めたら止めるという具合です。 

これに対応できるのは、出力の上げ下げが自在にできる火力発電所しかありません。

ですから、ドイツでは再生可能エネルギーが伸びれば伸びるほど火力発電がバックアップで伸びて、今や約半分の電源は化石燃料、特に石炭火力が占めることになって大気汚染すら心配されるようなってしまいました。

一方電力会社としては、自宅の屋根発電程度ならなんとか紛れ込ませられますが、ある程度の量の予測発電量が期待されている場合、常に変動に備えてバックアップ発電所をスタンバイさせねばなりませんでした。 

また風力発電所の場合、オフショア(洋上)発電所が有力ですが、水中送電ケーブルの敷設から始まって、いったん故障でもすれば船で修理にいかねばならず、台風の通り道の日本では管理コストがかさむことがわかってきました。 

三番目は、ある地域の天候がダメなら、別の地域で補完できるような素早い電力融通ができるスマートグリッドです。

ドイツなどはこの再生可能エネルギーの送電網に26兆円が新たに必要だと言われています。スマートグリッドや超伝導送電線などの新技術を投入すればいっそうかさみます。 

去年、ドイツにある4ツの地域高圧送電網の1ツを管理しているテネット社のフォルカー・ヴァインライヒ氏はこう語っています。(英フィナンシャルタイズ 2012年3月27日)
http://megalodon.jp/2012-0428-1257-37/www.nikkei.com/news/latest/article/g=96958A9C9381959FE0E5E2E6E78DE0E5E2E1E0E2E3E0E2E2E2E2E2E2

 「冬は何とか乗り切った。だが我々は幸運だったし、次第にできることの限界に近づいている」。
ハノーバー郊外にある何の変哲もない低層ビルに拠点を構えるヴァインライヒ氏と同僚たちは、北海とアルプス山脈を結ぶテネットのケーブルの電圧を維持し障害を回避するために、2011年に合計1024回も出動しなければならなかった。前年実績の4倍近くの回数だ。」

 このようなドイツの窮状を見ると私は、風力発電は電力会社管理の系統送電網の中に入れて運用することは悪平等ではないかと思うようになってきています。
※関連過去記事http://arinkurin.cocolog-nifty.com/blog/2012/05/post-f3dc.html

現状では発送電が分離していないために、泣いても笑っても電力会社の送電網を使うしかないわけです。

結果、電力会社はコストをかけて風力発電のバックアップをせねばなりません。そのコストもまた電気料金に上乗せされて消費者がかぶることになります

私はこのような外部に負担をかけてしまうエネルギー源は、自立のための方途を考えるべきだと思っています。このままでは出来たら出来たきり、出来なければごめんなさいも言わないというだだっ児的電源から抜け出せません。

電力会社に依存しておきながら、発電基地までの送電網は作ってもらい、価格的にはFIT(固定額全量買い取り制)で過剰に守られ、出来ただけの優先送電権まで持ってしまう甘ったれた仕組みは、かえって再生可能エネルギーの自立を阻害します

自立の方法としてはこのようなものはいかがでしょうか。
①あらかじめ発電コストにその分を組み込んで蓄電池を高かろうと取り付けることを義務化する。
②あらかじめペアとなる自社所有の小規模火力発電所を近隣に作っておく。
③送電網と配電網まで含めて自社私有として「再生エネルギー産直」をする。

おそらくはどの案もかなりのコストかかるでしょうし、それで尻込みする事業家も多いはずです。しかしそれが再生可能エネルギーの真のコストなのですからしかたがないではありませんか。

そして、再生可能えエネルギーは高いは百も承知だが脱原発のために買うという消費者は、その専門配電会社から購入すればいいのです。018_4

上図はドイツのものですが、このように仮に高い電源であっても、脱原発由来の電源であるかどうかの選択権を消費者に持たせることで納得していく仕組みが必要です。高いから買いたくない消費者は買わねばいい、ただそれだけです。 

経済外的支援を減らしていき、経済原理の中に再生可能エネルギーを置かねばなりません。 

このままでは、税金で膨れ上がった肥満児のようなものに再生可能エネルギーは成り下がり、国民から疎まれるのは必至です。そのためにも電力自由化と発送電分離は必要です。

■写真 蘭の花です。筑波熱帯植物園で撮りました。

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原発を真面目に終りにする方法」カテゴリの記事

コメント

「電力幕藩体制」とは、飯田さん上手いこと言いますね。

戦前の電力自由体制から戦時体制での強制統合は、鉄道(私鉄でも大手や田舎では残ったところもありますが)と似てますね。
電力に関しては戦後も暫くは慢性的な不足が生じていましたから、GHQも見逃したのでしょうか。
80年代~90年代にかけて、県内立川町(現庄内町)が風力発電の国内最先鋒でしたが、電力会社や県行政の激しい抵抗があって実に困難な道程でした。
実際に「毎年強風に悩まされてきた寒村」とは言っても、年中24時間常に同じように吹いている訳ではありませんし、輸入風車の信頼性や故障時の部品供給に問題があったりで(北海道サロベツでも同じことが起きてましたね。3年前に現地を見ましたが、風車を降ろして地上に放置されてるものがいくつもありました)…実際に県庁の連中も「あんな余計な物を」と、以前かなり嫌がってました。

ところが、突然県が『卒原発』とか言い出しまして、隣の酒田市海岸地域に風車を増設するそうです。
今世紀に入って2回も「景観保全」を理由に、民間参入を拒んだ場所に県が自ら大型風車を並べるというのですから、政治やカネが絡んでいるのは間違いないと思います。

環境・景観保全グループがようやく動き出しました。昨日の毎日新聞電子版に記事があります。

長いので分けました。連投失礼します。

80年代、高コスト慢性赤字体質の電電公社や国鉄は、自由化されたり分割民営化されました。もちろん良いことばかりではありませんが。

電力に関しても見倣うヒントはこのあたりにあるのではないかと、漠然とながら思っています。
値段が下がったり、サービス競争が起きたのは事実ですから。

現在の郵政や、ソフトバンクのイーモバ買収(そうきたか!安直だけど賢いな)なんか見てると、時代に逆行してるような感じもしますが…まあ、こういった話しだすと完全に脱線ですのでこの辺で。


それにしても、昨日からコツコツと地震がきますね。当方は「ん?今揺れたか?」程度ですが、管理人様も皆様もお気をつけて。

こんにちは。

自然エネルギーは天候に大きく左右されるのは分るのですが、1つの発電施設(1つの地域)での発電量は極端に変化するとしても、いくつか(別の地域)と平均化すればどうなのでしょうか?

平均化によって不足される電力も計算可能になり、火力発電所のオンオフで制御できるのではないでしょうか?

埼玉零細さん。

本文中にもあるように、それを補完するのがスマートグリッドです。
予算は…全国となるといくらかかるやら。
あと超高圧送電網ですね。

埼玉零細さん。コメントありがとうございます。山形さんが書いてしまいましたが、スマートグリッドが間欠性エネルギーを平準化する方法のひとつですが、それを全国規模でするか、地域でやるかでしょう。
大規模スマートグリッドはおそらく数十兆円かかると思われます。ここがネックでしょう。

>あらかじめ発電コストにその分を組み込んで蓄電池を高かろうと取り付けることを義務化する。

九州の離島では、既にこの条件がが現実につきつけられています。

「離島における風力・太陽光発電設備の連系について」
http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=3&cad=rja&sqi=2&ved=0CC4QFjAC&url=http%3A%2F%2Fwww.kyuden.co.jp%2Flibrary%2Fpdf%2Fcompany%2Fliberal%2Felec%2Fjigyouyou-taiyoukou-ritou.pdf&ei=KgRyUJm8AsejmQXTqYGwBg&usg=AFQjCNGBps-yh-ZJMtSSxo7e8hgQCKiuEg

九州電力の文書です。何か作為的なものがあるかもしれないので、慎重に読み解く必要がありますが、「離島は系統規模が小さいため、系統の安定性を保つために、風力・太陽光発電設備の出力変動幅を制限する必要があります。この制限値を超えるような出力変動幅をもつ風力・太陽光発電設備の連系を希望される場合、蓄電池を組み合わせるなどの出力変動調整を行うことで連系が可能になります。」とはっきり言っています。

これは地元新聞でも最近、記事になったのですが、奄美大島や徳之島では島の大手建設会社がメガソーラーを計画しており、もうそれで九州電力の許容範囲に達してしまいます。逆に、九州電力と打ち合わせて発電規模を縮小して計画を練直している様です。

幾つかの離島では、既存の風力発電で島の火力発電の対応能力を超えており、蓄電池なしでは太陽光・風力発電は新規増設できないということです。

原則として特別高圧連系・高圧連系が対象であり、住宅用太陽光は除くという注意書きはありますが・・・。


文書中の表では、離島では需要の1割ほどしか太陽光・風力では発電できません。外部の規模の大きな発電系統と繋がっていないと成り立たないということです。離島のような小さい社会は、新しい取り組みのモデルケースとなります。太陽光・風力発電を推進する上での課題が端的に現れていると思います。


文書中の「許容出力変動幅の定義及び蓄電池などによる出力変動調整について」という件も興味深い内容です。ぜひお目通しお願いします。

ドイツやデンマークは外国と電気を融通できるということが、太陽光・風力発電の比率を高められた最大の要因であるかもしれません。

太陽光・風力発電のような気まぐれな発電は、地形が複雑で天候が変わりやすい日本においては、最も向かない自然再生エネルギーだと思います。

九州電力の文書を見て、沖縄電力ではどのような対応をしているのか気になるところです。

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