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2012年10月 1日 (月)

ドイツの脱原発のふたつの資産・地方政府と緑の党 それを融合させたひとりの男

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脱原発を考える時、ドイツにあって日本にないものが二つあります。決意と覚悟ではありませんよ、念のため(笑)。 

それは、地方政府と緑の党です。ドイツの脱原発の流れや今の再生可能エネルギーの拡大には、地方政府と緑の党(同盟90/緑の党)が大きく関わっています。 

おそらくこのふたつの存在がなければ、ドイツはあれほど急激な脱原発の方向に舵を切ることはできなかったと思います。  

さて、ドイツで脱原発を決めたのはメルケル政権が初めてではありません。初めにその路線を敷いたのは、1998年に成立したドイツ社会民主党(SPD)と緑の党の連立政権でした。

これが打ち出したのが、2002年の「原子炉の稼働年数を最長32年に限る」とした脱原発政策でした。 メルケル政権から10年早い第1次脱原発政策でした。

この時反対にまわったのが、皮肉にも今や脱原発の旗手となっているアンゲラ・メルケル率いるキリスト教民主同盟(CDU)でした。 

彼女はこの時点ではかなりハッキリした原発擁護派で、後に政権を奪還してから財界の意見を取り入れてシュレイダー政権の原発稼働年数を12年延長することをしています。  

そのメルケルが180度の改心をしたのは、言うまでもなくあの「フクシマ」でした。「フクシマ」はドイツにおいてキリスト教的「最後の審判」のイメージと重なってくりかえし報道されました。そのあまりの事実誤認ぶりに、当時私は記事で批判したほどです。 

そしてそれがドイツ人の政治選択に明瞭に現されたのが福島事故のわずか16日後の2011年3月27日のドイツ南部のバーデン・ヴェルテンベルク州議会選挙でした。

それまで州の電源の半分を原子力にするという原発推進政策をとってきたCDUの現役州首相が敗北し、緑の党が圧勝したのです。 

この州はドイツ南部は工業地帯に属し、政治的にも保守王国だっただけにメルケルのショックは大きいものでした。これが脱原発への曲がり角になります。  

この緑の党という脱原発政党を勝利させた「フクシマ効果」は、保守陣営まで含めて挙国一致的脱原発の流れを作り出しました。 この後ドイツでは原発推進を言うことは政治的自殺だとまで言われたようです。

ちなみに2012年の公共放送ARDの世論調査による政党支持率はこのようなものです。
・キリスト教民主同盟(CDU)・・・35%
・ドイツ社会民主党(SPD) ・・・30%
・緑の党             ・・・16%
  

完全に国政の三局に入っています緑の党なくしては野党SPDは政権を狙えず、与党CDUも緑の党の動き次第で政権与党から滑り落ちる、そのようなキャスティングボードを握っているわけです。

ですから、緑の党の脱原発政策をCDUもSPDも無視して政権構想を作れないのです。実際、メルケルの脱原発政策への転換は、与党から滑り落ちることへの危機感があったと言われています。野党転落をくい止めるために、緑の党の政策を丸呑みしたのです。

先進工業国の中で環境政党がこれほど強い支持率を持つ国はドイツだけです。国民政党にまで成長したこの緑の党がなければ、2度にわたる脱原発政策はなかったのがお分かりでしょう。 

わが国は福島事故の当事国でありながらこの緑の党にあたる政党が存在しません。政党として脱原発を掲げるのは革新イデオロギーから抜けきらない社会党と共産党のみです。

残念ですが、彼らには今の盛り上がる脱原発の力をまとめきってりアルな脱原発へ向けたエネルギー政策を練り上げて、現実の国政に反映することは無理だと思われます。

「維新の会」は地方分権を掲げて三局になる可能性があり、脱原発運動家の飯田哲也氏も大阪市特別顧問だったのですから大化けすればと思わないではありませんが、橋下氏の個人的人気に頼りすぎており、先行きまったく不透明です。

一方、お隣のフランスは7割を超える原発大国であり、緑の党フランス版もあります。しかしドイツとは比較にならないほど脱原発の力はひ弱です。その理由のひとつは、これから述べる地方政府の存在にもあるようです。

緑の党と並んで脱原発の一翼を担ったのは地方政府でした。 

ドイツはビスマルクが統一ドイツを創るまで、「領邦国家」と言われるようなパッチワーク国家でした。プロイセン、バイエルン、ザクセン・ヴェルテンベルク、バーデンなどはかつては王国、大公国、都市国家でした。日本の江戸時代から徳川幕府がなくなったようなものだと思えば近いのではないでしょうか。 

このような歴史を持つドイツにおいて、州政府の力は日本の地方自治体とは比較になりません。地方政府の首長はゲーテの時代と変わらず「首相」と呼ばれ、「内閣」を組織します。国会には州政府代表を集めた連邦参議院があるほどです。 

当然のこととして、独自の財源と州法を持っており、国は大枠の政策と外交、軍事を委ねられている「だけ」といえるほどです。ドイツ連邦共和国は、国名どおり文字通り 地方政府の連合体なのです。

日本の原発政策において特徴的なのは、国策民営の方針のもとに国が電源3法を作りジャブジャブと立地自治体に交付金というアメを配りまくりました。 

このために立地自治体は財政の大半を国に依存してしまった結果、真綿で首を締められるように身動きがとれなくなりました。 

それに対してドイツの場合、中央政府と州政府との関係ではそんなことはやりたくてもできなかったわけです。だから、いったん原発に問題が生じると、州政府は稼働の停止を命じたり、建設中の原発の工事を凍結したりできるわけです。

すべてのドイツの州は独自に規制官庁を持ち、原子炉の運転許可を握っています。そのため、よしんば中央政府が推進派であっても、州政府段階でストップをかけられてしまいます

このような州政府の権限はわが国も学ぶべきでしょう。今のように立地自治体が原子力安全行政から遠ざけられていると、県は今回の事故のように非常時に独自の政策を立てて行動する思考習慣がなくなってしまっています。

わが茨城県のように「被曝」地でありながら、県独自では土壌や湖の放射線量すら計らないでは話にならないのです。

県は立地県独自の安全基準や稼働許認可権を持ち、自治体の力で県民の安全を守る政策と気概、そしてそれを支える財源が必要です

1985年、有力州のヘッセン州政府に緑の党が連立入閣します。この時、州政府の環境大臣になったのが、後に連邦副首相となるヨシュカ・フィッシャーです。彼はスニーカーを履いて大臣になったのでスニーカー大臣と言われました。

緑の党のイニシャチブを握ったフィッシャーは、それまで「反戦・反核」を掲げて左翼反体制色が強かった緑の党を現実主義的な路線にリニューアルします。彼がドイツの脱原発の資産であるふたつの要素、すなわち緑の党と地方政府を融合させたのでした。

私はフイッシャーこそがドイツ脱原発の最大の功労者だと思っています。彼の理想を持ったリアリズムは私に響くものがあります。もし、緑の党がなければドイツの脱原発政策はなく、緑の党に彼がいなかったら、緑の党は未だに地方の小さな環境政党でしかなかったでしょう。 

彼により反戦・反核のスローガンは消えて、これが緑の党が国民政党として躍進していくきっかけとなっていきます。

フィッシャーは後に1998年、連邦政権にSPDと連立して政権入りし、すご腕の外務大臣、副首相まで務めるので名前をお聞きになったことがおありでしょう。この時の環境大臣のポストも緑の党が押さえています。

フランスはわが国以上に強力な中央集権国家なために、地方自治体での歯止めが効きません。そのためにドイツのように原発立地地域の草の根的な脱原発運動が現実の国全体の脱原発政策に結びつくのが難しいようです。

ドイツは40年にも渡る長い脱原発運動の流れがあり、地方政府の政権入りから中央政府入閣を経て第1次脱原発政策を作り出し、そしてそれが今の国を挙げた脱原発へとつながってきます。

日本とフランスにはそのような地方分権的歴史も運動的蓄積も、ひとりのフィシャーもいません。だからダメだと言っているわけではなく、一朝一夕にいかない、と言っているのです。

わが国も「決意と覚悟」論から脱して、日本独自の脱原発の道筋を作っていかねばなりません

電力自由化の加速化-発送電分離-立地県の原子力規制行政参入-分散型エネルギー構造への転換などの個別の具体論をひとつひとつ深めていく必要があります。

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 ドイツ緑の党の党旗・党名は「緑の人々」ていどの意味です。

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