米国・TPP要求の一部が漏洩!やはり米国の最大ターゲットは医療分野だった!
A45枚の日本に対しての要望書にこのような4項目があります。(ソース・週刊新潮12月6日号)
①ジェネリック薬品の取り扱い
②日本で薬価を決める「中央社会保険医療協議会」への米国企業の参加
③ISDS(投資家対国家の紛争解決制度・※1を参照)の付与
④手術法も特許権の対象
この米国の要求書は、未だ正式には公開されておらず、「消費者保護活動をしている米国NPOが、TPP交渉をしている人物から得た機密文書」(同上)です。
この機密文書が事実ならばという前提ですが、やはり来たか、医療関係とISD(S)!
どうやら米国の狙いは、医療-保険分野を大きなターゲットとしているようです。
ジェネリック薬品は、先発メーカーと同じ成分の後発薬品ですが、これが日本においても薬価を下げる切り札として沢山用いられています。
特に高齢者や生活保護受給者などの生活が苦しい層には進んで提供するように、厚労省は指導してきました。これが米国には大いに目障りなのです。
なぜでしょうか?理由は簡単。米国企業が儲からないからです。ただひたすらそれだけです。別に日本国民の健康など眼中にありません。「自由貿易」というのはそのような冷徹なものなのです。
少し説明しましょう。
実はオバマ政権が第1期から目標としてきたのは国民皆保険(ヘルスケア法案)でした。私たち日本人からすれば意外な気さえするのですが、米国には高齢者、低所得者向けを除いて日本の国民健康保険に相当するものがありませんでした。
ですから、米国では急病になって病院に担ぎ込まれると救急処置した後に、事務員から「保険に入っていますか?」と聞かれます。この意味は、日本の健康保険に入っているのかではなく、AFLACのような任意医療保険に入っているか、ということです。
ないです、と答えようものなら、はい、すぐに病院から出て行って下さいです。これでは保険に入ることができる富裕層以外はたまったものではありません。貧しいと病気にもなれないのですから。
しかし、困らないのは保険会社と薬品会社です。高い薬と高い医療を使ってくれれば保険会社と薬品会社は儲かる一方ですから。
ですから米国の医療制度は、富んだ者が都市にいる限り世界一の高度医療を受けられますが、反面、富裕層以外にはとてつもなく冷たいシステムだったのです。
これを国民皆保険に変えようとして、オバマさんは死ぬほど苦労しました。巨大抵抗勢力が政府と議会内部にわらわらと巣くっていたからです。
この米国流医療-保険制度を輸出しようというのが、TPPです。その首謀者がオバマさんというのも皮肉です。
オバマ大統領閣下、あなたは自分の国で失敗した制度を日本に輸出して平気なのでしょうか?ふざけるなと言いたい。
さてこの機密文書には、先発メーカーがずっと治験データの占有権を持ち続け、後発会社がジェネリック薬品を作ろうとすると同じ治験データがなければダメだとする要求が盛られています。
これをやられれば、ジェネリック薬品はほとんど使えないも同然となります。
どこのバカが先発会社と同じ治験実験もう一回やりますか。同じ治験データがとれるは限らないし、そのコストはもはや新薬を作るのと一緒ですから。
すると考えるまでもなく、もはやジェネリック薬品の低価格という付加価値がなくなりますから、日本の薬品会社はジェネリック薬品から撤退していきます。
次に、中央社会保険医療協議会に米国企業の代表を送り込むことで、薬価や保険医療に関して国内法の改変を要求してくるつもりです。
間違いなく米国は、「混合診療の解禁」という年来の米国の要求をつきつけて来ます。
(※追記 初稿でこの部分を「禁止」としてしまいました。正しくは「解禁」です。申し訳ありません。)
我が国の医療-保険制度は、ほころびは無数にありますが、よくできていると思います。
私たちは生まれてからこの制度にあたりまえに浸っていますが、WHO(世界保健機構)が世界で公的医療制度が進んだ国(「健康達成度総合評価」)の第1位としたのはわが日本です。
なぜなら、老いも若きも、富者でも貧者でも、都市でも僻地でも平等な医療が受けられるからです。
その制度的根幹はオバマ大統領がやりたかった国民皆保健制度、つまり国民健康保険があるからです。
たとえば、日本では自由診療と保険診療を一緒にする混合診療制度は禁止されています。自由診療とは、高い金とりますが高度医療しますよ、という仕組みです。保健診療は、健康保険の範囲内で最良の医療を与えようということです
ですから高度医療に関しても、できる限り健保の枠内でする、薬も健保で補助するという仕組みを日本人は作りました。
ある意味で社会主義国より社会主義的ですらあり、そのために財政負担が大きくなりすぎてしまうということも指摘されています。
もしこの健保の根幹である混合診療がなくなれば、我が国は裕福な患者向けの高額な高度医療を施す自由診療と、一般ピープル用の医療に分裂します。
そうなった場合のシナリオはこうなるでしょう。
まず医師は今は保険診療も自由診療も平等に行っていますが、より利益の上がる自由診療に乗り出す者が増えるでしょう。なぜなら、医者も人の子、儲かるほうが好きだからです。
あるいは腕のいい医師もまたそちらへ流れるでしょう。米国では現実にそうなっています。
一般ピープルは、ジェネリック薬品が消滅して薬価が上がり、国民皆保険制度も「関税外障壁である」としてISD(S)に訴え出られて改変されているので、十重二重に苦しくなります。
なんとかいい医療にありつこうと思えば、高い医療保険に入っておくしかなくなります。そしてその保険会社の大部分は米国の会社なのです。
このようにして、米国の要求通りTPPにより、混合診療、ジェネリック薬品、国民皆保険制度がことごとくなくなります。
これがTPPです。
TPPを潰すことが、新自由主義者(※2)たちの言うように、単に「農業の既得権益を守るため」にやっているのではないことがお分かりいただけたでしょうか。
■※1 ISD(S)
ISD条項(*ISD 国際投資紛争仲介センター)とは、たとえば、TPP発効以降、海外投資家が投資している現地法人が国内法によって不利益をこうむった場合、国際仲介機関に提訴できるというものです。
このISD条項を使えば、この海外投資家が「期待した利益がえられない。これは日本の国内法の障壁のせいだ」と思ったら、米国政府が代わりに提訴できるという危険きわまりない条項です。
その場合日本政府自身がいかなる条約違反もしていなくとも、提訴可能となります。そしていったんその提訴がSDIで認められれば、国内法を変えるか、超越することができます。
すなわち国内法を外国資本が自由に超越でき、その内容を改変できるというとんでもない条項です。
■※2 新自由主義
別名、市場原理主義、あるいは新古典主義のことをいう。改良資本主義であったケインズ主義を否定し、企業の規制緩和、外国資本の参入自由化、公営企業の民営化、社会福祉切捨て、財政規律の建て直し、増税などの政府が取る政策のこと。
実施例は英国のサッチャー首相やレーガン大統領、橋本龍太郎首相、小泉純一郎首相、金大中大統領のとった政策である。
政権はとっていないが、「日本維新の会」も典型的な新自由主義的政策を掲げている。
合い言葉は「改革」。「構造改革」と政治家が盛んに言い始めたら、新自由主義者がブレーンにいると思ったほうがいい。
冷戦に勝利した思想として全盛を迎えたが、その後のリーマンショックを生み出した元凶とされ、その政策をとった諸国は共通して内部に「自己責任」の名の下に大きな社会格差や貧困問題、失業、自殺問題などをはらむことになる。
本来、新自由主義的構造改革はインフレ対策であり、バブル崩壊後のそれはデフレの克服に無力なばかりか、デフレを増大させる原因ですらあった。
主唱者はシカゴ大学のミルトン・フリードマン教授。わが国では竹中平蔵氏(小泉政権時の金融財政大臣)、池田信夫氏など。
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