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新政権樹立の後に来る米国の巻き返しに備えよ!

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野田首相にとって、TPPは政治的信念です。むしろ、消費税増税のほうが財務副大臣の時からの付け焼き刃なくらいです。 

おそらく野田首相は、経済・財政については官僚からささやかれることをそのまま口にしているレベルです。 

それに対してTPP=「聖域なき関税の撤廃」は、彼が官僚からレクチャーされるまでもなく、政治家としての初志です。 

千葉県で牛肉・オレンジの自由化反対決議を出そうとして全会派が足並みを揃えた時に、「勇敢」にもただ一人だけ反対した県議がいました。その県議の名前は、野田佳彦といいます。 

彼が県議だったのは1987年からの2期ですから、実に25年も前から資本グローバリズムの熱烈な信徒だったわけです。

自由貿易絶対主義は、前原氏にも共通しますので、きっと松下政経塾イズムのようなものだったのかもしれません

そう考えると、野田氏は単なる党内野党追い落としといった政治力学だけで解散したのではなく、新自由主義・自由貿易絶対主義が彼の政治的信念だったからです。 

したがって、選挙以後に誕生する「野田民主党」は、松下政経塾イズムである新自由主義と資本グローバリズムの双頭の旗を掲げた政党になるはずです。 

そして鳩菅なき後の「野田民主党」外交路線は、自民党に優る米国従属路線となります。この新自由主義・資本グローバリズム・米国従属の3本柱こそが、野田氏が次に打ってくる政界再編の軸なのです。 

提携の相手は、むろんあの橋下「維新の会」、あるいは「みんなの党」です。この3政党が連合して170議席程度を押さえれば、仮に自民党が約240議席をとろうと強力な野党勢力を構成することが可能です。 

その場合、参院での比較第1党の座と合わせて自民党新政権のTPP慎重・反対路線に楔を打ち込むことが可能となります。 

そして、自民党が作る予算案に対してことごとく参院で否決してゆく、ねじれ抵抗路線をとるでしょう。かくして国民は再び「決まらない政治」を見せられることになります。 

あるいはその間、自民党が米国との協議に失敗すれば、TPPが「第2の普天間」になる可能性もなしとはいえません。私はTPPの日米交渉が悪くしこると、この可能性がかなり高まってくると思っています。 

その場合、対中国に対する安全保障がらみで米国からの揺さぶりがきます。むしろそれはいままでも一貫してあり、TPP問題とは即安全保障問題であるのは現実だからです。

自民党が新政権の位置につくことがほぼ確実な以上、今や問題はむしろここに移りました。

さて自民党は11月13日の役員会でTPPについてこのような表現をとっています。
TPP は経済交渉であり、交渉の結果何が守れたかが重要である。交渉自体に問題があるわけではない。」
 

問題はこのTPPが純粋に「経済交渉」であるという自民党執行部の情勢認識が、どこまで米国に通じるかですが、私はかなり厳しいと考えています。 

リーマンショック以降の景気後退に苦しむ米国は、今年の末に「景気の崖」を超えていっそう不況が進化します。 

その場合、なりふりかまわず輸出促進と雇用確保のために、日本やアジアへ米国にだけ都合のいいTPPを押し付けることができる米国経済ブロックを作ろうとするでしょう。 

そこに世界第3の経済大国の日本が加盟しないことなど、米国にとってそもそもありえない異常事態です。 

米国にとって経済と軍事は不可分な以上。その米国に「TPPは(純粋に)経済交渉だ」という自民党執行部の正論が通じるかどうか、私には分かりません。

自民党はTPPについて、「聖域なき関税撤廃を前提にする限り反対」としているわけですが、何度か書いているように、TPPとは「多国間の関税撤廃協定」である以上、自民党が公約を守るならTPP交渉はこれでジ・エンドです。

日本を参加させるためにTPPを「関税の部分的自由化協定」にしようとすることはまったく不可能ではないでしょうが、この2年間のTPP参加各国の協議のちゃぶ台返しになってしまいます。

つまり、自民党新政権はTPPに関して、この2年間の交渉を全部ぶっ壊すという「蛮行」を働くことになると自覚したほうがいいのです。私が安倍氏が自民党伝統の対米従属派と一線を画すと評価するのはそこです。

しかし、新政権はこの結果について対応を考えておく必要があります。政局レベルではなく、相手が我が国の安全保障に直結する米国だからです。

安倍総裁と石破幹事長との2人のトップの間でも、この危機感がきちんと取れているか微妙です。 

石破氏は安全保障と農業の政界で数少ないエキスパートとして、たぶんこの二つを切り離して考えてはいないはずです。

彼は元々農政においてJAに依存した農政の改革者であって、輸入農産物に対して関税ブロックには限界あり、農業がもっと高いレベルの経済力を獲得すべきである、というのが持論でした。 

ですから石破氏はTPPに対して無原則に賛成していないものの、「農業保護は関税で行うのではなく税金で行うべきだ」としていました。TPP問題に置き換えれば、「条件つき関税自由化」論です。 

その考えのもとに農相時代にとったのが、4品目横断政策(※)という農地集積と営農大型化、山間地農業の集約法人化路線てした。 

これらの石破農政は、反対しようとしまいと来るであろう「TPP時代」に備えるという意味があったはずです。 

たぶん彼の頭の中には、いかにして日本農業を守りながら、関税障壁を縮小していくのかという農政があったはずです。

この政策は当の農民層の眼には小農切り捨てと写り 、前回総選挙において1人区の自民党候補総潰れの原因のひとつになり、自民党は下野します。

その後に出てくるのが、自民党の農業強化政策を批判し続けた民主党の農家戸別所得補償という典型的バラ撒き政策と、農地集積事業の凍結でした。

それに対して安倍氏は、石破氏と外交安全保障政策では一致するものの、この農政問題には疎いと思われます。彼が強いのはむしろ経済政策なのです。

ですから、一抹の不安として残るのは、安倍氏が純正保守の信条からだけでTPP反対を語ってる節があることです。

安倍氏は農業は国の礎であり、保護すべき分野であるから 守り通すのだという気概に溢れていますが、残念ながらそれ以上の具体的政策はあまりないと思わねばなりません。

これが「第2の普天間」問題となって対中国がらみの安全保障問題に連動した場合、安倍流純正保守主義と石破流リアリズムがどのように対応するのでしょうか。 

案外うまく補完関係になるかもしれないし、あるいは離反するのでしょうか。

いずれにせよ、「衆参ねじれ」が続く以上、自公を中心として民主党にも政策ごとの協議枠を残す、と石破氏は明言しています。 

最悪の場合、野党連合から予算案を担保に取られ、米国から不断に圧力をかけられた場合、自民党政権公約の「協議には参加するが原則は守る」が後退していくこともありえます。

中途半端な勝利では不安定な新政権しか生まれず、それでは妥協を許すことになります。それをさせないためにも、今回はTPP反対派が徹底的な勝利を収める必要があります。

■※4品目横断政策

正式には「品目横断的経営安定対策」。外国との生産格差を是正するための対策(格差是正対策)と収入変動の影響を緩和するための変動緩和対策。それにによって、国際競争力を持つ農業の担い手を育成しようとする制度のこと。

06年6月14日に成立した「担い手経営安定新法」に基づいて実施される。政策対象者は4ヘクタール以上(北海道は10ヘクタール以上)の認定農業者か、20ヘクタール以上の集落営農組織。認定農業者とは農業経営改善計画を策定して、市町村から認定を受けた個人または法人。 

変動緩和対策は格差是正対策の4品目とコメを対象に、販売収入が基準収入を下回った場合に国と生産者が拠出した基金から減収額の9割を補填(ほてん)する。
( 池上甲一 近畿大学農学部教授 による )

 

■写真 ニラの花です。

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コメント

自分はもうひとつTPPに関してわかりませんが TPPに参加する前に 参加した後 農業への対策をどうするのかというような(農業だけではありませんが)そういったものがみえません
コメに関して言えば 関税率700%以上?だとおもいますが これが撤廃されれば農家はひとたまりもありません
日本のコメを食べるのは富裕層階級だけになると思います
明日の食事さへままらないような家庭は 間違いなく安いコメに飛びつくでしょうし 吉野家のような安価を求めている企業も アメリカ米にきりかえるでしょう
もうすでにしているかもしれませんが・・・
ですから 参加した後のシュミレーションを政府にはだしてほしいのですが 参加だ 参加だと口だけいって 中身がみえない政策は 昔とちっともかわっていません
TPPより今の政治の在り方をかえなければ 未来永劫国民の不安は払拭されないと思います

投稿: だんご侍 | 2012年11月26日 (月) 08時17分

野田首相は党内すったもんだの末に、TPP参加をマニフェストに明言しました。
あの人は解散タイミングの謀り方といい、政治屋としては一流のセンスの持ち主なのでしょう。

しかーし、『それでいいのか?』と。
日本の農業を殺していいのか?
価格競争力では話になりません。長年伝えられて来た山村の風景を壊していいのか?と。

また、風力発電敵地の過疎地では、これまた悪名高い「農地法」が壁になっています。
簡単なところでは「風力特区」を乱発するか、根本的な法改正が必要になります。

それ以前に石破さんの構想を潰して、「農家個別所得補償」なんてバラマキを小沢一郎が打ち出して、それに飛び付いたのは弱小兼業農家です。
これでは、自分だけカネが貰えればいいのかよ!とのそしりは受けて当然だと思います。
もちろん、先祖代々の土地を守りたい農家の気持ちはよく解りますが、例えば高速道路開通なんていうと、さっさと補償金貰って立ち退きますよね。ほとんどの方は。

つまり、やはり日本農業の全体を見ないとバラバラになってしまい、国際競争力どころか、外国勢に付け入る隙を与えるばかり。
まるで幕末の日本です。

志有る志士たる議員が選ばれることを祈るばかりです。

NHK番組で、加州での米栽培に長年取り組んできた茨城と福島の農家さんが出ていました。
もはや水と人件費で、国際的には魅力は無くなったと、ウルグアイなどにシフトしているそうです。
春に新米が出ますしね。
精米工場や育種研究施設まで込みで、日本の技術ですよ。

世界は驚くべき速さで動いています。

投稿: 山形 | 2012年11月26日 (月) 13時30分

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